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2010年12月10日 (金)

追い詰められた「光の道」構想 ソフトバンクの新メディア対策

http://diamond.jp/articles/-/10437
 劣勢を挽回できるか――。
 再び、ソフトバンクの孫正義社長が動き出した。12月9日の午前9時から、孫社長は、参議院議員会館地下1階の会議室で、民主党の若手議員たちを前に、「IT立国による日本の新たな成長」と題する講演を行った。その内容はこれまでと同様、「光の道」構想の必然性を説くものだったという。

 その夜には、19時直前の60秒間と21時直前の60秒間に、これまでのCMの総集編と称して、在京キー局すべての広告枠を横並びで買い取り、視聴者をインターネットのサイトに誘導するという仕掛けCMを行った。お茶の間の好感度ナンバーワンのCM「白戸家」を使って、イメージアップを狙うという作戦に出たのである。
 直接、お茶の間の視聴者に訴求する――。そこまでソフトバンクが追い詰められているのは、先の11月30日に出された「光の道」構想に関する「取りまとめ案」に起因する。監督官庁である総務省や通信業界関係者からの支持を得られなかったことから、ソフトバンクが主張してきた改革案はほとんど反映されていなかったのだ。

 

要するに、過去1年間の有識者会議(タスクフォース)における議論 を通じて、公式の場所では孫社長も構成員として加わっていた有識者会議の場で、非公式の場では孫社長の意を受けたソフトバンクの社長室が中心となって構成 員に個別のアプローチをかけて説得してきた苦労が、まるで報われなかったというわけだ。「とりまとめ案」の結論は、端的に言えば、官民から「ソフトバンク の提案(仮説)は“実現性に乏しい”」と評価されたのである。
 ところが、この結論に納得できなかった孫社長は、「リスクを取って事業をやった経験がない有識者に何がわかるのか」と不満をブチまけた。確かに、それだけを聞けば、「なるほど」と思えるだろう。

  だが、そもそも政治主導の暴走を食い止めるために有識者会議で議論を重ねてきたのであり、4つの領域に分かれて議論が進められてきた有識者会議には、 NTTの三浦惺社長やKDDIの小野寺正会長などと同じく、孫社長も1つの有識者会議に参加していたのである。なのに、「たった数人で日本の将来を決める のはおかしい」と主張するのは少々無理がある。
 じつは、総務省の官僚は、「とりまとめ案」の作成にあたり、業界関係者も見落としてしまいそうな重要な“布石”を打っておいた。
「光 の道」構想は、原口一博前総務大臣の肝煎り政策とはいえ、ソフトバンクの提案をそのまま採用するのは危険だと判断し、総務省が目指す「光の道」構想はネッ トワーク、サービス、アプリケーションを含めて、どの階層でも“オープン性”を確保すると位置付けたのだ。つまり、NTTだけに的をしぼってインフラを切 り出すのではなく、それぞれの階層で自由に事業者同士が競争できる状態を担保したということである。

 これで、孫社長が主張してきた「光 の道構想=NTTのインフラ部門の公社化」というロジックは成り立たなくなり、NTTやKDDIなどの通信事業者、ケーブルテレビ、電力系設備事業者など との設備競争を促すという従来通りの路線が踏襲された。さらには、NTTの組織形態は、2015年までは現在の状態が維持される見込みとなった。ソフトバ ンクにとっては、事実上の“完敗”である。
 もっとも、ソフトバンクに劣勢が続く「光の道」構想はまだ完全に決着していない。来る12月14日に総務省内に「政策プラットフォーム」が立ち上がり、先の「取りまとめ案」を受けての議論が“場”を移して再開される。

  来年1月より、「光の道」構想は、次期通常国会にかけられることになっており、このまま行くと5月頃に最終決着となる見込みである。かつて、自らも莫大な 広告宣伝費を使っていながら、NTTの広告宣伝費を「メディア対策費」と言い替えてみせた孫社長は、自陣営が劣勢と見るや、全国5大紙と地方紙に意見広告 まで出した。
 業界中を「そこまでやるのか」と驚かせたのが、緊急テレビ出演だった。テレビ東京系列とテレビ朝日系列の報道番組に自らかけあい、 出演することに成功したのである。ただし、それ以外の局からは断られた。そして、9日には、前述のように、在京キー局の同一時間帯の広告枠をすべて買い取 るという“実力行使”に打って出た。
 現在、孫社長を筆頭としたソフトバンクの幹部は、自社のサイトで集めた「光の道はAかBか。」という、何回も押せる誘導尋問のような二者択一の設問に対する答えを“国民の声”と言い出し、「国民の声を国会に」と連呼し始めた。

 だが、騒いでいるのは、ソフトバンク関係者かインターネット上の勝手応援団くらいで、総務省も業界関係者も相手にしていない。
  これまで孫社長は、旧態依然とした通信業界内の“因習”を打破し、NTTやKDDIを向こうに回して、多くの改革を成し遂げてきた。公平を期すために言え ば、ADSLでの積極果敢な営業攻勢でNTTの顔色をなからしめたり、旧電電公社の時代から“聖域”とされてきたNTTの基本料金を下げさせたりしたこと は、孫社長でなければできなかった偉業だ。
 だが、粗さが目立つ「光の道」構想に関しては、劣勢を跳ね返すことが難しそうである。むしろ、具体的な「光の道2.0」にヴァージョンアップしてから、本当にインフラに投資する姿勢を実績として見せたほうが、一般の国民は納得するであろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

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