〈メディア激変134〉韓国から―12 韓国版FCCが教えるもの
〈メディア激変134〉韓国から―12 韓国版FCCが教えるもの
2010年10月22日 asahi http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201010220350.html
外の目には、日本が不思議に見えることもあるらしい。韓国のメディア界でしばしば耳にするのは、こんな疑問だ。
「言論の自由が進んでいる日本で、なぜ総務省が放送・通信行政をやってるんですか?」
韓国は10年前に新放送法が施行され、放送行政は、それまでの公報庁から、合議制の放送委員会に移った。米連邦通信委員会(FCC)がモデルだった。
放送と通信の融合が進んだ08年には、情報通信省と統合されて放送通信委員会(KCC)になった。 確かに今や、総務省が放送局に免許を与える強い権限を持ち、行政指導を繰り返す日本のような国は少数派になりつつある。
だが、委員会方式にすればそれですべてうまくいくとは限らないことも、韓国の例から見えてくる。
まず、政治との距離だ。KCCは大統領直属の機関で、委員5人は大統領が任命する。2人を大統領が、残る3人を国会が推薦するが、そのうち1人は与党側から入るから、政権寄りの人物が過半数を占めてしまう。
実際、いまの崔時仲(チェ・シジュン)委員長は李明博(イ・ミョンバク)大統領の側近で、前回見たYTNの社長人事と同様に、政権との距離を問う声があった。
しかも、東亜日報出身。どの新聞社を新局(総合編成チャンネル)に選ぶかがKCCの最大の課題になる中で、新聞との距離まで問われかねない。 次に、特に通信との統合後に感じられているのが、意思決定の遅さだ。李明博政権になってやったことなのに、与党ハンナラ党の国会議員で、放送通信の常任委員長をしている鄭柄国(チョン・ビョングク)さん(52)は「個人的意見」と断って、「KCCになって良い点より悪い点が多い」と言う。 「放送が志向するのは公平性や公正性。通信は時代の先端産業で、急激な動きに対応しないといけないから、委員会で合議していては非効率。規制・監督は委員会がいいが、産業振興などは省庁でやった方がいいでしょう」 似た意見を別の人からも聞いた。
携帯通信のSKテレコム顧問で大学でメディア論を教える金栄培(キム・ヨンベ)さん(51)。放送委員会の事務局で産業部長などをやったあと、民間に転じた人だ。 「放送と通信は事業は融合しても、価値観が全く違う。放送は急な変化は少なく、政府との距離が大事。独立した委員会がいい。通信は急速に変わり、政策がもろに消費者に影響を与える。迅速で一貫した意思決定が必要な産業振興は省庁に残し、許認可などは委員会がいい」
日本も民主党政権になって、「日本版FCCを」の声が高まった。隣国の試行錯誤を参考にしてはどうだろう。(編集委員・隈元信一)
──────────────────────────────────────
| 固定リンク
« 「NHK裁判資料集」・「評価集」出版記念シンポジウム NHK番組改変事件、10年目の検証 | トップページ | 今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム(第9回会合) »
「独立放送委員会構想」カテゴリの記事
- 11月21日 第4次集約をNHKに提出しました。「次期NHK会長選考にあたり、籾井現会長の再任に絶対反対し、 推薦・公募制の採用を求めます」 署名活動(2016.11.22)
- 総理大臣宛の要望書を本日内閣府に手交してきましたのでご報告いたします。(2016.10.07)
- NHK会長に安西・前慶応塾長 2代連続で外部出身へ(2010.12.29)
- NHK:会長後任人事、外部3候補に絞る 来月12日決定へ(2010.12.23)
- NHK経営委員に辞令を交付(2010.12.21)
コメント