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2010年5月22日 (土)

【喜ばしい追記あり】総務委員会での意見陳述のメモ~放送法改正法案について

喜ばしい追記あり】総務委員会での意見陳述のメモ~放送法改正法案について
メディア(知るための手段のあり方) / 2010-05-21 22:29:09
 【通信・放送関連の法案を再編する放送法改正案をめぐり、衆院総務委員会は21日、日本民間放送連盟の広瀬道貞会長らを参考人招致した。電波監理審議会(総務相の諮問機関)の機能強化を盛った改正案に対し、参考人からは「番組内容の点検は放送倫理・番組向上機構(BPO)に委ねるのが適当」(広瀬会長)と反対論が相次いだ】(http://bit.ly/cHTQfC)というわけで、私も、日弁連の担当委員会担当部会の部会長として、放送法改正案審議の参考人として意見を述べてきました。質問もありましたが、一番言いたかったことは、最初の10分の意見部分です。お時間のあるときにお読みください。
【追記】とここで重要なお知らせ
      ↓

【民主党は21日、衆院で審議中の放送法改正案について、放送行政に対する電波監理審議会(総務相の諮問機関、電監審)の提言機能を強化する条文を削除する方向で調整に入った。この日、衆院総務委員会で行われた意見聴取で、参考人から放送番組への介入を懸念する声が相次いだため。】(http://mainichi.jp/select/biz/news/20100522ddm008010045000c.html

◆◆放送法改正案に関する意見◆◆
 日弁連はこれまで、当部会を中心に表現の自由についてさまざまな取り組みを行ってきました。昨年は日弁連最大のイベントである人権擁護大会で、表現の自由をテーマに取り上げ、今回の放送法改正において問題となっている、放送・通信メディアを含むメディアの表現の自由の保障についても検討しました。
 今回の内閣提出の放送法改正案に関して、お手元に配布させていただいた、日弁連会長声明(
http://bit.ly/cMSpIC)を発出したのは、そのようなこれまでの取り組みを背景としたものです。
 その会長声明の中で日弁連として取り上げたのは1点です。現行法では、電波監理審議会(以下「電監審」という。)は、総務省の内部審議機関とされ、総務大臣からの諮問を受けて利害関係人による意見聴取や勧告等の権限を有しているに過ぎませんが、改正法180条によれば、「放送の不偏不党、真実及び自律」等、法1条で目的として定める「重要事項」に関し、電監審が「自ら調査審議し、必要と認められる事項を総務大臣に建議することができる」こととなっている点です。

 表面上は、電監審に、総務省、総務大臣を監視する機能を持たせようとする規定です。

 この規定について、総務大臣は、放送局に対する総務省の規制・監督を監視する組織とし、番組内容などへの不当な介入を防ぐ役割を持たせるものであるという趣旨の説明をされています。

 もし、法改正後の電監審が、大臣が説明されたような機能を適切に果たすことができるのであれば、それは歓迎すべきことかもしれません。
 しかし、問題は、電監審は、政府からの独立性が担保されている組織ではないということです。その委員は「両議院の同意を得て、総務大臣が任命する」こととなっています。これでは、身内が身内を監視するようなものです。
 この点について、今回の改正案では、改善されていません。政府からの独立性についてはまったく配慮されていないのです。
 もちろん、仮に独立性は担保されていないとしても、ないよりましではないか、という考えもあるかと思います。しかし、日弁連としては、新しい電監審が、総務省の隠れ蓑になることを懸念しています。
 いわゆる審議会が行政の隠れ蓑となって、行政が直接は提案しにくい政策を提案し、それが実現されてきたという批判をされることがあります。
 たとえば、参議院議長をされている民主党の江田五月議員は、平成14年の法務委員会で、審議会について、「行政が政策立案の客観性を装う隠れ蓑に使っているという批判が多かった」というBSE問題に関する調査検討委員会の報告について、事実だと思うと指摘されています。

 今回の法改正で、電監審が政府からの独立を担保された組織とならない以上、審議会の一部が隠れ蓑として使われてきたのと同様に、電監審も隠れ蓑として利用されるのではないかという危惧が残ります。
 原口大臣は、法改正によって、電監審に、放送事業者に資料の提出を求めたり、直接説明を求めたりするものではなく、総務大臣の権限が拡大するものでもないという説明をされているようです。
 しかし、いわゆる審議会についても、同じような説明をすることができますが、それでも、隠れ蓑に使われてきた事実、少なくとも隠れ蓑として使われているとの批判を受けてた事実があるわけです。
 ここで重要なことは、表現の内容、放送の内容、報道の内容については、仮に何らかの圧力があったことによって、内容が変えられてしまったとしても、圧力によって内容が変わったのかどうかを後ほどになって検証することは相当困難だということです。
 先日、野中元官房長官が内閣官房報償費、いわゆる機密費を、評論家などの言論人に配っていたことを告白されました。しかし、機密費をもらったために、本来、これこれと評論すべきだったのに、しかじかと評論した、などということは振り返って指摘し、批判することは困難です。もはや取り返しがつかないことです。

 だからこそ、そのような圧力による報道内容の変更ができるだけ発生しないような制度にすることが重要になります。情報伝達の手段として極めて重要な役割を果たしている放送において、何らかの圧力によって、その内容が変わるようなことあれば、それは有権者の投票行動に不当な影響を与えかねません。
 同じ第二次大戦の敗戦国で、政府による国民に対するプロパガンダについて、反省しているドイツでは、放送を州ごとに管轄していますが、公共放送の受信料の決定過程に州首相や州議会が政治的決定を下すことができる仕組みとなっていることについて、違憲とする判決が下されたことがあります。
判決の中では、事後的審査は、法律の定めた手続きにおいて瑕疵を確認し、修正することが可能であることを前提とするが、目的から離れた影響はたいてい発見することもできず、法定の結果においても読み取ることはできないので、その影響は事後的にも修正されえない、それゆえ、あらかじめ危険の原泉から、違法な権限行使の可能性をできる限り排除する法的構造が準備されなければならない、と指摘されています。

 この指摘などからも明らかなように、放送行政について最も重要なことの一つは、放送が政府によって利用されないような仕組み、制度にしなければならないということです。
 だからこそ、ヨーロッパでは、放送行政を政府から独立させるための仕組みが検討され、、すでに共通した基準が設けられています。たとえば、欧州評議会は、2000年12月、「放送行政における規制機関の独立性と機能に関する勧告」を出しています。ここでいう規制機関は、免許付与権限などを含むもので、日本でいえば、総務省の放送行政を政府から独立させなければならないと勧告しているわけです。
 政権交代後、総務省は、放送・通信の分野における表現の自由を確保するための制度のあり方について、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」を開催して検討を行っていますが、このフォーラムでは放送行政の所管の主体を政府から独立した機関に移すことも検討されているようです。ヨーロッパでスタンダードとされていることについて、日本が政権交代後ようやく取り組み始めたと高く評価できると思います。

 しかし、今回の法改正で、政府からの独立性が担保されていない電監審に、総務大臣を監視させようとしていることは、このフォーラムの検討方向に、明らかに反しているのではないでしょうか。
 いま、検討されるべきは、放送行政をいかに政府から独立させるか、政治的に利用されないような仕組みをつくるか、ということです。たとえば、英国で導入されている、公職任命コミッショナー制度、これは、独立行政法人などの経営陣を選任する際、第三者的立場にある者が、選考基準の策定から、面接、選考会議まで立ち会うことで、人選の公正さ、ベストの人材を選任しようという制度ですが、そのような制度の導入について検討するべきだと考えます。

 ところが、今回の法改正で導入されようとしている、政府が選任した機関が政府を監視するという仕組みは、かえって、放送が政治的に利用される機会を増やすことになる可能性すらあると指摘せざるを得ません。
 そして、ことは放送にとどまりません。放送と通信の融合が技術的に進んでいる中、法的にもその融合が検討されているわけですから、放送についていったん、このような制度が導入されますと、将来の融合法制において、インターネットについても、横滑りで同様の仕組みが採用される懸念が生まれてきます。インターネットは、市民が直接多数の市民に情報を発信することを可能とした画期的な情報伝達手段です。今回、電監審が新しい権限を有することによって、この画期的な手段であるインターネットについても、将来、同様の仕組みによって政治的に利用される機会が増えることになりかねないと危惧しています。

 原口大臣であれば、電監審を政治的に利用することはないかもしれません。民主党の政権下でも大丈夫かもしれません。しかし、今後、ある程度の間隔で政権交代が起きることは避けられないと思います。新しい政権が、もし、放送、あるいは、インターネットを政治的に利用してでも、政権を維持しようと考えたならば、電監審の建議という建前で、放送やインターネットに対して圧力を加えたり、政治的に利用することを可能とする政策の導入を図るかもしれません。日弁連は、今回の法改正で、そのような危惧が残る制度を導入するべきではないと考えています。
 以上、電監審の問題に限定して、意見を述べさせていただきました。会長声明に直接記載されいていない事項については個人的見解ということでご理解いただきたいと思います。ありがとうございました。
◆◆以上です◆◆
同じ日、メディア政策グループ「ComRights」が、放送法改正法案に関して、原口総務大臣および衆議院総務委員会の委員会宛てに要請をしましたので、そちらもどうぞ→http://bit.ly/dhN87N


通信・放送の法体系改正案、CATV、衛星放送事業も大幅な見直し

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