「出家詐欺」放送への「反省」を奇貨としたNHK番組「クローズアップ現代」の弱体化を許すことはできません
2015年12月7日
NHK会長 籾井勝人様
NHK放送総局長 板野裕爾様
「クローズアップ現代」 制作スタッフ様
「出家詐欺」放送への「反省」を奇貨としたNHK番組「クローズアップ現代」の弱体化を許すことはできません
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 醍醐 聰・湯山哲守
さる11月6日、BPOはNHKが昨年4、5月に報道した“出家詐欺”を扱った2つの番組「クローズアップ現代」と「かんさい熱視線」について、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表しました。そして同時にこの中で、NHK自身による今年4月28日の「調査報告書」を受けて直ちに、高市早苗・総務大臣が行ったNHKに対する「厳重注意」の行政指導および自民党情報戦略調査会がNHK幹部を呼びつけ行った「BPO問題を説明させる」などの報道の自由を阻害する行為を厳しく非難しました。その根拠としたものは、放送法第3条「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」でした。この非難は当然のことです。この条項をないがしろにした総務大臣と自民党はその非を認め、憲法21条に基づく「報道の自由」尊重の姿勢をあらためて表明すべきです。
ところで、NHKの板野放送総局長は記者会見で、「BPOの指摘を真摯に受け止めている」としつつ、「再発防止策については、単に形を整えるだけでなく、実際に現場の業務に落とし込んでいく」と述べています。「実際の現場の業務」が何を意味するかに関して、大変懸念すべき情報が聞こえてきます。「NHK幹部の間で、『クロ現』は来年3月末で打ち切りになるという方針が大筋で決まったようです。また同時に、7時からの『ニュース7』の放送時間も短くし、現在の30分を15〜20分にするという案が出ている」(11月10日付「週刊現代」)と。週4日7時半から30分間放送される「クローズアップ現代」は、幅広い分野で起きる現代の日本が直面する課題を分かりやすく解説・分析し、時として政府・与党の政策にも鋭いメスを入れる番組として、これまで数少ない貴重な報道・時事番組の役割を果たしてきました。
ただし、一昨年の「秘密保護法」問題、昨年の「集団的自衛権行使容認」問題、そして今夏の「安保法案」問題など安倍政権の重要な憲法違反の諸法案・決定に関して、まったく取り上げなかったことは政治的に意見が対立する問題に踏み込まない腰が引けた姿勢と受け取らざるを得ません。唯一「例外」なのは、皮肉にも昨年7月3日、集団的自衛権行使容認の閣議決定を「広報」すべく、菅官房長官がその時間枠を占有してしまったことです。その際に、キャスターからの数少ない「予定されなかった」質問が発せられたことに首相官邸が気色ばんだという事件がありました(雑誌FRIDAY昨年7月25日号)。また、金曜日限定、関西限定の「かんさい熱視線」も「クローズアップ現代」の「関西版」として好評です。
最近の「クローズアップ現代」が厳しい環境にさらされながらも、依然として貧者、弱者に寄り添い、不正告発に鋭くメスを入れる貴重な番組を提供していることを評価し、「かんさい熱視線」と合わせて今後もその精神を堅持した番組の継続を切に要望します。 以上
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