ETV2001

2011年2月 7日 (月)

NHK特番問題:「慰安婦」放送10年 語り始めた現場職員:毎日新聞 2011年2月7日

NHK特番問題:「慰安婦」放送10年 語り始めた現場職員:毎日新聞 2011年2月7日
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110207ddm012040021000c.html
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/entertainment/ 20110207ddm012040021000c.html
 旧日本軍の従軍慰安婦問題の責任を追及した民衆法廷を取り上げたNHK教育テレビ「ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか 問われる戦時性暴力」が01年1月30日に放送されてから10年。元慰安婦らの法廷証言が削除されるなどした政治圧力の有無を巡る、制作現場とNHK側との見解はいまも対立したままだ。NHKが「改変問題」の検証番組の制作を拒み続ける中で、当時の現場職員は出版や講演などを通じて、「真相」を語り始めている。【臺宏士、内藤陽】

 先月30日、NHK放送センター(東京都渋谷区)近くの会場で開かれたNHK番組改変問題について考えるシンポジウム。ゲストスピーカーに招かれた同番組のチーフプロデューサーだった永田浩三さん(武蔵大教授)は「なぜ10年間、慰安婦番組は作られていないのか。ドキュメンタリーは、市民の人たちの力を借りながら作っていくものだ。慰安婦については、バウネット(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)やワム(女たちの戦争と平和資料館)の力を借りなければできない。まず、(市民団体に)話を聞くことから事は始まる」と述べた。
 同番組の制作に協力したバウネットは「事前説明と異なる番組内容に改変された」として、NHKなどを相手に損害賠償を求めて東京地裁に提訴。最高裁は08年6月、NHK側に200万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決(07年1月)を破棄し請求を棄却した。ただ、高裁が認定した「政治家の意図をそんたくして当たり障りのない番組にすることを考え(番組の)改変が行われた」としたことについて、最高裁は判断しなかった。
 その後も市民グループとNHKとの間で深まった溝は埋まらないままだという。永田さんは「裁判は終わっているのに、(NHKが)前に進もうとしないのであれば番組化することはできない」と危機感を口にした。

 番組担当デスクで永田さんの部下だった長井暁さんが05年1月に内部告発。2人は1年半後に制作現場から外され、09年2~3月、続けて退職した。そして永田さんは昨年7月、「NHK、鉄の沈黙はだれのために--番組改変事件10年目の告白」(柏書房)を出版した。その本の中で、当時番組制作局長で番組の内容を変えるよう指示した側にいた伊東律子・元理事(09年死去)から、その指示は海老沢勝二会長(当時)からだったとの証言を引き出している。また本には、吉岡民夫・教養番組部長(当時)が改変箇所を書き留めた台本にあった「フルヤ アベ アライ」の手書きメモの写真も掲載している。当時、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」などのメンバーだった古屋圭司、安倍晋三、荒井広幸の現職の国会議員の名前だとみられる。3人とも放送前にNHK幹部と面会した事実は認めている。緊迫した局内の様子を物語る「証拠」だともいえる。

 さらに上からの指示に異議を唱える永田さんに対して松尾武・放送総局長(当時)は「いくらでも慰安婦の問題はできる。これが最後ではない」と明言したという。永田さんは「出版後にNHK関係者を名乗る人物から連絡があり、『会長の指示の下で国会担当の3人の職員が動いていた』と言ってきた。30年以上NHKにいたがあんな異常なことは初めてだった。二度と繰り返さないためにも、当時の幹部には真相を語ってもらいたい」と述べた。
 一方、長井さんも昨年10月に東京都千代田区の明治大学で開かれたシンポジウムで、「あの時、何が起きたのか?」という演題で講演した。長井さんはその後も関係者への取材を続けているといい、「自民党の政治家たちが番組を変えようと、国会対策担当局長を通じて番組に手を突っ込み、NHKの編集権、自主・自立が損なわれた事件だった」と振り返った。ただ、自身が内部告発するまでには放送後4年が必要だった。この点については「自分自身の問題としてあのときなぜ戦えなかったのか。処分されたり、組織の中で自分の居場所がなくなってしまうことを恐れた。ジャーナリストの良心に反する要求を拒否するすべはないのか。日本ではあまり議論されてこなかったが、大きな問題だ」と語った。

 ◇検証番組、制作せず
 番組改変問題の影響はいまも残っている。NHKは過去に放送した番組を各地の放送局などで公開しているが、「問われる戦時性暴力」は対象外だ。職員でさえも見られない状態が続いているという。
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は09年4月、改変問題に関する意見書で職員に対して、「番組を自分の目で見、意見書や資料と突き合わせ、自らたしかめ、考えていただきたい」とNHK内部での活発な議論を要望した。福地茂雄会長(当時)も09年5月の会見で、会長自身が職員とこの問題について意見交換することに「職員の中でそういう声が強くあれば、考えてもいい」と述べたが、いまも実現していない。
 また、一部の経営委員や視聴者団体から求められた「検証番組」の制作にも消極的だ。松本正之会長は今月3日の記者会見で、「最高裁判決も出されたことで区切りがついたと思っている。私はNHKの原点、放送法の目的に立って、視聴者の期待に応えたいと考えている。(この問題は)01年の話だ。これまでを振り返るのでなく、これから前に向かって放送法の原点にしっかり立ってやっていきたい」といい、「(慰安婦番組については)必要な時に必要な番組を作る。それに尽きる。検証番組は制作するつもりはない」と述べた。

 放送倫理検証委員会委員の服部孝章・立教大教授(メディア法)は「この10年間に慰安婦番組が制作されなかったり、ライブラリーで番組を公開していないのは、NHKが問われた『政治との距離』について、いずれ世の中の人が忘れてしまうことを期待しているのではないかと思われてもやむを得ないと思う。また、BPOは現場職員にこの番組問題を考えてもらうことを期待したが、その声が聞こえてこないのは残念だ」と指摘する。
 ◇国内外で関心高く
 番組が放送された後、この問題は国内外で広がりを見せている。
 05年8月には慰安婦問題の拠点として「女たちの戦争と平和資料館」(東京都新宿区)が開館した。名乗り出た被害者が高齢で年を追うごとに亡くなっている中で、08年3月、兵庫県宝塚市議会が慰安婦問題解決を政府に求める意見書を全国で初めて可決した。同資料館によると、これまでに36の地方議会が真相究明や被害者の尊厳回復を求める意見書を可決した。
 野党だった民主党は00年、被害者に国家賠償の道を開く「戦時性的強制被害者問題の解決促進に関する法案」を初めて参院に提出。その後も共産、社民両党との共同提案が繰り返されている。民主党は09年政策集で慰安婦問題に取り組む考えを表明したが、政権交代後も成立には至っていない。また、同問題を取り上げる教科書は減少。元慰安婦が起こした戦後補償裁判も、10件すべてが原告側敗訴に終わっている。
 一方、国際的には08年に国連の自由権規約委員会が日本政府に解決を図るよう勧告。07年から08年にかけて、米、カナダ、オランダ、韓国や台湾、欧州連合(EU)の各議会でも同様の決議が相次いで可決されている。
 元NHKディレクターで、「女たちの戦争と平和資料館」の池田恵理子館長は「この10年間、慰安婦問題を巡って多くの動きがあった。NHKで番組にできないはずはないと思う」と話している。
【関連記事】
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毎日新聞 2011年2月7日 東京朝刊
NHK番組改変の当事者の著書をこう読む - 朝日新聞社(WEBRONZA) http://webronza.asahi.com/national/2010082400002.html

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2011年1月19日 (水)

NHK番組改変の当事者の著書をこう読む - (WEBRONZA)

NHK番組改変の当事者の著書をこう読む - (WEBRONZA)

世界を覆い隠すメディアウォール 「NHK番組改変問題」を問う

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2011年1月13日 (木)

日隅一雄弁護士(@yamebun)インタビュー@岩上安身Web Iwakami

http://iwakamiyasumi.com/archives/5560

http://vimeo.com/18616875

http://vimeo.com/18698453

◎第一部 Part1   27分~NHK番組改変問題の裁判について

21

◎第一部 Part2では、今のメディア、マスコミの具体的な問題点を、以下の三つを軸に指摘されています。
1、独立行政委員会の必要性
2、クロスオーナーシップの規制
3、巨大広告代理店の弊害

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2010年12月11日 (土)

女性国際戦犯法廷から10年

シンポジウム バックラッシュ時代の平和構築とジェンダー ─「女性国際戦犯法廷」10年を迎えて─
12月19日(日)10:30~18:00(開場10:00) 
会場:立命館大学創思館1階 カンファレンスルーム
事前申込不要・聴講無料
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/lcs_index.htm

Pdf_icon_311 PDF
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米兵性犯罪の実態訴える 女性国際戦犯法廷から10年
琉球新報 12月7日(火)11時5分配信

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性暴力を断ち切るための方策について討論するパネリストら=5日、東京都府中市の東京外国語大学

 【東京】従軍慰安婦問題など戦時中に起きた性暴力の責任を問い昭和天皇や当時の政府・旧日本軍責任者らを裁いた民間法廷「女性国際戦犯法廷」の開催から10周年を記念した国際シンポジウム「『法廷』は何を裁き、何が変わった」(女性国際戦犯法廷10周年実行委員会主催)が5日、東京都府中市の東京外国語大学で開かれた。

元慰安婦らの被害体験を共有し、今後も政府に明確な謝罪と補償を訴え、二度と慰安婦制度が繰り返されないために行動することを確認した。

Img4cfd955c84cc02  パネル討論では沖縄女性史家の宮城晴美さんが在沖米兵による性犯罪の実態を報告。宮城さんは「検挙されるのは一部で、検挙数の背後でどれだけ大勢の女性が泣き寝入りしているか分からない」と説明。事件が繰り返される背景に「沖縄が日本とアメリカの植民地状態であり、民族差別、女性差別が続いている」と指摘。「沖縄の女性が独自に性暴力を断ち切ることはもはや不可能。だから日米同盟の意義を問い、米軍基地の撤去を求めている」と訴えた。

 元慰安婦のナルシサ・クラベリアさん(フィリピン)は、強制的に日本軍駐屯地に連れて行かれ、無理やり兵士の相手をさせられた体験を涙ながらに語り「日本政府が被害を認めないことに怒りを感じる。女性の尊厳を求める闘いを続けないといけない。たとえ一人になったとしても闘い続ける」と語った。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-170988-storytopic-1.html

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2010年11月18日 (木)

女性国際戦犯法廷から10年・国際シンポジウム「法廷」は何を裁き、何が変わったか ~性暴力・民族差別・植民地~

http://www.wam-peace.org/jp/modules/topics/index.php?cid=1

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 今年は、2000年12月に東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」から10周年にあたります。「法廷」は、半世紀にわたる沈黙を破り、謝罪と補償を求めて立ち上がったサバイバーたちに敬意を表し、置き去りにされてきた被害者の正義の実現と、戦時性暴力を含む女性に対する暴力根絶のために、世界の女性たちの手で開いた国際民衆法廷でした。

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2010年11月17日 (水)

NHK番組改変から10年 週刊金曜日

NHK番組改変から10年

週刊金曜日 11月17日(水)14時54分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101118-00000301-kinyobi-soci

 市民が国際的な協力を得て「慰安婦」問題を裁いた女性国際戦犯法廷開催から今年で一〇年。これを取り上げたNHK「ETV二〇〇一」が政治介入によって大幅に改変された事件で、NHKを提訴した法廷の主催団体VAWW-NETジャパンが裁判記録集・評価集出版記念を兼ね、一〇月三〇日、都内でシンポジウムを開催した。
 番組改変の矢面に立たされ、凄まじい修羅場を経験した当時の番組デスク・長井暁氏が記念講演。事件後、自身で取材したり心ある関係者から寄せられた情報・資料も交えて当時の体験を詳細に語った。NHK側当事者の一人、伊東律子番組制作局長(当時・故人)の会長宛の報告書なども目にしたという。

 長井氏は、幹部の業務命令で改変を余儀なくされたことについて「悩んだ。今でも後悔している。制作に関わったスタッフへの処分など考えると拒絶・放送中止の選択はとれなかった。放送総局長が業務命令を行使したとき現場はどう闘えるのか」と率直に心情を吐露。「幹部がかざす『編集権』に対して、現場制作者の『内部的自由』はどうあるべきか」と、今後議論を深めるよう問題を提起した。

 その後のパネルディスカッションでは裁判原告・弁護団、メディア研究者、支援団体代表が発言。
「沖縄密約事件でも当事者証言が出てきた。NHK幹部にも真実を墓場まで持ってゆかず明らかにすすよう迫るジャーナリスト出よ」

「事件の検証番組を作って視聴者にお詫びする日がNHK再生の日。NHK自身が検証番組をつくることを期待する」

「現場を無視し幹部が改変することが『表現の自由』なのか。現場の表現の自由をどこまで保障するか、取材にかかわった市民がどこまで主張できるのか、現場や市民運動の側が今後も要求や発言を」
「事件後一〇年間、NHKは『慰安婦』問題を番組で取り上げていない。作れと要求すべきではないか」「番組『問われる戦時性暴力』は今、NHK職員も見ることができない。アーカイブスに入れて市民にも見られるように要求すべき」

「番組を見る会など市民と制作現場ディレクターの対話の場を」

「NHKの会長や経営委員を公募して市民の代表を送りこめるよう求めたり、NHK予算の国会審議の仕組みを変えることも再発防止に重要」
 など、今後の課題や展望が語られた。
(小滝一志・放送を語る会事務局長)    

最終更新:11月17日(水)14時54分

「NHK番組改変裁判記録集」、どうどうの1万2600円!~買うてとは言わん、図書館で申し込んで!

週刊金曜日

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2010年8月25日 (水)

続「NHKは恥ずかしくないのか」、番組改変事件の現場責任者が全容を告発 「柴田鉄治のメディア時評」

Title

 昨年2月の私のメディア時評その3、「長井氏の退職、NHKは恥ずかしくないのか」という原稿を覚えている方はおられるだろうか。
 「従軍慰安婦を取り上げたNHK教育テレビの番組が01年の放送直前に改変された問題で、『政治介入があった』と05年に記者会見し、内部告発した長井暁氏が近く退職する」という記事をもとに、長井氏はNHKのコンプライアンス(法令順守)委員会に規程通り「正しい告発」をしたのに、NHKは調べもせずに報復的な人事で制作現場からはずしたうえ、退職にまで追い込んでしまった、それでもNHKは恥ずかしくないのか、と糾弾した原稿である。

 この原稿は覚えていなくても、この番組改変事件とは、05年1月に朝日新聞が「自民党の安倍晋三、中川昭一氏らの介入があって放送直前に改変された」と報じたことで朝日・NHKの大喧嘩に発展した事件であることは覚えておられるだろう。
 ところが、この大喧嘩も、その後NHK側には一切、反省や謝罪の言葉はなく、一方の朝日新聞の側だけが記事は正しかったのに「取材の詰めが甘かった」と頭を下げてしまったため、奇妙な形に終わっていることは、よく知られている通りである。続きを読む
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NHK、鉄の沈黙はだれのために― * [評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)

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2010年8月 5日 (木)

土井敏邦Webコラム:NHK番組改編事件の告発書 「NHK、鉄の沈黙はだれのために」

        『かたりの椅子』とNHK番組改編事件の告発書(1)

 ・・・・・・・永田氏は、「“私”を生きる」道を選んだ。そのためのどうしてもやり遂げなければならかなった“通過儀礼”が本書の執筆を通して、あの事件が自分にとって、そして関わった人たちやNHKという組織にとって何だったのかを反芻し、整理する作業だったのだろう。・・・・・・──────────────────────────────────────

NHK「番組改変」事件、10年目に披瀝した「闇」 : J-CASTモノウォッチ
   「わたしはこの本で二つのことをやっておきたいと思った。一つは、九年前のできごとをできるかぎり検証しておくこと。もう一つは、事件後のおよそ九年間に、なにがおこなわれ、なにがおこなわれなかったのかをふり返ること。とりわけ、後者を忘れてはいけないと思っている」と、永田氏は記している。

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土井敏邦:『かたりの椅子』とNHK番組改編事件の告発書(2)
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書評:NHK鉄の沈黙はだれのために 永田浩三著 番組改編事件10年目の告白
"今 言論・表現の自由があぶない!" より転載
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/16183671.html

 本書はNHKのETV番組「問われる戦時性暴力」(2001年1月30日放送)の制作担当者として、はからずも番組改ざんの実行者になった著者が贖罪の気持ちに駆られてまとめた書物である。事件にかかわった役職員が今も沈黙を続ける中でNHKの隠ぺい体質を告発した著者の良心に賛辞を贈りたい。特に、「自分に火の粉が降りかかると、自分は弱い存在だから、自分はサラリーマンだからと逃げる」NHK職員の自己保身体質を執拗に追及する著者に強い共感を覚えた。
 ただ、その一方で著者は、番組改ざんの渦中で板挟みの立場に置かれた伊藤律子番組制作局長を随所でいたわっている。しかし、伊藤氏は放送の直前に海老沢会長(当時)が自分を呼び出して元「従軍慰安婦」らの証言を削除するよう指示したことを著者に漏らしながら、それを公にしないまま世を去った。
また伊藤氏は問題の番組の放送日前に著者を呼び出し、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が出版した図書を取り出して同会に属した中川昭一氏が番組にクレームをつけて来たと語ったが、裁判でこの発言が問題になると、あれは放送の後だったと言い換えた。
そうまでして伊藤氏は何を守ろうとしたのだろうか?

著者はまた自分の直接の上司で番組改ざんに手を染めた吉岡民夫教養番組部長を責める気はない、自分も同じ弱虫だからという。しかし、こうまで上司をかばい続けてよいのだろうか?
吉岡氏は安倍晋三氏に呼びつけられたのではなくNHKから出向いたことにしようという口裏合わせがあったことを同僚に明かしたが、この件が裁判で問題になるとあっさりと前言を翻した。

番組製作者の内部的自由は不可欠だ。しかし、こうした自己保身体質を引きずったままでは「仏(制度)造って魂入らず」にならないか? 評者:醍醐 聡 東大名誉教授

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2010年7月14日 (水)

永田浩三『NHK、鉄の沈黙はだれのために-番組改変事件10年目の告白

97847601384181なぜNHKは腐敗したのか? 闇に葬られた番組改変事件の真相とは? 制作現場をもっともよく知るインサイダーによる迫真のドキュメンタリー。「私は多くの人たちを困難に巻き込んだ。自己弁護にいまさら何の意味があろう。時計の針をもとに戻すこともできない。ならばせめて、あのときNHKという世界有数の放送企業の舞台裏で、どんな人間が、どれだけの醜態を晒したのか、明らかにしておきたい」

永田浩三『NHK、鉄の沈黙はだれのために/番組改変事件10年目の告白』
(柏書房)

http://www.kashiwashobo.co.jp/

政治家たちの圧力によって、

従軍慰安婦問題を正面からとり上げた特集番組の内
容が改ざんされた「NHK番組改変事件」。発生から10年の月日が流れたい
ま、事件の核心を知るプロデューサーが事件の真相を告白。

永田浩三(元NHK チーフ・プロデューサー)
1954 年大阪市生まれ。東北大学教育学部教育心理学科卒。日本放送協会(NHK)
入局後、ドキュメンタリー・教養・情報番組のディレクター・プロデューサーと
して番組制作に従事。2006 年、NHK アーカイブスエグゼクティブ・ディレク
ター。2009 年に退職、現在は武蔵大学社会学部教授
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土井敏邦:『かたりの椅子』とNHK番組改編事件の告発書(2)

        『かたりの椅子』とNHK番組改編事件の告発書(1)
 ・・・・・・・永田氏は、「“私”を生きる」道を選んだ。そのためのどうしてもやり遂げなければならかなった“通過儀礼”が本書の執筆を通して、あの事件が自分にとって、そして関わった人たちやNHKという組織にとって何だったのかを反芻し、整理する作業だったのだろう。・・・・・・
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2009年11月 6日 (金)

ETV2001改変事件-残された課題--武蔵大シンポジウムレポート

シンポジウム ETV2001改変事件・残された課題レポート
~番組の当事者と考えるTVジャーナリズムの現在~
2009年10月24日(土) 午後1時~5時 武蔵大学
パネリスト  長井暁氏 (当時NHKデスク、現ジャーナリスト)
       広瀬涼二氏(当時ドキュメンタリー・ジャパンプロデューサ)
                永田浩三氏(当時NHKプロデューサー・現武蔵大学社会学部教授)
コメンテーター  野中章弘氏(アジアプレス・インターナショナル)
全体進行と報告  小玉美意子氏(武蔵大学社会学部教授)4126m4nk6rl

(主催者より) ETV事件の背景には、NHKと制作プロダクションとのいびつな力関係があります。武蔵大学では、当時の担当者たちを招き、ETV事件が今も問いかける問題について考えます。特に今回のシンポジウムでは、なぜドキュメンタリー・ジャパンは、放送前に制作現場から離れることになったのか。当初放送しようとしていた番組はどんなものだったのか。当時の担当者に詳細に語っていただきます。
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シンポジウムでは最初に改変前の映像が初めて公開されました。
●  圧倒的現実感の証言と決して雄弁ではない米山リサさんの訥々としたコメントは「裁きなくして和解なし」の意味を理解させるものでした。
●  また長井暁氏の
”番制局長名で会長宛に「DJとVAWW-NETがつるんで番組をのっとりPRの場にしようとした」ため我々はそれを未然に察知し防いだのだという報告書が出されている。(NEPとDJを切り捨てることによってみずから身を守るだけではなく、この”功績”により{幹部達は}さらに出世していった。)”ーー
(注:永田浩三氏によれば当初このような”陰謀論”を吹き込まれていたため坂上香さんらのエールにすぐに応えられなかったが、その後DJの広瀬氏に事情を聞きこの説には根も葉もなかったことが解ったと言います。)
ーーとのコメントを聞き、{幹部達の}「災い転じて福となす」術の凄さに危うく拍手するところでした。
以下
詳細レポート

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