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2010年4月 6日 (火)

地デジ化をめぐる外国の経験と日本の状況 隅井孝雄氏

隅井孝雄 メディアアナリストの視点 2010年03月26日 より
これは 2009年12月19日 京都機関紙会館5階大会議室で開催された「地デジ問題を考えるつどい」(NHK問題京都連絡会議、住まいと人権を守る京都連絡会などの主催)での講演要旨である。

1.デジタルテレビへの全面転換、つまりアナログ放送の廃止は2011年7月に予定され、論議を呼んでいる。テレビのデジタル化は日本では2003年12月に始まった(大阪は2004年、京都は2005年)。現在異なった電波によって同時に二つの同じ放送が流れている。テレビ放送は日本では1953年に開始された。最初は白黒のローカル地上波だったがマイクロ回線によるネットワークが形成されて全国放送になり、1964年の東京オリンピックを契機にカラー放送が導入された。ビデオ器機、衛星放送、小型ビデオカメラの導入など幾つかの技術が進んだが、全面デジタル化は最も大きな技術変化だと言える。

2.テレビはデジタル化によって情報量と情報スピードが飛躍的に大きくなる。他の映像、音響、電話、コンピューター関連機器など一連の情報手段との相互乗り入れが可能になる。またテレビ放送をアナログ波からデジタル波に移行させる事によって、様々なデジタルシステム用の周波数を確保できる。国際機関で技術規準の統一が進んでいる。既にアメリカのテレビは全面デジタル化を行い、ドイツ、イギリス、韓国等の各国でもデジタル化、アナログ停波を目前にしている。

3.アメリカでは2009年2月17日に予定されていたデジタルへの移行を6月12日迄4ヵ月延期した。アメリカでは1憶1200万テレビ世帯の6割がケーブルテレビ、3割が衛星経由でテレビを視聴しているため、デジタルへの切り替は簡単だと思われていた。しかしアンテナで視聴しているほぼ1000万台のテレビは、貧困世帯、高齢者世帯が多く、テレビの買い換えがすすまなかった。政府はアダプターが買えるクーポンを用意したものの、申し込みが殺到して受取れない世帯が大量に出た。これが主な要因となり、オバマ新政権は貧困家庭への保護策重視の立場から延期した。結局2月17日には368局がアナログを停波、6月12日に約1000局が移行してデジタル時代に移った。なおハワイ州は2月15日に移行作業を行なった。FCCは 4000人のボランティアが待機するコールセンターを設置したが、6月8日から6月12日の問合せは70万件に達した。

4.イギリスは世界の中で最もデジタル化が進んでいると言われている。BBCのデジタル放送は1998年に始まった。そして2002年デジタルプラーットフォーム、「Free View」 を立ち上げた。BBCは新たなデジタルサービスのチャンネルを次々に増やす一方、民放デジタル、衛星デジタルも包含、加入者は980万件に拡大した。2台目、3台目の契約をカウントすると1700万件になるとも言われている。この他衛星、ケーブルのデジタル加入が1200万件あり、デジタル普及はテレビ世帯の89.2%に達している。「Free View」 のアダプターは20ポンド(2800円)、基本サービスは無料というシステムである。現在の地上波テレビを含むチ51ャンネル、ラジオ24チャンネルが視聴できる。デジタル普及の先頭にたっているBBCはインターネットへの参入も積極的だ。マーク・トムソン会長は「インターネットを通じた番組配信は戦略の中心だ」と明言している。新しい展開の一つにインターネット上での番組配信iPlayerがある。2007年から開始、300近い番組を無料で視聴できる。視聴者はジワリと増え、テレビを持つことのなかった大学生など若者の間に広がっている。放送後一週間に限って見逃がした作品、ニュースを見ることが出来るのだが、こうした視聴者をどのようにして「受信料を払う契約者」にして行くかという課題があるようだ。

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5.日本では山間部や都市集合住宅での共聴システムのデジタル移行が難しい。アンテナをデジタル仕様に変え、電波の方向を調節するのは予想以上の難問だということも最近明らかになってきた。このままでいくと500万世帯以上が一挙にデジタル難民化する恐れがある。デジタル受像機の普及は2009年12月現在 6300万世帯だが、総務省の調査だと普及世帯は49.1%に止まっている。あと1年半で100%に達する保証はない。政府は生活保護世帯200万にチューナーを無償供与する予定だが、実は同程度の貧困世帯845万世帯は放置されたままだ。地方テレビ局の多くはすでに多額のデジタル出費を強いられている上、もし延期されればアナログ設備の補修、アナログデジタル両様番組制作、送出経費支出は大きな経済的負担になると危惧している。昨今の経済危機、広告不況などを考えると、制作番組の縮小、削減、質的低下の恐れがある。

6.テレビのデジタル化が進につれ市民メディア、独立メディアも盛んな動きを見せている。韓国では、アメリカ牛肉の輸入に対して市民の怒りが爆発したが、ビデオカメラやカメラ付きパソコンを持った若者が現場からの生レポートをインターネットに送り出すことによって、さらに抗議の波を広げ、誕生したばかりの政府を窮地に追い込んだ。韓国では市民メディアの活動が活発で、市民に受け入れられている。テレビに次ぐ情報メディアとして、広告収入でも新聞をしのぐ勢いを示している。

7.アメリカでは大企業に依存しない独立系のメディアが力を発揮している。技術革新が進んだ結果市民の誰もが、世界のどこからでもインターネット技術を駆使してレポートを送ることができるようななったことが市民メディア、独立メディアの支えだ。デモクラシー・ナウを放送しているエイミー・グッドマンは9.11でブッシュ政権が戦争に向かう動きを徹底して批判して視聴者の支持を拡大した。今では320ラジオ、268テレビのネットワーク持ち、インターネットを経由して全世界でも放送するようになった。こうしたメディアの躍進の背景には技術の変化もある。市民がテレビを、テレビスタジオを手にする時代が来たのだ。

世界の公共放送の現状、韓国、イギリス、ドイツの場合


BBC、巨大化から事業縮小に転換、娯楽番組減らして報道番組強化?ラジオ2波削減、ウエッブ半減、スタッフ600人レイオフ

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変るか韓国メディア地図、新聞社、大企業が放送参入へ

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