日本テレビが“聖域”にメス、賃金3割カットを強行:TBSでも大ナタ(東洋経済)
(東洋経済オンライン 2010年12月07日掲載) 2010年12月10日(金)配信
生涯収入が最大で3割減。日本テレビ放送網が10月に強行導入した残業単価の引き下げなどを含む新賃金制度をめぐり、労使間の緊張感が高まっている。
3月の経営陣による提示以降、撤回を求めてきた日テレ労働組合は、9月末に36時間に及ぶ大規模ストライキを決行。3回目となるストで応戦したが、労使合意には至らず。交渉余地は少なくなっており、年明けにも法廷闘争へ発展する可能性が出てきた。
新制度はA3用紙で13枚にも上り「10年に1回あるかないかの大変更」(日テレ幹部)。年功序列から評価給への変更に加えて、テレビ局に多い、手厚い“特別手当”にメスを入れたのが特徴だ。
最も大きな変更点は定期昇給の見直し。従来、年1回の昇給があったが、新制度では、評価実績に応じて積み上げられたポイントの累計が一定点数に達しないと昇給できない仕組みに変更。労組幹部は「4~5年に1回程度の昇給ペースになる」と訴える。
年収を下支えしてきた数々の手当も減る。ほぼ全社員に支給され、残業単価に含まれる固定職務手当6万7800円が廃止されるほか、年4回のボーナスとは別に年4回支給されてきた業績連動手当も実質削減される。同手当は四半期の単体売上高に連動し、1回につき約15万円が支給されていたが、今後は評価次第で7万円程度に下がる。
表向きは「格差」是正
日テレではすでに、2008年度以降入社の社員を対象に、現社員とは違う賃金制度を導入。業務内容は同じでも、給与は約2割低い水準で働いている。今回の新制度導入は、表向きには二つの制度(中途は職種別年俸制で別枠)を一本化するのが趣旨で、評価制度導入により一時的に年収がアップする社員が出てくる可能性もあるとしている。
ただ、新制度では退職金も大幅カットされるため、総合職社員の平均生涯収入は、4.2億円から3億円へと最大3割ダウンする見込みだ。
日テレが強行策に踏み切った背景にあるのは、業績の低迷だ。企業からのテレビ広告出稿が減る中、単体収益は10年以上右肩下がり傾向が続いており、01年3月期に631億円あった営業利益は10年3月期に222億円まで縮小。足元の視聴率は好調で、業績も小幅ながら回復の兆しが見られるものの、今後大きく伸びる見通しは立てにくい。
対して労組は「3年間の激変緩和措置があったとしても、会社側の説明は不誠実。人件費を削減しないと、会社が本当に立ち行かないのか」(労組幹部)と疑問を投げかける。東京都労働委員会に斡旋を申し立て、年末までの団交再開を要求している。一方、日テレ幹部は「地方局では3年間で35%人件費を落とした局もある。それでも年収は県庁役員と同じぐらい高い。商品力は落ちない」と強気な姿勢を崩さない。事態に進展がなければ、労組側は不当労働行為などで提訴することを視野に入れている。
TBSでも大ナタ
人件費に大ナタを振るっているのは日テレだけではない。視聴率4位に低迷するTBSホールディングスは民放他局に先駆けて04年に分社化し、09年に持ち株会社に移行。本体よりも賃金水準が2割低い子会社・TBSテレビへの転籍を進めており、管理職以上は今期までに終了した。今後労組との交渉に突入するが、対立激化は避けられそうにない。
フジテレビジョンも、制作現場から「年間4回以上あった特別手当が2回に減り、年収が1割減った」との声が漏れる。
ただ、テレビ局の平均年収はフジ(1452万円)、日テレ(1262万円)、TBS(1357万円)など、高いのも事実だ。免許事業ゆえに参入障壁が高く、高収益を築いてこられたが、今やインターネットなど新興勢力の台頭で本業はジリ貧状態。
日テレの氏家齊一郎会長はかねてから「広告減少が続く中では生き残れるキー局は2~3社」と指摘している。テレビ局を囲む環境が今後一段と厳しさを増すのは間違いない。
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/toyo-20101210-02/1.htm
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