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2010年4月30日 (金)

放送法改正でネットも「放送」に…そして、ニコ動やUstの業務停止も可能に?!



 今国会で成立されようとしている放送法の改正で、電波監理審議会が番組内容に関する調査権限を得ようとしていることについてはすでに触れたが(※1)、なんと、インターネットが「放送」とされることがわかった。【●訂正●すみません、ここがそもそも、違うようです。】その結果、ニコニコ動画やUstreamなどの事業者が放送法に触れるようなことをしたと総務大臣が判断した場合、大臣が業務を停止する権限を持つようだ。これって、総務省が気に入らないメディアをつぶせるってことでは…。危険な放送改正について情報を共有し、総務大臣にいったいどうなっているのか聞いてみてほしい。
◆改正法案:http://www.soumu.go.jp/main_content/000058204.pdf

 改正の問題点その1は、放送の定義だ。
 改正後、2条1項は次のようにされる予定だ。

【「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。】

 そこで、電気通信事業法2条1号をみると、【電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。】とある。改正後には、テレビ、ラジオだけでなく、ケーブルテレビやインターネットなども「放送」となるわけだ。

【●訂正●直接受信とは、プロバイダーを経由するようなものは含まない、ようです】
【したがって、以下の文章は後日、全面的に訂正・修正をします。しかし、大臣による業務停止がケーブルテレビで実現した場合、「放送」と「通信」が融合する際には、ケーブルテレビとほとんど類似の機能を有するインターネットTVも同じような規制をかけられる可能性が大きくなることは間違いないでしょう。】
【また、電波監理審議会に関する懸念は、この点とは関係ないです】
 よって、ニコ動やUstも「放送事業者」となる。場合によっては、一定以上のページビューのあるサイトの運営者も「放送事業者」となりかねない。

 そして、具体的に何が起きるか、それが第2の問題だ。
 改正後の174条1項は次のようにされる。

 【総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。】

ねっ、ニコ動などが放送法に触れたら、業務停止を命じることができるわけです。本当だったでしょう。
 行政がインターネットサイトの業務を停止するってことは、活字でいえば出版差し止め、ってことだ。裁判所で公正に審理してもらってようやくなしうるもんだ。

 ところが、これを裁判所の手続きではなく、大臣の独断でできるようにしようっていうわけだ。
 大問題だ~。
 でも、なぜ、テレビが騒がないんだ???
 よ~く条文を読むと、【特定地上基幹放送事業者を除く。】とある。なんだ、特定地上基幹放送って? 改正法2条2項をみると…。

【「基幹放送」とは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送をいう。】
 …う~ん、なんだかよく分からないが、既存のテレビ局が含まれるのだけは間違いないようだ…。
 え、ということは、テレビ局は、業務停止の例外なんだ。じゃぁ~テレビが騒ぐはずがないわな~。

 
 と、ここまで来ると、皆さん、改正後放送法174条1項の「放送事業者」とは何かが気になるでしょう?

2条26項【「放送事業者」とは、基幹放送事業者及び一般放送事業者をいう。】

2条23項【「基幹放送事業者」とは、認定基幹放送事業者及び特定地上基幹放送事業者をいう。】

2条21項【「認定基幹放送事業者」とは、第九十三条第一項の認定を受けた者をいう。】

93条1項【基幹放送の業務を行おうとする者(電波法の規定により当該基幹放送の業務に用いられる特定地上基幹放送局の免許を受けようとする者又は受けた者を除く。)は、次に掲げる要件のいずれにも該当することについて、総務大臣の認定を受けなければならない。】

2条22項【「特定地上基幹放送事業者」とは、電波法の規定により自己の地上基幹放送の業務に用いる放送局(以下「特定地上基幹放送局」という。)の免許を受けた者をいう。】

2条25項【「一般放送事業者」とは、第百二十六条第一項の登録を受けた者及び第百三十三条第一項の規定による届出をした者をいう。】

126条1項【一般放送の業務を行おうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。ただし、有線電気通信設備を用いて行われるラジオ放送その他の一般放送の種類、一般放送の業務に用いられる電気通信設備の規模等からみて受信者の利益及び放送の健全な発達に及ぼす影響が比較的少ないものとして総務省令で定める一般放送については、この限りでない。】

133条1項【一般放送の業務を行おうとする者(第百二十六条第一項の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない。】

 はぁ、はぁ、読むだけで疲れる…。
 基幹放送事業者っていうのは、どうもテレビやケーブルテレビを差すようだ。

 そこで、一般放送事業者とは何かを確認すると、これは…なんと、【総務省令で定めるところ】とされている。つまり、何が一般事業者かは、総務大臣が決める総務省令で決められるということだ。

 以上のことから、今回の法改正で、総務大臣が勝手にインターネット事業者(あるいは場合によっては、一定数以上のページビューのある発信者)を「一般放送事業者」と定義づけたうえ、その者に、登録もしくは届け出をさせ、何らかの法違反を理由にして、事業停止にできる、発信停止にできるっていうことだ。
 が~ん、民主党になって、記者会見開放など、情報が公開される方向に進んでいると思ったのに…。
 
 たとえば、改正後も放送法には、「公安および善良な風俗を害しないこと」(新4条1号)、「政治的に公平であること」(同2号)という規定は残る。

 したがって、それらに触れるぞ、って、ニコ動、Ust、2ちゃんねるなどを業務停止にすることも可能なわけだ…。

 いやいや、あなたが運営するサイトも、一定数以上の訪問者があれば、それをもって一般放送事業者とされ、業務停止を命じられる可能性もある…。

 そして、それを無視した場合、【六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処】せられる(185条)。
 この恐ろしい制度を仮に政府から独立した「独立行政機関」が担当するならまだしも、総務大臣が直接担当するわけだから。

 そして、それを監督するはずの電波監理審議会も結局、何らの独立性も担保されることなく放置…どころか、※1で述べたとおり、権限強化の方向だ。
 ひどいのは、改正概要に(http://www.soumu.go.jp/main_content/000058201.pdf)、上記のことがまったく説明されていないことだ。

 もしかしたら、官僚が忍び込ませて大臣にまできちんと報告されていないのかもしれない。

 全国のインターネットユーザー、いまこそ、立ち上がる時。マスメディアは、優遇されており、まったく当てにはならない。
いまのところ、声を挙げているのは、民放労連くらい?→http://www.minpororen.jp/

アワープラネットTVも発信中→http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/505

★追記★
放送法改正してもニコ動などは、放送事業者にはしないと、総務省は説明をするかもしれないが、なら、それを条文上明確にするべきで、大臣が勝手に決められる総務省令で、放送事業者の範囲を決めるというのは、表現の自由にかかわる法律としてはあまりに不明確だ。 

※1:電波監理審議会に放送の不偏不党に関する調査権限を与えるのは先走りでは?(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e923dbee33b2871e8019a927225981bd)



 放送法改正について、トンマな解説(※2)をしてしまい、ヤケ牛丼を食って起きたところです。立ち直りだけは早いので、結果的に、この問題を少しでも多くの方に知ってもらえたことは悪くなかったのではないかと思っています。今回の法改正で、電波監理審議会が番組内容について調査権限を得ることは、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」との関係でいえば、やっぱり、フォーラムで検討すべきことの前倒し、しかも、独立性の担保のない現状の電波監理審議会にそのような権限を与えることは問題だと思う(※1)。
 また、改正後174条1項の

 【総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。】
という条文については、現状でもケーブルテレビについて、総務大臣が業務停止処分を行うことができるとなっているが(有線テレビジョン放送法25条2項)、その場合、ことになるわけだから(現状)、同法26条の2第1項で、審議会への諮問が必要とされている。

 しかし、改正後の電波監理審議会の諮問事項(改正後177条)からは、業務停止処分は抜け落ちているようなのだ。う~ん、またも読み間違いかもしれないので断定はできないが…(情報をご存知の方はこっそり?、コメントお願いします。)。

 もちろん、それよりも重要なのは、普通のテレビは業務停止の対象にならないのに有線テレビなどが対象となっていることだ。これまでもそうだったが、一本の法律となったことでこの矛盾がクリアになった。
 普通のテレビも対象にしたほうがいいなんていうつもりはない。普通のテレビを対象にしていけないのと同様に有線なども対象にするべきではないと思うんです。

 訂正の原稿の中で触れましたが、やはり、ここで大臣による停止命令がそのまま一般的に採用されてしまうと、それがインターネットに拡大されるのを防ぐことは困難になると思うのです。放送とインターネットを融合したテレビができて、ネットもチャンネルで選べるようになれば、有線放送とニコ動などを区別する必要がないということになりかねないからです。現に一度自民党政府のもとでそれは試みようとされました(※3)。
 最低でも、停止権限(その先には登録取り消しもある)は、大臣ではなく、政府から独立性が担保された機関で行うべきであり、それは、現在、まさに、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」で検討すべきことなのだ。

 つまり、今国会で成立されようとしている放送法の改正は、フォーラムでの検討、そしてそれを受けた前国民的議論を踏まえてなされるべきであり、今国会で安易に可決されるべきものではないわけではない、と思うのです。

 そういう意味で、クルーゾー警部のへまが好結果につながるように、今回の早とちりによるニコ生まで巻き込んだミスリーディングが、この問題を共有する人の増加につながり、よい方向に進めばと願っています。
 自戒の意味と、万が一にでも、政府がインターネット規制をすることのないようにとのお守りとし、将来の法改正が私の懸念を吹き飛ばすようなものになり笑い話とできる日がくることを願い、最初の「誤報」(※2)はこのままさらしておくことにします。

 記事を読んだ皆様、お騒がせいたしました。


※1:電波監理審議会に放送の不偏不党に関する調査権限を与えるのは先走りでは?(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e923dbee33b2871e8019a927225981bd)

※2:【重要な訂正あり】放送法改正でネットも「放送」に…そして、ニコ動やUstの業務停止も可能に?!(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/308729604cac0fab7b9e137e07ccc7df)
※3:ネット規制に反対するブロガーの声が届いた?!~が、通信・放送融合法案の致命的欠陥は修正されず…(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e56c43179a9c5589008569ee1db62e3b)

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