NHK申し入れ

2020年7月 9日 (木)

「改めて森下俊三氏の経営委員辞任と議事録の一般公開を要求します」

かんぽ生命保険の不正販売報道で、日本郵政グループから抗議を受けたNHK経営委員会が2018年、NHKの上田良一会長(当時)を厳重注意した問題で、当会を含む24団体は2020.6.8日
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の5.22答申(第797号、第798号)を「尊重」して直ちに本件答申対象文書を開示するよう求める」「情報公開要求」をNHKに提出しました。→こちら参照 http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-df0a91.html

しかし、答申が出てから、経営委員会は3回の会合を経ても、いまなお、答申を受け入れるに至っていません。
私達は7月6日23の市民団体の連名で「改めて森下俊三氏の経営委員辞任と議事録の一般公開を要求する」要求書(→下記)をNHKと面談し手交しました。その後、11時から、弁護士ほか有志が衆議院第一議員会館で記者会見をおこないました。
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                    2020年7月6日
NHK経営委員会委員長 森下俊三 様
NHK経営委員会委員 各位

改めて森下俊三氏の経営委員辞任と議事録の一般公開を要求する

NHKとメディアを考える東海の会/NHK・メディアを考える京都の会/NHK問題大阪連絡会/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ/NHKとメディアを語ろう・福島/NHKとメディアを考える会(兵庫)/表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク/NHK問題を考える岡山の会/NHK問題を考える会・さいたま/時を見つめる会/NHKを考えるふくい市民の会/日本の政治を監視する上尾市民の会/マスコミを語る市民の会(宮城)/政府から独立したNHKをめざす広島の会/NHK問題とメディアを考える茨城の会/NHK問題を考える奈良の会/NHKを考える福岡の会/NHKとメデイアを考える滋賀連絡会/NHKとメディアの今を考える会/放送を語る会/ジャーナリズムを考える市民連絡会とやま/言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会/「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11.5シンポジウム」実行委員会(2020年7月5日、12時30分現在)

(1)『毎日新聞』は6月29日の朝刊で、NHK経営委員会が上田良一会長(当時。以下、役職名はすべて当時)を厳重注意した2018年10月23日の会合の「議事全容」を掲載しました。
 これは、正規の議事録ではありませんが、『毎日新聞』NHK問題取材班が「複数の関係者」への独自の取材に基づいてまとめたもので、信憑性が極めて高い内容と考えられます。
「議事全容」を一読して、際立つのは、森下経営委員長代行者が石原進経営委員長とともに、経営委員の個別の番組への干渉を禁じた「放送法」第32条を蹂躙する発言を繰り返し、会長厳重注意に至る議事を強行した実態です。
 その最たるものは、森下氏が、「今回の番組の取材は極めて稚拙で、取材をほとんどしていない」(注1)と番組編集と一体の取材をあからさまに攻撃すると同時に、「郵政側が納得していないのは取材内容だ。納得していないから、経営委に言ってくる。本質的なところはそこで・・・」と語ったくだりです。
これは、森下氏が、ガバナンス問題よりも取材を問題視し、個別の番組の編集に踏み込み、干渉する認識と意図があったことを示す何よりの証拠であり、森下氏の一連の発言が「放送法」第32条に違反するものであったことは、もはや弁明の余地がありません。

(2)さらに、森下氏のみならず、現在も経営委員にとどまっている他の数名の委員が、個別の番組の取材・編集に干渉する発言をしていたことも見過ごせません(注2)。「クレームへの対応というより、番組の作り方で若干、誤解を与えるような説明があった」、「番組の作り方に公平さを欠く要因がなかったか」、「こういう問題では〔経営委も〕番組内容に踏み込まざるを得ない」といった経営委員の発言も、個別の番組への干渉を禁じた「放送法」に抵触することは明らかです。

(3)経営委員会が、会長厳重注意に至る議事録を全面開示するよう促した「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」(以下、「審議委員会」と略す)の道理ある答申にいまだに応えない間に、メディアが独自取材をもとに議事録に極めて近いやり取りを「議事全容」と題して報道したことは、情報公開の責務を果たさない経営委員会の背任を改めて浮き彫りにしたものです。

 とりわけ、森下氏が、「放送法」第41条で議事録を遅滞なく公表する任を負わされた委員長の職責を省みず、「審議委員会」によって、事実上、ことごとく退けられた「経営委員会議事運営規則」に固執して、2018年10月23日の会合の議事録の公表を拒み続けてきている責任も重大です。
これによって、森下氏が経営委員会に対する視聴者、広くは社会の信頼を失墜させたことは、重大な背任と言わなければならず、もはや、森下氏に残された道は経営委員長の辞任にとどまらず、経営委員を引責辞任する以外、ありません。
そこで、私たちは以下のことを申し入れます。

              申し入れ 
〔1〕森下俊三氏は、「放送法」第32条を蹂躙する発言を繰り返すとともに、2018年10月23日の経営委員会議事録の公表を拒み続け、経営委員会が会長厳重注意という極めて異例の決議をした経緯の説明責任を果たさなかった責任を取って、直ちに経営委員を辞任するよう、重ねて要求する。

〔2〕経営委員会は「審議委員会」の道理ある答申を尊重して、開示の請求があった2018年10月23日の経営委員会議事録と配布資料を直ちに開示するとともに、それを経営委員会のHPにも掲載して、一般に公開するよう、重ねて要求する。

〔3〕2018年10月23日の経営委員会で、複数の経営委員が、森下氏ほど露骨ではないにせよ、委員が個別の番組の編集に干渉することを禁じた「放送法」第32条に抵触する発言をしたことも重大で、これら委員も猛省が必要である。この先の経営委員会で反省・自戒の意思を表明し、それを議事録に記載するよう、求める。                                      
                                                             以上

(注1) 『毎日新聞』も記事の注記で指摘し、経営委員Bも発言しているように、実際には、番組取材陣はネットで情報を寄せた現・元郵政職員や郵政グループ幹部、さらには不正な契約をさせられた高齢者等に取材をしています。「稚拙」というなら、こうした事実を確かめもせず、NHKの取材のあり方を一方的に攻撃した森下氏こそ稚拙です。

(注2)石原経営委員長は2018年4月に放送された番組やネットの動画で「詐欺」「押し売り」といった言葉が使われたことに非常に抵抗感があると発言しています。しかし、番組では、「ノルマに追い詰められ、お客様を詐欺まがいで契約させるパターンはしょっちゅう見ます」(現役郵便局員Eさん)とか、解約すれば損失が出ることを告げずに解約させる「契約のころがし」や保険を貯金と誤認させるような説明など、「郵便局というだけで高齢者の場合、だましやすい」(元郵便局員Bさん)といった証言を伝えています。こうした日本郵政の営業手法を「詐欺」「押し売り」と表現するのは実態を端的に伝える言葉であり、これに抵抗を感じる石原氏の感覚こそ、歪んでいます。
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   ◆ NHKとの面会の模様 ◆
23団体からはM氏(元NHKプロデューサー/表現の自由を市民の手に全国ネットワーク)と醍醐代表が出向き、松沢明次経営委員会事務局副部長と面談しました。
 面会には、弁護士ほか有志から杉浦・澤藤両弁護士が参加され、それぞれ、15分ずつ、提出文書の要点を説明し、多少のやりとりをしました。

(1)Mさんの発言
■森下委員長代行(当時)が、「今回の取材は極めて稚拙」と上田NHK会長に注意したことについて。
かつて放送現場に身を置いた者として、経営委員会でこのような議論が行われていたことに驚愕する。
経営委員が個別の番組について感想・意見を持つことは自由であろうが、それを経営委員会という公式の場で、しかも執行部を代表するNHK会長への「注意」という形で表明したことは、これが事実ならば明らかに越権行為であるし、放送法32条に違反する。
アベ政権になって、経営委員会には政権と仲の良い企業トップが送り込まれ、ジャーナリズムの在り方に見識のある人物は排除されている。これでは当該企業に今回のような問題・事件が起きたとき、NHKの取材は、経営委員会によって阻害されることになりかねない。経営委員会の在り方にも及ぶ問題である。
■議事録の全面公開問題について。
 今年3月24日の経営委員会公表資料によれば、議事録公表についての対応で、視聴者に「誤解を与えてしまった」としているが、実は「不信を抱かせてしまった」のではないか。度重なる情報公開・個人情報保護委員会からの答申に応えないのは、「ブラカシ作戦」をしているのではないか。10月23日の経営委員会が、放送法23条違反の会議を行っていたとしたら、経営委員長、委員長代行のみならず経営委員全員の責任が問われるし、そのために公開に踏み切れないのではないか。全面公開して決着をつけるべきである。

(2)杉浦ひとみさんの発言
<NHKとの面談での発言>
 まず、多くの人がNHKの報道は真実だと信頼していること,そのことを前提に聞いてほしい。
放送法32条は、経営委員会からの独立を確保するために、委員の介入を禁じているにもかかわらず、2018年のかんぽ保険の不正販売に関する番組について、経営委員会の中でその番組への介入があったとされていることは、重大な問題だ。
そのことを検証しようと、視聴者が情報公開を求めた。
NHKは、公の機関ではないので情報公開法などの適用はないが、受信料を払ってもらっていることに鑑み、情報開示を取り入れ、立派な情報公開マニュアルも作っている。
しかし、議事録の開示はなされず、視聴者から再検討の申立がされ、審議会が検討後、「開示するように」との答申をだしたのに、今なお開示されていない。
法の無視、制度の無視を放置したままではないか。いい加減にしてほしいという思いです。ちゃんと経営委員に伝えてほしい。

(3)澤藤統一郎さんの発言
<NHKとの面談の場での発言>
要求は2点。ひとつは、18年10月23日経営委員会の議事録全面開示であり、もう一つが、森下俊三氏の経営委員辞任だ。
これまでも、要求してきたことだが、両者の要求とも、ことここに至っては、受け入れざるを得ないものとなっている。
議事録公開は、本来的な経営委員会の義務である。しかも、6月29日の毎日新聞が、あすこまで詳細に議事内容を再現して、世に公表している。既に、経営委員会が議事録を秘匿している意味はなくなっているではないか。
また、毎日の記事を前提とする限り、石原さんも、森下さんも、明らかにNHK経営委員として不適格だ。公然と違法行為に及んでもいる。辞任は当然と考えねばならない。
いま、NHKに対する国民からの信頼は地に落ちている。これを回復する努力の第一歩が、森下さんの辞任ということになる。それなくして、信頼回復の術はない。

 なお、申し入れ書を提出したあと、当会の醍醐が松沢さんと、次のようなやりとりをしました。
(醍醐) 明日の経営委員会は、前回、前々回と同様、首都圏以外の委員はリモート参加か?
(松沢) どうするか、目下、相談中。
(醍醐) 前任者の時、私たちが提出した文書を、FAXか画像伝送かで、会合の当日より前に全委員に届けてもらったことがあった。今回、当日、会合の場で渡ったのでは議論に先立って目を通してもらうことはできない。全委員に前もって届くようにしてほしい。
(松沢)確かに、そういうやり方をすることがある。ご要望は承知した。
(醍醐)前もって全委員に届けてもらえると考えてよいか?
(松沢)明日、その場で届くということにならないよう、今日のうちに届ける。
 その後の11時からの記者会見の場で、杉浦弁護士が、上のようなやりとりがあったことを紹介され、「明日の会合の後の委員長ブリーフィングの時に、記者の皆さんから、確かに視聴者&有志の文書が届いたか、確かめてほしい」と発言されました。

◆ 弁護士ほか有志の記者会見の模様 ◆
 11時∼12時 衆議院第一議員会館 第6会議室
 有志からの出席者:
杉浦ひとみ(弁護士)、澤藤統一郎(弁護士)、児玉勇二(弁護士)、皆川 学(元NHKプロデューサー)、小田桐 誠(ジャーナリスト)
報道関係者
毎日新聞、朝日新聞、共同通信、しんぶん赤旗

(1)皆川 さん

(記者会見で)
■「会長は番組制作に関与しない」ことについて。
 「経営と編集の分離」は、番組制作について。経営者は経営の方針で改編などの指示を行ってはならない、という意味である。これは日本のジャーナリズムが、戦前、戦争協力を行ったことへの反省の上に、戦後行われてきた「不文律」である。これはNHKもほかのメディアでも同じだ。しかし経営者はこの領域を踏みにじり、経営の論理を現場に押し付けようとしてきたのも、戦後ジャーナリズムの歴史だ。1960年代、社の方針を批判したビラを配布したとして、社員が解雇処分を受けた事件があった(山陽新聞事件)。しかし岡山地裁は、社員が自社の経営方針を批判する自由を認め、処分を撤回させている。自社の経営の方針をも批判できるジャーナリズムこそ本物のジャーナリズムであろう。
今回の事態は、経営委員会が郵政の言い分を仲介し、NHK会長に編集への介入を強いた事件である。「NHKでは経営と編集は分離し、会長は番組制作には関与しない」というのは、今でも大原則である。」

(2)児玉勇二さんの記者会見での発言
僕は「2000年のNHK番組改変問題から関心をもっていて、今回もコロナ報道にも関心をもってNHKの日曜日の政治討論番組を見ても、例えば専門委員会の尾身さんが保健所の大変さやPCR検査の少なさを発言してもあまり問題にされようとしない政府よりのコロナ特措法の政府の指定公共機関となっているジャーナリズムの問題性を感じたりして今日の記者会見に参加しました。

(3)
小田桐 誠さんの(記者会見での)発言
森下委員長はじめ稚拙な経営委員が多いのではないか。放送法や公共放送とは何かを学ぶ格好の資料の1つが経営委員会の足元にある。NHK放送文化研究所の横山滋氏が2006年11月号の「放送調査と研究」に発表した「新聞記事に現れた放送の公共性」と題するレポートだ。1980年代半ばから20年間の朝日、毎日、読売の三大紙の「公共放送」「放送の公共性」というキーワードが出てくる記事を調査・分析したものです。横山はそれらの記事には、いくつかの合意があるとして、5点挙げています。

1、公益性・公然性。電気、ガス、水道、公共交通機関、郵便のように、誰もが接触や利用の可能性があるもので、NHKもその中に含まれる。「安全・快適な社会生活を営む上で、なくてはならぬもの」といった意味合いだ。

2、ユニバーサリティ、または非商業性。利用料金、NHKでいえば受信料は、自由競争や市場原理と異なる論理で決定されること。誰もが必要とするサービスであるから、安価にそれを手に入れることが出来なければならない。

3、信頼性・安定性・高品質。ジャーナリズム精神や文化的要素が欠如していないか、不断にチェックしていかなければならない。

4、説明責任、いわゆるアカウンタビリティ。「みんなのもの」である以上、支払い者・視聴者には、公共的財産や予算の使い道について、知る権利がある。各組織が正常に機能しているかについても同様で、説明を要求する権利がある。

5、不偏不党性。特定少数者の意見や主義・主張だけをいびつな形で反映したものであってはならない。一方で、少数意見を伝えることも重要である。

この五点は、まさに公共放送NHKが求められている姿だろう。
NHKが国会などで強調する「自主・自立」については、本当にそれを貫きたいのであれば、1962年に発足した臨時放送関係法制調査会で主張したように、独立した行政機関の設置を求めるべきだろう。いつまでもカネと経営委員・会長人事をにぎられた、政権にとって利便性の高い報道・言論機関であっていいのか⁉真の「自主・自立」を求めて行動してほしい。

(4)杉浦ひとみさん<記者会見での発言>

 本日9時半にNHKへ、この研究者、法律家、ジャーナリスと、NHK退職者らの声明文を持参し、申し入れをしてきた。2人の窓口の方が対応してくれた。
この声明には、大きく2つのことが書かれている。
放送内容に経営委員が介入することで、国民の知る権利に資する報道が歪められないようにするために放送法32条が定められている。
2018年のかんぽ保険の不正販売問題を取り上げた「クローズアップ現代+」に対して、経営委員会が、郵政の意向を偏重して、この放送に対して介入したことが問題となった。
これは放送32条違反である。
そこで、本当にそのような議事があったのかを検証しようと視聴者が、経営委員会の当該議事録の情報公開をもとめた。
NHKは受診料をもらって放送している立場の公共性から、自ら情報公開の手続を設け、立派な情報公開請求のマニュアルを作っている。しかし、議事録は示されなかった。
そこで、視聴者は再検討を申立て、これを受けた情報公開の審議委員会が「開示すべき」との答申を出した。しかし、未だに明らかしていない。
これは、信頼を得ているNHKの報道の、自主自立の担保を欠いていることになる。NHKの存在理由の根幹にかかわる問題だ。

(5)澤藤統一郎さんの発言
<記者会見での発言>
経営委員会への申し入れの経緯については、杉浦さんの報告に付け加えることはない。
NHKの在り方は、2本の民主主義の在り方に大きな影響を及ぼす。上田良一前会長が口にしたという「NHKの大問題」は、実は日本の民主主義の大問題でもある。そのような立場から、2点の申し入れを行っていることを述べた。
経営委員会は情報公開可否の最終判断権を有し、必ずしも答申に従う義務はないという仕組みにはなっている。しかし、恣意的に情報公開審議会の答申を無視してよいことにはならない。自ずから、合理的な理由が必要で、理由に納得できなければ、情報公開請求者からの訴訟提起が考えられる。

その場合は、不合理な裁判で開示するよう求めることを考えてもよいと思う。行政文書公開を求める行政訴訟ではなく、NHKと視聴者間の受信契約に基づく、民事的な公開請求訴訟になるものと考えられる。
視聴者の権利として、「議事録を開示せよ」という作為を求める請求や、開示請求権存在の確認を求める訴訟や、開示の実行まで一日○○円を支払え、などという請求も考えられる。受信契約締結による視聴者の具体的な権利構成の問題となる。
これは興味深い問題として訴訟に発展すれば面白い。受任希望の弁護士はたくさんいると思う。
 
有志5人のスピーチのあと、記者から問題の核心に触れる質問が次々と出され、約30分間、意義深い質疑が交わされました。

 記者会見が終わった後、有志の皆さんも手ごたえを感じられた様子でした。
 なお、会場の受付に、視聴者団体連名の申し入れ文書も置いて、記者に配りました。質疑の中で、この連名文書についても、朝日新聞、共同通信から質問があり、杉浦さんから振られて、受付の方から、当会の醍醐がが多少、説明をしました。
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2020年7月6日 記者会見での質疑録
(共同通信)会場で配られている2つの文書の関係は?
(杉浦・醍醐)それぞれ別。この会見は弁護士ほか有志が開いている。
(毎日新聞)森下氏らは「過去の番組について感想・意見を述べたもので、番組に関する指示や意見ではない」と言っている。これをどう思うか?
(杉  浦)本当にそうなのかを明らかにするために議事録の開示を求めている。議事録を公開した上で説明すべき。「誤解を与えた」と帰結しているようだが、「誤解」ではなく、「不信」だ。
(小田桐)経営委員はいわば公職者だから、場所と自分の立場をわきまえて発言しなければならない。
(皆 川)当時は続編を制作中で、現在進行形の個別の番組について経営委員があのような発言するのは「これから作るな」と言ったに等しい。
(朝日新聞)議事録のことなどで、これまでに、たびたび申し入れをしてきたのか?
(澤  藤)何度も申し入れてきた。

(朝日新聞)それでも明日の委員会で何の反応もないときはどうするのか。
(澤  藤)明日の会合のあとの経営委員長のブリーフィングの時に、記者の皆さんからも質問してほしい。森下氏は責任を取るつもりはないのか、と尋ねてほしい。
(杉  浦)声明文は明日の委員会に先立って、予め目を通せるように、今日中に委員の手元に届くようにすると、NHKの窓口の方は約束してくれたので、「読んでない」は言わせないように。
(しんぶん赤旗)会長ほかNHK執行部は、自主自律は保たれていると言っているが、どう思うか?
(皆  川)自主自律は危険な状況。(郵政三社からの抗議に応えていないのは問題だと経営委員から言われて)上田会長が大企業からであろうと、一個人からであろうと、誰の質問も分け隔てせず同じ対応をすると言った姿勢は正しい。しかし、その後、後退した。
NHKのコロナ報道を見ても、指定公共機関の報道みたいで、民放のような事態の背景を追求する解説がない。NHKのニュースを見ることが少なくなった。

(澤  藤)誰からの自立かを考えなくてはならない。
上田会長は「経営委員会からは独立している」というつもりかもしれないが、それは間違い。会長が厳重注意されたら、現場は大いに萎縮してしまう。「こんな理不尽なことはありえないと言うべきだった。「権力からの自立」というなら、そうはなっていない。積極的におもねるか、消極的に避けるかのどちらかになっている。NHKの自主自律は経営委員会の介入によって、担保されてはいない。経営委員の構成も、偏頗だ。
国民の批判の中で。森下経営委員長辞任となることが〔自立の〕第一歩だ。
(小田桐)黒川検事長問題を報じるシブ五時の岩田明子さんの解説は、普段はアベ政権の方針について詳しく解するのに、黒川問題については何もコメントせず、解説にもなっていなかった。自主・自立というなら、NHKはかつての電波監理委員会のような独立行政機関を設けろ、としっかり主張すべきだ。
(毎日新聞)経営委員会が答申通りに対応しなくなった時、答申の重みはどうなると思うか?
(杉  浦)通常の国や自治体の情報公開の場合には、答申を無視するようなときには裁判で開示するよう求める。NHKについても、自ら情報公開制度をおいて義務を課しているのだから、裁判を考えてもよいと思う。
(澤  藤)行政訴訟というよりも、契約関係にもとづくNHK視聴者として民事の公開請求、あるいは開示請求権の確認を求める訴訟(確認訴訟)になるのではないか。そのような訴訟なら、やろうという弁護士はたくさんいると思う。


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20200706
(参考)
「改めて森下俊三氏の経営委員辞任と議事録の一般公開を要求する」~昨日、23の市民団体の連名で提出~: 醍醐聰のブログ

<報道>
市民団体、NHKに経営委の議事録開示求める かんぽ生命の不正販売報道巡り
毎日新聞2020年6月8日 21時11分(最終更新 6月9日 04時23分)
 かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、NHK経営委員会が2018年、当時の上田良一会長を厳重注意した問題で、市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」(共同代表=醍醐聡・東京大名誉教授)など24団体は8日、厳重注意を決定した際の経営委の議事録などの開示を求める要求書をNHKに提出した。
 要求書では、NHKの情報公開制度に基づき開示請求のあった議事録などの関連文書について、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が5月22日に「速やかに開示すべきだ」とする答申を出したことを受け、答申の尊重と関連文書の開示や一般公開を求めた。 【小林祥晃】

赤旗 2020年7月7日



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2020年6月19日 (金)

「抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を」

2020.6.17日、当会を含む16の団体と38名の個人が連名で、前田晃伸NHK会長、正籬聡NHK放送総局長、「これでわかった!世界のいま」番組制作担当宛てに、
「抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を」
と題する意見・要望・質問書を、賛同者名簿を添えて、発送しました。

なお、質問については、6月30日(火)までに、文書で回答をもらうよう、要請しています。
(6月25日(木) にNHKの回答が届きました。→こちら参照
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                                            2020年6月17日

NHK会長 前田晃伸 様
NHK放送総局長 正籬 聡 様
「これでわかった!世界のいま」番組制作担当 御中

抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を


<問題の経過> 

NHKの国際ニュース番組「これでわかった! 世界のいま」の公式ツイッターに投稿された動画アニメとツイッターに書き込まれた文章に対して、今、内外から厳しい批判が殺到しています。デモの原因になった警官の黒人殺害に触れず、黒人の怒りを暴動かのように描き、偏見を助長するものだといった批判です。
問題の動画は、同番組が2020年6月7日に放送した「拡大する抗議デモ アメリカでいま何が」の中で放映したものです。

 NHKは、6月9日に問題の動画の「掲載にあたって配慮を欠き、不快な思いをされた方にお詫びいたします。NHKでは、人権を尊重し、取材や制作のあらゆる過程で細心の注意を払うよう取り組んでいきます」という謝罪を発表するとともに、問題の動画を削除しました。
しかし、問題の本質に触れない、このようなおざなりのお詫びがいっそう批判を広げています。

<私たちの意見>
 (1)問題の動画は、1分20秒という限られた時間とはいえ、目下、アメリカ内外で、黒人・白人の枠を超えて、広がっている抗議デモの真因(白人警察官による無抵抗な黒人男性の殺害)に触れず、貧富の格差に対する黒人の怒りが原因であるかのように事実を歪曲した内容でした。しかも、アニメの主役として登場した黒人は筋肉質で粗暴なふるまいをする人物と受け取られる描き方でした。
こうした動画は、同番組の公式ツィッタ―に書き込まれた「白人警察官には黒人に対する漠然とした恐怖心があって、今回の抗議デモの発端となったような事件がなくならないとも言われているんだ」という説明と平仄を合わせた印象操作と受け取られてもやむを得ません。
問題の動画と書き込みは、黒人の人権に対する「配慮に欠けた」というレベルの問題ではなく、黒人がアメリカ社会の中でたどってきた歴史認識の欠如に加え、黒人への偏見を助長した悪質極まりないものです。NHKの上記お詫びには、こうした認識が完全に欠落しています。

(2)さらに見過ごせないのは、同番組の公式ツィッタ-に書き込まれた次の一文です。
「アメリカ社会は、考え方の違う両者が互いにののしり合って、どんどん分断が深まっていってしまったんだ。」
なんという無知蒙昧な一文でしょうか。番組の公式サイトによれば、「解説するのは取材経験・専門知識が豊富なデスクや記者」と記されていますが、あまりの取材不足、不勉強、不見識にあきれるほかありません。

(3)ジョージ・フロイドさん殺害に抗議するアメリカのデモは、平和的理性的な方法で全米各地に広がっています。人種差別を煽るトランプ大統領の言動には、現・元政府高官や与党共和党の間からも公然と批判が起こっています。世界各地で、黒人・白人の違いを超えて、抗議のデモが広がっています。
こうした事実のどれを見ても、抗議デモが「考え方の違う両者が互いにののしり合う」ことから生まれたものでないことは明らかです。

(4)6月7日の放送番組に関わるアニメ動画、書き込みと同様のことは、香港の一国二制度や米中の対立を描いた動画や書き込みにも見受けられます。いずれも、問題をあまりに単純化し、図式化した、粗暴な内容です。
これほど問題の本質を歪曲したアニメ動画や書き込みを流布し続けるようでは、「これでわかった! 世界のいま」という番組の看板に偽りありと言わざるを得ず、このような番組を存続させることは有害です。

<質問と要望>
 (1)前田晃伸会長は6月11日の会見において、「不快な思いをされた方におわびをしたい。番組内容を改めて確認し、人権についての局員の研修を行い、再発防止につとめる」と発言しましたが、問題の根源に及ぶ謝罪とは思えません。
 そこで、前田会長、正籬放送総局長、「これでわかった!世界のいま」番組制作担当に伺います。
・本件番組に関わる動画アニメとツィッタ-への書き込みが各方面から批判を招いた真因は、人権への「配慮の不足」ではなく、人種差別問題の本質に関する番組スタッフの「稚拙で歪んだ認識」にあると理解されていますか?
・謝罪すべき対象は、「不快に思われた方々」ではなく、NHKの全ての視聴者であるという認識はないのですか?
・何を謝罪すべきかと言えば、NHKが「放送倫理の確立に向けて」の中で誓った「放送倫理」人権を尊重する、正確を期す、品位の保持に努める   に背く動画と記事を流布した事実だという認識をお持ちですか? 
・問題の動画アニメと書き込みは、人種差別について「誤解を与えた」のではなく、「偏見を助長した」という認識をお持ちですか?
以上について、皆様の見解をお聞かせ下さい。

(2)NHKが一片の謝罪とお詫びで済ませず、問題の根源にまで踏み込んだ番組の検証を行い、その結果を、人種差別の撤廃に取り組んでいる人々、外部の有識者、ジャーナリストらも出演する検証番組として、多くの人々が視聴しやすい時間帯に放送するよう、求めます。

 上記の質問、要望に対するNHKとしての回答を2020年6月30日までに、文書で、別紙宛てにいただくよう、お願いします。

                                                                    以上
*********************************************

@@6月17日に私たちが連名で発送しました文書について、6月25日(木)、NHK(根本拓也報道局長・田畑祐一報道局国際部長の連名)から、回答が届きました。
下記文書①(画像)の下線はすべてこちらでつけたものです。
Owabi2
また、6月14日放送の「これで分かった! 世界のいま」の冒頭で田畑国際部長が読み上げた「お詫びの文書」②はこちらを参照ください。
紙の上の反省ではなく、それをこれからの放送にどう活かすのかこそが問題ですが、①と②の文面を照合しますと、回答①は、大部分、田畑国際部長名のおわび文書②を踏襲したものです。
ただし、①で当方が下線を引いた箇所は、②の田畑文書にはなかった文です。
また、②にあった「多くの方に不快な思いをさせてしまった・・・」がなくなっています。

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2019年1月23日 (水)

辺野古での土砂投入工事をめぐる報道についての質問書を提出

「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、辺野古沖での基地建設工事に関する最近のNHKの報道には重大な問題があると考え、6つの項目にまとめた質問書を明日、24日、NHKに出向いて、視聴者部の2名の副部長と面会の上、提出することにしました。
提出先は、上田会長、木田放送総局長、小池報道局長です。別々に提出します。
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                                                                        2019年1月24日
NHK会長 上田良一様
NHK放送総局長 木田幸紀様
NHK報道局長 小池英夫様
                         辺野古での土砂投入工事をめぐる報道についての質問書
                                                              NHK を監視・激励する視聴者コミュニティ
                          共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
                    
 皆様におかれましては公共放送をつかさどる重責を担われ、ご多忙のことと存じます。
 以下、質問書を提出します。別紙の宛先へ、本年2月5日(火)までに文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。

問題の経過
 (1)去る1月6日に放送された貴局「日曜討論」に出演した安倍首相は沖縄辺野古での土砂投入に関連して「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」、「砂浜に存在した絶滅危惧種は砂をさらって、しっかり別の浜に移した」と発言しました。希少資源のサンゴの保全に十分配慮した上での土砂投入であると言わんとしたものです。
 しかし、沖縄防衛局が移植したサンゴは埋め立て海域全体のサンゴ7万4千群体のうちの9群体にすぎず、その9群体も今回の土砂投入区域外のものでした。
 放送直後から、「事前に収録した録画の放送であるにもかかわらず、なぜ事実と異なる首相発言をそのまま放送したのか」という疑問、批判が多数、貴局に寄せられたと伝えられています。
 この点を質した報道機関の取材に対し、貴局は「NHKの自主的な編集判断」と応答するのみで、訂正も謝罪もないまま数日、経過しました。
 1月11日の「ニュース・ウオッチ9」で、ようやく安倍首相の発言が事実と異なっていたことを伝えました。

 (2) 1月21日、防衛省は辺野古埋め立て区域に存在すると指摘されていた軟弱地盤対策のための設計変更を検討することになったと伝えられました。軟弱地盤の存在は2016年に沖縄防衛局がまとめた地質調査報告書で確認され、国会でも取り上げられてきました。沖縄県の見通しでは、設計変更には約1500億円、5年ほどの年月がかかるとのことで、県知事の承認が必要とされることから、辺野古沖の埋め立て工事は大幅にずれ込むことが必至の状況です。
 しかし、この件について、NHKは21日夜7時のニュースでも9時のニュースでもまったく取り上げませんでした。

〔質問1〕
「あそこの」「別の浜に」とはどこを指すのか、常識的に理解不能な安倍首相の発言を、その場で問い返すことなく終わった司会者の見識が問われますが、事前録画で、放送前に首相発言の真偽をチェックする時間があったにもかかわらず、事実上の否定報道が5日後の11日の「ニュース・ウオッチ9」となったのはなぜですか? 

〔質問2〕
今回の「日曜討論」の件に限らず、NHKは放送に関する外部からの疑問、質問に対して、自主的編集を盾に実のある応答を拒むのが通例になっています。これについては、後ほど質問しますが、自主的というなら、貴局内の自主的放送審査組織である考査室は、1月6日の「日曜討論」における安倍首相発言の放送のあり方について、放送後、どのような考査をし、担当部署に伝え、やり取りをしたのか、なにもしなかったのか、お聞かせ下さい。

〔質問3〕
1月11日の「ニュース・ウオッチ9」は、「辺野古埋め立て 土砂投入前にサンゴ移植急ぐ 防衛省」という大見出しで、先の安倍首相の「サンゴは移植した」という発言が事実と食い違うことを伝えたあとで、「しかし、残りのおよそ7万4000群体の移植は県の許可が得られていないことなどから進んでいません。このため防衛省はサンゴが生息する区画に土砂を投入する前に移植するため、今後、県との調整を急ぐことにしています」と放送しました。
このような伝え方は、沖縄防衛局は希少資源の保全のためにサンゴの移植を進めようとしているが、沖縄県が許可しないのが原因で移植が進んでいないという認識を誘導するものです。
 しかし、沖縄県が移植を許可しないのは、移植ではサンゴを保護できる保証はない、繊細な環境のなかで生息するサンゴは水流や光の強さが少し変わるだけで死滅する恐れがある、サンゴの保全を考えるなら土砂投入は避けるべきという専門家の判断も参考にしたものです。
 こうした沖縄県や専門家の意見を伝えることなく、政府・沖縄防衛局の言い分だけを一方的に伝えるのは、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めた「放送法」第4条第1項4の規定に反していると当会は考えます。これに対する貴職の見解をお示し下さい。

〔質問4〕
 1月21日に防衛省が土砂埋め立て海域における軟弱地盤対策のため設計変更を検討することになったという事態は辺野古沖での新基地建設に甚大な影響を及ぼすと予想されます。しかし、NHKは当日、夜7時のニュースでも9時のニュースでも、歌舞伎町で起った発砲事件を時間を割いて伝える一方で、軟弱地盤の問題はまったく伝えませんでした。
 なぜ、このような話題の取捨選択がされたのか、その理由、基準をご説明ください。

〔質問5〕
土砂埋め立て海域における軟弱地盤の問題は2016年以来、国会でも取り上げられてきましたが、NHKはこの問題について、これまでのニュース・報道番組でどのように(いつ、どの番組でも含めて)、伝えてきたか、ご説明ください。

〔質問6〕
今回の件に限らず、「放送法」第4条や「NHK放送ガイドライン」などにもとづいて、NHKの番組内容について質問をした側に対し、NHKは「局の自主的編集判断」を盾に、実のある回答を拒むのが通例になっています。
しかし、NHKに認められる「自主的編集判断」とは、視聴者からの質問を遮る盾として認められたものではなく、NHKが監視の対象とする様々な権力の介入を防ぎ、視聴者の知る権利に応えるためのものです。
この意味から、NHKがニュース報道等の編集過程・内容についての放送後の質問について、説明を拒めるのは次の場合に限られ、それ以外はむしろ、積極的な説明責任があると当会は考えています。これについて貴職はどう考えられるのか、見解を求めます。
①取材源(公的機関でしかるべき職務権限を持つ者は除く)の秘匿を必要とする場合。
②個人(公的機関でしかるべき職務権限を持つ者は除く)のプライバシ―を保護する必要があると認められる場合。
➂営利企業に競争上の不利益を及ぼすと合理的に判断される場合。
                                                             以上
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この質問書の(PDFでのダウンロードはこちら

質問項目の1~3は、1月6日に放送されたNHK「日曜討論」において安倍首相が事実と食い違う「サンゴ移植」発言をしたことに関するNHKの報道のあり方に関するものです。

質問項目の4,5は、土砂埋め立て海域で確認された軟弱地盤NHKの問題に検討するNHKの報道の不作為に関するものです 。

質問項目の6は、NHKが従来から、番組に関する質問について、「自主的編集判断」を盾に回答を拒むのは視聴者への説明責任に背くものと考え、編集の過程の説明を控えることができるのは、どのような場合かについて、当会の考え方を示したうえで、NHKの見解を質すものです。
回答は、2月5日(火)までに文書で求めることにしています。
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議事録です。
2019.1.25
辺野古での土砂投入工事をめぐる報道についての質問書を提出(報告)
日 時:2019年1月24日 11時30分から30分
NHK:広報局視聴者部 藤田浩之 副部長、  原 徹 副部長
視聴者コミュニニティ: 醍醐 聰 共同代表、  渡辺 力 運営委員
質問書の宛先
①    NHK会長     上田良一 様
②    NHK放送総局長  木田幸紀 様
③    NHK報道局長   小池英夫 様

≪面談について≫
 初めに、質問書(3ページ)を読み上げ、問題の経緯と6項目の質問を説明。
Q:これまで担当者からは「宛名になくても報道局(長)には届ける」との説明だったが、今回は宛先にもなっているので必ず届けてもらいたい。回答日を指定しているが事前に連絡いただければ多少の遅れは問題ない。回答文とは別に補足のメモもあればよろしく。
Q:質問1に関して、昨日、放送総局長が発言されているが、質問書は総理の録画をやり直せと言っているのではなく、「あそこ」「別の浜」との総理発言に疑問も呈さない司会者の見識と、総理発言の訂正にどうして5日もかかったかをお聞きしている。
放送直後からネットや全国紙から反応が大きかったので、その反応を見たうえで調査し訂正放送となったのか?NHKの自主的判断ではなかったのかどうか?
Q:録画放送の場合、録画撮りの段階で、今回の安倍発言のように明らかに事実と異なる発言があった場合、放送までに、どのような対応をするかのルールはあるか?

A:ご指摘のようにNHKのガイドラインにはそのようなルール・定めはない。
NHKの公式見解ではないが、実態は「ケースバイケース」だ。
Q:「自主的」というなら、質問2に書いているように「放送後の考査室の対応」はどうだったかについて説明してほしい。近年、毎月一回目の理事会に報告される考査室の報告は考査の中身に全く触れていない。
Q:これまでのNHKからの回答は視聴者部からだったが、質問書の宛先人は回答内容を了解あるいは認識しているのか?

A:回答内容は、宛先本人が必ず確認している。文書決済の形ではないが「承認」している。
Q:今日のやり取りは特に問題ないだろうから、会員に知らせるためレポートを会のホームページに載せる。
                                                                        以上
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2月7日、NHKから2通の文書が届きました。

1)1月4日の質問書の回答
*「文書開示判断期間延長のご連絡」(差出人 NHK会長)
 紅白歌合戦の新聞広告に関する情報公開請求についての連絡です。
 ・延長の理由:「開示等の判断に今しばらく時間を要するため」
 ・判断を行う期限:2019年3月8日

Entyo

*2019年1月24日付で提出した質問書への回答
 
・安倍首相のサンゴ移植発言についての放送のあり方
・辺野古沖の軟弱地盤に関する報道の経緯
・番組の編集判断に対する視聴者からの質問・意見への応答のあり方に関する質問への「回答」です。 → 回答文書は,「5」を除き、従来からの応答(個別の番組の編集判断等に関する答えは差し控える)の繰り返しです。

Mg396

河野外務大臣の「次の質問どうぞ」の連発を思い起こしました。
なお、この文書の差出人は広報局視聴者部ですが、質問書を提出した時の面会応対者(視聴者部・藤田副部長)の説明では、回答文書は名宛人(今回でいえば、上田会長、木田放送総局長、小池報道局長)に回付され、了承を経たものになるとのことでした。

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2019年1月 4日 (金)

紅白歌合戦の全面広告について情報公開請求をNHKに送付しました。

NHKは12.31日の全国紙各紙に紅白歌合戦の全面広告を掲載しました。
新聞広告データアーカイブス NHK紅白歌合戦
当会はこの件については放置できない問題として捉え(視聴率と連動したCM料に依存する商業放送局ではないNHKが、受信料から多額の経費を割いて番組の広告をする必要性があるのか?)下記のような情報公開請求をNHKに送付しました。

開示請求項目は、次のとおりです。
 2018年12月31日の各紙に掲載された紅白歌合戦の広告について
 1.上記広告の掲載誌一覧
 2.各紙に支払われた広告(掲載)料
   または各紙に支払われた広告(掲載)料の合計額
 3.NHK内で広告掲載を決定するにあたっての決済者一覧
   (決済文書があれば、その写しすべて)

Nhk


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2018年5月25日 (金)

NHK大阪放送局の記者の不当な異動人事の中止を求める要望書を提出

当会は森友学園問題の真相に迫る取材に精力的に取り組んできた大阪放送局の記者が記者職から外されるとの情報に接し下記のごとくNHKに申し入れを行いました。以下はその報告です。

NHK大阪放送局の記者の不当な異動人事の中止を求める要望書を提出(報告)
2018.5.24
日 時:2018年5月24日 13時から30分
NHKの応対:視聴者部のO副部長、N 副部長
提出者:①大学(現・元)教員、弁護士有志(54名:5月24日10時45分現在)
    ②NHK視聴者有志(別紙)
出席:醍醐 聰、渡邉 力

≪要旨の説明≫
要望書は視聴者有志の連名と大学教員・弁護士有志の連名と2種類あり、いずれも宛先はNHK会長 上田良一様とNHK放送総局長 木田幸紀様です。
一部の報道とは別に、信頼できる情報から、森友学園問題の真相に迫る取材に精力的に取り組んできた大阪放送局の記者を記者職から外す人事異動が検討されていることを知りました。このような記者を取材のできない部署に人事異動することは不可解であり、中止すべきです。視聴者が期待する取材をする記者がこのような人事の扱いをされると、視聴者のNHKへの信頼を壊してしまう人事と受け止め、受信料支払いの意欲を減衰させることになり、NHKにとってもプラスにならない。
また、政権が嫌う真相に迫る記者が冷遇され、左遷されるとなると、取材現場で萎縮が広がり、視聴者の知る権利に応える報道が後退する恐れがあることから、このような申し入れをすることにした。

≪主な質疑≫
Q:この人事異動は定期異動か?
A:6月は、管理職の一般的な人事の時期だ。NHKでは全国の人事を東京で管理している。
Q:この人事を不自然なものでないと思わせるリークらしき(個人)情報までネットに出ているが、これこそ不自然だ。
大阪ではこの人事に抗議するアピール行動がされているようだが、大阪局は発令を受ける側。抗議をされてもとまどうかもしれない。私たちは発令をする側に申し入れをすることにした。
A:おっしゃる通りだ。
Q:「NHKではキチンと取材する記者が評価されない」と思われないよう、今回の異動人事は中止すべきだ。早急に会長の対応を求める。
A:会長には、この後すぐに届ける。
Q:今日お渡しできなかった視聴者有志の名簿は明日お届けするのでよろしく。
以上(記録:渡邉力)
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                          2018年5月24日
NHK会長 上田良一様
NHK放送総局長 木田幸紀様
   NHK大阪放送局の記者の不当な異動人事の中止を求める要望書
       NHK視聴者有志(賛同者名簿は別紙)

 皆様にはNHKの健全な経営と充実した放送のためにお忙しい毎日をお過ごしのことと存じます。
  この間私たちは、森友学園問題に関して、貴局が多くのスクープを行い、森友問題の真相解明に大きな役割を果たしてきたと評価しています。
ところが、先日、私たちは、森友学園問題の真相に迫る取材に精力的に取り組んできた大阪放送局の記者を記者職から外す人事異動が検討されているとの報道に接しました。
私たちが関与しない貴局内の人事ですが、異動人事が伝えられる記者は、政権寄りと批判が向けられてきたNHKの政治報道において、時の首相夫妻が疑惑の中心人物となっている森友問題の真相に迫る貴重な取材を続けてきた記者といわれています。このような記者は私たち市民の知る権利に応える誠実で頼もしい人材であり、NHKに対する視聴者の信頼の揺らぎを食い止めるために貢献をしてきた人材でもあると思います。
そのような記者が森友問題の真相解明の重要な局面で取材現場から外されるとすれば大変不可解なことであり、視聴者は強い疑惑を向けざるを得ません。

皆様におかれましてはNHKに対する視聴者の信頼を失墜させるような異動人事を中止する措置を直ちに講じられるよう強く要望します。
仮にも、伝えられたような異動人事が強行されるなら、私たちのみならず、多くの視聴者はそれを左遷人事とみなし、今後のNHKの政治報道に強い不信を抱くことになるのは必至です。

受信契約の締結義務を是認した先の最高裁判決を引くまでもなく、受信契約も受信規約で定められた受信料の支払い義務も、NHKが放送法第4条他を遵守し、自主自律の放送を貫いて、国民の知る権利に応える放送を続けているという視聴者の信頼を得ていることが大前提です。NHKがそうした前提を自ら壊すような人事を強行するなら、今、受信料の支払いを続けている視聴者の間でも、支払い意欲を減退させる人々が増えるのは必至です。
NHKの人事担当部署がそのような愚行を犯さないよう、皆様の賢明なご判断と早急な措置を強く要請します。
                                                                   以上
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参考
森友問題スクープ記者を“左遷” NHK「官邸忖度人事」の衝撃
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/229227/1
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「NHK大阪放送局の記者の不当な異動人事の中止を求める要望書」
                                                      への賛同の通知用のFAX用紙
以下の欄にお名前とご住所(都道府県名のみ)あるいは所属団体名あるいは肩書をご記入の上、次へFAXでお送りください。なるべく1枚の紙面を埋めるようお願いします。
集約締め切り 5月24日(木)10時 厳守
FAX番号:
(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ事務局)
お名前   
次のいずれか ご住所(都道府県名)/所属団体名/その他肩書
*所属団体名/肩書を記入される場合は1つに絞って下さい。
*この件についてのお問い合わせ ☎:

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2018年4月 3日 (火)

「NHKニュース番組の編成方針についての質問書」と『放送法4条の撤廃』問題での申し入れを提出してきました。

(1)  3月29日の参議院総務委員会で山下芳生議員はNHK内部から届いた通報と断って次のような情報を紹介しました。(6分50秒~)
https://www.youtube.com/watch?v=ERfCmjTS52M&feature=youtu.be&t=417

(山下)「ニュース7、ニュースウオッチ9、おはよう日本などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題の伝え方を細かく指示している、トップニュースで伝えるな、トップでも仕方ないが放送尺は3分半以内、昭恵さんの映像は使うな、前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな、などというものでした。・・・・・こういう実態あるんじゃないですか?」

これに対し、上田良一NHK会長は放送法の精神を棒読みするだけの念仏答弁。通報の真偽にはまったく触れませんでした。そこで、当会は4月3日、渋谷のNHK放送センターへ出向き、「森友問題に関するNHKニュース番組の編成方針についての質問書 」を提出(全文は→こちら)、9日までに文書で回答するよう要望しました。上記の通報が事実とすれば、政権に対するNHKの自発的隷従は極まれりです。
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質問の概要
1. 山下議員が紹介したNHK内部からの通報で指摘されたNHK幹部からの指示は事実なのかどうか、迅速に調査の上、お答えください。
2. 事実とすれば、指示をしたのはどのような役職の誰なのか、お知らせください。
3. 山下議員が取り上げたNHK内部からの通報は、外部へ通報される前に貴職を含むNHK内部のしかるべき部署に通報されなかったのか、されたとしたら、どのように対応されたのか、ご説明ください。
4. 視聴者からいえば、今回のような内部通報はNHKの放送の自主自律、国民の知る権利に応える番組制作がなされているかどうかをチェックすることに資するものです。それだけに内部通報者に不利益をもたらすような処遇は許されません。
貴職は今回のような良心的な内部通報者を保護するため、どのような措置を講じ、対処をされるのか、ご説明ください。
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また、指示をしたNHK幹部に対し、官邸なり与党議員なりから、何らかの形で指示があったとすれば、指示をした側も、それに追随した側も、それぞれの責任を徹底的に追及しなければなりません。こういう事実を見過ごすことも罪です。

(2) もう一つは今問題になっている政府の「放送法撤廃」の画策(戦後、放送2現体制で行われてきた放送事業を規定してきた「放送法」の基本原則の重大な変更であり、アベよいしょ番組ばかりにしてしまおうとするとんでもない話)です。
(参考)→安倍首相の放送法撤廃はやはり政権擁護フェイク番組の量産が目的! 官邸の推進会議委員に「ニュース女子」出演者が3人|LITERA/リテラ
http://lite-ra.com/2018/03/post-3915.html

当会は総理大臣と規制改革推進会議宛に「放送法4条の撤廃」発議反対の申し入れ(→こちら)をするとともにNHKにも「『放送法4条の撤廃』発議への反対態度表明」(→こちらを要望する申し入れを行ないました。
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「質問書と要望の申し入れ書」をNHKに提出してきました。(報告)
                             2018.4.2
視聴者コミュニティでは、月曜日(2日)、渋谷のNHKに二人が出向いて文書を手交しました。
日 時:2018年4月2日 13時40分から約5分
NHKの応対:ハートプラザの井上利秋 部長
視聴者コミュニニティ:醍醐 共同代表と渡辺 運営委員

Ⅰ.質問書
 「森友問題に関するNHKニュース番組の編成方針についての質問書」 
  2通:①NHK会長 上田良一 様、②NHK放送総局長 木田幸紀 様
Ⅱ.要望の申し入れ書
 『放送法4条の撤廃』発議への反対態度表明」を要望する申し入れ
  1通:NHK会長 上田良一 様
≪面談について≫
事前の連絡で面談の予定だった視聴者部の七尾副部長が急用のため、ハートプラザの井上利秋 部長に上記の書類を手交し、以下の伝言を依頼。
3月29日の参議院総務委員会において山下議員の質問に対して、上田NHK会長の答弁は内部通報の真偽に触れず、Yes or Noを言わないもので最近の政府答弁と同じで無責任だ。否定しないなら、内部通報の内容を認めたと取られても仕方がない。NHKとしてキッパリと答弁すべきだ。
質問書には一週間後の4月9日までに質問項目ごとに文書での回答を要望しているので、真摯な対応をお願いしたい。
                                                                                  以上

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2017年10月11日 (水)

衆議院総選挙にあたって「有権者の賢明な判断に資する質量ともに充実した論点解明報道を」と申し入れ

当会は10月10日、報道機関に対し今回の衆議院総選挙に当たり「有権者の賢明な判断に資する質量ともに充実した論点解明報道を」とする申し入れを行いました。
PDFはこちらからダウンロード可
また、分野別にアジェンダとなるべき論点を「チェック・リスト」としてまとめ提出しました。
PDFはこちらからダウンロード可
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                        2017年10月10日
報道機関各位
有権者の賢明な判断に資する質量ともに充実した論点解明報道を
      ~衆議院総選挙にあたっての申し入れ~
                 NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                 共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
                 http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/

 政府の所信表明演説も各党代表との質疑も省いた異常な冒頭解散によって、9月28日、衆議院が解散され、10月10日告示、11月22日投票日というあわただしい日程の総選挙となりました。有権者が各政党の選挙公約を十分に比較吟味して賢明に参政権を行使するには争点本位の報道が大いに期待されます。
そこで当会は、今回の衆議院総選挙をめぐる報道について以下のとおり、申し入れを行います。その際、一般的に争点(論点)重視の選挙報道というだけでなく、予想される争点を整理し、それぞれの争点ごとに充実した取材・調査・報道が望まれる論点のチェック・リストをまとめ、別添しました。これらをご参照の上、問題の核心をえぐる報道に留意いただくよう、要望します。

.報道にあたって要望したい留意点

 (1)形式的公平ではなく、質的公平を基本に据えた報道を
 選挙報道となると、各党間の公平、特に時間配分の公平が強調されがちです。しかし、重視されなければならないのは、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」が昨年2月7日に公表した意見(「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」)でも指摘した「質的公平」です。つまり、「政策の内容、問題点、候補者の資質への疑問など有権者の選択に必要な情報を伝えるために、どの政党に対してであれ、どの候補者についてであれ、取材で知り得た事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をするという姿勢」を強く要望します。

 形式的公平にとらわれるあまり、「国民の判断材料となる重要な事実を知りながら、ある候補者や政党に関しては不利になりそうな事実を報道しない、あるいは 政策上の問題点に触れない、逆にある候補者や政党に関してのみ過剰に伝えるなどという姿勢は、公平であるとは言い難い」(同上、BPO意見)ことを銘記されるよう要望します。

 (2)政党が触れない論点でも重要なテーマは独自の調査報道を手掛けること
 有権者の投票判断に重要な意味を持つ国政上のテーマであっても、政党によっては、自己に不利になるからとか、過去の公約との矛盾が露見するからとかいった動機で、触れようとしない論点が少なくありません。
 そのような論点を独自のアジェンダ設定で調査し、有権者に伝えることは国民の知る権利に応える報道機関の重要な使命であり、とりわけ、選挙報道に期待されるところです。

 (3)選挙情勢報道ではなく、争点解説報道を
 選挙期間中の報道では、党首の動静や激戦区の候補者の街頭行動、街の声の紹介に多くの時間が割かれる傾向があります。
 しかし、こうした細切れの報道では各政党、各候補者の公約や政見を丁寧に伝えることはできず、イメージ選挙、ワンフレーズを独り歩きさせる選挙報道になりがちです。
 有権者の熟慮の上の投票に資するよう、政策本位、争点本位の充実した報道を要望します。

.調査・取材・報道にあたって取り上げてほしい論点のチェック・リスト
 以上の留意点に基づき、目下、各党が掲げている選挙公約などを参照して、選挙報道にあたって取り上げてほしい論点のチェック・リストを作成しましたので別添します。貴局、貴紙の調査・取材・番組制作にあたって、参考にしていただけましたら幸いです。
                     以上


PDFはこちらからダウンロード可
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申し入れした報道機関は下記(注1)によるがNHKには10月11日直接出向き手交しました。その際のメモです。
                       
2017年10月11日
総選挙報道に関するNHKへの申し入れ提出の面会レポート
面会日:10月10日、11時00分~11時20分
視聴者部:O副部長、N秀明副部長
視聴者コム:醍醐 聰

提出文書:
 *上田良一会長・木田幸紀放送総局長宛て「有権者の賢明な判断に資する質量ともに充実した論点解明報道を~衆議院総選挙にあたっての申し入れ~」
 *(別添)「2017年衆議院総選挙報道にあたっての主な論点チェック・リスト」

主なやりとり
 醍醐から2つの提出文書の要旨を説明しました。その中で「チェック・リスト」について多少、説明しました。
 「争点提示型報道を」といった申し入れはこれまでもしてきたが、今回は、私たち自身が、どのような争点・論点を取り上げてほしい、取り上げる必要があると考えるかを「チェック・リスト」としてまとめた。メディアの皆さんはプロなので、先刻、理解されていると思う。
しかし、たとえば、政府が有効求人倍率が1.5倍を超えたことを挙げて、雇用情勢の好転を主張するのに対して、これと言った検討をしないまま紹介するだけの報道が大半。しかし、「雇用・働き方改革」の項で書いたように、有効求人はあくまでも予定。同じ雇用統計(『労働力調査』)を調べると、実際の就職率は100%を超えるどころか、1桁%となっている。こういう事実を確かめて伝えてほしい。」

 申し入れ文書を説明したあと、次のような議論を交わした。

 (醍  醐)これら文書はNHK以外にも、○○、○○・・・へも郵送した。また、事前にお伝えしなかったが、NHKについても、昨日、編成局編成センター、報道局政治部、同経済部、同社会部、同国際部、解説委員室、日放労宛てに同じ文書を発送した。
 (視聴者部)(発送先をメモしたうえで)とすると、今日、着きますか?
 (醍  醐)昨日の午後だったので、着くのは明日かも知れません。
  「NHK組織図」(添付します)を見つけ、それを参考に発送先を選びました。選挙報道となると、特別体制を組むのですか? その場合、図にある「編成局編成センター」はどのような役回りですか?

 (視聴者部)特別な体制はありません。「編成センター」はいろいろ上ってくる提案の中からどれを取り上げるかを判断する部署です。
(醍  醐)提案はどこから上ってくるのですか? 政治部、経済部・・・・から上ってくる?
(視聴者部)それもないわけではありませんが、彼らはあくまで前線の取材記者。報道局の中のディレクター・グループが「政治番組部」を作って、そこが、たとえば、「日曜討論」をどうするかなどを議論して編成に提案します。
(醍  醐)その「政治番組部」には政治部の記者も加わっているのですか?
(視聴者部)いえ、先ほど話したように、彼らはあくまでも現場で取材する記者で、「政治番組部」に参加することはありません。
皆さんからいただいた意見や申し入れは、そこ(「政治番組部」)へも届けています。

(醍  醐)ということは、今日のように会長、放送総局長宛ての文書でも、「政治番組部」にも届けてもらうということですか?
(視聴者部)そうです。これまでも、そうしてきました。
(醍  醐)私たちが提出した文書が、その後、どう扱われるのか、どこへ届くのかを、今のように知らせてもらうことは重要だと思います。よろしく。
──────────────────────────────────────
(注1) 申し入れ報道機関 
*NHK会長 上田良一 様(手渡し)
*NHK放送総局長 木田幸紀 様(手渡し)
*NHK編成局編成センター
*NHK報道局政治部
*NHK報道局経済部
*NHK報道局社会部
*NHK報道局国際部
*TBS 
TBS報道部 選挙報道担当 御中
*日本テレビ
 日本テレビ 視聴者センター部(選挙報道担当宛て)
*テレビ朝日
 テレビ朝日 選挙報道担当 御中
*フジテレビ
 フジテレビ 選挙報道担当 御中
*民放連
 日本民間放送連盟 御中
*民放労連
 日本民間放送労働組合連合会 御中
*BPO 
 BPO 視聴者応対係 御中
*言論NPO
 認定NPO法人 言論NPO 御中
*NHK放送文化研究所
 NHK放送文化研究所 御中
*NHK解説委員室
*日本放送労働組合(日放労/にっぽうろう) 
*日本記者クラブ(専務理事)
*日本外国特派員協会
*日本新聞協会
*日本ジャーナリスト会議(メール)
*メディア総合研究所(メール)
*雑誌『マスコミ市民』(メール)
*雑誌『週刊金曜日』(メール)
*ニューヨークタイムズ東京支局(メール)
*KBS日本支社(支社長宛て)(メール)
*ハンギョレ新聞社東京支社(メール)
<その他 個人ジャーナリスト>

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別添

20171010

2017年衆議院総選挙報道にあたっての主な論点チェック・リスト

作成:NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

 
 

テーマ

 
 

論 点(争 点)

 
 

森友学園問題

 
 

・国有地の格安売却について政府(佐川前理財局長)は国会で事前に森友側と金額のすり合わせをしたことはないと答弁してきた。しかし、9月以降に報道された録音データによると近畿財務局は森友側と「いくらなら出せるか」、「土地の瑕疵を見つけて価値を下げる方向でシナリオを作る」、「有益費を少し超える金額に近づけるよう作業中」といったやりとりを交わしていたことが明らかになった。

 

・こうした録音データが事実とすれば、近畿財務局には国有財産を不当に廉価で処分した背任の疑いがもたれ、佐川氏の国会答弁は虚偽の疑いが濃厚になる。

 

・各党は今後、こうした疑惑をどのように解明するのか? 

 
 

加計学園問題

 
 

・安倍首相は725日の国会答弁で、加計学園が獣医学部新設を申請することを知ったのは今年1月20日と発言したが、その信憑性に疑問が投げ掛けられている。この点を今後、どのように解明していくのか?

 

・加計学園が申請している獣医学部は新しい教育分野として「ライフサイエンス」を挙げている。しかし、他大学の既設の獣医系学部(大阪府立大学、京都産業大学など)では、モデルカリキュラムに基づいて、すでに優れたライフサインス教育を実施しており、加計学園の申請が閣議決定の四条件の一つ(既存の大学・学部では対応困難な場合)に該当しない可能性がある。各党は今後、この点をどのように究明していくのか?

 

・加計学園が積算した獣医学部新設に係る建築費は、最近開設された獣医学系

 

学部の建築費と比べ、単価が異常に高いとの指摘がある。こうした指摘にど

 

う応えていくのか?

 
 

憲法・安保法制

 

 

 
 

9条に自衛隊の存在明記を追加する改憲論がある一方、そうした改憲は戦力不保持を定めた91項、2項を骨抜きにするものという批判がある。また、9条加憲論は自衛隊の災害救助活動と武力行使を伴う活動を混同した議論と思えるが、両者を区別せず、改憲の是非を議論してよいのか? 

 

9条に3項を追加すると自衛隊の武力行使(集団的自衛権発動)が専守防衛の国是を越えて際限なく拡大する恐れがあるとの懸念が指摘されている。こうした懸念を、どうように考えるか?

 

・自民党以外の政党の中でも、9条も排除せず幅広く改憲の議論をする、と公約を掲げる政党があるが、では、9条をどのように見直そうとするのか、自民党の改憲論とどこが違うのか、同じになるのか、踏み込んだ論戦を促す必要がある。

 

・「教育の無償化」を改憲項目に挙げる政党があるが、憲法改定によらなければできないことなのか? 

 

・義務化を伴わない無償化は教育格差をかえって拡大するという指摘がある。家庭の所得格差に連鎖した就学機会の格差をどのように解消するのか?

 
 

北朝鮮問題

 
 

・安倍晋三首相は920日、国連総会で行った一般討論演説で、「対話とは、北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐための最良の手段だった」、「必要なのは、対話ではない。圧力だ」、「『全ての選択肢はテーブルの上にある』とする米国の立場を一貫して支持する」と発言した。

 

 各党はこうした安倍首相の対話無力論、軍事行動を排除しない米国への協調姿勢を支持するのか、しないのか?

 

・安倍首相は「国民の生命、財産を守るのが私の任務」と繰り返し発言してきた。しかし、米朝が相互に挑発し合う言動を繰り返し、万一、核弾頭ミサイル攻撃を応酬しあう事態となって、北朝鮮がソウルと東京を標的にした攻撃を起こした場合、40200万人の犠牲者が出るという試算がある(米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の北朝鮮監視プロジェクト・レポート)

 

 安倍首相の上記のような国連演説はむしろ内外の国民の生命、財産を危険にさらす言動と思えるが、各党は安倍演説を支持するのか、批判するのか?

 

・安倍政権は北朝鮮の核開発を非難する一方、核不拡散条約の交渉に参加することさえ拒んできた。こうした安倍政権の核に関する姿勢を各党は支持するのか、しないのか?

 
 

辺野古基地新設

 

オスプレイ配備

 
 

・安倍政権は米国の要請を受け入れ、事故が続発するオスプレイを各地に配備する計画を容認している。各党はこうした日本政府の対応を支持するのか、しないのか? 

 

・沖縄をはじめ、基地あるが故の危険、事故の続発の根源にある日米地位協定を「運用改善」で解決できるのか、抜本的見直しに踏み込んで米国と交渉する意思はあるのか?

 

・国が埋め立て工事を進めている辺野古側海域で、環境省が定める絶滅危惧2類のサンゴ14群体のうち13群体がすでに死滅していることがわかった。翁長知事は県漁業調整規則に基づく特別採捕許可権を行使して、辺野古基地建設作業の中止を求める構えを見せている。各党はこうした沖縄県の姿勢にどう対応するのか?

 
 

原   発

 
 

・原発維持、当面維持を唱える政党は、使用済み核燃料の収容能力が限界に近づき、核燃料リサイクル事業が破綻した現実を踏まえ、今後も増え続ける使用済み核燃料の貯蔵・処理をどのように描いているのか?

 

2030年までに原発ゼロを公約に掲げる政党があるが、当面の再稼働の可否についてどのように公約するのか? その間、稼働期限が満了する原発の稼働期間延長を認めるのか、認めないのか?

 

・原発の即時廃止、早期ゼロを公約に掲げる政党があるが、代替電源として掲げる自然エネルギーの普及を図る具体策は?(電力の地産地消、自家消費の奨励策など) 

 
 

在日外国人の

 

人権問題

 
 

・希望の党は「在日外国人の地方参政権に反対」を党公認の条件に掲げたが、その後に発表された公約ではこの主張は消えた。最高裁は1995年、憲法は永住外国人に参政権を与えることを禁じていないと判断したが、法制化の審議は進んでいない。各党は参政権の法制化を支持するのか、しないのか、問いかけが必要である。

 

・在日朝鮮人学校への教育無償化適用については地裁段階で判断が分かれているが、政府関係者は公式には無償化の可否と政治・外交問題を切り離すと言いつつ、拉致問題や北朝鮮、朝鮮総連とのつながりを無償化問題に絡める発言を繰り返してきた。

 

 各党は「平等に教育を受ける子どもの権利」に照らしても朝鮮学校への無償化の適用を除外すべきと考えるのか、それとも除外は不当と考えるのか、それぞれ根拠を示した論戦を促す必要がある。

 
 

社会保障の財源

 
 

・主たる財源として消費税を想定する自民・公明両党は予定通り201910月から税率を10%に引き上げると公約するのか? 引き上げ延期もありとするなら、延期/予定通り実施を判断する基準は何か?

 

・消費税増税の「凍結」を唱える政党があるが、「凍結」を解除する基準は何か?

 

・消費税増税の中止、凍結を公約に掲げる政党は消費税に依存しないどのような財源(確保できる税収額、必要な税制改正も含め)を具体的に考えているのか?

 

・安倍政権・自民党はこれまで消費税収の一部を国債の償還に充ててきたのを子育て支援に回すよう使途を変更すると公約している。では、財源に穴が開く国債償還を今後、どのような財源で賄うのか?

 

・安倍政権・自民党は消費税の使途変更を「全世代型社会保障」への転換と説明している。その背景には「若年世代の負担で高齢世代は恩恵を得ている」という世代間の対立図式があるが、年金、介護、相続、家族内の育児・子育て支援、教育費負担、相続といった総体としての世代間の所得移転を見た時、指摘されるような世代間の不公平は実在するのか?

 

・若年世代の貧困は高齢世代の過重な扶養費負担に起因するのか? そうではなく、新卒の時点から奨学金の返済延滞を抱え、4割が低賃金の非正規で就労し、違法な時間外労働を強制されているといった現実が若年世代の貧困の最大の原因ではないか? 各党はこうした現実を解消するためのどのような政策を公約するのか?

 
 

税制改革

 
 

・安倍政権は企業の設備投資の増大による雇用拡大・景気回復といった経済の

 

好循環誘導、日本の立地競争力の強化を理由に挙げて法人税率の引き下げを実施してきた。しかし、その間も企業の生産活動の海外移転は止まらず、減税分の多くは内部留保と配当に充てられ、雇用も従業員給与も横ばいか微増にとどまった。こうした事実に照らし、これまでの法人税率引き下げを見直す必要はないのか、今後、さらなる法人税率の引き下げを図るのか?

 

・そもそも論として、法人税負担の高低、その国際比較を実効税率だけで測っ

 

てよいのか? 税率×課税ベースで測るのが税財政の定説ではないのか?

 

・国税庁統計によると課税所得に対する税負担額の割合は既に10%台前半まで

 

下がっている。こうした事実を踏まえ、安倍政権下で行われてきた法人税率の引き下げを見直す必要性はないのか?

 

・安倍政権下で累次行われてきた法人税率の引き下げ等により、企業の内部留 

 

 保利益が388兆円に達する状況(20176月現在。金融保険業を除く全産業・全規模合計)になっている。この内部留保の活用策として賃上げなど労働分配の改善に充てる案や内部留保税を創設する案などが提起されている。それぞれの実行可能性、分配の公平に対する実効性などを踏まえ、各党は増加し続ける企業の内部留保をどのように活用すべきと考えるか?

 
 

雇   用

 

働き方改革

 
 

・政府が国会に提出した「働き方改革」法案を各党はどう評価するのか? 過

 

労死の根絶に向けた実効性のある取組みと見るのか? 逆に、過労死ライ

 

ンまでの長時間労働を正当化する法案と見るのか?

 

・過労死、長時間労働、「サービス残業」を根絶するために各党はどのような実効性のある具体策を提言するか?

 

・安倍首相は安倍政権下で雇用は増えたというが、第二次安倍政権発足の翌月(20131月)から直近の20178月までの雇用者数の推移をみると、全体で268万人増えたが、正規雇用者の増加は78万人にとどまり、多く(227万人は非正規雇用である(「一般職業紹介状況」月次より)。

 

 また、有効求人数は197.2万人から266.1万人へと68.9万人増加しているが、実際の就職件数は1.4万人減少している(14.4万人→13.0万人)。

 

さらに、安倍首相は、しばしば、有効求人倍率が1.5を超えたことを雇用情勢好転の指標として挙げているが、20178月期で言うと、有効求人数は270.4万人であるのに対し、実際の就職件数は14.4万人(8.1%)にとどまっている。また、企業の実際の採用率(有効求人数に対する就職件数の割合)は5.3%にとどまっている(「労働力調査」より)。これは、求人はあくまで企業の予定であり、実際の採用はそれとは乖離している実態を示している。

 

 いわゆる「アベノミックス」の成果を評価したり、働き方改革を検討したりする時には、こうした雇用実態を踏まえた議論が必要ではないか?

 

 

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2017年7月29日 (土)

NHK政治部 原聖樹記者への公開質問状を提出しました。

NHK「クローズアップ現代+」は去る6月19日に、 <波紋広がる”特区選定”~独占入手 加計学園”新文書”>というタイトルの番組を放送しました。番組の内容は国会でも取り上げられ、社会的も大きな反響を呼びました。
(下記にNHKからの回答書あり)
 
 番組の台本(全文)http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3993/

Hara

 

 

 しかし、この番組でスタジオ出演した原聖樹・NHK政治部記者(官邸キャップ)の解説は、社会部が独自取材で入手した文書で示された特区選定の不公平・不透明な経過にことごとく蓋をし、官邸・内閣府あるいは国家戦略特区諮問会議有識者メンバーの言い分をそっくり、なぞるものでした。

 そこで、私たち”NHK視聴者有志”は611名の連名で、原記者宛てに下記のような質問書を提出することにしました。
 地味な取り組みではありますが、NHKの政治報道を政府広報に貶めている元凶といえるNHK政治部の姿勢を正す運動の一つになればと考えた次第です。
 有志(連名提出者)の中には、各地の視聴者や視聴者団体の会員に加え、元NHKプロデューサーほかNHK・OB、日本ペンクラブ理事、メディア論研究者、弁護士、(現・元)大学教員も含まれています。 原氏には8月2日(水)までに書面で回答をもらうよう、要請しています。
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                        2017年7月25日
NHK政治部
 原 聖樹 様
    「クローズアップ現代+」(6月19日放送)における貴職の発言についての質問書
                      NHK視聴者有志(有志名簿は別紙)

 原様におかれましてはNHK政治部の官邸担当キャップという重責を担われ、ご多忙の毎日をお過ごしのことと存じます。
 去る6月19日にNHK「クローズアップ現代+」は<波紋広がる“特区選定“~独占入手 加計学園”新文書“>というタイトルの番組を放送し、その中で、「国家戦略特区」として獣医学部の新設が決定される過程で行政の公平性、透明性が確保されたのかどうかを、NHKが独自に入手した文書をもとに検証しました。この番組の内容は国会でも取り上げられ、市民の間でも活発な議論を喚起しました。

 原様はこの番組の後半で、大河内直人・社会部記者とともにスタジオ出演され、「諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうことか?」という武田真一キャスターの問いに対して次のように発言されました。

 「すべての決定の過程が議事録が残っている①上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
 さらに先ほど『広域的』という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定した②のだと。ですからそこに違法性はない③、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もない④と強調しているわけなんです。」(下線と番号①~④は質問者が追加)

 このような原様の解説は、武田キャスターが紹介した諮問会議メンバーの主張を補充する形でなされたものですが、ファクト・チェックが必要と思われる箇所、NHKの報道番組に求められる自立した論点設定という観点に照らして疑問点があります。下線を付した①~④がそれです。
 そこで、ご多忙のところとは存じますが、以下の私たちの質問について、8月2日(水)までに、別紙に記載しました宛先へ、文書でご回答をくださるよう、お願いいたします。

 ご発言①について

a)私たちは国家戦略特区諮問会議、国家戦略特別区域会議、国家戦略特区ワーキンググループがそれぞれ公表した議事要旨、ヒアリング議事要旨(議事録は諮問会議運営規則第8条により、会議開催後4年を経過した後に公表するとなっています)を調査しましたが、獣医学部の新設申請が加計学園1校となる大きな理由になった「広域的に」、「開校時期を平成30年4月とする」といった条件を設けることをめぐって議論が交わされた記録はどこにも見当たりませんでした。

b) 逆に、6月13日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、今治市から諮問会議に提出された申請資料、今治市へのヒアリングの議事要旨が申請者の希望で公表されなかった事実が明らかになっています。

c) また、同上記者ブリーフィングにおける質疑の中で、諮問会議ワーキンググループ座長 の八田達夫氏は、京都についても公平性を保つためにヒアリングの議事要旨を公表しな かったと発言したのに対し、記者から、京都府と京都産業大に取材したところ、ヒアリン グの最初に記録をすみやかに公表することに同意していたという回答を得たことが指摘 され、京都側は諮問会議の非公表の理由を否定しています。 

 質問1―1 
 上記a~cのようなファクト・チェックに照らせば、「すべての決定の過程が議事録が残っている」という原様の解説とは裏腹に、重要な意思決定の過程が議事録(正確には議事要旨)に残されておらず、原様の解説は事実に反する関係者の主張を主体的に検証することなく紹介されたと思われますが、いかがですか?
 私たちの判断が間違いとお考えであれば、相応の反証事実をお示しください。

 質問Ⅰ-2 
 「NHK放送ガイドライン2015」に収められた「4 取材・制作の基本ルール」の①企画・制作の3項目に次のような規定があります。

 「報道番組やドキュメンタリィー番組、情報番組などでは、正確な取材に基づいて真実や問題の本質に迫ることが大切である。虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢が求められる。」
 原様の解説の中の①は、諮問会議有識者議員の真実でない発言を冷静に見極めることなく、そのままなぞる解説といえるものであり、私たちは「NHK放送ガイドライン2015」の上記の規定に反するものと考えます。
 原様の見解をお聞かせください。

 ご発言②について

d)6月13日に諮問会議有識者議員が開いた記者ブリーフィングにおける質疑の中で、
「平成28年11月の特区諮問会議決定で『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り』との限定を付したのは、これは誰がどのように起案して、どのように話し合いがされて、ここで限定が付されたのでしょうか。」という記者の質問に対し、八田達夫氏は、
「これは基本的には3大臣の中で決められたわけです。最後、諮問会議に出されたこの案を提示されたのは、山本大臣だったと理解しています。山本大臣はその前にワーキ ンググループのサジェスチョンを聞いて下さいました。」
と答えています。

e)しかし、諮問会議の有識者議員が山本幸三特命担当大臣に対して、いつ、どこで、どの ようなサジェスチョンをしたのか、それに対して山本大臣はどのような応答をしたのかについて、諮問会議の議事要旨にも配布資料にも一切、記録はありません。
 また、山本大臣が有識者議員のサジェスチョンを踏まえて「広域的」という文言を追加することを諮問会議で提案した事実も、諮問会議で「広域的」とか、平成30年4月を開学予定とするとかいった重要な条件をめぐって議論が交わされた事実を証する記録も、議事要旨に一切、見当たりません。
 結局、京都産業大の申請を不可能にし、加計学園だけが残る結果になった「広域」条件、「平成30年4月開学」といった条件が、いつ、どのような議論を経て決まったのか、その経緯はブラックボックスになっています。

f)諮問会議の有識者議員が適正な手続きの一つとして挙げた「三大臣合意」について、山本特命担当大臣は今年の6月6日に開かれた参議院内閣委員会で、この「三大臣合意」が交わされた経緯の説明、「三大臣合意」文書そのものの提出を再三、求められたのに対し、次のように答弁しています。
 「この三大臣合意というのは、これは大臣として確認した事項であります。公式の文書として作ったものではありません。
 そもそも行政文書というのは、国家公務員がその職務を遂行するに当たり法令等に基 づき適正に作成、保存しているものであり、これに違反した場合には懲戒処分等、さらには公文書偽造罪に該当することになるなど、その真正性については制度的に担保されているところであります。
  ただ、二十八年の十二月二十二日に作成されたこと、これはもう私ども三大臣として確認しているわけであります。したがって、その真正性を証明するために、これ以上役所が保有する個別の電子ファイルについて逐一プロパティーデータ等に遡って確認することまで求められるとすれば今後の行政遂行に著しい支障を生じることになるために、行政サイドとして到底対応できるものではないと考えております。」

g)しかし、上記の三大臣合意は国家戦略特区として新設の獣医学部を選定する際の重要な条件を定めた文書であり、「内閣府本府行政文書管理規則」の「別表第1 行政文書の保存期間基準」の分類に従えば、「6 関係行政機関の長で構成される会議(これに準ずるものを含む)の決定又は了解の立案の検討及び他の行政機関への協議その他の重要な経緯」を証する行政文書に該当し、10年の保存を義務付けられるものです。となりますと、山本大臣の上記の国会答弁は内閣府が「公文書管理法」の次の定めに違反する行為を行った公算が強いことを意味します。

「第4条 行政機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
  一 省略 
  二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯 
  三~五 省略」

 質問2-1
 獣医学部新設をめぐる最大の疑惑は「加計ありきの選定ではなかったか」という点ですが、原様は、特区選定の手続きは適正に行われ、違法性はない、という諮問会議有識者議員の主張をなぞる解説をされました。
 しかし、原様がなぞられた諮問会議有識者議員の主張には、事実に反する点、重要な事実を無視した点があります。
 この意味で、原様の解説の③④の箇所は「正確な取材に基づいて真実や問題の本質に迫る」姿勢、「虚構や真実でない事柄が含まれていないか冷静な視線で見極めようとする姿勢」を欠くものだったと私たちは考えます。この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-2
  原様は解説③④の箇所で、「違法性はなかった」という諮問会議の有識者議員の発言を紹介されました。しかし、6月19日の「クローズアップ現代+」の主題は「特区選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか」ということでした。このような番組の主題、ねらいに照らせば、問題を「違法性」に絞る諮問会議有識者メンバーの主張をそのままなぞった原様の解説は番組の主題、ねらいにそぐわず、「問題の本質に迫る」姿勢に欠けるものだったと思われます。
 この点について、原様はどのようにお考えか、お聞かせください。

 質問2-3
 上記のような山本特命担当大臣の国会答弁は「公文書管理法」第4条に抵触する可能性が強いと私たちは考えます。この点で、今回の特区選定過程には「違法性」の面から見ても、重大な問題があると考えられます。
 原様はこの点をどのようにお考えか、お聞かせください。
                       以上
──────────────────────────────────────
7月31日回答が来ました。
原記者からではなく、差出人は「クローズアップ現代+」となっています。
----------------------------------------------
NHK視聴者有志のみなさま

平素より、NHKの番組にご理解を賜り、誠にありがとうございます。
2017年6月19日放送のNHK「クローズアップ現代+」(波紋広がる“特
区選定”)に関する質問書につきまして、以下の通り、回答させていただきます。

回答については、番組内での解説であることから、「クローズアップ現代+」
としてお答えさせていただきます。
ご指摘のあった政治部・原記者の解説は、番組のテーマである国家戦略特区の
選定に関して、国家戦略特区諮問会議の立場や見解についても政府内外の取材
を尽くしたうえで、より多角的な観点から理解や議論を深めていただこうと行
ったものです。
特区選定の報道に関しましては、視聴者の皆様から多様なご意見・ご指摘を頂
いており、それぞれ貴重なご意見として受け止めさせて頂くとともに、今後の番
組制作にいかしてまいります。今後も、NHKの番組につきまして、ご理解賜り
ますようお願いいたします。
                                  2017年7月31日
                           NHK クローズアップ現代+
----------------------------------------------------

中身は、ご覧のとおり、実質、ゼロ回答です。
私自身は今回の質問は、611名の視聴者が原氏の解説をどのように注視し、ウオッチしたかを伝えることに、まずは意味があると考えました。
だからといって、「回答」の中身は想定の範囲内、と達観してよいとは、もちろん、思いません。

2つ、コメントしたいと思います。
「・・・・原記者の解説は、番組のテーマである国家戦略特区の選定に関して、国家戦略特区諮問会議の立場や見解についても政府内外の取材を尽くした①うえで、より多角的な観点から②理解や議論を深めていただこうと行ったものです。」(下線は醍醐の追加)

①    「取材を尽くした」のでしょうか?
「すべて議事録に書かれている」という山本大臣や諮問会議民間委員の発言は事実でないという指摘を否定するなら反証を示してほしいと求めた質問に対し、何ら反証を示さず、「取材を尽くした」と答えるのは、あまりに無神経で不遜です。

②    質問の主意から外れた回答
今回の質問は、放送法第4条第1項で言えば、四号の「多角的論点の提供」を問題にしたものではなく、三号の「報道は事実をまげないでする」を順守したかどうかを問うものであることは、たやすく理解できたはずです。「回答」は論点のすり替えです。

*自分の言葉で語った解説には自分で答えるというモラル、矜持が原記者にはないのでしょうか? それでジャーナリズムの職をまっとうできるのでしょうか? 視聴者への説明責任(高野真光「NHKにも『視聴者に対する説明責任』を」『マスコミ市民』2017年8月号所収)よりも官邸政治部記者というポジションの方が大事、ということなのでしょうか?

これからも根気よく、的確なファクトチェックにもとづいて、ウオッチしていきたいと思ってます。(醍醐 聰)

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2017年3月17日 (金)

BPO宛に"クローズアップ現代+"「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った 元慰安婦」に関する審議要望書を提出しました。

 当会がが2月24日にNHK宛てに提出した、「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する質問書(PDFはこちら)に対し、「クローズアップ現代+」編集長・吉野真史氏名で回答文書が3月10日に、届きました。(以下に貼り付け-クリック拡大)

Kait25o_2
 当会の運営委員会でこれを検討した結果、3月14日、BPO宛てに、 「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った  元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する審議要望書PDFはこちら) を発送しました。
 下記にも貼り付けます。 ------------------------------------------------------------------
  
                                   2017年3月14日
放送倫理検証委員会 御中

「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った
    元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する審議要望書   

              NHK を監視・激励する視聴者コミュニティ
               共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 当会は、本年1 月 24 日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(以下、「本番組」という)の内容、編集方法には、「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に照らして種々、重大な疑問点があると判断しました。
 そこで、2月24日に本番組制作担当他に同封別紙のような質問を提出したところ、3月10日に同じく同封別紙のような回答が届きました。しかし、この回答は以下に指摘するとおり、当会が具体的な立証、反証資料を添えて尋ねた質問に応答したものになっていません。

1.事実を歪めて伝えたとの指摘に答えていない。
・釜山に少女像が設置された経過が歪めて伝えられたとの指摘(質問Ⅴ)
・日韓合意に関する韓国野党の対応について、事実の経過を歪めて伝えられたとの指摘(質問Ⅵの前段)
2. 事実の裏付け取材に関する疑義に答えていない。
・番組に登場した3人の元「慰安婦」本人の意思は取材を通じて確認されたのかを尋ねた質問Ⅱ
・「当事者の思いと異なる形で少女像が設置された」という解説はどのような事実に裏付けられたものかを尋ねた質問Ⅲ
3.公平な報道に関して、反証を添えた当方の疑義に答えていない。
・元「慰安婦」の声はさまざまと言いながら、なぜ、日本の支援金を受け取った3組の「慰安婦」とその家族の声だけを伝えたのか? (質問Ⅰ)
・相反する論説を掲げた韓国有力紙が多数ある中で、韓国に非があるとする1紙の論説だけを取り上げ、同紙の論調が韓国内で広がりつつあると解説したのはなぜか?(質問Ⅳ)。
4.国際・海外取材にあたっての基本姿勢を定めた「NHK放送ガイドライン2015」に違反しているのではないかとの指摘(質問Ⅸ)に答えていない。

 個別具体的な問題は以上のとおりですが、本番組は全体を通して、日韓合意が行き詰まった原因は「過熱した」韓国社会の対日批判、近い将来に予想される大統領選をにらんだ韓国野党のポピュリズムにあるという予断の下に、冷静さを装った韓国バッシング番組だったと言っても過言でないほど、偏向したものだったと当会は考えます。
 このような番組制作は「放送法」第4条第1項2号、3号、4号規定に反すると同時に、「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える」と定めた「NHK放送ガイドライン2015」からも大きく逸脱したものです。

 以上から、当会は貴委員会が同封別紙の資料を参照いただき、本番組に「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に違反する点がなかったかどうかを厳正に審議くださるよう要望します。
また、その際には、異論を「さらっ」と紹介するだけで、公平な番組編集をしたかのようなアリバイづくりをしようとする姑息なやり方を正す厳正な審議も要望します。 
                                以上
〔付記〕
 同封のNHK宛て質問書の記述のうち、一部に不正確な箇所がありましたので、以下のとおり訂正をいたします。

 原文(10ページ)
「②河野談話(1993年)では、『われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する』と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では2011年の検定で『慰安婦』関連記述がすべて消え、2015年の検定で『強制連行を直接示す資料は発見されなかった』という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて1社の教科書に『慰安婦』関連の記述が復活しました。」

改訂文
「②河野談話(1993年)では、『われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する』と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では、2010年検定(2012年度版)では『慰安婦』という言葉は全て消え、1社の教科書に、「慰安婦」関連記述が残るにとどまりました。その後、『強制連行を直接示す資料は発見されなかった』という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて2014年検定(2016年度版)の1社の教科書に『慰安婦』の記述が復活しました。」

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2017年2月26日 (日)

”NHKクローズアップ現代+”「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」に関する質問書をNHKに提出しました。

「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する質問書をNHKに提出してきましたので報告いたします。
                      2017.2.24
日 時:2017年2月24日 11時から35分
NHKの応対:視聴者部の七尾、鈴木、両副部長
視聴者コミュニティ:醍醐 共同代表と渡辺 運営委員

 本年1 月 24 日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」の内容、編集方法を精査した結果、「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に照らして種々、重大な疑問点があると判断し、NHKの関係先宛てに質問書を提出し、約30分間、質問書(9ページ)(下記に記載)の要旨を説明。その後、簡単な質疑をしました。
3月10日までに回答をもらうよう、要請し、回答内容を見届けたうえで、その先の対応を運営委員会で協議する予定です。

≪要旨の説明≫ :下記の≪質問書の一覧≫を参照ください。

Ⅰ.なぜ3組の声だけ伝えたのか?ワザワザ日本に来て記者会見までしている人の声をとりあげない。お金を受け取った人にも様々な事情があったが、一つの声のみ伝えている。
Ⅱ.放送された人は、本当に自分の意思が表されているのか?お金を受け取ったこと自体理解できない人が「日韓合意」を理解できるのか?取材不足・先に編集方針ありきの感。
Ⅲ.「当事者の思いとは異なる形で少女像が設置された」とは、いかなる証拠があるのか?ただ一人の発言なのに一般化したように伝えているが、別の人は日本に来て「像の設置を歓迎する」意思を表明しているのに取り上げていない。
Ⅳ.「韓国に非がある」という1紙の論説だけ取り上げたが、主要な6紙はそうは言っていない。
Ⅴ.釜山の少女像設置の経緯について、事実と違う。朴大統領への抗議行動が起こる半年も前からスタートしていた。
Ⅵ.NHKの池端ソウル支局長の現地報告、発言には予断が入っている。
Ⅶ.日韓合意について、理解が進めば「合意賛成」が増えるのか? 市民の反発の意思を伝えていない。
Ⅷ.「説き伏せ」れば、それでよいのか?市民には反対の意思表示をする言論の自由があるはず。
Ⅸ.国際問題について「NHK放送ガイドライン」には、相手国の主張も公平に伝えるよう言っているが、その点の配慮があるのか?

≪主な質疑≫
Q:お二人の副部長は当該番組をご覧になったか?
A:はい、見ました。
Q:番組の反響は?
A:賛否両方からたくさんの声が来ている。良かったというより、様々な方向からの批判的意見が多い。
Q:考査室にも、この質問書を提出できるか?
A:できる。私共視聴者部に送ってもらえば届ける。
Q:経営委員会には「視聴者対応報告」が出されているとおもう。視聴者の声を聴く一環として、この文書を届けてもらえるか?
A:できる。
Q:これまで、かみ合わない回答が多かったが、ファクトベースのことはキチンと受け止め、放送法やNHKガイドラインに照らして回答してもらいたい。
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≪質問書の一覧≫
Ⅰ.元「慰安婦」の声はさまざまと言いながら、なぜ、日本の支援金を受け取った3組の元「慰安婦」とその家族の声だけを伝えたのか?
Ⅱ.番組に登場した3人の元「慰安婦」本人の意思は取材を通じて確認されたのか?
Ⅲ.「当事者の思いと異なる形で少女像が設置された」という解説はどのような事実に裏付けられたものか?
 ①番組に登場した1人の元「慰安婦」の家族が語った、「(お金を)受け取ったのだから(少女像は)撤去しなければならないと思います」という言葉だけで「当事者の思い」と括ってよいのか? 
 ②取材を通じて、少女像は撤去すべきだと語った元「慰安婦」は他に何人もいたのか? 
 ③韓国の複数の元「慰安婦」が来日して会見し、日韓合意は自分たちを置き去りにしたもの、少女像は自分たちの辛い体験の証しで設置を歓迎すると語ったが、こうした元「慰安婦」を取材したのか? そうした声を伝えなかったのはなぜか?
 ④韓国の世論調査では約75%が10億円を受け入れても少女像は撤去、移転すべきではないと答えている。こうした民意をどう受け止めたのか?

Ⅳ.多様な論説を掲げた韓国メディアの中で、韓国に非があるとする1紙の論説だけを伝えたのはなぜか?
 非は日本に(も)あるという論説を掲載した「東亜日報」、「中央日報」、「朝鮮日報」、「聯合ニュース」、「ハンギョレ新聞」の社説、論説を示し、韓国の論調の紹介の仕方が余りにも偏向している点を質問
Ⅴ.釜山に少女像が設置された経過が歪めて伝えられた。
 番組は、朴大統領に対する抗議行動が高まる「空気」のなかで、釜山の少女像設置されたと伝えた。しかし、実際はその半年前から現地の大学生らが推進委を作り、市民に募金を呼びかけたり、アンケートを取るなどして準備が進められた。事実を歪めた編集をなぜしたのか?

Ⅵ.日韓合意を批判する韓国の政党・政治家を「世論迎合」、「ポピュリズム」と決めつけるのは事実経過に反し、メディアが担う役割から逸脱している。
①②③に細分して質問

Ⅶ.韓国社会で日韓合意に反対の意見が多いのは合意に関する理解が進まないからではなく、日本政府には加害国としての真摯な謝罪と反省がないと見られているからではないか? 番組はそうした韓国の民意と向き合わず、「合意を守らない韓国に非がある」という予断にもとづいて制作された。
 参照資料として次のような国谷裕子さんの指摘を付記。
 「担当ディレクターの書いた番組の構成表の書き出しは、『なかなか理解が進まない安保法制』と言う文章から始まっていた。」「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。」「この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた。」
 (国谷裕子『キャスターという仕事』岩波新書、2017年1月、101~102ページ)

Ⅷ.韓国政府に日韓合意に反対する市民団体を説き伏せる体力がなくなっていることを混乱の原因とみなす発言は、政府に対する市民の言論の自由に関する認識を欠くものではないか?
 国連女子差別撤廃委員会が2016年3月7日に公表した、日本軍慰安婦問題に関する最終見解、外国公館の安寧、威厳を守るのに必要な限度を超えた市民の政治的示威行動の規制が違憲とされた2つの判例を示して質問
Ⅸ.番組は、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国側にあるという見立てで編集され、日本側の問題に全く触れなかった。こうした編集は政治的公平、多角的な論点を明らかにするよう定めた「放送法」第4第第1項の定めに反するのではないか? また、国際問題の報道のあり方を定めた「NHK放送ガイドライン2015」に抵触するのではないか?
①元「慰安婦」に対して謝罪の手紙を出すことを求められたのに対し、「毛頭そのつもりはない」と安倍首相が答えたことに韓国社会から強い反発が出たが、これを「過剰反応」とみなすのか?
②    野談話では歴史教育を通じた反省の引継ぎが謳われたが、その後、中学校の歴史教科書では「慰安婦」問題はほぼゼロになった。こうした問題を棚上げしたままで、「最終的不可逆的解決」といってよいと考えるか?
以上

以下質問書本文)→PDFはこちら
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                         2017年2月24日
NHK日本放送協会会長 上田良一 様
NHK放送総局長    木田幸紀 様
「NHK クローズアップ現代+」制作担当 御中
番組キャスター    鎌倉千秋 様

「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する質問書
                     NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                      共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 本年1 月 24 日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(以下、「本番組」という)の内容、編集方法には、「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に照らして種々、重要な疑問点がありますので、以下のとおり質問をします。
ご回答は、本年3月10日までに書面で別紙宛てにお願いします。その際は、質問項目ごとに、質問に噛み合う形でご回答をお願いします。なお、以下で引用する韓国紙の論説、記事はすべて日本語版です。 

.元「慰安婦」の声はさまざまと言いながら、なぜ、日本の支援金を受け取った3組の元「慰安婦」とその家族の声だけを伝えたのか?
今回の日韓合意や日本からの10億円の「支援金」に対する韓国の元「慰安婦」の対応はさまざまです。番組でも、「一人一人の元慰安婦の方々にそれぞれの思いがあって、決して十把一からげにできない」(奥園秀樹・静岡県立大学准教授)とか、「当事者の多様な声があって、それを置き去りにしないことが求められている」(鎌倉キャスター)とか語られました。ところが、番組が伝えたのは、日本からの「支援金」を受け取った3人の元「慰安婦」とその家族の声だけでした。
しかし、韓国の元「慰安婦」10人は、今回の合意は日本の法的責任を認めた謝罪ではないとして、昨年1月29日に連名で国連人権機構に対して審査を請願しています(『聯合ニュース』2016年1月28日、14時20分)。また、昨年3月27日には生存する元「慰安婦」29人の遺族と生存者家族など41人が韓国の憲法裁判所に対し、日韓合意は被害者の財産権と人権を侵害するものであるとして違憲の憲法訴願をしています(『聯合ニュース』 2016年3月28日)。
番組の中で、こうした元「慰安婦」やその家族の声をまったく伝えなかったのは、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう求めた「放送法」第4条第1項第4号の規定に反していませんか? 皆様のお考えを説明ください。
なお、近く別の番組の中で、日韓合意に異議を唱える元「慰安婦」とその家族の意見を伝える予定があるのなら、その予定をお聞かせください。

.番組に登場した3人の元「慰安婦」本人の意思は取材を通じて確認されたのか?
 番組では、生存する元「慰安婦」46人のうち34人が日本からの「支援金」を受け取る意向を示しているが、その事実が韓国内で伝えられていないと解説しました。そして、「7割を超える方々が、この合意を受け入れてくださったということは重く受け止めるべきだ」(奥園氏)という発言を放送しました。つまり、本番組は、日本からの支援金を受け取ったこと、すなわち、日韓合意を受け入れたこと、とみなしたのです。しかし、この番組は元「慰安婦」とその家族の次のような会話も放送しました。
元慰安婦の家族:「日本から1億ウォンを受け取ったと話したよね?」
元慰安婦:「誰が1億ウォンをもらったの?」
同上家族:「このように話していても何が何だか分からないのです」
さらに、この元「慰安婦」の家族は取材に対して次のように語りました。
「(母は)日本が謝罪して補償してくれるなら、それ以上は望まないと言っていました。しっかりしている時にもらっていれば、本人も気持ちを伝えることができたはずなのに、今は(お金をもらった意味さえ)分かっていません。」
 このように90歳を過ぎ、認知症が現れ、受け取ったお金の趣旨はもとより、お金を受け取ったという事実さえ、認識できていない元「慰安婦」が日韓合意の内容を理解できたのか大変疑問です。「日本が謝罪して補償してくれるなら」と本人は話していたと家族は語りましたが、この元「慰安婦」は日韓合意に盛られた安倍首相の「お詫び」は自分が求めていた謝罪になっているのかどうかについて自分の判断を伝えられる状態だったのかも疑問です。
 ちなみに、元「慰安婦」のキム・ボクトゥクさん(100歳)は、最近になって、甥が「和解・癒やし財団」から「支援金」を受け取っていた事実を知らされ、「受け取っていたのなら返してほしい」と語っています(『ハンギョレ新聞』2017年1月23日)。

 以上のような事実を知ると、34人が「支援金」を受け取る意向という報道は、はたして元「慰安婦」の確かな意思と受け取ってよいのか、慎重な裏付け調査・取材が必要です。
 具体的に言えば、「和解・癒やし財団」は元「慰安婦」に「支援金」を支給するにあたって、元「慰安婦」本人が日韓合意に同意することを条件にしていたのでしょうか? そうであれば、「支援金」の受け取りを以て日韓合意に同意したと言えますが、はたしてそのような条件が付されていたのでしょうか? 元「慰安婦」はそうした条件を了承して「支援金」を受け取ったと言ってよいのでしょうか?
「NHK放送ガイドライン2015」は、「放送の基本的な姿勢」の項で次のように定めています。
「NHK のニュースや番組は正確でなければならない。正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない。しかし、何が真実であるかを確かめることは容易ではなく、取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢が求められる。」
  本番組に登場した3人の元「慰安婦」とその家族を取材した時、こうした「NHK放送ガイドライン2015」の定めは忠実に貫かれたのでしょうか? 元「慰安婦」の家族の説明が元「慰安婦」本人の意思をどこまで代弁できているのかを慎重に見極められたのでしょうか? ご説明ください。
 なお、昨年12月21日に韓国の『聯合ニュース』の記者有志は会社に対し、公正な報道や人事を求める声明を出しました。その中に、「慰安婦問題の日韓合意に好意的な被害者(元慰安婦)が圧倒的に多いという政府の主張を実証する記事を書くよう求める指示もあった」(『朝日新聞DIGITAL』2017年1月3日、00時54分)と記されていることを付け加えておきます。

.「当事者の思いと異なる形で少女像が設置された」という解説はどのような事実に裏付けられたものか?
①番組では、「当事者の声を置き去りにした」というナレーションや発言が幾度か流されました。たとえば、鎌倉キャスターは「まさに、当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」と発言されましたが、「当事者の思い」とは「誰の」「どういう思い」を指しているのでしょうか?
②「当事者」とは元「慰安婦」のことだとしたら、「当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」という鎌倉キャスターの解説を裏付けるのは、番組に登場した1人の元「慰安婦」の家族が語った、「(お金を)受け取ったのだから(少女像は)撤去しなければならないと思います」という言葉だけです。しかし、この元「慰安婦」は寝たきりの90代の女性です。家族のこうした発言は、はたして元「慰安婦」本人の気持ちを代弁したものと言えるのでしょうか?
③また、取材を通じて、少女像は撤去すべきだと語った元「慰安婦」は他に何人もいたのでしょうか? 「当事者の思い」と一括できるほど、多くの元「慰安婦」が「少女像は撤去すべきだ」と語ったのでしょうか? 取材で得られた事実に基づいてご説明ください。
④当会が確かめたところでは、たとえば、元「慰安婦」と名乗り出ている金福童(キム・ボクドン)さんは2015年4月24日、東京有楽町の外国特派員協会で会見し、日本政府による公的な謝罪と賠償を求めるとともに、少女像は「過去に何が起こったかを表す一つの方法」、「自らの体験を伝える助けになる」と語り、像の設置を歓迎する意思を表明しています。(このニュースのソースは、http://www.j-cast.com/2015/04/24233948.html?p=all

 また、日韓合意発表後の2016年1月26日、来日した元「慰安婦」の李玉善(イオクソン)さんと姜日出(カンイルチュル)さんは「私たちを無視した日韓合意は受け入れられない。」「私たちがこうやって生きているのに<少女像>を撤去するなんて・・・私たちを殺すことと同じです」と語っています(岡本有佳・金 富子責任編集『<平和の少女像>はなぜ座り続けるのか』増補改訂版、2016年、世織書房、77ページ)。
 番組制作にあたって、こうした元「慰安婦」の<少女像>に対する思いは取材されたのでしょうか? 番組では、「少女像は撤去すべき」という1人の元慰安婦の家族の声を伝えましたが、少女像は自分たちの苦難の歴史の証しとして設置を歓迎する元「慰安婦」の声が全く伝えられなかったのはなぜなのか、ご説明ください。
⑤元「慰安婦」あるいはその家族の「思い」は重要ですが、韓国の各地に設置された「少女像」はその地の多くの若者、市民の募金で、痛ましい過去を記憶し、同じ過ちを繰り返さないという思いを込めた「平和の碑」として建てられたものです。
 たとえば、釜山の日本総領事館そばに少女像が設置されるにあたっては、「未来世代が建てる少女像推進委員会」が1年間にわたって呼びかけた製作支援の募金に市民から8,500ウオン(約823万円)が寄せられています。そして番組にも登場したマ・ヒジン推進委代表(釜山大学航空宇宙工学科3年生)は、「釜山の少女像は国民が建てた少女像という意味で『国民少女像』というニックネームもついた。誤った歴史を立ち直らせるまで、若者や青少年は国民と一緒に行動して闘う」と語っています(『ハンギョレ新聞』2017年1月9日)。

 「少女像」が設置されたこのような背景、経過を知れば、少女像をめぐる「当事者」とは元「慰安婦」にとどまらず、少女像の設置を企画した人々、設置に協力した人々だと考えてもおかしくありません。
とすれば、日本政府が執拗に像の撤去を要請していることをこれらの人々がどう受け止めているかが問題ですが、昨年8月末に行われた世論調査では、ソウルの日本大使館前にある少女像について、76%が「日本政府が合意を履行したかどうかにかかわりなく、移転に反対」と答えています(『ソウル時事』2016年9月2日、14時45分)。
また、この2月14~16日に韓国ギャラップが全国の成人1003人を対象に行った世論調査によると、釜山の少女像について、78%が「そのまま置いておくべきだ」と回答し、「撤去または移転すべきだ」と答えたのは16%にとどまっています(「ソウル聯合ニュース」2017年2月17日、12時11分)。
 こうした事実に照らせば、「まさに、当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」という鎌倉キャスターの解説は根拠不詳の発言、あるいは事実と食い違った発言だといえます。この点を皆様はどうお考えか、ご説明ください。

.多様な論説を掲げた韓国メディアの中で、韓国に非があるとする1紙の論説だけを伝えたのはなぜか?
番組では、「過熱する」世論に対して「冷静さを呼びかける論調も広がっている」として、『韓国経済新聞』主筆のチョン・ギュジュ氏へのインタビューの模様が放送され、「韓国だけが、日本との関係において、過去から一歩も抜け出せないでいる」という同紙の論説が字幕に映されました。
しかし、韓国には12 の全国紙、9つの経済紙があり、日韓合意に関する評価は一様ではありません。
たとえば、全国紙の1つ『東亜日報』は合意を拒否する被害者や団体の意見も、悩んだ末に異なる対応をした被害者らの選択も、どちらも尊重されるべきだとするコラム記事を掲載しています(2017年1月19日)。その上で、この記事は「日本政府が10億円と少女像撤去を結びつけるという本末転倒な主張をするならば、日本政府を批判すべきであり、韓国政府を追及する話ではない」と述べています。
また、『中央日報』は、過去の清算も重要だが外交関係で究極的な最高ラインは国益だ、そのためには韓日関係も未来志向的に導くのが望ましい(2017年1月7日、社説)と主張する一方、「日本の主張のように10億円を出したことで合意を忠実に履行したと見ることはできないというのが専門家らの指摘だ。被害者に日本側の謝罪メッセージを伝える案について安倍首相が『毛頭考えていない』(10月)と述べたのが代表的な例だ」と指摘しています(2017年1月10日、掲載記事)。
 さらに、『朝鮮日報』は「日本が外交問題と歴史問題を分離する原則を捨て、感情的な対応を始めれば、両国の対立はブレーキがかからなくなり誰も望まない方向に進むだろう。そのため全ての関係国が今こそ冷静さを取り戻さなければならない」(2017年1月10日、社説)と述べています。

 また、『ソウル聯合ニュース』は2017年1月9日に配信した時論の中で、その前日に安倍首相が「日本は10億円をすでに拠出した、韓国にしっかり誠意を示してもらわなければならない」と語ったことに対し、「日本政府が韓国に無礼かつ身勝手な圧力をかけている」と非難しています。そして結びでは、「安倍氏がハワイを訪ね平和のパフォーマンスをする間、日本では閣僚や議員が靖国神社を参拝した。それでいて1枚の合意文書といくらかの金で慰安婦問題を永久に振り払うことができると信じるならば、大きな勘違い、誤算だろう」と痛烈に日本政府を批判しています。
 さらに、『ハンギョレ新聞』のように日韓合意そのものを根本から批判する韓国紙もあります。同紙は2015年12月30日の社説で、日韓合意には、「慰安婦」問題の解決のためには欠かせない、徹底した真相究明、責任者に対する審判、事実に基づく明確な謝罪、被害者に対する賠償、関係資料の公開、教科書記述などを通じた再発防止策などが合意には一切、含まれていないと指摘し、ドイツのホロコーストに対する記憶と反省を例に挙げながら、「重要な歴史的犯罪に終止符などありえない」と断じています。
 このように韓国紙の中で、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国政府や韓国の市民社会の過熱した運動にあるとみなすのは極めてまれです。そうしたごく一部の経済紙の主筆だけを登場させ、「日韓合意の履行が行き詰っている原因は過熱した韓国社会の極端な主張にある」という論調が韓国のメディアの中で広がっているかのように伝えるのは、著しく事実を歪めると同時に、意見が分かれる問題については多角的に論点を伝えるという「放送法」第4条の規定からも逸脱しています。各位はこの点をどのようにお考えか、ご説明ください。

.釜山に少女像が設置された経過が歪めて伝えられた。
 番組では、釜山に少女像が設置された経過について、「政権のスキャンダルが次々と明らかになる中、国民の怒りが噴出。大統領を職務停止に追い込み、これまでの政策すべてを否定する勢いです。」「こうした政治的な空気の中で、プサンの日本総領事館前に少女像は設置されました」というナレーションを流しました。
 このような解説は、釜山に少女像が設置されたのは2016年秋から起こった朴大統領に対する韓国市民の抗議行動の空気の中からだという印象を視聴者に抱かせます。しかし、事実経過は全く異なります。
 釜山では日韓合意(2015年12月28日)直後の2016年1月6日から日韓合意に反対する大学生や高校生ら若い世代を中心に、「人間少女像ひとりデモ」がはじまり、3月には「未来世代が建てる少女像推進委員会」が発足しました。同委員会は直ちに釜山の大学や市民に呼びかけて少女像建設のための募金活動を続ける一方、6月9日から8月23日まで釜山市民を対象にオンライン・アンケート調査を行っています。同月25日に推進委員会が発表した調査結果によると回答した1,168人の市民のうち、92.1%が東(トン)区草梁(チョリャン)洞の日本総領事館前に「平和の少女像」を設置することに賛成したとのことです。このアンケート結果を踏まえて推進委員会は日本総領事館前周辺の道路を管轄する東区と設置の許可を求める協議を進めたのです(以上、『ハンギョレ新聞』2016年8月25日参照)。
 つまり、釜山に少女像を設置する準備は、2016年秋の朴大統領弾劾要求へと続く市民の抗議行動が起こる半年以上前から取り組まれたことは動かせない事実です。
 そうした釜山の若者や市民の運動を、朴大統領に対する抗議行動の「空気」の中から生まれたと解説するのは事実経過を歪めるものです。これについて皆様はどう受け止められるか、ご説明ください。

.日韓合意を批判する韓国の政党・政治家を「世論迎合」、「ポピュリズム」と決めつけるのは事実経過に反し、メディアが担う役割から逸脱している。
 番組では、「大統領選挙を視野に入れる野党各党は、世論に迎合する動きを強めています」というナレーションを流しました。
また、「与党も野党も今年(2017年)前半にはパク大統領の弾劾が確定して、選挙が前倒しされる可能性があるという読みのもと、日本との関係改善よりも大衆の支持獲得に必死です。その結果、各党・各候補とも慰安婦問題で日本をたたく、ポピュリズムに走ってしまっています。この流れを変えるには、まず、韓国の政治家たちがこうした外交問題を選挙に利用するのを自制することが不可欠だと思います」という池端修平・NHKソウル支局長の現地報告を伝えました。
さらに、「この慰安婦問題というのが、大統領選挙を念頭に置いた時に非常に有効で手っ取り早い、格好の材料と化してしまっているということが残念ながら言えるんだろうと思います」という奥園秀樹氏のスタジオ発言も流しました。
 しかし、韓国の政党、特に日韓合意に批判的な野党の姿勢を「世論に迎合」、「ポピュリズム」と決めつけるのは事実経過に反する粗雑な発言です。
 日韓合意に関する評価については韓国野党内でも当初から意見がまとまっていたわけではありませんが、朴大統領の弾劾訴追が国会で可決され、次期大統領選挙が前倒しで実施される公算が出てきたのを受け、世論の動向に阿る形で、日韓合意反対、再交渉を唱え出したわけではありません。
 韓国の最大野党「共に民主党」の文在演(ムン・ジェイン)代表は日韓合意が発表されてから20日後の2016年1月19日に、「慰安婦」被害者と国会の同意なしにかわされた日韓合意は「史上最悪の外交惨事」と批判しています(『朝鮮日報』2016年1月20日)。また、同じ日に、同党の都鐘煥(ト・ジョンファン)報道担当は、安倍首相が慰安婦集めにあたって「強制性」はなかったと改めて発言したのを指して、「韓日慰安婦合意が無効であることを宣言したのと同じだ」と強く批判しています(前掲、『朝鮮日報』記事)。

 そこで、以下➀~③について質問します。
①「世論に迎合」とは自らの政治的信条を曲げて民意に阿ること、「ポピュリズム」とは聞こえの良い言動で世論を扇動することだとしたら、日韓合意に関する韓国野党の政治姿勢にそうしたフレーズをあてがうのは上記の事実経過を曲げた評価だと考えますが、いかがですか?
②そもそも、政党が民意をくみ取り、民意を自らの政治活動に反映させるのは、民主主義にかなう政治姿勢であり、非難されるいわれはないはずですが、皆様はそうは考えないのですか?
③今回の日韓合意をめぐる韓国の個々の政党、政治家の言動が一貫性を欠き、世論迎合、ポピュリズムと非難すべきものかどうかを決めるのは韓国の有権者であって、日本のメディアではないと考えますが、いかがですか?

. 韓国社会で日韓合意に反対の意見が多いのは合意に関する理解が進まないからではなく、日本政府には加害国としての真摯な謝罪と反省がないと見られているからではないか? 番組はそうした韓国の民意と向き合わず、「合意を守らない韓国に非がある」という予断にもとづいて制作された。
番組の中で奥園氏は、「決して多数ではない反対の声だけがクローズアップされていくと。その結果、その当事者を無視した合意であるというイメージが出来上がって、それが一人歩きをしてしまうと。合意そのものに対する理解も一向に深まらずに、日本国内にもそれが伝えられて、日本でも韓国に対する反発だけが高まっていくという悪循環に陥っているような気がします」と発言しました。
1つ目の下線部分は根拠が不確かな発言です。これについては、前記の質問Ⅰ、Ⅱと重なりますので、ここでは立ち入りません。
2つ目の下線部分は的外れな解釈ではありませんか? 過半の韓国市民が日韓合意に反対し、合意の破棄を求めているのは、合意の内容を理解しないからではなく(理解が進めば日韓合意に賛成する市民が増えるというものではなく)、日本政府が、性格のあいまいな10億円の資金拠出で「慰安婦問題」を幕引きしようとしていることを強く批判し、加害国の日本が10億円の見返りかのように少女像の撤去を迫ることに憤りを感じているからです。こうした憤りは、日韓合意を理解しないからではなく、合意が玉虫色にした点(10億円は法的賠償金なのか、少女像の撤去なり移転なりとリンクした条件付のものなのか)を十分、理解したうえで、「最終的・不可逆的な解決」というフレーズで日本政府が戦争責任を記憶し、未来の世代に引き継ぐ責務を免れようとしていると捉えたからです。
この点で奥園氏の前記の発言は韓国の民意を、恣意的にかどうかは別として、取り違えていると言って差し支えないと思いますが、皆様はどう考えられるか、お聞かせください。
なお、「クローズアップ現代」の前キャスターの国谷裕子さんは自著の中で次のように述べています。
「担当ディレクターの書いた番組の構成表の書き出しは、『なかなか理解が進まない安保法制』と言う文章から始まっていた。」「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。」「この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた。」
(国谷裕子『キャスターという仕事』岩波新書、2017年1月、101~102ページ)
「なかなか理解が進まない」という言葉に対する国谷さんの警鐘は奥園氏の上記の発言にもそのまま当てはまると思えますが、皆様はどのように受け止められるか、お聞かせください。

.韓国政府に日韓合意に反対する市民団体を説き伏せる体力がなくなっていることを混乱の原因とみなす発言は、政府に対する市民の言論の自由に関する認識を欠くものではないか?
 番組では日韓両国政府がギリギリのところで歩み寄って合意にこぎつけたにもかかわらず、韓国社会では合意に反対したり、再交渉や合意の破棄を求めたりする意見が広がっていることを懸念する発言やナレーションがしばしば挿入されました。そして、池端修平・NHKソウル支局長は、「パク大統領は、少女像を含む、慰安婦問題の任期中の解決を外交上の大きな実績としたい考えでした。一連の事件で足元をすくわれ、強硬な市民団体を説き伏せるだけの、いわば政治的な体力というものがないのが実情です」と現地の状況をレポートしました(下線は追加)。
 しかし、今回の日韓合意は両国の外相が会談を踏まえて、共同記者会見を行い、その場でそれぞれの立場を短い文書で発表したものです。合意は条約でもなければ、両国首脳の署名もなく、両国の国会での承認を経たものでもありません。韓国では元「慰安婦」への事前の説明も了解も経ていないことが問題とされているのは周知のとおりです。
 それでも公的な共同会見の場で発表された文書ですから、両国政府にはこれを尊重する責務があると言えますが、両国国民にはそうした政府間の合意についてさまざまに政治的意見を表明する自由があることは近代民主主義のイロハです。このような前提に立って、以下、お尋ねします。

①韓国政府が日韓合意に反対する自国民を「説き伏せる」ことができないのは、朴大統領に「政治的な体力」がないからだと断定できるのでしょうか? 日韓合意自体が民意にそぐわないため、国民を説得できないという別の見方を検討しなくてよかったのでしょうか? ちなみに、『ソウル聯合ニュース』はこの1月19日、17時31分に「日本が反発しても少女像設置は続く 強引な合意の産物」というニュースを配信しています。
また、国連女子差別撤廃委員会は2016年3月7日(現地時間)に日本軍慰安婦問題に関する最終見解を発表しました。その中で、「慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したというアプローチには、被害者中心のアプローチが十分に反映されていない」と指摘し、日韓合意そのものに欠陥があるという見解を示しています。「最終見解」の英文全文は次のとおりです。
Committee on the Elimination of Discrimination against Women, 7 March 2016
  “Concluding observations on the combined seventh and eighth periodic reports of Japan*
 これらの資料もご参照の上、上記の質問にお答えください。

②中華民国大使館前を通る集団的示威行動の許可申請を受けた東京都公安委員会が進路変更を許可条件としたのを不服とし、指示の執行停止が申し立てられた事件について、東京地裁民事第2部は1967年11月23日に申し立てを認める判決を言い渡しています。
その理由として東京地裁は、憲法が保障する集団的示威運動による表現の自由は、外国人であっても日本国にあって、その主権に服している者には保障される、被申立人(東京都公安員会)は、ウィーン条約22条2項を挙げて、外交使節団が存在する地点を進路に含む本件集団的示威行動は公館の安寧の妨害、威厳の侵害に当たるとするが、許可申請された集団的示威行動は一部過激なスローガンを記載したプラカードがあったとしても整然とした秩序を保つものとな
っており、「公館に安寧、威厳の侵害」を生じるものとは認められない、と述べています。
(判決全文は、第一法規法情報総合データベース、判例ID27603116)
また、米国内の外国大使館周辺で当該外国政府の評判を貶めるような掲示を出すことを禁止する法律の合憲性が争われた事件(Boss v. Barry 事件(1988))で連邦最高裁(485 US 312, 324-29(1988)はこの法律を違憲と判示しました。その理由として最高裁は、当該法律はパブリック・フォーラムでの政治的言論に対する内容規制に当たると認定したうえで、そうした法律はウィーン条約22条2項が定めた外国公館、外交官の尊厳を守るべき必要性の限度を超えて、個人の政治的言論の内容を規制するものだと述べています。
以上のような判例を踏まえると、池端氏の前記の発言はパブリック・フォーラムでの市民の政治的言論の自由に関する認識を欠くものと思われますが、いかがですか? 

.番組は、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国側にあるという見立てで編集され、日本側の問題に全く触れなかった。こうした編集は政治的公平、多角的な論点を明らかにするよう定めた「放送法」第4第第1項の定めに反するのではないか? 
また、国際問題の報道のあり方を定めた「NHK放送ガイドライン2015」に抵触するのではないか?
 以上で記した質問事項とその説明文を総合すると、本番組は、日韓合意が行き詰まっている原因は、合意の破棄を唱える韓国社会の「過熱」し、「先鋭化」した主張にあるという見立てで編集されたことは明らかです。それは、番組のタイトルが「韓国 過熱する“少女像”問題・・・」と付けられたことにも表れています。また、番組の導入部分では、映像を映し出しながら、
 「自分たちの思いを韓国社会はわかっていないのではないか。今回、取材に応じた元慰安婦の女性。これまで固く口を閉ざしてきましたが、はじめて胸のうちを明かしました。」
というナレーションが流され、それに続けて、
 a. 「私たちの苦労を韓国の国民は分かっていないのに、あのようなこと(騒ぎ)を起こしている。本当に心が痛みます。」
という一人の元「慰安婦」の声を流しました。さらに、続けて、「LOVE  JAPAN」というプラカードを持った人物が釜山の少女像のそばに登場した映像を映し、
  b. 「(日韓で)もう憎しみ合うのは止めましょう」
と語って、「少女像」を守る大学生らに抗議する場面を大写ししました(下線は追加)。こうした冒頭のシーン設定は、前記のような本番組の編集姿勢を如実に物語っています。
しかし、日韓合意が行き詰まっている原因は、合意の破棄を唱える韓国社会の「過熱し」「先鋭化した」主張にあるという見立ては、日本サイドの見立てであり、韓国社会や国際社会で共有されているわけではありません。
韓国の世論やメディアの間では違った見方がされていることは、質問書のⅢ、Ⅳの説明文で記したとおりです。そのほか、韓国の丁世均(チョン・セギュン)国会議長も、今年の1月16日、フィジーで開催されたアジア太平洋議員フォーラムで中曽根弘文参議院議員らと会談した際、「多くの韓国人は安倍晋三首相の慰安婦関連の発言や立場について、大変残念に思っているのが事実」と指摘、「それが恐らく状況を悪化させている要因ではないか」と述べています(『聯合ニュース』2017年1月16日、11時30分)。
また、国連女子差別撤廃委員会も日韓合意後にまとめた「慰安婦問題」に関する前記の最終見解の中で、日本の指導者や当局者が「慰安婦」問題に対する責任を軽く見るような発言を行い、被害者に再び心理的な苦痛を与えている、と指摘しています。
このような各界の意見の状況を踏まえて以下、質問をします。

①韓国内では、同国の「和解・癒やし財団」が安倍首相に、元「慰安婦」宛に直接、謝罪の手紙を出すよう求めたのに対して、安倍首相は2016年10月3日の衆院予算委員会で、「毛頭そのつもりはない」と答弁しました。このような答弁に対して、韓国内では政治的立場の違いを問わず、強い批判、反発が起こっています。
また、今年1月8日に放送されたNHK「日曜討論」の収録インタビューで安倍首相は、「日本政府はすでに韓国側が設立した元慰安婦支援の財団に10億円を拠出した、次は韓国にしっかり誠意を示していただかなければならない」と発言し、ソウルの日本大使館、釜山の日本総領事館のそばに設置された少女像の撤去を求めたのに対しても、韓国内では強い批判、反発が起こりました。
皆様は、安倍首相のこうした発言に対して韓国で起こった批判、反発を「過剰反応」、「過熱した反発」と理解されているのでしょうか? それとも、安倍首相のこうした発言は自らの謝罪に誠意が欠ける証しと受け止められても致し方ないとお考えでしょうか? 
②河野談話(1993年)では、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では2011年の検定で「慰安婦」関連記述がすべて消え、2015年の検定で「強制連行を直接示す資料は発見されなかった」という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて1社の教科書に「慰安婦」関連の記述が復活しました。
日韓合意が、こうした日本における歴史教育の現実を不問にしたまま、「慰安婦」問題を「最終的・不可逆的に解決する」と謳ったことに韓国社会では批判が起こっています。
皆様は、こうした韓国社会から日本に向けられた批判も「過熱した」主張と受け止められるのでしょうか? 
③番組は、日韓合意の行き詰まりの原因はもっぱら韓国側にあるという見立てで編集され、韓国社会から日本政府に向けられた批判は、「過熱」「強硬」「先鋭化」というフレーズで印象付けされ、批判の内容を掘り下げた紹介はまったくありませんでした。こうした編集は政治的公平、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう定めた「放送法」第4第1項第2号、同第4号の定めに反すると考えます。皆様はどうお考えか、お聞かせください。
④「NHK放送ガイドライン2015」は、国際・海外取材にあたっての基本姿勢として、「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える」と定めています。
上記のような本番組全体を貫く編集のあり様は、この規定から大きく逸脱していると考えます。皆様の見解をお示しください。
以上

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