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2010年7月28日 (水)

地デジ化あと1年 国は完全移行延期の英断を

特集社説2010年07月24日(土)付 愛媛新聞
 来年の7月24日。いつでも誰でもテレビが見られる環境は保たれているだろうか。
 テレビの地上デジタル放送への完全移行まで、あと1年に迫った。同時に従来のアナログ放送は終了してしまう。
 家電エコポイント制度をあてこみ、すでに地デジ対応の薄型テレビに買い替えた家庭も多いことだろう。受信機の世帯普及率は今年3月に83%を超えた。しかし、これはサンプル調査であり、かなり楽観的な数字といえる。

 テレビ1億台の時世の現実として、全世帯の地デジ化は相当な困難のはず。制度的、地理的、技術的な課題が残る現状のままでは、数十万、数百万単位で「視聴難民」が出るとの見立てもある。
 まず、経済的に厳しい世帯への支援が進んでいない。従来型テレビでの視聴を可能にする簡易チューナーを、国が無償配布しているが、5月末時点で申請は対象世帯の3割程度だ。県内では2万6千世帯が対象とみられる。実態把握は難しく、自治体などとの連携が欠かせない。
 中継局の設置が進み、県内での世帯カバー率は93・1%に達した。が、これは配信側の環境を示す数字だ。いざ薄型テレビを買ってみて、初めて自分の家では地デジが見られないことを知る悲劇も起きている。山間部や島しょ部の共聴施設、集合住宅の設備改修も急がねばならない。

 深刻なのは想定外の「新たな難視聴区」だ。アナログ波なら受信できるのに、障害物に弱いデジタル波だと受信が困難となる地区を指す。県内では6月末時点で90地区1135世帯に増えている。
 都市部のビルなどの陰によって受信障害が起こる地区では、原因の建物に共同アンテナを立てていることが多い。基本的に当事者協議に委ねられるが、新たな負担が伴うこともあり、総じて対応が遅れ気味だ。原因の建物を特定できない例もあり、家庭や個人の対処には限界があろう。

 画質向上の利点があるとはいえ、視聴者の負担感はぬぐえない。ケーブルテレビ(CATV)のアナログ変換放送、衛星放送による代替などで事業者も努力している。
 来年7月前後にはテレビの買い替え、受信工事の集中が起こりうる。現状の混乱や不安をかんがみて、国は地デジ化の完全移行を延期することも英断ではないか。放送分野の有識者らは2、3年先延ばしするよう提言している。
 そもそも地デジ化は国策であることを忘れてもらっては困る。アナログ放送終了後の空き電波の有効活用も大切だが、災害報道などを担うテレビは国民の生活を支える貴重なインフラである。重視すべき公益性は何か。情報通信行政の基本は「誰も置き去りにしない」であるべきだ。
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どうするTV局 アナログ終了、実は地デジ化3週間前
2010年7月16日 asahi
 地上波テレビ放送が完全デジタル化する来年7月24日まであと1年余り。テレビコマーシャルなどは盛んに「2011年7月完全移行」をPRしているが、実はアナログによる通常の放送は、総務省の計画では6月末に終わることになっている。7月24日までの約3週間は「移行期間」とされるが、民放トップが異論をはさむなど、迷走ぎみだ。周知不足も重なり、視聴者が大混乱する恐れもある。

 話がややこしくなっている背景には、アナログ放送の通常番組を来年6月30日に打ち切ったあとも、しばらくはアナログ電波は流し、7月24日正午をもって電波を止めるという「二段構え」になっていることがある。

 総務省は「7月24日に突然アナログ放送を終了すると視聴者が混乱する」と説明。約3週間の移行期間を設け、軟着陸を図ろうというわけだ。

 この方針は昨年4月、放送局も入った総務省の協議会で決めた。では、この約3週間に何を流すのか。協議会では三つの選択肢を示した。

 (1)通常番組の上にアナログ放送の終了を伝えるメッセージを重ねて放送する(2)通常番組をやめてアナログ終了を知らせる別の番組を流す(3)青い背景画面にお知らせメッセージだけを表示する――という方法だ。各放送局は自らの判断で、いずれかのパターンを選ぶ。

 (1)だと、画面いっぱいのメッセージの背景に通常番組が流れ、内容がかろうじて分かる程度。(2)や(3)では、まったく通常番組を見ることができない。7月24日にはこうした放送もやめ、画面は小さな多数の光が明滅する「砂嵐」になる。

 ところが、ここにきて各局の足並みが乱れてきた。民放各局が加盟する日本民間放送連盟の広瀬道貞会長(テレビ朝日顧問)は15日の記者会見で、「50年間、アナログ放送を見ていただいた方には、最後の最後まで見ていただきたい」と述べ、7月24日ぎりぎりまでアナログの通常放送を続ける考えを表明。昨年決めた三つの選択肢には、強制力はないものの、総務省幹部は「ちゃぶ台をひっくり返された」と困惑を隠さない。

 他の民放やNHKは「どの方式にするか、いつまでに決めるかは固まっていない」。

 視聴者に通常番組の終了時期をあいまいな表現で伝えてきたことも、混乱を招く一因になりそうだ。7月1日以降の具体案が決まっていないため、家電メーカーのカタログなどには「7月24日までにアナログ放送は終了」と書かれているものが多い。「までに」という表現で、終了時期をぼやかしてきたわけだ。

 「こうした言い方では、普通の人はアナログの通常番組を7月24日の当日まで視聴できると思ってしまう。通常番組は6月30日に終わると、正確に知らせるべきだ」。6月の総務省の検討会では、消費者団体などから告知方法の見直しを求める意見が相次いだ。家電メーカーの委員からは「カタログの文章を変えなければならない。早く決めてくれ」と悲鳴が漏れた。

 総務省は最新のパンフレットに、7月1日以降は通常の放送ではなく、三つの選択肢のいずれかになることを初めて画像入りで載せた。放送局にもPRしてもらうよう要請する方針。だが、対応は後手に回り、放送局側の調整不足も含め、視聴者不在の混乱が続きそうだ。
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日録メモ風の更新情報 坂本衛|MAMO's

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●愛媛新聞社の24日付けサイト記事:地デジ化あと1年 国は完全移行延期の英断を──これは、まともな社説ですね

●一方、新聞大手各紙は、総務省のデタラメな「世帯普及率」を論評抜きに引用し、さらに地上デジタル放送の完全移行には残り1000万~1100万世帯の対応が必要という「推定」を、なんら根拠を示すことなく記事にしている。この部分は、やっぱり無責任すぎるでしょう。65年以上前の「大本営発表」から、あまり進歩していませんね。社会保険庁の宙に浮いた5000万件の年金記録問題から、「役所のデータを信じると騙される」と学習していないのか? 総務省発表の世帯普及率は信用できないという記者会見に出席し、専門家が書いた詳細な根拠を渡されてなお、総務省のデータだけを伝えたがるのは、なぜ、誰に遠慮しているのか?

◆朝日新聞:地デジ、2割が未対応 移行まで1年「負担重くて…」……「2011年7月24日の地上デジタル放送(地デジ)完全移行まで、あと1年。日本の全世帯の2割強にあたる1100万世帯が、地デジへの対応を終えていない。」
◆読売新聞:地デジ普及へ対策急務……「地デジ受信機の世帯普及率は83・8%(3月時点)と国の目標をかろうじて上回るが、地デジに対応していない世帯数は1000万近く残っており、総務省は普及対策を強化する必要に迫られている。」
◆毎日新聞:クローズアップ2010:地デジ移行まで1年 全世帯普及間に合うか……「来年7月24日の地上波テレビのアナログ放送停止とデジタル放送への完全移行まで残り1年を切った。受信機の普及率こそ8割を超えたが、電波受信に必要なアンテナ交換などが遅れており、今年3月末時点では、全世帯の2割強にあたる約1100万世帯が未対応だ。」

●念のために書いておきますが、私たち(坂本・清水英夫・砂川浩慶・原寿雄)の推定する3月時点での地デジ世帯普及率はせいぜい60%台」(70%以下)は、総務省調査や内閣府調査に基づいて、誰が計算しても普通に導くことができる数字であって、しかもビデオ・リサーチ社の調査(ただし未公表)にも近い。無責任な総務省や総務大臣が、いくら自分たちの調査数字(83.8%)を強弁しても、私たちの主張する数字(せいぜい60%台=70%以下)を疑う余地はなく、普及の実態という「現実」をひっくり返すことはできません。これは、戦前に大本営発表が米空母何隻大破と大げさに言い、NHKラジオや新聞がそれを伝えても、米軍優位という現実をひっくり返すことができなかった(日本国民は軍部や役所やマスメディアに騙されていた)のと同じことです
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アナログ放送終了まであと1年 電波は止められるのか  池田信夫

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地デジ、2割が未対応 移行まで1年「負担重くて…」(7/23 朝日)
 2011年7月24日の地上デジタル放送(地デジ)完全移行まで、あと1年。日本の全世帯の2割強にあたる1100万世帯が、地デジへの対応を終えていない。アンテナ交換が必要な南関東や、地デジの電波が届かない山間部での遅れが目立つ。「地デジ難民」を生まないよう、国や放送局は周知を急ぐが、不安はぬぐえない。

 東京都北区でクリーニング店を営む岩井淳一さん(73)は、地デジ対応に忙殺されている。築40年の木造2階建ての店舗兼アパートも所有しているが、自宅も含め、アナログ放送しか映らない。

 岩井さんは今月16日、総務省などの地デジ相談会に出席し、途方に暮れた。「切り替えに数十万円はかかる」と聞いたからだ。集合住宅向けの国の助成制度を使えば工事費の半分を見てもらえるが、申請は8月末まで。「もう時間がない」と慌てた。

 自宅やアパートはこれまで、近くの5階建てマンションによる電波障害を避けるため、マンションの共同アンテナからケーブルを引いてアナログ電波を受信。費用はマンション側の負担だった。だが、デジタル電波なら問題なく受信できるはずで、地デジに対応するUHFアンテナを自前で設置しなければならなくなった。

 岩井さんの月収はクリーニング店の稼ぎや家賃収入などを合わせて20万~30万円。アパートの住人は80歳代の一人暮らしの女性や体の不自由な男性など3世帯。「おばあちゃんにお金を出してくれなんて頼めない。大家の義務で仕方ないけど、重い負担です」とため息をつく。

 東京49%、埼玉43%、神奈川59%、千葉57%――。マンションやアパートなど集合住宅で、地デジ対応が済んだ施設の割合だ。北海道98%、近畿99%などと比べても極端に低く、「南関東問題」と呼ばれる。南関東で主に視聴されているNHKと民放キー局の周波数がVHF帯のため、多くの世帯がUHFアンテナがない。ほかの地域では、各放送局のアナログ放送の周波数にUHF帯も含まれ、設置済みが多いのと対照的だ。

 総務省によると、今年3月末現在、UHFアンテナが未設置のため地デジを視聴できないのは、戸建てと集合住宅を合わせて全国で推計200万~400万世帯。大きなビルの陰にあり、受信障害を起こす世帯は319万世帯。山間部などでデジタル電波が届かないのが70万世帯ある。地デジ対応テレビやチューナーを持っていない世帯も約800万世帯あり、重複を除いて日本の全4900万世帯の2割強に当たる1100万世帯が未対応の状況だ。

 デジタル電波が届かない70万世帯の中には、アナログ放送は見ることができていたのに、デジタル化で視聴できなくなってしまうところが13万世帯ある。アナログ放送は電波が弱くてもかろうじて映るが、デジタル放送は、電波の強さが一定以下になると映らなくなる特性があるためだ。

 そのうちのひとつ、岩手県久慈市山根町の馬越集落。ここに暮らす3世帯は地デジをあきらめた。隣の集落からケーブルを引くために電柱を借りる費用は3世帯で割っても月に数千円以上。男性(80)は「あまりに高い。うちが抜けたら(ほかの2世帯の)負担が重くなる」といい、みんなで地デジ化をやめることにした。

 3世帯は、政府の救済措置を利用し、衛星放送で番組を見ることになった。ただ、災害時に地元自治体が流す地デジのデータ放送を使った情報は届かず、情報面で孤立するおそれもある。救済措置も5年の期限つきで、それが切れた後、どうやってテレビを見るかははっきりしない。

 海外でも米国やドイツなど9カ国が地デジ化を済ませているが、州などの単位で順次移行する例が多く、日本のように全国一斉に踏み切るのはまれだ。このため、国や放送局は官民を挙げての周知活動に取り組む。

 総務省は、問い合わせに対応するコールセンター要員をいまの75人から10倍に増員する方針を決定。石川県珠洲市と能登町の一部は、モデル地区として全国より1年早く、今月24日正午にアナログ放送をやめ、影響を調べる。放送局も南関東で毎月1回、アナログ停波を想定し、多数の小さな光が明滅する「砂嵐」の映像を流す。

 砂川浩慶・立教大社会学部准教授ら有識者は17日、アナログ停波を2、3年延期するよう求める提言を発表。移行を強行すれば「テレビを見られない家庭が100万単位で発生する」と警告した。

 だが、NHKや民放各局はこれまでデジタル化工事など1兆5千億円超を投資。アナログ放送を延長すれば、さらにコストがかかるため、原口一博総務相は「延期という選択肢はない」としている。

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(2010年7月27日  読売新聞)

地デジ普及へ対策急務
 地上デジタル放送への完全移行まであと1年となった24日、石川県珠洲市などで全国に先駆けて、アナログ放送が終了した。

 地デジ受信機の世帯普及率は83・8%(3月時点)と国の目標をかろうじて上回るが、地デジに対応していない世帯数は1000万近く残っており、総務省は普及対策を強化する必要に迫られている。

モデル地区、早くも完全移行

 石川県珠洲市と隣接する能登町の一部(計8800世帯)では24日正午、アジアで初めてアナログ放送が終了した。珠洲地区は、能登半島の先端にあり、終了しても他の自治体への影響が少ないことなどから先行モデル地区に選ばれた。

 同市で行われた記念式典では正午に、NHKと民放各局を映したアナログテレビの画面から番組が消えた。総務省北陸総合通信局幹部は、「地元をよく知る電器店の協力を得られたのが大きい。全国で応用できる“珠洲モデル”だ」と胸を張った。

 総務省はチューナー希望者に1世帯あたり4台まで無償貸与し、チューナー設置にあたっては、地元電器店15店に100~200軒ずつローラー作戦で戸別訪問してもらい完全移行を達成した。投じた予算は約1億8000万円に上る。

 ただ、高齢者が多い珠洲地区では、同市飯田町の自営業、浜田照子さん(73)のように、「チューナーを取り付けたが、地デジが受信できず、アンテナの調整などで数万円かかった」といった不満の声も聞かれた。

 このため、珠洲地区のケースでは、地元自治体の取り組みも重要だった。地域ごとに職員が訪れて説明会を何度も繰り返したり、自宅に直接訪れて地デジ対応を急ぐように説得して回ったりした。前田保夫・同市総務課係長は、「(完全移行に向けて)高齢者への対応が大きな課題になるが、ほかの自治体は、自分たちの仕事とは思っていないだろう」と懸念する。完全移行に向けて、珠洲地区を視察に訪れた自治体は一か所もないという。(金沢支局 森重達裕、鶴田裕介、文化部 井上晋治)

アンテナ工事集中も

 1年後の完全移行に向けては直前にアンテナ工事を申し込むケースが続出し、電器店が対応できなくなる可能性も指摘されている。

 東京都文京区の電気通信工事会社「受信サービス」は今春から会社のホームページのアクセス数が6倍に急増。電話も鳴り続けている。連日、14人の作業員が朝から晩までデジタル電波を受信できるか調べ、アンテナを交換するが、集合住宅なら1日に1~2棟の工事が限界という。特に、関東地区は、地デジ未対応の集合住宅48万5000棟のうち41万棟が集中しており、松尾建治社長(68)は「これ以上、仕事が集中したら対応は難しい」と打ち明ける。

 予定通りに地デジの普及が進まず、アナログ放送の停止時期を延期した場合、地デジ対応に「総額1兆円規模」(総務省)の設備投資を進めてきた民放業界は、特に地方テレビ局の経営への影響を懸念する。

 仮に延期された場合、テレビ局は、アナログ放送と地デジの両方を送信し続ける必要があり、「ランニングコストだけでも年5000万~6000万円の負担になる」(地方放送局幹部)ため、一段と収益が圧迫される。また、アナログ放送用の機器は既に製造が終了しており、故障しても更新できない問題も生じるという。(文化部 笹島拓哉)

都市部は普及に遅れ

 完全移行に向けて普及率アップのカギを握るのが、都市部のビル陰などで地デジを受信しにくい世帯への対応だ。受信障害を解消するために、周囲のビルオーナーが設置したアンテナ(共聴施設)を利用する約650万世帯のうち、地デジに対応している世帯数はほぼ半分に過ぎないからだ。

 埼玉県の一戸建てに住む無職の男性(83)は、ビル陰に住んでいるため、近隣のビルオーナーが共同で設置した共聴施設を使ってテレビを見ていたが、デジタル対応はしてくれないため、約20万円でアンテナを建てた。だが、別の建物が原因とみられる受信障害で映像が止まってしまうため、総務省テレビ受信者支援センター(デジサポ)からケーブルテレビへの加入を勧められた。

 共聴施設の管理者が地デジ対応に難色を示すケースは、普及率が伸び悩む原因になっている。

 このため、国はデジタル化の助成制度を整備しているが、利用は低調で、総務省は7月末の申請期限の延期を検討している。

 一方、マンションやアパートの集合住宅は、77%が対応済みだが、南関東の各都県の集合住宅はVHFアンテナをUHFアンテナに付け替える必要があるため、40~50%台と極端に低い。アンテナ設置費用をめぐり、入居者とオーナーがもめるケースもある。こちらにも助成制度があるが、利用促進に向けて、総務省は対策を強化する必要がある。(経済部 川嶋路大)

デジタル化の助成制度
 ビル陰にある住宅で受信障害が起きている場合、原因となるビルのオーナーがアンテナなどをデジタル化する経費の半額を国が負担する制度。アパートなどの集合住宅ではオーナーなどに1世帯当たり3万5000円を超える経費を国が負担する制度がある。各地のデジサポで相談と申し込みを受け付けている。
(2010年7月27日  読売新聞)
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毎日新聞 2010年7月25日 大阪朝刊
クローズアップ2010:地デジ移行まで1年 全世帯普及間に合うか
 ◇アンテナ交換、費用が壁 未対応2割、1100万世帯

 来年7月24日の地上波テレビのアナログ放送停止とデジタル放送への完全移行まで残り1年を切った。受信機の普及率こそ8割を超えたが、電波受信に必要なアンテナ交換などが遅れており、今年3月末時点では、全世帯の2割強にあたる約1100万世帯が未対応だ。総務省などは対策を強化する方針だが、テレビが見られなくなる「地デジ難民」の発生を避けるには、これから時間との勝負になりそうだ。【望月麻紀、和田憲二、中村美奈子、長沢晴美】

 24日、石川県珠洲市と隣接する能登町の一部で全国より1年早くアナログ放送が終了、地デジに完全移行した。総務省指定の「リハーサル地」で、アナログ放送用のテレビでも地デジ受信が可能な簡易チューナーを戸別訪問で無償貸与するなどの手厚い対応が施され、この日、総務省テレビ受信者支援センターに寄せられた相談はチューナーの接続ミスなど6件にとどまった。

 しかし、計8800世帯の狭い地域での地デジ化が、そのまま全国に適用できるとは限らない。総務省の最も新しい推計によると、3月末時点で、地デジ対応の受信機(いわゆる薄型テレビなど)の世帯普及率は83・8%と目標を2ポイント程度上回ったが、地デジを受信できないVHFアンテナしかないのが400万~600万世帯▽大きなビルの陰で受信障害を起こすのが319万世帯▽山間部などでデジタル電波が届かないのが72万世帯という。

 VHFアンテナしかない世帯が集中しているのは東京など南関東地方。NHKと民放キー局の周波数がVHF帯のためだ。地デジを視聴するには、周波数の異なるUHF用のアンテナに交換するか、ケーブルテレビに加入する必要がある。

 ビル陰対策も遅れている。ある大手マンション管理会社は、ビル陰の原因となっている全国のマンションの管理組合に対し、08年から対策の検討を提案してきた。だが、マンションの共同アンテナをデジタル対応にするための費用負担をめぐって、管理組合とビル陰となっている各世帯の交渉がこじれるなどで、方針が決まったのは半数という。アンテナ交換が遅れると、アナログ放送終了間際に工事が集中し、間に合わない恐れがある。

 地デジ化でビル陰の受信障害が解消されるケースもあるが、経済的な負担が壁になる。東京都大田区の男性(80)は、区の施設のビル陰のため共同アンテナを利用してアナログ放送を見てきた。しかし、地デジ化で直接受信が可能になるため個別にUHFアンテナを設置するよう区から連絡があった。アンテナ設置だけでも最低3万5000円。テレビ2台もアナログ放送用のままだ。男性は「いくらかかるのだろう。負担が大きいので、もう少し考えさせてもらう」とこぼした。

 低所得者層も対応が進んでいない。総務省の生活保護世帯向け簡易チューナー無償配布は、今年度124万件を見込むが、周知が徹底しないことなどから、今年6月末までの申し込みは約2割にとどまっている。

 こうした状況を踏まえ、放送事業に詳しい砂川浩慶・立教大准教授ら有識者は17日に会見し、「アナログ放送終了を2~3年延期すべきだ」と主張した。しかし、アナログ放送延期による放送局のコスト負担は年数百億円といわれ、原口一博総務相は「延期は現在のところまったく考えていない」と話し、23日には山間地へのケーブルテレビ幹線整備やビル陰対策の解決のための「虎の巻」公表などの総合対策を発表した。

 一方、総務省と放送界は来年6月30日にアナログの通常放送をやめることで合意し、7月24日までは告知番組などを放映する方向で調整してきた。だが、対応の遅れを懸念した消費者団体は「24日まで放送を」と求め、日本民間放送連盟の広瀬道貞会長も一転して応じる意向を示し、総務省と足並みが乱れている。

 ◇大量データどう生かす

 地デジ化のメリットは、大量のデータ送信が可能になるため、アナログよりも映像や音声が高品質になることだ。デジタル放送は03年から始まっているが、NHK放送技術研究所は、現行のフルハイビジョンの16倍の画素数で肉眼に近い映像が楽しめる「スーパーハイビジョン」を研究中。まずは公共施設などの大画面向けに20年にも実用化する方針だ。

 また、アナログと同程度の画質にすれば、デジタル放送1チャンネル分を2~3チャンネルに分けて使う「マルチ編成」も可能。NHKは高校野球の延長戦とニュースを同時放送している。

 ただ、こうしたメリットは完全に生かし切れていない。マルチ編成は、民放は「2番組枠ではスポンサーが付かない」(TBS)などの理由で実施していない。また、デジタル化で3D(三次元)映像の番組を放送する道も開けたが、「視力など健康への影響が課題」(テレビ東京)など各局は慎重な姿勢だ。

 デジタル化で深刻な問題が出る地域もある。中継局の整備が完全移行までに間に合わない山間地などには、暫定措置として15年3月末まで衛星放送で地デジの番組を再送信し、必要なパラボラアンテナなども国が無償で設置するが、視聴できるのは東京の放送局の番組。地元局の災害情報などは見られず、国政選挙では東京の選挙区の政見放送を視聴せざるをえないことになる。

 ◇光回線“両得”PR加速「視聴もネット・電話も」 エリア拡大や割安設定

 通信会社がシェア競争を繰り広げ光回線の普及が進んでいる近畿圏では、各通信会社が低い初期費用で地デジ視聴が可能な光回線の利用を呼びかけている。地デジ受信機の世帯普及率は既に8割を超えているが、残された2割の取り込みを目指して、光回線のメリットのPRに躍起だ。

 地デジ対応の専用アンテナを設置するには7万円程度かかるが、光回線なら3分の1以下で済む。専用アンテナを設置する工事に比べ、光回線敷設は簡単で、インターネットや電話のサービスも利用可能になる。都市部のビル陰などの受信障害対策としても有効だ。

 近畿圏はNTT西日本と関西電力系のケイ・オプティコムが、各家庭への回線設置を競っているため、今年3月末の光回線の世帯普及率は39・3%(近畿総合通信局調べ)と、全国平均より5・7ポイント高い。府県別では滋賀が48・2%で全国1位、京都43・2%(同3位)、大阪40・8%(同4位)と続く。

 地デジ対応のために光回線を家庭に引いてもらえれば、同時にインターネットや電話サービスの利用も訴えることができ、両社にとっては営業拡大の好機でもある。

 NTT西は、光回線を使って地デジ放送も視聴できる「フレッツ・テレビ」のサービス提供エリア拡大を急ぐ。エリア外だった奈良県で8月上旬からサービスを始めるほか、10月までに現在の約4割増の88市町へサービスを拡大する。

 ケイ・オプティコムは、今月から「eo(イオ)光テレビ」の新規加入者を対象に、工事費の無料キャンペーンを始めた。契約1年目に限り、光回線のインターネット料金に月500円追加するだけで地デジとBS放送が見られる割安料金コースも設定している。【青木勝彦】

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有識者が地デジ延期を提言。 - シュリシア共和国

陰に「天下り団体」と「B-CASカード利権」あり 「週刊ポスト」

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