投稿:NHK総合8月6日「吉永小百合被爆65年の広島・長崎」を見て
片山むぎほ(東京の高校生平和のつどい世話人)
とても良い番組だと思いました。1945年3月の東京大空襲の数日後に生まれた吉永小百合さん個人の思いと人生のなかで、彼女が原爆詩の朗読を続けていることの意味が分かりやすく語られているドキュメントで、その中で被爆者の思いが未来に引き継がれていく姿が伝えられていました。
ただ、私の個人的な思いとしては、ちょこっと残念でした。
それは、広島の高校生の「せこへい」(世界の子どもの平和像の運動)が少し取り上げられただけで、「世界子どもの平和像を東京につくる会」の運動が紹介されなかったことでした。1996年の「東京の高校生平和のつどい」では、吉永小百合さんに原爆詩集を朗読していただいたという繋がりもあったのに。
1995年8月、広島・長崎50周年の年に、アメリカのニューメキシコ州に「子どもの平和像」が建てられました。これは、サダコと「原爆の子の像」について学んだアメリカの子どもたちが、「原爆の子の像」の姉妹像を建てようと活動してつくられたものです。建設委員のひとりであった少年トラビス君(当時13才)が、翌1996年8月に広島で開かれた全国高校生平和集会に参加して「愛と平和と核廃絶のメッセージとして、世界各国に『世界の子どもの平和像』を建てたい」と発言したことから、「せこへい」は始まりました。
その辺のことは報道されたのですが、これを受けて、東京でも、1999年5月30日に「世界の子どもの平和像を東京につくる会」が結成されて、2001年5月5日(21世紀最初のこどもの日)に、「核兵器と戦争のない21世紀を」という子どもたちの願いを込めた「世界の子どもの平和像(東京)」がついに完成したことは、全く取り上げられませんでした。この像は東京江東区の東京大空襲戦災資料館の玄関先に建っています。
その像のデザインは、子どもたちの平和像建設委員会が多くの中から選考したもので、練馬区の中学生2年生が創作したものが最優秀点として選ばれました。
「ヒビの入った卵は『今にも壊れそうな平和』と『本当の平和の誕生』の二つの意味を込めました。卵の上にかけた帯は『これ以上壊れないようにする包帯』であり、と同時に『誕生を祝福するリボン』です。ひまわりは太陽のように明るい未来へまっすぐのびてほしいという願いをこめ、水をやる少女は人間の代表で、人の手で明るい未来を築こうというイメージです」
この像のデザインを説明して、作者の中学生はこう述べています。
私は最初にこのメッセージを読んだとき、中学生なのに、なんと複雑な視野と思いを持っている子だろうと思いましたが、今となってみると、「21世紀を平和な世界にと願った人々の思い」に逆行して、9.11米多発テロからアフガン・イラク戦争へと進行していった21世紀の悲劇を暗示するような、それでもなお、核兵器廃絶と平和を願う人々の思いがあることを暗示するようなデザインであったと、子どもの目の鋭さに感心する次第です。2001年5月5日には、まだ、こんな21世紀が来るとは、私は夢にも思っていませんでした。
NHKの取材がここまで及んでいなかったことが残念です。でも、発信すべき側にもマスコミへの働きかけが弱かったのだと思います。つねに、マスコミから無視されてきたという思いが根底に流れているからかも知れませんが…。
次の機会には、未来を考える子どもたちの思いを深く取材して欲しいなあと願って、私は、まずここに投稿しました。
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核兵器廃絶に向けて取り組む高校生
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