醍醐聡のブログ

2011年2月26日 (土)

問題の核心に迫らなかったNHK監査委員会の調査~会長選考の調査報告書を読んで~

調査はどのように行なわれたか
 昨日(2月25日)、NHK監査委員会は「新会長任命に至るまでの過程についての調査報告書」を公表した。その全文は次のとおり。
 http://www.nhk.or.jp/kansa-iinkai/condition/pdf/report_110225.pdf 
 この調査の目的は、NHK会長の選考の過程で各経営委員ならびに経営委員会事務局職員が「経営委員の服務に関する準則」(情報の管理、委員会での合意に基づく行動)を遵守したかどうかを検証することにあるとされている。

 この目的に沿って、監査委員会は各経営委員から準則を遵守して行動したかどうかの確認書の提出を求めた。これには経営委員も辞任した小丸前経営委員長を含む当時の経営委員12名全員から提出があったという。その際、監査委員会は小丸氏から、「12月19日の候補者〔安西氏のこと〕との接触は、就任の要請でない旨の回答を得た」という。
 次いで、監査委員会は経営委員に質問書を送って回答を求めたうえで、一人一人の委員から聞き取り調査をしたという。なお、小丸氏はすでに経営委員を辞任し、一市民となったので、と述べてこの聞き取り調査に応じなかったという。

 ところで監査委員会は、これら書面ならびに面接を通じて、経営委員会における会長選考の節目ごとに、その段階では正式発表に至っていなかった審議内容(報道事象)をA~Fに区分し、それぞれの審議内容の発生日と、当該審議内容が各種報道機関(週刊誌等も含む)で報道された月日を比較対照した表を示し、各経営委員ならびに経営委員会事務局職員が報道の取材源に関与したかどうか、その他経営委員会の内部資料とされたものをブログやメール等で外部へ流出させた事実がなかったかどうかについて調査したという。
調査で明らかにされたことぜんぶよむ

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2011年2月18日 (金)

新旧政権政党の部会に出向いて政治家の「注文」を聞き取ったNHK会長、経営委員長、監査委員

新旧政権政党の部会に出向いたNHKと経営委員会の幹部

 NHKの来年度予算案の国会(衆参総務委員会での)で審議される時期になった。10年前のETV番組改ざんの時もそうだったが、この時期、NHK幹部が政権政党の放送関連部会(自民党の総務部会)に出席して予算案の事前説明を行うのが恒例になっていた。さらに、その機会をとらえて、予算以外の問題に関してNHKに対する干渉・圧力となるやりとりが交わされてきた。

 政権が交代した今回、どのような成り行きになるか、私も運営委員になっている「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の運営委員がネット情報で調査したところ、幾人かの関係国会議員のブログ記事から、松本新会長に加え、安田経営委員長代行、井原監査委員までが連れだって、民主党の総務部門会議、自民党の総務部会に出席し、予算案をめぐる質疑もそこそこに、先のNHK会長選考にかかわる質疑に時間が割かれたことが分かった。→続きを読む(醍醐聰のブログ)

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2011年1月20日 (木)

「類は友を呼ぶ」の悪習を断ち切るべき~NHK会長選考を振り返って~: 醍醐聰のブログ

 「鉄道の公共性とNHKの公共性は同じ」と公言する新NHK会長の資質は?
 1月15日、NHK経営委員会は福地茂雄現会長の後任にJR東海副会長の松本正之氏を選任した。今回のNHK会長人事はこれで決着となったが、選考の過程を振り返って感想を一言でいうと、今回もまた、選ばれる人の資質と選ぶ側の見識が連動していることが浮き彫りになった。 全部読む

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2010年12月 4日 (土)

歴史小説・歴史ドラマは史実からどこまで離れられるのか? 醍醐聰のブログ

楽しめればよいといって番組制作者は史実を切り張りしてよいのか?

 NHK(総合テレビ)は明日(12月5日)からスペシャル・ドラマ『坂の上の雲』の第2部の放送を始める。それに先立って、私も参加している「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、このブログの一つ前の記事で紹介したように、当番組のエグゼクティブ・プロデューサーの西村与志木氏ほかに、番組制作に関わる2項目の質問を送った。

その中の一つは、昨年放送された第4回目の番組「日清開戦」のなかで、軍医として従軍中の森鷗外が戦地で出会った正岡子規に向かって語った、「戦争の本質から目をそらして、やたらと戦意をあおるだけの新聞は罪深い。正岡君が書く従軍記事なら、写実でなくては困るよ」という発言はどのような史実に基づいているのかを問うものである。 ぜんぶよむ
歴史小説・歴史ドラマは史実からどこまで離れられるのか(2)→こちら

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2010年8月23日 (月)

韓国併合100年をめぐる両国若者の討論番組を視て: 醍醐聰のブログ

醍醐聰のブログ より

意見の開き以前の歴史への知見の格差


昨日は百年前に韓国併合条約が締結された日である。NHK814日に「日本の、これから ともに語ろう日韓の未来」と題して、日韓の若者がスタジオで討論する番組を放送した(87日録画)。そのなかで、出演した日本のある若者が韓国併合について、「韓国と日本は、同じ大日本帝国の一員として、一緒に英米と戦った戦友だ。」「韓国併合のときは、韓国人を虐殺したわけではなく、帝国主義の時代でやむを得ずにやっただけだ」と発言した。これに対し、番組に出演していた崔洋一映画監督は、そうしたイデオロギーが当時の日本を支配していたことを認めながらも、そのために韓国併合があったというのはとんでもない史観だと指摘し、「36年間にわたる植民地支配がそれによって肯定されるという考え方では、基本的に歴史を語る資格がない」と批判した。放送後、この崔発言をめぐってネット上で「言論封殺だ」という反響が起こっているのを知った。しかし、当の若者がネット上の掲示版に書き込んだ記事によると、放送ではカットされたものの、別の日本の若者から、「日本と韓国は過去に恋人関係にあり、日本が浮気したから韓国が怒っている」という発言もあったそうだ。上の崔監督の発言はこうした若者の発言を受けて出たそうである。

続きを読む "韓国併合100年をめぐる両国若者の討論番組を視て: 醍醐聰のブログ"

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2010年7月 7日 (水)

視聴者の声がNHKを動かした画期的決定~大相撲の中継中止の判断に思うこと~

視聴者の声がNHKを動かした画期的決定~大相撲の中継中止の判断に思うこと~    醍醐聡のブログより

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2010年6月 5日 (土)

新刊案内:『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う』

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■はじめに(高文研編集部
 NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第一部は、「韓国併合百年」を目の前にした二〇〇九年の年末、毎回約一時間半、五回にわたって放送されました。後半の場面設定は日清戦争の時代となり、戦場シーンなども描かれましたが、日清戦争を描く基本的スタンスは、大陸からの脅威に対する「祖国防衛戦争」でした。しかし、本当にそうだったのでしょうか。
 日清戦争は、近代日本の最初の本格的対外戦争です。その結果、最初の植民地も獲得しました。その後に日本が歩む道筋はこの戦争によってつけられたと断言できます。
 ところが一般に、幕末・維新、あるいは日露戦争にくらべ、日清戦争についての認識はきわめて曖昧模糊としています。そのいわば「歴史認識の空洞」が、今回のような大がかりな虚偽(デマゴギー)にもとづくドラマの出現を許したとも言えます。
 日清戦争の主題は、一にも二にも「朝鮮」でした。そのことの認識を欠いて、相互理解にもとづく日韓・日中の友好は築けません。本書は、NHKドラマのウソ・誤りの指摘を通して、日清戦争とはどんな戦争であり、その本質は何だったかを伝えるものです。
 本書は、「『坂の上の雲』放送を考える全国ネットワーク」結成の過程で企画されました。主人公・秋山好古の敬愛する福沢諭吉の実像を伝えるとともに、今このようなドラマを制作・放送するNHKの社会的責任を厳しく問う評論を掲載したのもそのためです。
立ち読み


朝鮮王妃殺害事件の調査補遺 醍醐聡のブログより

新刊書『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う』の普及に皆様のお力添えをいただけましたら、ありがたく存じます。
ご参考までに:本書の案内文書
http://www.koubunken.co.jp/0450/0443.html

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2010年5月31日 (月)

「坂の上の雲」のどこが問題なのか? ~地元9条の会で講演~ 醍醐聰のブログ

 今日、地元の9条の会(さくら・志津憲法9条をまもりたい会)からの依頼で標題のようなタイトルの講演をした。会の世話人からの事前の説明では、資料はA4サイズの用紙20枚までなら印刷するということだったので、これまでと比べ、資料調べと原稿の作成に時間をかけた。
結局、A4サイズ14枚と年表1枚を準備して会場で配ってもらい、ドラマ「坂の上の雲」に関連した画像と追加資料をスクリーンに映しながら、1時間15分ほど話をした。

 主催者によると、参加者は57名とのこと。私の話のあと45分ほど、質問、発言が相次いだ。
「こんな(「坂の上の雲」のような)ドラマを制作し放送することの是非についてNHK内部で議論されなかったのか?」、「時の権力者は歴史の真実を伝える記録を残さないのが常だと心得ておく必要がある」、「いや、以前と比べ、最近のNHKは歴史ものについて踏み込んだ調査をし、優れた番組を放送している」、「戦争を始めるときにはいつも、『自衛のため』が大義名分に使われる。なぜ開戦にいたったのかについて私たちは歴史をもっとよく知り、これからに活かす必要がある」・・・・・。
 集会のあと、近くのレストランに移動してお茶とケーキで1時間ほど懇親会。参加者は20名ほど。「坂の上の雲」をめぐって活発な議論が続いた。そこでは、学校時代、近現代史を学ぶ機会があまりにも少なかった、だから、明成皇后殺害事件などまったく知らなかったという人が多かった。
 日頃、歴史や政治について会話をしたことのないご近所の方も多数参加されたので、いつもより緊張したが、これまでに自分で調べ、考えてきたことを身近な地域の方々に話し、議論を交わす機会を持てたことは大変ありがたかった。以下、3回に分けて、準備した資料を掲載しておきたい。
続きは醍醐聡ブログで

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2009年9月 7日 (月)

NHKスペシャル「日本海軍 400時間の証言」を視て考えたこと

現代史のなかでは私たち市民が知っているようで実はよく知らない、知らされていないことが少なくない。今年7月7日のNHKスペシャル「JAPANデ ビュ-」第1回「アジアの“一等国”」が取り上げた日本による台湾統治はその一例である。さらに基本的な疑問として、あの太平洋戦争は具体的に誰のどのよ うな発意で、どのようなプロセスを経て開戦に至ったのか、生きて帰れる道がない「特攻」という作戦は誰が発案し指揮したのか、東京裁判で死刑が軍部関係者6人に限られ、他に極刑を以て戦争責任を問われた者がいなかったのはなぜなのか?続きは醍醐聰のブログへ

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2009年1月24日 (土)

NHKの「編集権」なるもの:世耕参議院議員の質問をめぐって

会の共同代表の醍醐聰です。先日、youtubeが2008年3月31日に開かれた参議院総務委員会で世耕弘成議員が行った質問をアップしているのを知人から知らされ、視聴しました。質問の一部を収録したものですが、まずはお聴きください。http://jp.youtube.com/watch?v=epeyB8HvjAo

私たちは昨年5月20日に開催された同総務委員会において自民党の磯崎陽輔議員が、NHKスペシャル「セーフティネット・クライシス~日本の社会保障が危ない~」を指して政治的に偏向している、取材先も偏っていると攻撃したことには抗議の声を上げましたが、世耕議員のこの質問は看過していました。

しかし、改めて委員会議録で質疑の全容を確かめますと、重大な問題が山積した質問(に名を借りた番組制作への牽制、圧力)であったと感じます。

そこで、議事録の該当部分の全文を抄録としてWord文書に編集したものを添付(こちら)いたします。

下線は、私が注視すべきと考えた部分を示すために追加したものです。

世耕氏の質問事項は次の3点です。

①NHKの編集権は誰に属するのか?②NHKスペシャルの番組内容がワーキング・プアや貧困の問題に偏って  いるのではないか? 天皇を戦争犯罪人と扱った、とんでもない番組が制作されたこともある。③経営委員会の了解なしに2名の経営委員が記者会見を行ったことについ て。  そのうちの1人(注:保委員のこと)は小さなタウン誌の編集者であるが、  なぜこのような知名度が低い人物が経営委員に選ばれたのか?

②は個別の放送内容に介入した、放送法に抵触する重大な発言であり、③の前段は経営委員の自律的活動に関する不当な干渉、後段は保委員に対する侮辱です。これらに対する関係者の答弁は要旨、次のとおりです。

①について(福地会長)  法人としてのNHKの会長にある。個々の番組については放送総  局長が分掌している。いずれにしても放送現場には編集権はない。

②について(福地会長)  指摘されたようなテーマだけでなく、日本経済が直面している問題  を多角的に取り上げている。ご指摘の点は十分心得ていく。

③について(総務省小笠原氏)  放送法第16条第1項の規定をなぞった答弁

【私のコメント】

最近、小林英明経営委員(安倍晋三元首相が関わった裁判で安倍氏の代理人を務めた弁護士)や上記の世耕参議院議員の質問に見られるように、NHKの「編集権」は会長にあると見立てて、そうした編集権を会長に行使させることによって、政府・与党にとって煙たい番組を企画の段階で封じ込める、あるいは番組制作に干渉しようとする「新手の」政治介入が顕著になっています。そこでは、NHKの自主自律を守る砦となるべき経営委員会が、政治介入のお先棒を担ぐという逆立ちした現実も見受けられます。

制作現場のスタッフの共同討論を土台にし、取材協力者の意見・提案を傾聴しながら、多様な意見を反映する工夫を凝らして練り上げるべき番組制作について、特定の個人に帰属する「編集権」なるものが存在するかのように誘導する議論は極めて有害であり危険であると私は考えています。

この問題はメディアの専門家だけでなく、多くの視聴者が参加する場で活発に議論されるべき重要なテーマであると思います。

この点で、先ほどのメールでご案内した、福地会長も出席する、「経営委員と語る会in 東京」は、意見交換の貴重な機会だと思います。

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