BPO意見書

2017年3月17日 (金)

BPO宛に"クローズアップ現代+"「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った 元慰安婦」に関する審議要望書を提出しました。

 当会がが2月24日にNHK宛てに提出した、「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する質問書(PDFはこちら)に対し、「クローズアップ現代+」編集長・吉野真史氏名で回答文書が3月10日に、届きました。(以下に貼り付け-クリック拡大)

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 当会の運営委員会でこれを検討した結果、3月14日、BPO宛てに、 「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った  元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する審議要望書PDFはこちら) を発送しました。
 下記にも貼り付けます。 ------------------------------------------------------------------
  
                                   2017年3月14日
放送倫理検証委員会 御中

「クローズアップ現代+」「韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った
    元慰安婦」(2017年1月24日放送)に関する審議要望書   

              NHK を監視・激励する視聴者コミュニティ
               共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 当会は、本年1 月 24 日に放送された「クローズアップ現代+  韓国 過熱する“少女像”問題 初めて語った元慰安婦」(以下、「本番組」という)の内容、編集方法には、「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に照らして種々、重大な疑問点があると判断しました。
 そこで、2月24日に本番組制作担当他に同封別紙のような質問を提出したところ、3月10日に同じく同封別紙のような回答が届きました。しかし、この回答は以下に指摘するとおり、当会が具体的な立証、反証資料を添えて尋ねた質問に応答したものになっていません。

1.事実を歪めて伝えたとの指摘に答えていない。
・釜山に少女像が設置された経過が歪めて伝えられたとの指摘(質問Ⅴ)
・日韓合意に関する韓国野党の対応について、事実の経過を歪めて伝えられたとの指摘(質問Ⅵの前段)
2. 事実の裏付け取材に関する疑義に答えていない。
・番組に登場した3人の元「慰安婦」本人の意思は取材を通じて確認されたのかを尋ねた質問Ⅱ
・「当事者の思いと異なる形で少女像が設置された」という解説はどのような事実に裏付けられたものかを尋ねた質問Ⅲ
3.公平な報道に関して、反証を添えた当方の疑義に答えていない。
・元「慰安婦」の声はさまざまと言いながら、なぜ、日本の支援金を受け取った3組の「慰安婦」とその家族の声だけを伝えたのか? (質問Ⅰ)
・相反する論説を掲げた韓国有力紙が多数ある中で、韓国に非があるとする1紙の論説だけを取り上げ、同紙の論調が韓国内で広がりつつあると解説したのはなぜか?(質問Ⅳ)。
4.国際・海外取材にあたっての基本姿勢を定めた「NHK放送ガイドライン2015」に違反しているのではないかとの指摘(質問Ⅸ)に答えていない。

 個別具体的な問題は以上のとおりですが、本番組は全体を通して、日韓合意が行き詰まった原因は「過熱した」韓国社会の対日批判、近い将来に予想される大統領選をにらんだ韓国野党のポピュリズムにあるという予断の下に、冷静さを装った韓国バッシング番組だったと言っても過言でないほど、偏向したものだったと当会は考えます。
 このような番組制作は「放送法」第4条第1項2号、3号、4号規定に反すると同時に、「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える」と定めた「NHK放送ガイドライン2015」からも大きく逸脱したものです。

 以上から、当会は貴委員会が同封別紙の資料を参照いただき、本番組に「放送法」、「NHK放送ガイドライン2015」に違反する点がなかったかどうかを厳正に審議くださるよう要望します。
また、その際には、異論を「さらっ」と紹介するだけで、公平な番組編集をしたかのようなアリバイづくりをしようとする姑息なやり方を正す厳正な審議も要望します。 
                                以上
〔付記〕
 同封のNHK宛て質問書の記述のうち、一部に不正確な箇所がありましたので、以下のとおり訂正をいたします。

 原文(10ページ)
「②河野談話(1993年)では、『われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する』と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では2011年の検定で『慰安婦』関連記述がすべて消え、2015年の検定で『強制連行を直接示す資料は発見されなかった』という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて1社の教科書に『慰安婦』関連の記述が復活しました。」

改訂文
「②河野談話(1993年)では、『われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する』と謳われました。しかし、日本の中学校の歴史教科書では、2010年検定(2012年度版)では『慰安婦』という言葉は全て消え、1社の教科書に、「慰安婦」関連記述が残るにとどまりました。その後、『強制連行を直接示す資料は発見されなかった』という日本政府の見解を併記することを条件に、かろうじて2014年検定(2016年度版)の1社の教科書に『慰安婦』の記述が復活しました。」

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2015年6月13日 (土)

7月12日にシンポジウム「沖縄 戦後70年:基地問題とジャーナリズム」--”辺野古から考える日本のジャーナリズム”

当会はいくつかの団体と共同で
来る7月12日にシンポジウム「沖縄 戦後70年:基地問題とジャーナリズム」--”辺野古から考える日本のジャーナリズム”を企画しました。
詳細は下記チラシを御覧ください。
7・12明大シンポジウム
  クリックでPDFダウンロードできます。

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  当会は'15年4 月20日、全国各地で活動している、NHKなどメディアの放送のあり方を考える市民団体の有志とメディア研究者など97名と連名で、放送倫理・番組向上機 構(BPO)に対し、「辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の不公平と不作為を正すための審議を求める要望書」を提出しました。→参照
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/nhk-1bf7-1.html

その中で
(1)基地建設に反対する沖縄の民意を伝えない瑕疵   
(2)海上保安庁、沖縄防衛局の「過剰警備」の実態を伝えない不作為   
(3)翁長知事と政府との対話をめぐる事実経過をゆがめた不公平な報道 
(4)(政府首脳の発言を論評抜きで伝える)「発表報道」への偏向、その裏返しとしての課題設定の役割の放棄----を指摘し
NHKの報道の政治的不公平、不作為を正すとともに番組の質の向上を促す措置(意見表明、勧告等)を講じてくださるよう、要望しました。

私達はBPOは報道機関がその根幹的使命―国政を めぐる重要問題について、理性ある判断に資する材料を国民に提供するという使命―を果たせているのかどうかについて、真正面から取り組むよう、求めたい。 (「クローズアップ現代」(「出家詐欺」)のような世間の耳目を集める話題の審議が優先されてしまうのかもしれませんが)

このような状況下で今回の7・12明大シンポジウム はBPOの審議を促すためにも重要なイベントと考えます。
 山内氏の沖縄・読谷村の現地調査の報告にもご期待ください。また3 名のゲストは今回のテーマにぴったりの方々ばかりです。迫力のある討論が展開されるよう準備を進めたいと考えています。
多くの方の御参加、ご協力をお願い致します。

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2015年4月23日 (木)

BPOに「辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の不公平と不作為を正すための審議を求める要望書」を提出しました。

去る 3/23日に当会は放送倫理・番組向上機構(BPO)に「籾井発言を一切伝えない NHK報道についての審議の要望書」を提出しましたが、それに引き続き第2弾として「辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の不公平と不作為を正すた めの審議を求める要望書」を提出しました。    
共同代表の「醍醐聰のブログ」
   

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/bponhk-e7ad.html 
から転載します。      
      
BPOへ審議要望書を提出~NHKの瑕疵ある辺野古報道を正すために97名の連名で~   
4 月20日、全国各地で活動している、NHKなどメディアの放送のあり方を考える市民団体の有志とメディア研究者など97名が連名で、放送倫理・番組向上機 構(BPO)に対し、「辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の不公平と不作為を正すための審議を求める要望書」を提出した。私もこの要望書の提出者 の連名に加わった。要望書の全文は次のとおりである。      
    
審議要望書全文    
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/bpo_henokohodo_yobosho.pdf  
また、次のような添付資料2点もあわせて提出した。    
添付資料1 「辺野古新基地建設をめぐる動き」(年表)    
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/nenpyo_henoko.pdf  
添付資料2 「参照番組・記事・論説一覧」    
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/sansho_kizi_bangumi_henoko.pdf  
   
要望書は4点にわたって、辺野古の米軍基地建設に関するNHKの報道の瑕疵を指摘しているが、要旨は次のとおりである。       
   
      
 
審議要望書の要旨   
(1)基地建設に反対する沖縄の民意を伝えない瑕疵         
本 年1月以降再開された辺野古沖基地建設の準備作業に対して、翁長沖縄県知事だけでなく、沖縄県選出の超党派の国会議員、沖縄県議会、名護市議会、那覇市議 会等が工事の中断・中止を求める決議を採択した事実(詳細は添付資料1〔年表〕を参照いただきたい)をNHKはまったく伝えなかった。    
ま た、3月21日、名護市瀬嵩の浜で開かれた辺野古新基地建設に反対する集会には県内外から3,900人が参加(主催者発表)、あいさつした安慶田県副知事 は「知事が近いうちに最大の決断をする時期が来ると思う」と発言した。全国紙とともに、「テレビ朝日」、「日本テレビ」はその日のニュースで集会の模様を 単独項目で伝えた。しかしNHKは沖縄放送局が当日、「移設計画反対の大規模集会」という見出しで伝えるにとどまり、全国ニュースでは、4日後の3月 25日のニュースウオッチ9で、多くの話題の一コマとして約30秒、集会の模様を紹介するにとどまった。    
       
(2)海上保安庁、沖縄防衛局の「過剰警備」の実態を伝えない不作為    
海 上保安庁、沖縄防衛局は基地建設に抗議行動を続ける地元市民やそれを取材した報道関係者に対し、「警備」に名を借りた暴力・威嚇行為を繰り返してきた(添 付資料2を参照)。その実態はメディアの映像に収められており、全国紙も大きな紙面を割いて過剰「警備」の実態を報道した。    
しかし、NHKは、2月22日に2人の市民が米軍に拘束され、沖縄県警に逮捕される事件を伝えたのみで、過剰「警備」の実態も、市民、地元首長・議会、沖縄県選出国会議員がこれに厳重に抗議した事実もまったく伝えなかった。    
       
(3)翁長知事と政府との対話をめぐる事実経過をゆがめた不公平な報道  
翁 長知事は昨年末以降、知事就任のあいさつ、新年度沖縄振興予算ならびに辺野古基地建設反対の要望を政府に伝えるためたびたび上京し、安倍首相、菅官房長 官、中谷防衛相らとの面会を要請した。しかし政府関係者はその都度、「知事の上京を知らなかった」、「面会の申し入れはなかった」などとかわし、面会は4 月5日まで実現しなかった。    
ところがNHKは翁長知事に対する政府の冷遇ぶりは一切伝えない一方、3月24日になって、中谷防衛相が 閣議後の記者会見で沖縄県側との対話の姿勢を打ち出すと、一転、これをその日の定時の全国ニュース(3月24日、正午のニュース、23時30分からの NEWS WEB)で伝えた。同じく中谷防衛相が3月27日の閣議後の記者会見で翁長知事と面会し理解を求めていきたいと発言したことも、その日の定時の全国ニュー ス(NHKNEWS WEB投稿時刻、10時23分)で伝えた。    
さらに、NHKは3月26日、菅官房長官が「そんなに遠くないうちに機会があったら〔翁長知事と〕お会いしたい」と語ったことも、その日の定時の全国ニュース(NEWS WEB, 23時30分~)で伝えた。    
し かし、中谷防衛相は上記の発言に先立つ3月13日の記者会見で「〔翁長知事に〕こちらから会う考えはない。より対立を深めるなら会っても意味がない」 (「時事通信」3月13日、12時16分)と発言した。この防衛相発言は地元紙から厳しい批判・ひんしゅくを浴びたほか、全国紙や在京テレビキー局もその 日のニュースで大きく伝えたが、NHKは一切、報道しなかった。    
つまり、NHKの報道は、昨年の各種選挙で示された沖縄県民の基地建設反対の民意を政府に伝えようとする翁長知事の面会要請に背を向けた政府の対応は伝えず、「いずれ機会があれば」という政府の断り付きの発言であってもそれを大きく伝えた。    
また、3月25日のニュースウオッチ9では、翁長知事、菅官房長官との単独インタビューを終えた大越キャスターの感想という形で、「接点がなかなか見えない中、対話の必要性では政治家どうしの意見は重なるところがありました」という発言を放送した。    
しかし、中立、等距離をよそおった、このような伝え方は対話を要請し続けたのは誰で、それを拒み続けたのは誰かをあいまいにし、政府も対話に前向きの姿勢であったかのような印象を視聴者に与えるゆがんだ放送と言って過言でない。    
こうした報道のあり方は、「ニュースは、事実を客観的に取り扱い、ゆがめたり、隠したり・・・・しない」という「NHK国内番組基準」第2章第5項2の定めに反している。    
       
(4)「発表報道」への偏向、その裏返しとしての課題設定の役割の放棄   
近 年、報道の重要な使命の1つとして「課題設定機能」(日々の報道におけるニュースの選択・提示行為を通じて、いま何が重要な課題であるかを報道の受け手の 知覚に働きかける機能)が重視されている。この点からNHKの辺野古基地建設に関する報道番組を検討すると、政府首脳の記者会見での定番の発言(「粛々と 工事を進める」など)を論評抜きで伝える「発表報道」が大半である。    
その結果、辺野古での基地建設をめぐって焦点となっている次のよう な論点がまったくといってよいほど俎上に乗せられず、視聴者が必要とする判断材料が提供されないばかりか、政府が意識的に喧伝するゆがんだ争点が咀嚼され ないまま視聴者に伝えられるという「国策」報道に変質してしまっている。         
   
本来、辺野古基地問題をめぐって、NHKに求められるのは、    
①辺野古への移設が果たして沖縄の基地負担の軽減につながるのか?    
②沖縄に駐留する米軍(海兵隊)にどのような「抑止力」があるのか? 「抑止力」を認めたとしても沖縄に駐留することが必然なのか? 軍事力に依存した「抑止力」は「戦争の脅威」に対する真の抑止力になるのか?    
という課題を設定し、それぞれの課題について国民が理性的な判断をするのに必要な情報を提供することである。    
   
こ のうち、①の課題を報道するにあたっては、「辺野古への移設」という側面だけでなく、辺野古での基地建設には「軍港の機能」が付け加えられているという指 摘(注6)、米軍北部訓練場の一部返還に先立って、東村高江集落近辺にヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設用の土地を提供することが閣議決定され、すで にオスプレイの飛行訓練が激化している事実、伊江島で米軍の最新鋭ステルス戦闘機(F35B)の配備・訓練が計画され、伊江村議会は3月20日、計画の即 時中止を求める決議と意見書を全会一致で可決した事実など、沖縄全域での米軍再編の動きを調査した上での報道が不可欠である。   
    
また、②の課題を報道するにあたっては、沖縄に駐留する海兵隊はどのような任務を負い、どのような活動をしてきたのかを調査の上、報道する「調査・取材報道」が不可欠である。    
ところがNHKは、この間、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」などで辺野古基地建設の動きはもとより、沖縄における米軍基地再編の動きをテーマにした番組を一度も企画しなかった。    
「放 送法」(第4条第1項第4号)は、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を求めているが、NHKの報道 は政府発表をそのまま伝える「発表報道」に終始している。その結果、独自の調査・取材を通じて沖縄での基地建設の実態を多角的に伝えるという点でも、政府 が強調する基地負担の軽減の真偽を判断する材料を国民に提供するという点でも、著しく瑕疵のある報道になっている。これは報道番組の質の面でも由々しい問 題である。         
   
私たちは、以上指摘したNHKの辺野古基地建設をめぐる報道の瑕疵について貴機構が「放送法」等 の精神に則って慎重に審議し、NHKの報道の政治的不公平、不作為を正すとともに番組の質の向上を促す措置(意見表明、勧告等)を講じてくださるよう、要 望する。         
   
「もっと届け 大切なこと」    
~誰に向かって言うセリフか?~   
 
今朝の報道によると、「クローズアップ現代」(「出家詐欺」)に「やらせ」があったとして、番組に出演した人物がBPOに申し立てをしたとのことである。 そのような疑惑が提起された以上、BPOはもとより、NHKは番組に対する視聴者の信頼を裏切る「やらせ」があったのかどうか、徹底究明するのは当然であ る。    
しかし、沖縄の基地問題、憲法「改正」、安全保障の法整備、秘密保護法の法整備、TPP交渉、労働法制の見直しなど、国政の重要課題をめぐる今のNHKの報道を見ていると、論評抜きの「薄味報道」、官邸のプレス・リリースと大差のない「発表報道」が大半である。    
これでは、NHKが19時のニュースの直前に流す「もっと届け 大切なこと」というフレーズは誰に向かっていうセリフなのかと失笑してしまう。    
BPOも世間の耳目を集める話題の審議ばかりに追われるのではなく、報道機関がその根幹的使命――国政をめぐる重要問題について、理性ある判断に資する材料を国民に提供するという使命――を果たせているのかどうかについて、真正面から取り組むよう、求めたい。 

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2015年3月24日 (火)

籾井発言を一切伝えないNHK報道について審議を─当会を含む18団体BPOに要望書提出

放送倫理・番組向上機構御中        2015年3月23日      

本年2月の会長定例会見等における籾井NHK会長の発言を自局のニュース番組で一切伝えなかったNHKの報道のあり方について審議を求める要望書
      

 NHK会長の籾井勝人氏は2015年2月5日に開催された会長定例会見で、戦後70年の節目にあたり、「従軍慰安婦」問題の報道の見通しを聞かれたのに対して、「政府のスタンスがよくまだ見えない」、「夏にかけて政府のきちんとした方針が分かるのか、この辺がポイントだ」と発言した。また、同月18日に籾井氏が出席して開かれた民主党の部門会議では、籾井氏のこれまでの一連の発言が取り上げられ、同党国会議員との間で激しい議論が交わされた。さらに、同月20日の衆議院予算委員会でも、参考人として招致された籾井氏と委員の間で籾井氏の過去の発言や資質をめぐって質疑が交わされた。      

 「政府のスタンスがよく見えない・・・」という籾井氏の発言は、会長就任会見の場で「政府が右というものを左とは言えない」と語った同氏の見識と軌を一にするものであり、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定めた「放送法」第3条に明確に反している。      
それだけに、民放各局や全国紙などは籾井会長の上記の言動を大きく報道し、「NHK会長 向き合う先は視聴者だ」(2月7日、「朝日新聞」社説)、「籾井NHK会長 国の広報機関ではない」(2月23日、「毎日新聞」社説)などと警鐘を鳴らした。      

 ところが、おひざ元のNHKは2月5日、18日、20日の籾井会長の発言のうち、2月20日の衆院予算委員会での後藤民主党議員と籾井会長の質疑の模様を、2月23日の総合「ゆうどき」とBS1(BSニュース)で簡略に伝えたにとどまり、総合の主要な定時ニュースでは問題の発端になった5日の会長会見の場での籾井会長の発言も18日の民主党の会合での質疑も一切伝えなかった。      
さらにさかのぼると、NHKは昨年1月25日に開催された籾井氏の会長就任会見の場での一連の問題発言(「政府が右という時・・・・」など)を今日まで一切、伝えていない(当日のニュース7で会見の模様を伝えたが、問題発言の部分はすべてカットした)。      
ここで私たちが思い起こすのは、貴機構の「放送と人権等権利に関する委員会」決定第36号(2008年6月10日)である。そこでは、NHKが一方の当事者となった民事訴訟に関する東京高裁の判決をニュースウオッチ9が報道するにあたって、「当事者としてのNHK」の言い分と政治介入が疑われた政治家のコメントだけを伝え、他方の当事者の言い分を紹介しなかったことが問題にされ、同委員会はこれを、公正・公平な取り扱いに欠け、放送倫理に反すると判断した。      

 本件要望書は民事上の係争事件ではなく、NHKの視聴者という立場からの審議の要望であるが、「当事者としてのNHK」と「報道機関としてのNHK」が峻別されず、後者が前者の意向に事実上、従属した結果、報道の公正が侵害され、放送倫理に反する報道の不作為が生じた点では委員会決定第36号の判断が当てはまる事例といえる。      
しかも、NHKは運営財源のほぼすべてを視聴者が負担する受信料で賄っている法人である。この点からすると、NHKの最上位のステークホールダーというべき視聴者に、組織のトップに立つ人物が会長としての資質、適格性を備えているかどうかを判断する上で重要な情報を提供しなかったNHKの報道のあり方は、視聴者の知る権利を侵害し、NHKのガバナンスを有効に機能させるのを妨げる行為と言わなければならない。      

 よって、私たちは貴機構が以上の意見を受けて、「報道機関としてのNHK」が「当事者としてのNHK」から自律した公正な報道に徹するよう促す意見、さらには勧告を発出すべく審議下さるよう要望する。         以上 
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意見提出者(18団体・29名)      
足立恭子(NHKを憂える運動センター・京都 共同代表)      
今井 潤(放送を語る会・代表)      
岩佐英夫(籾井さん! NHK会長やめはったら受信料払います京都の会・共同代表)      
大江真道(籾井さん! NHK会長やめはったら受信料払います京都の会・共同代表)      
神谷扶左子(NHK問題を考える会・かながわ 世話人)      
河野安士(NHK問題大阪連絡会・代表)      
倉本頼一(NHK問題京都連絡会・代表)      
佐藤真理(NHK問題を考える奈良の会・代表)      
篠原一郎(NHKを考える広島の会・世話人代表)      
島田 耕(NHK問題考える滋賀連絡会・代表世話人)      
志水紀代子(追手門学院大学名誉教授)      
須田 稔(籾井さん! NHK会長やめはったら受信料払います京都の会・共同代表)      
隅井孝雄(NHKを憂える運動センター・京都 共同代表)      
醍醐聰(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ・共同代表)      
田中重博(NHK問題とメディアを考える茨城の会・代表世話人)      
田場祥子(「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)・運営委員)      
丹原美穂(市民のメディアをつくる会・ぎふ・代表)      
中島 晃(NHKを憂える運動センター・京都 共同代表)      
中西綾子(時を見つめる会)      
浪本勝年(NHK問題を考える会(兵庫)・共同代表)      
西野瑠美子(「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)・共同代表)      
貫名初子(NHK問題を考える会(兵庫)・共同代表)      
畠山与一(マスコミ問題を考える秋田の会・代表)      
山口英昌(NHK問題を考える会(屋久島)・事務局担当)      
山中静夫(NHK問題を考える会・さいたま・事務局長)      
湯山哲守(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ・共同代表)      
山田恵子(「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)・事務局長)      
山中章(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ・運営委員)      
渡辺力(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ・運営委員)

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2011年2月19日 (土)

BPO:2番組審議へ

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は18日、1月8日放送の日本テレビ系の報道番組「news every.サタデー」と、同月12日に放送されたTBS系のバラエティー番組「イチハチ」(毎日放送制作)2件について審議入りすることを決めた。

 「news every.サタデー」は、ペット対象のマッサージ店を紹介する際、番組スタッフが店員と知りながら、一般客として登場させたという。「イチハチ」は、出演者が実際には所有していない物件を自宅として放送したという。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110219ddm041040157000c.html
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社員と知りながら客と報道 日テレ、BPOが審議入り

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は18日、日本テレビの「news every. サタデー」が1月8日放送したペットビジネス特集で、ペットサロンなどを運営する会社の社員と知りながら女性2人を利用客と報じたとして、審議することを決めた。
 同委員会などによると、番組が取り上げたのは、ペットのマッサージや保険を扱う2社。番組側が客の取材を依頼した際に、会社側から「社員しか出せない」と言われ、承諾していたという。同局は1月10日の別のニュース番組でもこの特集を放送した。

 川端和治委員長は「(2009年に同委員会が勧告した)『真相報道バンキシャ!』でも誤った放送をし、再発防止に取り組んだはずなのに、同じようなことをした」と指摘した。同局は「公正であるべきニュースの取材対象として不適切だった」としている。
 また同委員会は、毎日放送(大阪市)のバラエティー番組「イチハチ」(1月12日放送)が、事実確認をしないまま米国の不動産を女性タレントの自宅と紹介した問題についても審議することを決めた。同番組は、虚偽のホテル買収交渉を事実のように放送した問題でも審議されている。
2011/02/18 22:43   【共同通信】

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2010年9月13日 (月)

参院選配慮ないと審議入り BPO、TBSなど4番組

 NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は10日、今夏の参院選公示日や投開票日前後にTBSなど4放送局が放送した番組について「選挙の公平・公正性に十分な配慮がなかった」として、審議入りすることを決めた。
 対象となったのは、TBSの「関口宏の東京フレンドパーク2」、BSジャパンの「絶景に感動!思わず一句 初夏ぶらり旅」、長野県で放送された長野朝日放送と信越放送のニュース番組。

 同委員会によると、「関口宏の―」は、有名候補者の所属政党を当てさせるクイズを実施し、解答者が候補者名を連呼した。「絶景に感動―」は、タレント候補者が出演している旅番組を投開票日に再放送した。長野県の2番組は、比例区の投票方式を説明するのに、3政党の長野県連所属の4候補者だけを取り上げて放送した。

 また同委員会は、愛知県岡崎市が「事実と異なる表現があった」と抗議していた低所得者の無料宿泊所を取り上げたテレビ東京の番組について、「(番組の)作り方自体に問題はない」と審議しないことを決めた。
2010/09/10 23:31   【共同通信】

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2010年8月 5日 (木)

BPO:「報道ステーション」に倫理上問題 長野の殺人で

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(堀野紀委員長)は5日、08年11月に長野県上田市で起きた境界トラブル殺人事件を取り上げ たテレビ朝日の「報道ステーション」について、遺族からの放送倫理違反の申し立てに対し「被害者への配慮に欠け、放送倫理上問題がある」との見解を公表し た。一方、判決から「主要な部分は真実」と判断。名誉棄損などは「成立しない」とした。

 番組は、被害者夫婦の行動が加害者の犯行動機につながったとする内容で、08年12月23日に放送された。複数の住民の匿名インタビューをつづった手法から、遺族側の言い分を取材する必要があったのに努力を怠った点などを問題と認定した。
 テレビ朝日広報部は「決定内容を真摯(しんし)に受け止め、今後の取材と放送に生かしてまいります」とコメントした。【長沢晴美】
毎日新聞 2010年8月5日 19時20分
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「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案、「委員会決定」

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2010年3月18日 (木)

民放側が本音の議論 バラエティー番組 BPO意見書巡り

テレビのバラエティー番組のあり方を制作者らが議論するシンポジウムが11日、東京都内であった。放送倫理・番組向上機構(BPO)が番組づくりの見直しを求めたのに対する民放側の「回答」の一つだ。一般の視聴者らも交え、議論は3時間以上に及んだ。

 シンポジウムは日本民間放送連盟が「バラエティー向上委員会」と題して開いた。在京民放キー局5社のバラエティー番組の制作者が1社10人ずつ舞台に上がり、BPOの委員や客席の視聴者と意見を交わした。
 議論の出発点は昨年11月にBPOの放送倫理検証委員会がまとめた意見書だ。バラエティー番組に視聴者が不快感を抱いているとして問題点を指摘した。
 シンポジウムでは、制作者側が「現場介入」と身構えている様子が明らかになった。制作者計50人に意見書への評価を問うと「うっとうしい」が22人。BPOに苦情を寄せた視聴者に対しては「もっと勉強してほしい」が37人。「視聴者が正しくないというなら、ほかの世界で番組をつくれば、という話になる」とBPOの委員がたしなめる場面もあった。

 意見交換では現場の本音が相次いだ。「テレビで暴力を流すと(子どもが)暴力をふるうと言われても。そんなバカを育てた親が悪い」(TBS)。「クレームを過剰に考えすぎる必要はない」(テレビ東京)。
 後半は視聴率について討論。「視聴率を取るため、制作者らの首がどんどん締まっている」(フジテレビ)、「作品としての完成度を考えた時、視聴率が落ちてもそこを我慢するのが必要」(テレビ朝日)、「視聴率がなければ素晴らしい番組ができるか、と問うのは民放にとってナンセンス」(日本テレビ)などと意見が分かれた。
 無理に結論を出さないことが前提とはいえ、シンポジウムでは具体的な改善策は見えてこなかった。冗談半分に「私はまな板の上のコイ」とする制作者からは、本気で番組を見直そうとする意識は感じられなかった。「BPOは、どう変わってほしいと思っているのか」との視聴者の問いに、BPOの委員も明確に答えることはなかった。

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■独自の検証番組も フジテレビ
 BPOの意見書に対する民放各社の対応をみると、「意見書を重く受け止めた」とするフジテレビの動きが際立っている。
 1日に、新たな制作方針として「愛がなければテレビじゃない!安心できなきゃテレビじゃない!やっぱり楽しくなければテレビじゃない!」とうたった「宣言」を発表。2月27日放送のバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」では「いじめや差別につながる」と指摘された演出を再現し、出演者らが議論した。
 今月27日には、是枝裕和監督の演出でバラエティーの歴史や功罪を検証するドキュメンタリー番組を放送する。(松田史朗、寺下真理加)(3/16Asahi)

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2010年3月 3日 (水)

バラエティー番組「訂正すべき点ない」フジテレビ

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が昨年まとめたバラエティー番組の見直しを求める意見書に対し、フジテレビは、「社内で勉強会を開くなどしたが、現在の番組制作に間違いや訂正すべき点はない。ノウハウはこれまで通りで進めたい」との見解を明らかにした。
鈴木克明・編成制作局長らが記者会見した。意見書はバラエティー番組について「下ネタや芸人同士の内輪話がテレビ離れを招いている」と指摘していたが、これに反論した。3/3(asahi)
バラエティー番組の課題を議論 制作者が視聴者とシンポ
【テレビ】TBS「(バラエティでのイジメが)イジメに繋がるのは別の話。親が止めるべき。そんなバカを育てた親が悪い」…民放5局の本音
バラエティー番組の課題を議論 制作者が視聴者とシンポ 
シンポ「バラエティー向上委員会」 制作側が批判に反論も
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2009年11月18日 (水)

バラエティー番組にBPO意見書…イラスト・口語多用

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は17日、テレビのバラエSatonaka ティー番組について、性的表現や内輪話などが視聴者のテレビ離れを招いていると指摘し、番組づくりの見直しを求める意見書(PDFダウンロード)を日本民間放送連盟に通知した。「さァ、イッてみようっ」「これはレッドカード、即退場」など、くだけた口語を多用する異色の文体で、制作現場の若手に共感してもらえるよう工夫した。
 意見書では、バラエティー番組を「古い秩序や権威を笑い飛ばし、常識や社会通念を揺さぶってきた」と評価した上で「相当数の視聴者が不快感・嫌悪感を持ち、反発する問題点がある」と指摘。

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