放送の自主自律と逆行する放送法改定条項の削除を求める申し入れ
本日、原口総務大臣、衆議院総務委員、参議院総務委員に「放送の自主自律と逆行する放送法改定条項の削除を求める申し入れ」を送付しました。
衆議院総務委員 各位 2010年5月24日
放送の自主自律と逆行する放送法改定条項の削除を求める申し入れ
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/
目下、国会で審議されている放送法改定法案は放送法制定以来の大改正といえる内容であるにもかかわらず、国会での審議は尽くされておらず、広く視聴者・国民に向けた趣旨説明と意見の聴取もないまま、成立に向けた拙速な手順だけが進行しています。しかも、法案には表現の自由、放送の自主自律を脅かす怖れがある重大な条項が含まれています。これらについて当会は以下のとおり、緊急の申し入れを行います。総務委員各位におかれましてはこの申し入れを真摯に受け止め、法案の拙速な審議の仕切り直しに尽力下さるよう要望します。
1.私たちが重視するのは、第一に、法案の第180条に追加された項目において、電波監理審議会に新たに放送番組の編集にまで踏み込んだ事項を審議し、審議会が必要と判断した事項を総務大臣に建議する権限を与えている点です。
もともと、電波監理審議会は総務大臣からの諮問を受けて省令の制定および改廃,無線局の免許および取り消しなど,電波および放送の規律に関する事項について答申をする組織です。ところが今回の改定法案では審議会は、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項や、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることに関する重要事項について、自らの判断で調査審議し、必要と認められる事項を総務大臣に建議することができると定めています。
しかし、電波監理審議会の委員は総務大臣が選んだ候補者が国会の同意を経て選任される仕組みになっており、委員の構成からして政府から独立した第三者機関といえるものではありません。2006年に時の菅総務大臣から諮問を受けたNHKに対する命令放送(北朝鮮による拉致問題を指定した国際放送を行うようNHKに命じる案件)について電波監理審議会が非公開の短時間の会合で即日答申をしてしまった例は、当審議会が政府・所管大臣の意に沿う結論を出す機関であることを物語っています。この時(2006年11月8日付け)、民主党は鳩山幹事長名で発表した談話の中で、本件は「放送法第3条の放送番組編集の自由を侵害する恐れがある」「にもかかわらず、・・・・・議論は公開されず、即日答申が出されたことは、独立性が担保された審議会として、その権限と責任を十分果たしたとはおよそ言いがたい。所管大臣の意向に従わざるを得ない現状を変えるためには、かねてより民主党が主張してきたように国家行政組織法3条機関に相当する『通信・放送委員会』をつくり、本件のような事案を含めた通信・放送の問題を政治の介入を排して判断できる仕組みに改めるべきである」と指摘しています。
現政府の与党が野党の時代にこれほど独立性に疑義を呈した審議会に放送の自主自律の根幹に関わる事項に介入する権限を与えるのは自己矛盾です。そもそも、民主主義の血脈ともいえる言論の自由は与党か野党かを問わず、これを遵守するよう努力いただくのが国権の最高機関である国会の良識です。この意味から、当会は新たに追加された改定法案の第180条を削除するよう要望します。
2.第二に、当会が強く指摘したいのは法案の第30条第1項で、新たにNHK会長を経営委員会の構成メンバーに加えることにしている点です。現放送法はNHKにおける業務の企画立案・執行の権限と重要事項の議決・監督の権限を分化することによって、番組編集の内部的自由を確保しながら経営面でのガバナンスを有効に機能させる仕組みを採用しています。このような仕組みは今後とも維持・徹底されるべきものです。
にもかかわらず、NHKにおける業務の企画・執行の最高責任者である会長を業務の監督機関である経営委員会の正式メンバーに加えることは権限と責任の分化をあいまいにし、NHKにおける経営面でのガバナンスを混乱させる怖れがあります。加えて、NHK会長だけを経営委員会のメンバーに加えるとなれば、NHKの理事会の権限を一層会長に集中させ、民主的な運営を阻害する怖れもあります。
こうした理由から、当会は第30条第1項も削除するよう要望します。
当会も現行の放送法には大胆な見直しが必要な事項が少なくないと考えています。しかし、その事項というのは今回の法案とは違って、NHKの自主自律を強化する方向への改正です。NHKの毎年度の収支予算、事業・資金計画を総務大臣の意見を添えて国会へ提出し、承認を受けることを義務付けている第37条各項や、経営委員会委員の選任を国会の同意人事に委ねている第16条第1項などはその代表例です。また、NHKか民放かを問わず、放送の自主自律を制度面で担保するための独立放送委員会構想が今回の法案に全く反映されていないのも不可解です。当会はこれらの事項こそ、時間をかけ、国民的議論を経て見直す必要があると考えていることを申し添えます。 以上
当会は視聴者主権の公共放送をめざし、NHKの番組に対して是々非々の立場で激励あるいは批判を続けている市民団体です。
連絡先:(略)
総務大臣 原口一博殿宛PDF
衆議院、参議院総務委員 各位宛PDF
民放労連からのメッセージ
民放労連からのメッセージ : 本日、衆議院総務委員会で与党・民主党は放送法改正案の審議を打ち切って強行採決した。我々もその問題点を指摘していた電波監理審議会の権限強化条項については削除されたものの、「60年ぶりの大改正」とされる放送法改正案が、十分な審議を尽くすことなく強引に採決されたことに強く抗議する。 改正案では、地上放送にもハード・ソフト分離の規律を導入し、ソフト事業への参入には総務省による「認定」手続きが導入される。行政が放送内容についての判断をすることも可能にする仕組みの導入は、放送における表現の自由への脅威となりうる。地上波のテレビ・ラジオを除く放送事業者に対しては総務大臣が「業務停止」を命令できる規定まで新たに盛り込まれており、こうした規定が恣意的に運用されるようなことがあれば、言論・表現の自由に深刻な影響を及ぼすことは疑いない。 そもそも総務省では現在、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」において放送行政の見直しを含む議論が進められているところだ。また現行放送法による放送免許は2013年まで有効であり、今ただちに放送法改正が求められる理由はまったく見当たらない。強行採決という乱暴な手法までとって改正を急ぐ必要がいったいどこにあるのか、明快な説明は一切ない。現政権の考える政治日程の犠牲となって、言論・表現の自由のありかたに関わるきわめて重要な法律がこのように粗略に扱われるようでは、日本の民主主義にとって大きな禍根を残すことになるだろう。 政府は2010年通常国会に「放送法等の一部を改正する法律案」を提出し、現在その審議が行われている。「60年ぶりの大改正」といわれる今回の放送法改正に関して、私たちは以下のように考える。 1.なぜいま法改正を急ぐのか 2.ハード・ソフト分離は内容規制の強化につながる 3.電監審強化は表現の自由の侵害のおそれ 4.改正案策定の過程が不透明すぎる 5.もっと市民にわかりやすい法律に 以 上
【談話】放送法改正案の衆院総務委強行採決に抗議する(5月25日)
投稿日時: 2010-5-26 10:26:41
2010年5月25日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員長 赤塚 オホロ
政府・与党に対し、今回の暴挙を深刻に反省し、根本から国民的議論に委ねるよう、強く求める。
以 上
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民放労連からのメッセージ :
放送法改正案についての民放労連見解(4月23日)
投稿日時: 2010-4-23 15:33:06 (1102 ヒット)
2010年4月23日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員会
総務省では現在、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」が開催され、放送行政の見直しを含む議論が進められている。その検討を待つこともなく、また現在の放送免許は2013年まで有効であるにもかかわらず、性急に放送法改正を急がなければならない理由は見当たらない。
今回の法改正は、そもそも自公政権当時の竹中総務大臣の音頭による「情報通信法」構想に発するものである。しかも法案を2010年に国会提出するという総務省官僚の当初描いたスケジュールを無批判に踏襲しているだけで、民主党を中心とする連立政権が標榜する「政治主導」の姿勢はまったく感じられない。何のための法改正なのか、関係者ですら理解に苦しむ法改正を拙速に進めることないように求める。
改正案では、地上波のテレビ・ラジオを含むあらゆる放送について、インフラ設備を受け持つハード部分と番組などのソフト部分とに分離され、ソフト事業への参入には総務省による「認定」手続きが導入されることになっている。改正案の174条では、地上波のテレビ・ラジオを除く放送事業者に対して総務大臣が業務停止を命令できる権限が付与されており、政府が番組内容に踏み込んだ判断をすれば、表現の自由にかかわる深刻な問題を招くおそれが強い。
改正案で新設された180条は、「放送の不偏不党、真実及び自律」等、現行放送法が目的に掲げている「重要事項」に関し、電波監理審議会が「自ら調査審議し、必要と認められる事項を総務大臣に建議することができる」としている。
放送上の問題については放送倫理・番組向上機構(BPO)が自主規制機関として機能している。にもかかわらず、放送表現における問題も含めて、政府からの独立性のない電波監理審議会が独自に調査・判断し、建議するというしくみがなぜ必要なのか。この180条規定は全面削除されるべきである。
放送法制定以来という全面的な大改正であるにもかかわらず、改正案策定の過程での議論が一般にはほとんど公開されなかったことに、私たちは強い遺憾の意を表明する。
今回の改正案では放送の定義が拡大され、インターネットなども放送の範疇に含まれると解釈できる。これだけさまざまなデジタル伝送路が市民に広く利用されるようになった現在、その規律も市民に理解しやすいことが求められよう。
ところが、今回の改正案は複雑で非常に難解な上に産業振興的な側面ばかりが強調され、一般の市民による放送利用はほとんど念頭に置かれていないかに見える。いま求められているのは、デジタル時代における市民のコミュニケーションの自由を保障するための制度的枠組みであり、放送法改正に際してはその線に沿って改めて根本的な議論が必要ではないか。
総務大臣自らが「言論の自由を守る砦をつくる」ためとして、前記「権利保障フォーラム」での検討が進められているにもかかわらず、放送番組規制強化につながるおそれのある法改正を急ぐ必要はなにもない。
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