消費税2ケタ衝撃の予測本(東京新聞7/30)

消費税2ケタ衝撃の予測本
B0169559_8053721  今日から臨時国会が始まる。予算委員会では、先の参院選で飛び出した菅直人首相の「消費税増税」発言が焦点の一つになりそうだ。ジャーナリストの斎藤貴男さんは最近、消費税が2けたになれば「失業率は10%、年間自殺者も5万人を超えるだろう」と、衝撃的な予測を主張している。理由は消費税の構造自体にあるのだという。(篠ケ瀬祐司)

失業率10%、年自殺5万人超
「控除」で非正規雇用加速
しわ寄せは中小業者

 斎藤さんは新著「消費税のカラクリ」(講談社)で消費税率が二けたに上がれば、5・2%の完全失業率(五月の速報値、総務省調べ)が10%台へ悪化すると説いた。 消費税のしわ寄せを最も受けてきた中小零細企業や自営業者が追い詰められるためだという。
 「中小零細企業や自営業者は消費税分を値引きして納入したり、消費税分を価格に転嫁できずに安売りをしてきた。これがよりひどくなり、行き詰まりかねない。失業して労働市場に流れ込めは、失業率を確実に二けたに押し上げるだろう」 それは消費税が3%から5%に引き上げられた一九九七年の翌年以来、くしくも続いている年間自殺者三万入超という″惨状″の深刻化も招くという。

「消費税は赤字でも納めなければならない。払えなければ、滞納するしかないが、税務当局の消費税取り立ては格段に厳しい。過去、それが原因とみられる自殺もあった。それだけが原因なくても(自殺の)引き金になりかねない」 中小零細の自営業者らを心理的な面から圧迫する危険もあるという。
「中小零細企業や自営業者らへのしわ寄せが自明なのに消費税が増税されるとする。その意味を彼らは『世の中が自分たちをもう要らないと言っている』と受けとめるだろう」 さらに斎藤さんは格差社会の元凶である非正規雇用の増加のI因に消費税があると解説する。

正社員に支払われる給与は消費税の「仕入れ税額控除」の対象にならないが、派遣社員らへの報酬は控除の対象。つまり、非正規雇用の割合を 増やせば、その分の消費税の納付額が減るのだ。

輸出戻し税 大企業”丸もうけ”
「正社員を非正規に切り替える理由は人件費削減が主だが、消費税の納付額の節約にもある。消費税率が10%になれば、非正規への転換がますます加速するだろう」
中小零細業者や街の商店主の苦悩が深まる一方で、消費税は製造業の大企業などへ「事実上の輸出補助金」(斎藤さん)を与えてきたという。

 そのからくりは消費税の「輸出取引の免税(輸出戻し税)」制度にあるという。同制度は外国の付加価値税などとの二重課税を避けるため、国内で仕入れた商品を輸出する場合、仕入れで支払った消費税分か輸出業者に戻ってくる仕組みだ。 理屈の上では、仕入れの際の消費税分を取り戻すだけで輸出業者に得はないはずだ。だが、「実際の商取引では輸出する大企業側が価格を決める」(斎藤さん)ため、下請け業者は消費税分を値下げされがち。そのうえで免税分の還付を受ければその分は輸出業者のもうけになるという。

「消費税率10%」発言をした菅首相は「ギリシャの財政破綻は対岸の火事ではない」と訴えた。ギリシャ政府は財政再建策として、消費税に当たる付加価値税の増税などを打ち出している。
 しかし、斎藤さんは 「ギリシャは国債の約半分を外国投資家が買い、日本の国債はほとんど国内の金融機関などが買っている」と海外マネーヘの依存度の違いから、両国の財政危機を一括りにはできないと指摘する。
 年一兆円の自然増が続く社会保障費や、基礎年金の国庫負担率維持に必要な歳出を賄うための安定財源は消費税以外にないとの見方も根強い。 これに対しても、斎藤さんは「社会保障費のために消費税と決まり文句のように言うが、それはおかしい。社会保障費が必要ならば不公正税制の見直し、特に所得税と法人税をまっとうに取ればいい」と言い切る。

 所得税は1980年代前半まで税率が19段階に区分され、最高税率は75%だった。その後、徐々に段階、最高税率ともに減り、九九年には四段階で最高税率37%に。現在は六段階で、最高税率は40%(所得金額千八百万円超)だ。「所得税の累進税率を見直せば税収はたちまち増える」 法人税の実効税率は約40%。民主党は参院選マニフェストで税率引き下げをうたっている。
 斎藤さんは「社会保険料の事業主負担の割合など、日本の企業負担は諸外国の法人より軽い」と法人税率の引き下げに反対。大手銀行の法人税納付ゼロ状態が続いている例などを挙げ「こうした点を見直せば、法人税収は上がる」と強調する。
デスクメモ
 政治では昨今、ブレる人があきれるくらいいる。人間不信の風潮は増すばかりだが、今回登場した斎藤さんはプレない人だ。楽な道を知っているのに背を向ける。とはいえ、彼とて生身だ。「これだけ書いても世の中は変わらないのか」。そんな愚痴を耳にした覚えがある。でも、前傾姿勢は崩れない。(牧)(TOKYO 2010/07/30)
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■政権交代・鳩山内閣発足から1年。あの高揚は今や見る影もない。あまつさえ自民党と呉越同舟、消費税増税ではアウンの「抱きつき抱かれ」作戦を展開する始末。党首選が終われば消費税10%に舵を切るのは明らか。マスコミも煽る「不可避論」に助けられ、政府・財界一体になっての動きが加速する。■斎藤貴男『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)は、鋭く不公平税制の実態を暴く。零細自営業者が自腹を切らされる構造をはじめ、「仕入れ税額控除」を悪用し、社員を派遣労働者に切り替え、消費税の脱税を狙う事態にメスを入れる。■さらに輸出品には仕入れ時の消費税が還付される「輸出戻し税」の仕組みが、事実上の輸出補助金に替わり、巨大企業の丸儲けになっている問題を掘りさげる。眼からウロコの好著、是非、購読を! (2010/9/12) Daily JCJ
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斎藤貴男著『消費税のカラクリ』講談社現代新書 (良人の部屋のブログ)