公共放送 ネット進出に審査 英BBCが先例(NHKの「ネット同時配信」関連記事)
朝日 2010年11月20日15時39分
テレビ番組をパソコンや携帯端末でも自由に見られるようにしようと、NHKが本格的な検討に入った。だが、放送法改正など課題は多く、民放各社の反発も予想される。NHKが描く未来をすでに実現した欧州では、公共放送の役割としてふさわしいのか、審査する仕組みをつくったうえで、慎重にサービス拡大が図られている。
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テレビとパソコンに同じ番組が流れる。ジェームズ・カニントンさんはパソコンでBBCの番組をオンデマンドでよく見るという=ロンドン、丸山写す |
■必要性・市場への影響、独立機関が調査
「見なよ。同じ番組が流れているから」。ロンドン在住のミュージシャン、ジェームズ・カニントンさん(34)が、自宅でテレビとパソコンの画面を見せてくれた。
英国放送協会(BBC)が流す水泳大会の映像が両方に映っている。テレビは電波を受信した「放送」、パソコンはインターネットを経た「通信」だが、視聴者から見れば同じ番組だ。
来年には新しいサービスが加わる。BBCと民放最大手のITVなどが共同で取り組む「ユー・ビュー」だ。テレビに専用の機器をとりつければ、普通のテレビ番組だけでなく、見逃した番組もネット経由のオンデマンドで、無料で視聴できるようになる。
BBCが「デジタル化時代の公共放送の役割」としてネットへの本格的参入を表明したとき、英国では公共放送の役割としてふさわしいのか、議論が巻き起こっ
た。このため2003年から06年にかけてBBCの機構改革を行い、公共的価値を客観的に見極める審査制度が設けられた。
放送で見逃した番組をパソコンで一定期間、無料で見られるBBCの「アイ・プレーヤー」など、ネットを活用した新たなサービスを打ち出した場合は、こうした審査で「公共的価値」を認められてはじめて、サービスを開始できる仕組みになった。
実際に審査を担当するのは、12人の委員と70人の選任スタッフがBBCの業務を視聴者目線で監督する独立機関「BBCトラスト」と、政府から独立した放送・通信の規制機関「オフコム」だ。
「ユー・ビュー」の場合、09年2月に審査が始まった。有料衛星放送事業者のBスカイBなどは「民業圧迫だ」と猛反発。トラストとオフコムは、視聴者への聞き取り調査や、業界関係者への意見聴取を実施。サービスの必要性や市場への影響を慎重に調べた。
審査は数段階に分けて公表し、その度に視聴者や関係機関の意見を採り入れながら進めた。最終的には、BBCの出資比率に上限を設けて関与を薄くするなどの条件をつけ、今年6月にトラストが「公共サービス」のお墨付きを与えた。
「公共的であるかどうか見極めるのは本当に難しい。受信料を支払っている国民に見える形で、透明性の高い審査を進めることが必要だ」とBBCトラストは言う。
■独も追随 日本は議論もまだ
英国の審査の仕組みは「公共性」をはかる先例となり、ドイツでも昨年から同じような審査が導入された。公共放送のARDとZDFなどが新たなサービスを始
めようとする場合、サービスの必要性や市場への影響について、監督機関の放送評議会による3段階の審査が必要になった。
ZDFのローベルト・アムルング・デジタル戦略担当は「ネットを活用したサービスが可能になり、どこまでが公共放送の役割か視聴者に説明しないといけない時代。だからこそ、『公共性』を審査する仕組みは重要だ」。
一方、日本では、NHKが描く未来のサービスを、だれが、どのような基準で判断するかはみえていない。民放連の広瀬道貞会長は19日、「ネット活用の利点が見えない」とNHKの構想を牽制した。
英国の放送に詳しい須藤春夫法政大教授(メディア論)は「日本では公共放送のサービスの範囲が政治的に決められる傾向があるが、英国では独立機関が客観的
データで判断し、視聴者も『自分たちの公共放送』という意識が高く、『公共性』を真剣にオープンな形で議論している。NHKもまず、新しい公共放送像を自
ら明確に打ち出し、幅広い議論を喚起する必要がある」と指摘している。(丸山玄則)
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