NHK:会長退任、福地茂雄氏に聞く 法令順守は形より心
NHK会長を務めた福地茂雄氏(76)=現アサヒビール相談役=が先月24日、1期3年間の任期満了に伴い退任した。不祥事のため2代続けて任期途中で辞任したNHKで、14年ぶりの穏やかな退任となった。福地氏に心境を聞いた。【長沢晴美】
http://mainichi.jp/enta/geinou/news/20110218dde018200079000c.html
◇大相撲中継の中止「最も印象的」
--心境は。
3年間を走りきったという達成感です。それは(職員)みんなが与えてくれた。
--3年間で一番印象的だったのは。
やはり(大相撲の野球賭博問題で)昨年7月の名古屋場所の中継を中止したことだ。やめることに迷いはなかったが、「放送してくれ」という声をどう満たすかが課題だった。
ダイジェストを思い付いたのはその日(同年7月6日)の朝。会長室で役員らに「できるだけ早い時間にダイジェストか何かできないかな」と尋ねた。隣にいた今井(環)理事(報道担当)がすぐに階下に下りて戻り「(午後)6時台で22分間なら取れます」と返答したこと、いまだに覚えている。
6時台というのは、本当は実況中継を見たいがやむを得ずダイジェストを見る人だから(通常放送している)夜中のダイジェストとは見る人が違う。違う内容にしてほしいと注文を付けた。うまくやってくれた。
--08年1月にインサイダー取引事件が発覚し、就任直後はコンプライアンス(法令順守)対応に追われた。
期間が長くてしんどかったのはインサイダーだった。インサイダー問題なんて、アサヒビール時代は取り組んだことがない。
--ルールのなさに驚いたわけですか。
やった本人は一番悪いんだけど、やられたセキュリティーシステムに甘さがあった。だけどその後はやろうと思ってもできないシステムにした。アクセスする人を制限し、アクセスした人をチェックする。それが当時はなかった。
--コンプライアンスについて「もっと大ナタをふるうかと思った」との声も聞くが。
大事なのはコンプライアンスマインドだ。要するに法律や道徳や倫理は破っちゃいけないという気持ちです。制度やマニュアルはもともとある。でもそれに心を入れなければだめ。これが、言葉では易しいけれど、実行するのは難しい。
--会長時代に放送局を延べ87局回ったそうですが。それも一環ですか。
僕はやっぱり話し続けることだなと思ったんです。しかも1対1で。相手の目を見ながら口で話すというのがコミュニケーションの原点だから。
--後任の松本正之会長については。
鉄道会社(松本会長はJR東海出身)も、ビール会社も放送会社も、共通するのは不特定多数のお客様を相手にしている点。お客様目線、視聴者目線という理念を共有できる。いい人に来てもらったと思う。
--受信料制度見直し、10%還元等の課題が残ります。
10%問題というのは、現在の受信料制度が存続するという前提のことで、単独で考える問題ではない。パソコンとか携帯電話とか、視聴者が映像情報を取る形がどう変わるかによって、現在の受信料制度は成り立たなくなる。受信料のあり方は、視聴者と通信も含めた放送とのトライアングル(相関関係)の中で考え直さなければならないと思う。
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毎日新聞 2011年2月18日 東京夕刊
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