参入続々、空き電波市場が熱い

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電波の空き周波数である「ホワイトスペース」を活用する議論が活発だ。地域限定で空き周波数を利用するアイデアは、環境からプロスポーツ、教育までと幅広い。本格普及は地上アナログ放送終了後だが、関連する3兆円市場の活性化が期待される。

 テレビ放送などで利用する電波の空き周波数「ホワイトスペース」の活用が活発に議論されている。総務省の主導で、今夏から各地にホワイトスペース特区を設置して、その実証試験が始まる予定だ。

ホワイトスペースとは・・・電波の空き周波数の総称。本来、放送用などの目的のために割り当てられた周波数が空くことで、地理的・技術的な条件を満たせば、データ送信などにも利用できる。

 ホワイトスペースとは「空いている電波の周波数」を指す。利用地域を限定して空き周波数を使い、目的を特化した情報を流す。米国では2008年からホワ イトスペース開放の議論が本格化した。米マイクロソフトの試算では、ホワイトスペースの活用による米経済への効果は、今後15年で585億(約5 兆)~1095億ドル(約9兆5000億円)。日本での効果は未知数だが、ホワイトスペース関連市場は、モバイル広告市場や携帯端末市場などの合算で約3 兆円であることを考えると、大きな可能性を秘めていると言える。

 例えば、環境面での利用法。スマートグリッドの効率運用にホワイトスペースを使うアイデアだ。今年3月、インターネット総合研究所の藤原洋所長は、鳥取 県米子市で電気自動車工場の建設計画を発表した。その際、「これからのエネルギー消費は地産地消型に変わる。その時に電力の発生と消費を“見える化”する センサーネットワークの構築が重要になる」と説明した。

 太陽光や風力を活用した再生可能エネルギーを有効活用するには、電力を最適配分する情報を共有する必要がある。そこで、太陽光パネルなどの発電状況をセ ンサーで確認、その情報をホワイトスペースの周波数を利用して地域住民に伝える。利用者は、地上デジタルテレビ放送が受信できるワンセグ対応の携帯電話で 情報を取得することで、最適な時間や場所で給電ができる。

有限な電波に空きができるワケ

 電波の周波数は有限な資源だ。総務省総合通信基盤局電波政策課の平松寛代・周波数調整官は、「現在、周波数にはほとんど空きがない」と話す。それなのに、なぜホワイトスペースが発生するのだろうか。

 例えば、ある地域でのテレビ放送で1~6チャンネルまでの周波数帯の電波が届いている場合。A県が1、3、5チャンネル、B県は2、4、6チャンネルを 使うとする。この時、B県で使用している2、4、6チャンネルが、A県のある地域で電波干渉を起こさずに利用できても、使用許可のない電波“ホワイトス ペース”になってしまう。

 また、同じ地域でも、テレビ放送の終了した深夜の時間帯は周波数が空いた状態となっている。こうした地域や時間差を考慮して、総務省では昨年、電波が干 渉を起こさずにホワイトスペースが使える領域を調査した。その結果、全国の相当数の地域で、ホワイトスペースが利用可能だと分かった。

 電波を受信するワンセグ携帯電話は、昨年末で約7500万台も普及している。つまり、受信端末の普及コストは極めて小さい。新しい放送システムを始める条件は、既に整っている。

 現在、総務省には、地域活性化の様々なアイデアが数多く提案されている。その1つに、神奈川県平塚市を拠点とするサッカーチーム「湘南ベルマーレ」によ る提案がある。湘南ベルマーレは、プロサッカーリーグのJ1に所属しているが、スタジアムに大型の映像表示装置がない。そのため、ホワイトスペースを活用 して、選手の情報やゴールシーンなどを、来場者のワンセグ携帯に配信するサービスを考えている。

 水谷尚人・社長室長は「スポーツ教室の情報などを放送する常設サービスを検討している」と話す。平塚市の商店街とも提携して、様々な広告情報も放映したいという。

大学などでの普及に期待

 もっともハードルも低くはない。想定するサービス地域が小さな経済圏であるため、広告で収益を上げるビジネスモデルが成立しにくいからだ。「助成金がな ければ、運営は難しい」と水谷社長室長も認める。ここにホワイトスペース・ビジネスの限界がある。収益を上げるには、電波を送信する地域に一定の経済規模 が必要だが、ホワイトスペースが想定しているのは限られた地域での電波活用、という限界だ。

 もちろん普及が進みそうなアイデアもある。一例が大学での利用だ。小型通信システムを開発するネクストウェーブの尾崎常道社長は、「慶応義塾大学と協力 して、学内限定の放送局の試験運用を計画している」と明かす。放送する情報は、学生にとって必要な情報だ。例えば、授業の休講情報などがそれに当たる。 「情報を一斉配信すれば、掲示板の管
理人も減って、経費の削減にもつながる」(尾崎社長)という。

 ホワイトスペースの本格的な活用は、新たな電波割り当てが決まる2011年12月以降。しかし、今年4月に総務省が実施したビジネスモデルの公開ヒアリ ングへの参加者は、テレビ局各社、民間企業、大学など、延べ400人に上った。個々のビジネス規模は小さいながらも、ホワイトスペースは新しいビジネス チャンスの宝庫となるかもしれない。

日経ビジネス 2010年7月26日号10ページより

江村 英哲(日経ビジネス記者)