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2017年2月14日 (火)

籾井会長退陣と当会の活動を振り返って

籾井会長退陣と視聴者コミュニティの活動
                        2017年2月14日
              NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ・運営委員会
 昨年12月6日、NHK経営委員会は、17年1月24日で任期が切れる籾井勝人氏の会長再任を行わず、(常勤)経営委員で、監査委員の元三菱商事副社長・上田良一氏を新会長に選出しました。この3年間は前代未聞の政権追随的かつ粗暴な会長とそれを許す経営委員会との闘いの日々でした。

1. 籾井会長の3年

 3年前の14年1月25日、とんでもない人物をNHKが会長に迎えてしまったことが早くも就任記者会見で露呈しました。いわく、「私の任務はボルトやナットを締め直すこと」、「領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない。」、「靖国神社の参拝と合祀については、総理が信念でいかれたということで、それはそれでよろしい。いいの悪いのという立場にない」、「慰安婦を巡る問題については、どこの国にもあったこと。ヨーロッパはどこでもあった。従軍慰安婦はそのときの現実としてあったこと。韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい」、「秘密法については。世間が心配していることが政府の目的であれば大変だが、そういうことはないだろう。秘密法は政府が必要と説明しているので、様子を見るしかない」などなど。およそ日本の有力なジャーナリズム、それも「公共放送」のトップにふさわしくない数々の放送法違反の暴言を吐いたのです。このような暴君にこのままNHKの運営を託すわけにはいかない、と全国からNHKに多数の抗議が寄せられ、新会長の即時辞任の要求の声が澎湃として上がりました。当会も2014年5月1日から半年間の籾井会長の辞任を求めて「受信料凍結運動」を呼びかけ世論を喚起しました(「受信料凍結運動とその解除」については16年12月26日付運営委員会声明「籾井会長退任後の当会の運動の進め方」を参照下さい)。

 「暴君」への懸念は直ちに現実のものとなりました。籾井氏は、就任するや10人の理事全員に「日付なし」の辞表を提出させました。その後は自分の気に染まない理事に「辞任要求」を迫り拒否されるという「事件」を繰り返しました。それは国会でも批判され、ようやく3ヶ月後に「返却」されました。
 籾井氏はその後も、国会で幾度にもわたって参考人として呼ばれ、そのたびに問題発言を繰り返しました。それによって、NHK予算は3年続けて「全会一致の承認」がなされず、参議院総務委員会では、そのたびに会長選出の方法の改善や透明性確保などをNHKに要求した「附帯決議」がされてきました。経営委員会も3回にわたり籾井会長の言動に「注意」を与えました。
 モラル的にも、15年1月に、NHKにチャーターさせたハイヤーを使用してゴルフ場を往復した「事件」は特筆すべきものです。経営委員会・監査委員会からの「注意」を受けて約5万円のハイヤー代を2ヶ月後にNHKに「返還」したと報じられました。私たちは上記「暴言」と合わせてこの問題でも「会長辞任」・「会長解任」の要求を行いました。しかし籾井会長と経営委員会は、ことごとく私たちの要求を退け、籾井氏は会長職への居座りを続け、「任期満了」を迎えました。

2. 籾井会長の再任を許さず、その選任に推薦・公募制の採用を求める全国的運動の展開

 籾井会長が居座る中、会長任期残り1年を切った昨年3月、当会が呼びかけて全国の「NHK問題」に取り組む諸団体による「NHK会長・経営委員選出に視聴者の声を!」の相談会が大阪でもたれ、それを受けて4月東京で2回目が開かれました。大阪では11団体23人、東京では13団体20人の参加でした。そこでの議論の結果、
①経営委員会の理解・ 認識を広げよう、
②会長選出の公開性を実現しよう、
③籾井会長再選は最低限許さない意思統一を、
④会長選出に関する申し入れを経営委員会に行う(文案は放送を語る会)、
⑤経営委員の選出に関する申し入れも行う(文案は視聴者コミュニティ)
⑥全国に「会長を推薦する運動」を呼びかけることについて「NHK問題全国連絡ML(メーリングリスト)」参加団体の意見を聞く、などが確認されました。

 ④に関しては5月に経営委員会あてに27団体の連名で「次期会長の選任にあたって、真に公共放送にふさわしい会長が選ばれるよう、選考過程の抜本的改革を求めます」との要望書を提出し、6月末に経営委員長が新しく石原進氏に交代したためあらためて再度同文の要望書を提出しました。経営委員会が7月26日に「指名部会」を発足させ、月1回のペースで「会長選任」活動を始めたのに対応して、上記申し入れの趣旨を広く視聴者・市民に広げるべく、(⑥に関して)8月11日を期して「次期会長の選考にあたり、籾井現会長の再任に絶対反対し、推薦・公募制の採用を求めます」の署名運動を全国に呼びかけました。合わせて「ネット署名」の窓口も設けました。そして同時に、日弁連や日本ペンクラブなどの職能団体、学術会議やジャーナリズムなどの学術組織など、ジャーナリズムに対して真摯に向き合う候補を推薦してもらえると期待される有力全国組織に向けて、経営委員会に対して「公共放送のトップにふさわしい会長が選任されるよう、皆様方に会長候補を推薦」していただくよう要請する訴えを発信しました。
⑤に関しては、10月5日付で衆参両院の各総務委員会・委員全員にあてて要望書「12月に任期満了を迎えるNHK経営委員(3人)の後任委員選任に際しての要望―石原進・長谷川三千子両委員の再任には絶対反対―」を送付しましたが、結果的には2人とも再任されてしまいました。

 経営委員会「指名部会」は、私たちの要望である「推薦・公募制」の導入を無視し、討論さえしませんでしたが、籾井会長の再任については私たちの運動が実り、「拒否」が実現しました。
 任期の最終盤、籾井氏は「会長再任」を果たすべく、「視聴者への受信料1ヶ月あたり50円の還元」の人気取り・アドバルーンを上げたり、「解散」をすでに決めていた人気グループ・スマップの紅白歌合戦での「最終公演」を実現するよう現場に命じたりと最後まで醜い画策をしました。しかし経営委員会は11月22日の委員会で「『50円の還元』は時期尚早」としてその提案を否決し、12月6日の(経営委員会)指名部会では会長候補に残す要件とされていた「過半数(7人)の賛成」が得られず早々と「選外」となりました。そして唯一「候補として残った」上田良一氏について「全員一致」で会長として選任しました。結局のところ、私たちの要求していた、「籾井会長の罷免」は最後の瞬間に辛うじて「不信任」の形で実現することとなったわけです。それにしても放送法「第55条・非行があると認めるときは、これを罷免することができる」を発動せず、自ら規定する「会長などの服務準則」の「第2条・放送が公正,不偏不党な立場に立って」や「第5条・会長,副会長および理事は,日本放送協会の名誉や信用を損なうような行為をしてはならない。」を無視して、視聴者の「籾井会長の罷免」要求に背を向け続けてきた経営委員会の「無責任な3年間」は弾劾されなければなりません。そしてあらためて今後の「会長選考」において、私たちは、「財界」からトップを迎える従来のやり方を止めさせ、私たちが署名運動で要求したように、「視聴者の意思を反映させる、透明な手続きの下で、ジャーナリズム精神を備え、政治権力に毅然と対峙できる人物が選任される」気運を盛り上げていく必要を感じました。

 「籾井会長の罷免」を早期に実現できなかったとはいえ、各地の市民団体が3年近くにわたって続けた罷免要求の署名運動が8万筆を超えたこと、さらに、籾井氏の任期切れ半年前から、21の市民団体が共同で取り組んだ「籾井氏不再任、推薦・公募制採用」の要求署名が約4ヶ月の短期に約35,000筆集められ、NHKに4次にわたって届けられたことは籾井会長の退陣を促す大きな力となったことは明らかです。NHKに届ける最後の集約となった11月22日の第4次分
までで、
合計 34,725
筆、ネット上に寄せられたメッセージ総数は2,923件でした。その後遅れて届いた分も含めると1月末現在で合計 35,939筆
(内ネット署名4,960筆)でした。この間、NHKの「安倍チャンネル」化を許さず、籾井会長の退陣を求めて全国から多くの視聴者がNHK前に集結し、15年8月と11月の2度にわたって、文字通り「NHK包囲」行動が敢行されましたが、斬新な試みとして大きな効果があったと思います。また、10月31日著名な放送関係者、ジャーナリズム論研究者、作家ら17人の方々が呼びかけ、87人の方が賛同された経営委員会に対する訴え「次期NHK会長選考にあたり籾井現会長の再任に反対し、独立した公共放送にふさわしい会長の選任を求めるとともに、透明な選考過程の下で推薦・公募制を採用するよう要請します」を発表されたことも時宜に適って、「籾井再任」に対する大きなブレーキになりました。

3. 上田良一新会長の評価と今後の運動

 上田新体制のNHKに対する当会の基本的立場
は、12月26日付で運営委員会が発表した「籾井会長退任後の当会の運動の進め方」で述べられています。その中から以下引用させていただきます。
 次期会長に上田良一氏が選任されたことについて、「4代続けて財界出身の会長」、「経営委員から会長を選ぶのは異常」といった指摘があります。確かに、財界人の出身母体に由来する利害と公共放送のトップに求められる使命には無視できない利益相反があります。これまで経営委員として同僚だった上田氏と経営委員会が緊張関係を保ちながら各々の職務に専念するかどうかも注視しなければなりません。他方、上田氏は今年の5月に函館市で開かれた視聴者と語る会で、

「受信料は、契約を締結する義務は法律で定められていますが、支払い義務は負っていません。支払いを義務化するということは、『支払いの義務を負わせて、支払わない人に対して罰則を設ける』ということであり、国の力で受信料を徴収するということになりますので、国の影響が及んでくるという懸念があります。」
「放送、ジャーナリズムが国家権力に追随するような形というのは、必ずしも望ましい形ではありません。」

と発言したことは注目に値します(NHKホームページ・「『視聴者のみなさまと語る会』in函館」より)。当会は、上田次期会長が今後、こうしたジャーナリズム精神を貫いて職務にまい進するのかどうか、注意深く見守り、是々非々の立場で新執行部と向き合っていきます。



 その際、重要なのは会長が交代したことによって、NHKの「政府広報」体質が改まるのかどうかです。当会は従来から、NHKの政府広報化、国策放送化は会長の資質に還元して済む問題ではなく、NHK政治部による報道番組のコントロール、番組制作現場の職員のジャーナリズム精神の劣化といった要因によるところが大きいと考えてきました。「会長が籾井氏だから、どうにもならない」といった言い訳が通らなくなったこれからが、NHK職員の矜持と力量が問われるときだと言っても過言ではありません。

目下、日本では数の力に頼んだ愚劣な政治が横行し、憲法「改正」、海外での武力行使、沖縄での米軍の基地機能の拡大強化、本土へのオスプレイ配備、原発再稼働、世代を超えた貧困の深刻化など、悪政の犠牲が広がっています。このような悪政を国民の意思で一掃するには、多くの国民が「事実を知ること」、「参政にあたって十分な判断材料を持つこと」が不可欠であり、そのためにメディア、とりわけNHKが担うべき役割は非常に大きいものがあります。
当会は今後も、予断をまじえず、NHKの番組をウオッチし、良質の報道・ドキュメンタリィ番組、豊かな文化と教養を育む番組には激励を送り、国策を援護したり、視聴者の知る権利に背いたりするような番組には厳しく批判を続けていきます。また、NHKの番組に対し、政治権力の介入や圧力があった場合は報道の自由を守るために毅然と抗議していきます。当会はNHKの報道の自由を守り、NHKのガバナンス改革を進めていくうえで経営委員会が果たす役割が大きいことを踏まえ、経営委員の選考過程の透明化、選任基準の明確化を求めると同時に、他の市民団体と共同して公募・推薦制を含む経営委員の選考制度の抜本改革を目指す運動に取り組んでいきます。同時に、さしあたっては、経営委員会の会議の公開(傍聴)、「視聴者と語る会」の充実(回数を増やすこと、語る会の模様をNHKの番組として放送することなど)を要望していきます。

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