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2020年6月19日 (金)

「抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を」

2020.6.17日、当会を含む16の団体と38名の個人が連名で、前田晃伸NHK会長、正籬聡NHK放送総局長、「これでわかった!世界のいま」番組制作担当宛てに、
「抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を」
と題する意見・要望・質問書を、賛同者名簿を添えて、発送しました。

なお、質問については、6月30日(火)までに、文書で回答をもらうよう、要請しています。
(6月25日(木) にNHKの回答が届きました。→こちら参照
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                                            2020年6月17日

NHK会長 前田晃伸 様
NHK放送総局長 正籬 聡 様
「これでわかった!世界のいま」番組制作担当 御中

抗議デモの原因を歪曲し、黒人への偏見を助長した動画アニメ等の謝罪と検証を


<問題の経過> 

NHKの国際ニュース番組「これでわかった! 世界のいま」の公式ツイッターに投稿された動画アニメとツイッターに書き込まれた文章に対して、今、内外から厳しい批判が殺到しています。デモの原因になった警官の黒人殺害に触れず、黒人の怒りを暴動かのように描き、偏見を助長するものだといった批判です。
問題の動画は、同番組が2020年6月7日に放送した「拡大する抗議デモ アメリカでいま何が」の中で放映したものです。

 NHKは、6月9日に問題の動画の「掲載にあたって配慮を欠き、不快な思いをされた方にお詫びいたします。NHKでは、人権を尊重し、取材や制作のあらゆる過程で細心の注意を払うよう取り組んでいきます」という謝罪を発表するとともに、問題の動画を削除しました。
しかし、問題の本質に触れない、このようなおざなりのお詫びがいっそう批判を広げています。

<私たちの意見>
 (1)問題の動画は、1分20秒という限られた時間とはいえ、目下、アメリカ内外で、黒人・白人の枠を超えて、広がっている抗議デモの真因(白人警察官による無抵抗な黒人男性の殺害)に触れず、貧富の格差に対する黒人の怒りが原因であるかのように事実を歪曲した内容でした。しかも、アニメの主役として登場した黒人は筋肉質で粗暴なふるまいをする人物と受け取られる描き方でした。
こうした動画は、同番組の公式ツィッタ―に書き込まれた「白人警察官には黒人に対する漠然とした恐怖心があって、今回の抗議デモの発端となったような事件がなくならないとも言われているんだ」という説明と平仄を合わせた印象操作と受け取られてもやむを得ません。
問題の動画と書き込みは、黒人の人権に対する「配慮に欠けた」というレベルの問題ではなく、黒人がアメリカ社会の中でたどってきた歴史認識の欠如に加え、黒人への偏見を助長した悪質極まりないものです。NHKの上記お詫びには、こうした認識が完全に欠落しています。

(2)さらに見過ごせないのは、同番組の公式ツィッタ-に書き込まれた次の一文です。
「アメリカ社会は、考え方の違う両者が互いにののしり合って、どんどん分断が深まっていってしまったんだ。」
なんという無知蒙昧な一文でしょうか。番組の公式サイトによれば、「解説するのは取材経験・専門知識が豊富なデスクや記者」と記されていますが、あまりの取材不足、不勉強、不見識にあきれるほかありません。

(3)ジョージ・フロイドさん殺害に抗議するアメリカのデモは、平和的理性的な方法で全米各地に広がっています。人種差別を煽るトランプ大統領の言動には、現・元政府高官や与党共和党の間からも公然と批判が起こっています。世界各地で、黒人・白人の違いを超えて、抗議のデモが広がっています。
こうした事実のどれを見ても、抗議デモが「考え方の違う両者が互いにののしり合う」ことから生まれたものでないことは明らかです。

(4)6月7日の放送番組に関わるアニメ動画、書き込みと同様のことは、香港の一国二制度や米中の対立を描いた動画や書き込みにも見受けられます。いずれも、問題をあまりに単純化し、図式化した、粗暴な内容です。
これほど問題の本質を歪曲したアニメ動画や書き込みを流布し続けるようでは、「これでわかった! 世界のいま」という番組の看板に偽りありと言わざるを得ず、このような番組を存続させることは有害です。

<質問と要望>
 (1)前田晃伸会長は6月11日の会見において、「不快な思いをされた方におわびをしたい。番組内容を改めて確認し、人権についての局員の研修を行い、再発防止につとめる」と発言しましたが、問題の根源に及ぶ謝罪とは思えません。
 そこで、前田会長、正籬放送総局長、「これでわかった!世界のいま」番組制作担当に伺います。
・本件番組に関わる動画アニメとツィッタ-への書き込みが各方面から批判を招いた真因は、人権への「配慮の不足」ではなく、人種差別問題の本質に関する番組スタッフの「稚拙で歪んだ認識」にあると理解されていますか?
・謝罪すべき対象は、「不快に思われた方々」ではなく、NHKの全ての視聴者であるという認識はないのですか?
・何を謝罪すべきかと言えば、NHKが「放送倫理の確立に向けて」の中で誓った「放送倫理」人権を尊重する、正確を期す、品位の保持に努める   に背く動画と記事を流布した事実だという認識をお持ちですか? 
・問題の動画アニメと書き込みは、人種差別について「誤解を与えた」のではなく、「偏見を助長した」という認識をお持ちですか?
以上について、皆様の見解をお聞かせ下さい。

(2)NHKが一片の謝罪とお詫びで済ませず、問題の根源にまで踏み込んだ番組の検証を行い、その結果を、人種差別の撤廃に取り組んでいる人々、外部の有識者、ジャーナリストらも出演する検証番組として、多くの人々が視聴しやすい時間帯に放送するよう、求めます。

 上記の質問、要望に対するNHKとしての回答を2020年6月30日までに、文書で、別紙宛てにいただくよう、お願いします。

                                                                    以上
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@@6月17日に私たちが連名で発送しました文書について、6月25日(木)、NHK(根本拓也報道局長・田畑祐一報道局国際部長の連名)から、回答が届きました。
下記文書①(画像)の下線はすべてこちらでつけたものです。
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また、6月14日放送の「これで分かった! 世界のいま」の冒頭で田畑国際部長が読み上げた「お詫びの文書」②はこちらを参照ください。
紙の上の反省ではなく、それをこれからの放送にどう活かすのかこそが問題ですが、①と②の文面を照合しますと、回答①は、大部分、田畑国際部長名のおわび文書②を踏襲したものです。
ただし、①で当方が下線を引いた箇所は、②の田畑文書にはなかった文です。
また、②にあった「多くの方に不快な思いをさせてしまった・・・」がなくなっています。

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