NHKの新経営委員長選出にあたっての要望書を提出しました。
5月11日、実質国有化される東京電力の社外取締役の一人として、數土(すど)NHK経営委員長を起用する人事方針が発表され、6月下旬に開かれる同社の株主総会後の取締役会でNHK経営委員長の職にとどまったまま、正式に社外取締役に就任される予定と報道されました。
当会運営委員会は直ちに協議して、數土経営委員長宛に就任撤回を求める「要望書」をまとめ、5/14日、NHKを訪問して提出しました。「開かれたNHKを求める全国連絡会」や近畿の3団体も行動を起こしました。迅速な市民運動による包囲、NHK労組の反対、有力マスコミの批判等を受けて5月24日數土委員長は辞任を表明しました。改めて経営委員の選任方法、財界人による経営委員長が続いている事への批判が議論されていくことになると思われます。數土経営委委員長の辞任を受けて当会は「新経営委員長選出にあたっての要望書」を提出しました。
また川端総務大臣にも「NHK経営委員の補充人事にあたっての要望」を提出しました。
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新経営委員長選出にあたっての要望
NHK経営委員会 御中 2012年5月31日
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ運営委員会
5月24日、數土文夫NHK経営委員長は緊急記者会見で、「内定している東京電力の社外取締役に専念する」としてNHK経営委員長と経営委員の辞任を表明しました。
この問題が明るみになった5月13日の翌日付で私たちは、事の重大性に鑑み直ちに數土委員長に次のような申し入れを行いました。「NHK経営委員長の職と東京電力の社外取締役の職は、それぞれの職責の重さ、時間的精神的な負担の面から両立は不可能だ」ということを指摘した上で、
①東京電力の福島原発事故の完全収束に向けた取り組みと、電力の安定供給といった諸問題はNHKの極めて重大な取材・報道対象であり、「NHKの業務執行を監督する立場にある経営委員会の長が、そうした取材先の社外取締役に就任し経営に参加することは、メディアに携わる者の基本というべき非当事者原則に真っ向から反し、経営委員会の職務遂行の公正性に対する視聴者の信頼を根底から覆す」こと、
②さらには事実上、国営企業となる東電の経営に関与することは、政府の意志決定に参加することを意味し、政治からの独立を生命線とするNHKを監督する経営委員長の職にとどまることは結局、NHKあるいはNHK経営委員会の政治からの自立に関する視聴者の信頼を大きく損なうことになり、二重に両職の兼任はとうてい許されるものではない。したがって東電の社外取締役就任を断ること、もし断る意志がないのならNHK経営委員長・経営委員を辞職するべきだということです。
數土経営委員長自身は記者会見で、兼職批判には「配慮したが影響は受けていない」と述べ、あくまでも両職の兼任が不適切であることを認めませんでした。
しかしこの辞任は私たち視聴者運動の主張に理があったことで、多くの経営委員が批判の姿勢を強め、少なくないマスコミが批判報道を行うこととなり、結果として多方面からの批判の集中したことが功を奏したものと考えられます。
私たちの緊急の要望は実現しました。しかし、次の経営委員補充、経営委員長の選出にあたっては今回の「辞任劇」から教訓を引き出さなければなりません。
総務省、NHK経営委員会が推進してきた「財界人」委員長はここ4代にわたって続けて、引責または事実上の引責辞任を重ねてきました。
2007年の石原邦夫氏は社長をしていた東京海上日動火災保険が保険金不払いを行った不祥事で引責辞任、
2008年政治的発言や放送内容への容喙などの不見識によって古森重隆委員長(富士フイルムホールディングス社長)が委員非再選出、
2011年、NHK会長選出をめぐって独断専行を行ったことで小丸成洋委員長(福山通運社長)が引責辞任。
特に、古森、小丸、そして今回の數土の3代の経営委員長は、NHKが公共放送であって「自主自律」の原則が如何に重大なことかを理解していなかったことから破綻してきたことは重要な教訓です。
経営委員長の「財界人たらい回し」の弊は一日も早く改めるべきです。
「経営者」経験ではなく、「視聴者目線を持ち、ジャーナリズム精神に造詣の深い方」が何よりも求められます。
NHKが「放送ガイドライン」の冒頭に掲げる「自主・自律の堅持」の原則は番組編成・放送の現場だけでなく、全ての業務において全ての職員によって貫徹されなければならないとガイドラインの中に書かれています。経営委員長人事や会長人事においても、これは当然貫徹されなければなりません。今回の「社外取締就任」騒動に関して、NHK労組(日放労)を除いては、NHK内部から公式の批判発言がなかったことはこのガイドラインの指針が貫かれていなかったといわざるをえません。
差し迫っての経営委員長人事は、過去しばしばやられたような(衆参両院の承認を受けての)首相任命による外部からの(経営委員長候補の)委員を待つことなく、現在の委員が「互選」をして決定すべきです。
そして委員長候補となる人は「放送の使命」についての見解をきちんと表明して、それに基づいて選出すること、新たな委員の補充にあたっては、政府は拙速を戒め、視聴者に推薦を呼びかけ、「広く」人材を求める方式を採用するよう要望します。たびたび「視聴者のみなさまと語る会ーNHK経営委員とともにー」で意見が出されているように、視聴者は「受信料支払い義務」を強要されるばかりで、何の「権利」もないという状態は脱却しなければなりません。
この際、視聴者にしかるべき「権利」を与え、経営委員候補の推薦、会長候補の推薦などを試み、「NHKを身近に感じる」ことが出来るような方策を検討していくべきではないでしょうか。
數土委員長の辞任を受けて、私たちは政府およびNHK経営委員会に対して次のことを要望します。
1、財界人たらい回しの経営委員長人事を行わないこと。
2.ジャーナリズムに造詣の深い人を選出すること。
3.選考の基準と経過を視聴者にわかりやすく公開すること。
私たちは以上の要望を広く、他の視聴者団体や市民運動団体と合議し、総務省、NHK理事会にも要求していきます。
付記 経営委員長の選出にあたっては過去、経営委員会自ら以下の原則を確認しています。
経営委員長として特に有するべき要件として、
① NHKと特別な利害関係にないこと。② 合議制。
③ 透明性のある運営と国民への説明責任を果たす運営。④ 執行部との緊張関係を維持しつつ良好な関係を保てること等
(平成22年6月、第1121回経営委員会議事録)。
改めて経営委員会がこれらの原則を新経営委員長選出にあたって確認するよう要望します。
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総務大臣
川端達夫 様
NHK経営委員の補充人事にあたっての要望
2012年6月1日
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ運営委員会
5月24日、數土文夫NHK経営委員長は緊急記者会見で、「内定している東京電力の社外取締役に専念する」としてNHK経営委員長と経営委員の辞任を表明しました。
この問題が明るみになった5月13日の翌日付で私たちは、事の重大性に鑑み直ちに數土委員長に次のような申し入れを行いました。「NHK経営委員長の職と東京電力の社外取締役の職は、それぞれの職責の重さ、時間的精神的な負担の面から両立は不可能だ」ということを指摘した上で、
①東京電力の福島原発事故の完全収束に向けた取り組みと、電力の安定供給といった諸問題はNHKの極めて重大な取材・報道対象であり、「NHKの業務執行を監督する立場にある経営委員会の長が、そうした取材先の社外取締役に就任し経営に参加することは、メディアに携わる者の基本というべき非当事者原則に真っ向から反し、経営委員会の職務遂行の公正性に対する視聴者の信頼を根底から覆す」こと、
②さらには事実上、国営企業となる東電の経営に関与することは、政府の意志決定に参加することを意味し、政治からの独立を生命線とするNHKを監督する経営委員長の職にとどまることは結局、NHKあるいはNHK経営委員会の政治からの自立に関する視聴者の信頼を大きく損なうことになり、二重に両職の兼任はとうてい許されるものではない。したがって東電の社外取締役就任を断ること、もし断る意志がないのならNHK経営委員長・経営委員を辞職するべきだということです。
數土経営委員長自身は記者会見で、兼職批判には「配慮したが影響は受けていない」と述べ、あくまでも両職の兼任が不適切であることを認めませんでした。しかしこの辞任は私たち視聴者運動の主張に理があったことで、多くの経営委員が批判の姿勢を強め、少なくないマスコミが批判報道を行うこととなり、結果として多方面からの批判の集中したことが功を奏したものと考えられます。
私たちの緊急の要望は実現しました。しかし、次の経営委員補充、経営委員長の選出にあたっては今回の「辞任劇」から教訓を引き出さなければなりません。総務省、NHK経営委員会が推進してきた「財界人」委員長はここ4代にわたって続けて、引責または事実上の引責辞任を重ねてきました。
2007年の石原邦夫氏は社長をしていた東京海上日動火災保険が保険金不払いを行った不祥事で引責辞任、
2008年政治的発言や放送内容への容喙などの不見識によって古森重隆委員長(富士フイルムホールディングス社長)が委員非再選出、
2011年、NHK会長選出をめぐって独断専行を行ったことで小丸成洋委員長(福山通運社長)が引責辞任。
特に、古森、小丸、そして今回の數土の3代の経営委員長は、NHKが公共放送であって「自主自律」の原則が如何に重大なことかを理解していなかったことから破綻してきたことは重要な教訓です。経営委員長の「財界人たらい回し」の弊は一日も早く改めるべきです。「経営者」経験ではなく、「視聴者目線を持ち、ジャーナリズム精神に造詣の深い方」が何よりも求められます。
NHKが「放送ガイドライン」の冒頭に掲げる「自主・自律の堅持」の原則は番組編成・放送の現場だけでなく、全ての業務において全ての職員によって貫徹されなければならないとガイドラインの中に書かれています。経営委員長人事や会長人事においても、これは当然貫徹されなければなりません。今回の「社外取締就任」騒動に関して、NHK労組(日放労)を除いては、NHK内部から公式の批判発言がなかったことはこのガイドラインの指針が貫かれていなかったといわざるをえません。
以上のような教訓を踏まえ、当会は貴殿ならびに政府に対して、數土氏の後任の経営委員長の選出、ならびに経営委員の補充人事(国会同意人事に向けた候補者選考)にあたり、拙速を戒め、視聴者に推薦を呼びかけ、広く人材を求める方式を採用するよう要望します。また、たびたび「視聴者のみなさまと語る会――NHK経営委員とともに――」で意見が出されているように、視聴者は「受信料支払い義務」を強要されるばかりで、何の「権利」もないという状態は脱却しなければなりません。この際、視聴者にしかるべき「権利」を与え、経営委員候補の推薦、会長候補の推薦などを試み、「NHKを身近に感じる」ことが出来るような方策を検討していくべきと考えます。
そこで、当会は、貴殿および政府に対し、次のことを要望します。
1.數土氏の辞任を受けた経営委員の補充人事、さらには今後、任期が満了となる経営委員に代わる新委員の候補者選考にあたっては、「経営手腕の実績」に偏重した選考基準を改め、公募・推薦制を採用して、広く人材を募ること。
2.その際には、財界人たらい回しの選考を改め、ジャーナリズムに造詣の深い人物を候補者に選出すること。
3.国会の同意人事に諮られる経営委員候補者には、国会のしかるべき場で所信の表明を求め、それに対する国民の意見も踏まえて、同意人事を行うこと。
私たちは以上の要望を広く、他の視聴者団体や市民運動団体と合議し、NHK経営委員会、にも要望していきます。 以上
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