地上アナログ放送の終了延期=地デジ難民のゼロ化
http://www.asahi.com/national/update/0304/TKY201103040421.html?ref=rss
「地デジ難民あふれる」識者ら、アナログ終了延期訴え
2011年3月4日19時15分
テレビの地上デジタル放送への完全移行をめぐり、砂川浩慶・立教大准教授やジャーナリストの坂本衛さんらが4日、東京都内で記者会見し、「このままでは地デジ難民が多数出る」として、7月24日に予定されているアナログ放送の終了を延期するよう訴えた。近く総務省に要求書を提出する。
要求書では「地上アナログ放送の終了を地域ごとに段階的に行うこと」「地デジ難民がゼロになるよう万全を期すこと」などを総務省とテレビ各局に求めている。
昨年9月の総務省の調査によると、地デジ受信機の普及率は90.3%。だが、要求書では「地デジに未対応で調査に非協力的な世帯が多数漏れており、実態を反映していない」と批判。「経済的弱者への支援も遅れている」と主張している。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110305k0000m020073000c.html
地デジ:「移行は地域別に」有識者が提言 総務省は応ぜず
7月の地上デジタル放送(地デジ)への完全移行延期を求めるジャーナリストの坂本衛さんら有識者は4日、東京都内で記者会見し、アナログ放送を地域事情に応じて段階的に停止すべきだとの提言を発表した。提言は、「昨年9月時点の地デジの世帯普及率を9割とした総務省調査は80歳以上の高齢者を対象から外すなど問題がある」と指摘。今年7月時点の普及率は9割前後にとどまるとの見通しを示した上で、全国32の放送地域ごとに普及が進んだところから順次、アナログ放送を停止し、完全移行は13年10月まで延期するよう求めた。これに対し、総務省地上放送課の担当者は「経済弱者へのチューナー設置支援や、高齢者への声かけなどの対策を進めており、7月の完全移行の方針に変わりはない」としている。提言したのは坂本さんのほか、砂川浩慶・立教大准教授、作家のなだいなださんら6人。
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http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110303/ent11030318020013-n1.htm
地デジ移行へ500万戸を電話調査 NHK
2011.3.3 18:02
NHKは3日、東名阪地域などの戸建て世帯を対象に、テレビの地上デジタル放送を受信できているかの電話調査を、7日から実施することを明らかにした。
対象は、アナログ放送を主にVHFアンテナで受信してきた南関東や名古屋、大阪などの戸建て住宅のうち、約500万世帯。地デジの受信にはUHFアンテナが必要だが、7月24日の完全デジタル化を控え、これらの地域で対応の遅れが指摘されている。
集合住宅、ケーブルテレビ加入世帯や、難視聴対策の共聴を受けている世帯はすでに状況を把握しており、調査の対象外。
調査は4月末ごろまで、業者に委託して実施。推定では80万世帯ほどが未対応とみられるといい、判明した世帯には、必要に応じてNHKの担当者が訪問するなどして相談を受けるという。
アナログ受信世帯へ電話作戦
7月に迫った地上アナログ放送終了に向け、NHKは7日から、全国約500万の戸建て世帯を対象に、地上デジタル放送の受信に必要なUHFアンテナの有無などを調査するため電話ローラー作戦を行う。
NHKによると、関東地方など大都市圏を中心にVHFアンテナでアナログ放送を受信している戸建て世帯は約500万。このうち約80万世帯で地デジ化が未了と推計される。たとえUHFアンテナを立てていても中継局の方角を向いていない世帯もあるという。(2011年3月4日 読売新聞)
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〈メディア激変219〉どうなる地デジ―8 スカイツリーの不思議
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201103040383.html
2011年3月4日
写真:工事が進む東京スカイツリー。周辺にはオフィス施設や水族館の建設も進む。平日でも多くの人たちが訪れ、写真を撮る=東京都墨田区拡大
工事が進む東京スカイツリー。周辺にはオフィス施設や水族館の建設も進む。平日でも多くの人たちが訪れ、写真を撮る=東京都墨田区
東京都墨田区の新電波塔、東京スカイツリーは3月中にも高さ634メートルに達する。完成は12月、開業は来春の予定だ。
近くに住む山口教子さん(40)は週に2、3回、生後6カ月の長女と散歩がてら見に来る。東京タワーからのアナログ波が止まる7月24日に合わせて開業するとばかり思っていた、という。「間に合わないのは不思議ですね」
「スカイツリーと地デジ化は全く別の話」と語るのはNHK技術局計画部の大崎公士副部長だ。「スカイツリー開業と地デジ移行の時期が近いから、誤解があるのかもしれません」
地デジへの移行日は2001年、電波の有効利用などを目的に国策として決まった。スカイツリーはその2年後、NHKと民放キー局が「新タワー推進プロジェクト」を発足させ、建設を求めた。安定的な電波供給が目的だ。
東京タワーの高さは333メートル。周辺に高さ200メートル級のビルが建ち、アナログ、デジタルに関係なく、電波が遮られがちになった。スカイツリー建設は、この問題の解決策だった。
では、なぜ634メートルも必要なのか?
大崎さんの答えは「ビルの2倍の高さから電波を送ればほとんど影響がないと言われているんです。今後、300メートル級のビルが建っても、600メートル級のタワーなら問題ない」だった。
06年に始まった「ワンセグ」も関係がある。電波を受信する携帯端末は常に移動し、内蔵アンテナも小さい。このため首都高速の下やビルの谷間は電波が届きにくくなるが、スカイツリーの高さなら届く。「その意味では、衛星から電波を送るのが一番いい」と大崎さん。
スカイツリーができても、東京タワーが役割を終えるわけではない。いま電波を送るのは、テレビがNHK、民放キー局、東京MXTV、放送大学。ラジオはJ―WAVE、FM東京、インターFM、NHKFM。このうち、FM東京とインターFMは東京タワーに残ることを含めて検討中で、放送大学は東京タワーから電波を送り続けることを決めた。なぜか。
放送大学放送部の松沢一砂・技術運行課長の説明はこうだ。「放送大学は10月からBS放送を始めます。費用対効果を考え、地上波は東京タワーを使い続けることにしたんです」
NHKや民放キー局も、東京タワーの設備をそのまま残し、災害などに備えるという。
スカイツリーが完成しても、すぐ本放送が始まるわけではない。NHKによれば、来年1月から1年間は試験電波を送り、問題がなければ本放送へ。つまり、スカイツリーの本放送が始まるのは、13年1月からだ。(岡田匠)
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201103040384.html
〈メディア激変220〉どうなる地デジ―9 古都ならではの悩み 写真:マンションやビルと町家が混在する市内中心部で受信公開調査のデモンストレーションが行われている=京都市中京区拡大マンションやビルと町家が混在する市内中心部で受信公開調査のデモンストレーションが行われている=京都市中京区
碁盤の目のような通りに沿って高いビルやマンションが並び、それに囲まれるように古い町家が軒を連ねる。いかにも古都らしい景観の裏に、京都ならではの地デジ化の悩みがあった。
市中心部の中京区。駐車場で、総務省の京都府テレビ受信者支援センター(デジサポ京都)の職員が、先端にアンテナをつけた高さ8メートルの黄色いポールを立て、電波の状況を調べていた。住民に見せながらの受信公開調査で、昨年10月から50回以上もやってきた。
「ビルの谷間だからどうせ映らないと思い込んでいる人に、アンテナを上げれば映ることを実際に見せて、対応してもらうのが狙いです」と宮原敏郎センター長(57)は話す。
調査を見ていた住民の塩見秀治さん(56)がデジサポの一団を自宅の中庭に招き入れた。モニターの映像を見て「案外映るんやね。これで自信をもってアンテナを買えるわ」。
デジサポが、こうした住民への周知に懸命になっているのには、わけがある。
総務省は昨年末、ビル陰などでアナログ波が受信できない地区の共聴施設のデジタル化対応率を調べた。京都府は66.4%と全国平均を20ポイント以上も下回って最下位だった。
「中京区と下京区のほぼ全域がビル陰や電波の反射による受信障害地域。共聴施設からケーブルを引いて見ている世帯が多い」と受信公開調査の責任者、青木喜彦さん(43)。この地区にもデジタル波は届くから、各戸で地デジ化しないといけないのだが、なかなか浸透しない。
取り組みが遅れたのも痛かった。
京都はこれまで、大阪府と奈良県の境にある生駒山の送信所から在阪民放の電波を受けていた。デジタル波を流してみると、市南部に壁のようにそびえる京都駅ビルなどに阻まれ、電波が十分に届かないことがわかった。北東側にある比叡山に増設した中継局の出力を上げ、受信環境が整ったのは昨年9月。それからようやく本格的な対応が始まったのだった。
こうした状況を「かなり深刻に見ている」と語るのは、独立系の地元局、KBS京都の岡田豊編成部長(46)だ。「町家の住民にはお年寄りが多く、そもそも自分たちがどうやってテレビを見ているのかわかっていない人も多いんです」。同局は、ニュース番組で地デジを特集したり、高齢のリスナーが多いラジオの番組で話題にしたりして、移行を促すことにしている。
「最終期限は決まっている。短期集中で行くしかない」と、デジサポの宮原センター長。古都の地デジ化、7月24日に間に合うだろうか。(久保智祥)
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http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201103040385.html
〈メディア激変221〉どうなる地デジ―10 地域に根ざす競争激化
北海道テレビのデータ放送にある「地方紙トピックス」。見出しをクリックすると、十勝毎日新聞など15紙が提供するニュース本文が出てくる
あそこは大丈夫か。地デジ化を国が決めたとき、真っ先に心配されたのが、北海道だった。
何しろ国土の22%を占める広さ。全域に電波を届けるには、150を超える中継局が要る。それをすべて開局にこぎつけたが、地デジが映らない「新たな難視」が1万5千世帯出るなどアナログ停波までの難題は少なくない。
総務省北海道総合通信局の今田敏明・情報通信部長(54)は「準備は順調だが、全世帯をつぶさに見ると、楽観は禁物」と話す。
それでもここに来て、放送界は活気づいている。象徴的なのが4月の番組改編。各局が力を込めた自前の情報ワイド番組をぶつけあう。
まず、平日夕方。20年前から続く札幌テレビ(STV)の「どさんこワイド179」(15時48分~19時)が根強い人気を誇り、北海道テレビ(HTB)の「イチオシ!」(15時45分~19時)、北海道放送(HBC)の「グッチーの今日ドキッ!」(14時55分~16時53分)と三つどもえの戦いを繰り広げてきた。
そこへ4月4日、北海道文化放送(UHB)の「U型テレビ」が参入する。「どんなに苦しくても地域密着でやっていくしかない」(及川純・報道制作局長)と激戦区にあえて挑む。
朝にも新顔の登場が続く。HTBが3月28日に始めるのは「イチオシ!モーニング」。「朝も夕方も『イチオシ!』」と宣伝していたら、STVが「朝も夕方も『どさんこワイド』」と名物番組を朝にもぶつけてくることがわかった。HTBにとって「あごがはずれそうになった」(川筋雅文編成局長)ほどの衝撃だった。
そのHTBは、地域重視メディアとして広く知られる。1990年代、海外向けの衛星放送「JET」に参加し、雪祭りなど道内の自然や文化を紹介する番組「北海道アワー」で、台湾などからの観光客を増やした。バラエティー番組「水曜どうでしょう」は全国で人気を呼び、DVDも他局がうらやむ収入を稼ぐ。
地デジならではのデータ放送にも力を入れてきた。十勝毎日新聞など地域紙のニュースを道内だけでなく、テレビ朝日を通じて関東にも届ける。各地の花通信員の「花情報」、高校生が発信する「商業高校発」などもユニークだ。
樋泉実専務(62)は「地域からアジア、地球へと直接発信するために、地デジをはじめ、あらゆるメディアを使う」と言い切る。 他局も刺激を受けている。UHBの佐藤正人常務(63)は「地デジ投資が一段落した今こそ自社制作を増やし、地域を元気づけたい」。
デジタル時代をにらんだ覚悟の先に、テレビの未来がある。(編集委員・隈元信一)
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http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201103040388.html
〈メディア激変222〉どうなる地デジ―11 先行した珠洲では
地デジ移行で空いた周波数を使った全国初の「エリアワンセグ実証実験発射式」で、テープカットをする森田高総務政務官(中央)ら=2月10日、石川県珠洲市のラポルトすず
全国に1年先駆けて、昨年7月24日に地デジに完全移行した所がある。石川県珠洲市だ。
地デジ化の課題などをさぐるために総務省が先行地区に指定したのだった。いま、アナログ停波で空いた周波数を地域振興に役立てようという試みが始まっている。
珠洲市内のホールに2月10日、総務省の森田高政務官、泉谷満寿裕市長ら約50人が集まり、「エリアワンセグ実証実験発射式」があった。奥能登の2市2町や総務省が昨年末に設立した研究会が、情報通信技術(ICT)で暮らしを便利にしようとする取り組みの第一弾になる。
この日、地元観光地の映像やバスの時刻表などの文字情報を送り始めた。ワンセグの携帯端末で、市の中心から1.5キロほどの範囲内なら受信できる。3月末まで続け、利用者の意見を聞いて今後の活用方法をさぐる。
実験を請け負ったアライド・ブレインズ(本社・東京)の内田斉社長は「限定した地域に一斉に情報を流せるのが強み。今後は例えば病院の混雑状況や待ち時間を流したり、朝市の売れ行き情報を農家に配信したり、医療や農林水産業の活性化につなげることもできる」と話す。
公立穴水総合病院の倉知圓院長は式典で「高齢者の生活を守るために、いかにICTを活用するかが問われる」と語気を強めた。空いた周波数を、遠隔医療システムの構築や、2014年度の北陸新幹線開業をにらんだ地域経済活性化に生かせるか。「地デジ後の電波利用の将来像」の模索は始まったばかりだ。
地デジ化自体は「スムーズだった」と泉谷市長。希望者にチューナーを無料で配り、電器店などの協力を得て6500世帯を一軒一軒訪ねる手厚さが奏功した。家を空けていて、移行後、久しぶりに戻った人から、「テレビが映らない」との問い合わせがあった程度だという。
ただ、課題も残る。市内には七つの電波中継局があったが、地デジ化で1局になった。共同受信施設で電波を受けていた地域はケーブルテレビに移り、ケーブル加入率は65%に。その利用料が1世帯あたり、年に少なくとも約1万2千円かかる。「年金暮らしの高齢者には軽くない負担」(ある電器店主)なのが実情だ。
ケーブル会社がデジタル波をアナログに変換する「デジアナ変換」サービスを続けており、ケーブル加入世帯はアナログテレビをそのまま使える。ただこれも2015年3月末で終わるので、再び地デジ移行を促す必要がある。
あらゆる手段を尽くして進めた地デジ化が、過疎地の暮らしの向上につながるのか。大変なのはこれからだ。(丸山玄則)
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http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201103040390.html
〈メディア激変223〉どうなる地デジ―12 四苦八苦のNHK
「デジタルQ」の一画面。どうしたら地デジが見られるかを出演者らが説明する
「集合住宅のアンテナは誰が準備するの?」
「体操のおにいさん」の佐藤弘道さん(42)が尋ねた。鈴木奈穂子アナウンサー(29)が答える。「分譲の場合はお住まいのみなさんが、賃貸の場合はオーナーが準備するんです」
NHKの地デジPR番組「デジタルQ」の一コマだ。アナログ停波の7月24日が近づくにつれ、熱が加わってきた。
「あまねく日本全国において受信できるように」。NHKは放送法でそう決められている。全国で2070も必要なデジタルの電波を送る中継局の整備を昨年末で完了。今月末には、衛星放送で補う一部地域も含めて、地デジを見られる世帯のカバー率が100%に達する見込みだ。NHKが地デジ移行に投じたお金は、2001年からの累計で4千億円にも及ぶ。
送信だけでなく、受信者の支援にも力を入れなくてはならない。09年には電波が届きにくい山間地などの共聴施設、この1月にはビル陰で電波が届きにくい地域の共聴施設の地デジ化を対象に、国の制度に上乗せする助成を始めた。
NHKの助成額は1件数万~数十万円。本来は電波の受け手側の問題だが、「このままでは地デジへの移行が進まない」という危機感から、国の認可を得た。財源は受信料だ。永井研二技師長・専務理事(62)は「助成は緊急避難的な措置。テレビを見られない人が出ると、受信料収入にも響いてくる」と説明する。
それでも、完全移行への道のりは険しい。特に不安視されるのがビル陰の地域。これまでの電波障害がデジタル化で解消される場合、原則として新たに自前でアンテナを立てないとテレビが見られない。これを十分認識していない人が、高齢者を中心にかなりいると見込まれる。
昨年9月の総務省の調査で、地デジの受信機の普及率は90.3%に達した。だが、視聴者の受信相談などに応じるNHKの担当者の一人は「対応できない世帯を1%としても、50万世帯近い」と気を引き締める。NHKは昨年11月、全国約3千の電器店に委託して、未対応の世帯を直接訪問する相談業務に乗り出した。さらに今月7日には、戸建て住宅の500万世帯を対象に、地デジを見る環境を整えたかどうかを電話で確認する調査を始める。
永井技師長は「地デジに移行できない人たちを救う手応えはつかめてきた」としつつも、こう認めている。「7月24日の時点で対応できない人は必ず出る。それがどれぐらいの数になるかはまだわからない」
安心してデジタル時代を迎えられるのか。先行きはまだまだ不透明だ。(村瀬信也)
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