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2010年4月

2010年4月30日 (金)

放送法改正でネットも「放送」に…そして、ニコ動やUstの業務停止も可能に?!



 今国会で成立されようとしている放送法の改正で、電波監理審議会が番組内容に関する調査権限を得ようとしていることについてはすでに触れたが(※1)、なんと、インターネットが「放送」とされることがわかった。【●訂正●すみません、ここがそもそも、違うようです。】その結果、ニコニコ動画やUstreamなどの事業者が放送法に触れるようなことをしたと総務大臣が判断した場合、大臣が業務を停止する権限を持つようだ。これって、総務省が気に入らないメディアをつぶせるってことでは…。危険な放送改正について情報を共有し、総務大臣にいったいどうなっているのか聞いてみてほしい。
◆改正法案:http://www.soumu.go.jp/main_content/000058204.pdf

 改正の問題点その1は、放送の定義だ。
 改正後、2条1項は次のようにされる予定だ。

【「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。】

 そこで、電気通信事業法2条1号をみると、【電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。】とある。改正後には、テレビ、ラジオだけでなく、ケーブルテレビやインターネットなども「放送」となるわけだ。

【●訂正●直接受信とは、プロバイダーを経由するようなものは含まない、ようです】
【したがって、以下の文章は後日、全面的に訂正・修正をします。しかし、大臣による業務停止がケーブルテレビで実現した場合、「放送」と「通信」が融合する際には、ケーブルテレビとほとんど類似の機能を有するインターネットTVも同じような規制をかけられる可能性が大きくなることは間違いないでしょう。】
【また、電波監理審議会に関する懸念は、この点とは関係ないです】
 よって、ニコ動やUstも「放送事業者」となる。場合によっては、一定以上のページビューのあるサイトの運営者も「放送事業者」となりかねない。

 そして、具体的に何が起きるか、それが第2の問題だ。
 改正後の174条1項は次のようにされる。

 【総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。】

ねっ、ニコ動などが放送法に触れたら、業務停止を命じることができるわけです。本当だったでしょう。
 行政がインターネットサイトの業務を停止するってことは、活字でいえば出版差し止め、ってことだ。裁判所で公正に審理してもらってようやくなしうるもんだ。

 ところが、これを裁判所の手続きではなく、大臣の独断でできるようにしようっていうわけだ。
 大問題だ~。
 でも、なぜ、テレビが騒がないんだ???
 よ~く条文を読むと、【特定地上基幹放送事業者を除く。】とある。なんだ、特定地上基幹放送って? 改正法2条2項をみると…。

【「基幹放送」とは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送をいう。】
 …う~ん、なんだかよく分からないが、既存のテレビ局が含まれるのだけは間違いないようだ…。
 え、ということは、テレビ局は、業務停止の例外なんだ。じゃぁ~テレビが騒ぐはずがないわな~。

 
 と、ここまで来ると、皆さん、改正後放送法174条1項の「放送事業者」とは何かが気になるでしょう?

2条26項【「放送事業者」とは、基幹放送事業者及び一般放送事業者をいう。】

2条23項【「基幹放送事業者」とは、認定基幹放送事業者及び特定地上基幹放送事業者をいう。】

2条21項【「認定基幹放送事業者」とは、第九十三条第一項の認定を受けた者をいう。】

93条1項【基幹放送の業務を行おうとする者(電波法の規定により当該基幹放送の業務に用いられる特定地上基幹放送局の免許を受けようとする者又は受けた者を除く。)は、次に掲げる要件のいずれにも該当することについて、総務大臣の認定を受けなければならない。】

2条22項【「特定地上基幹放送事業者」とは、電波法の規定により自己の地上基幹放送の業務に用いる放送局(以下「特定地上基幹放送局」という。)の免許を受けた者をいう。】

2条25項【「一般放送事業者」とは、第百二十六条第一項の登録を受けた者及び第百三十三条第一項の規定による届出をした者をいう。】

126条1項【一般放送の業務を行おうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。ただし、有線電気通信設備を用いて行われるラジオ放送その他の一般放送の種類、一般放送の業務に用いられる電気通信設備の規模等からみて受信者の利益及び放送の健全な発達に及ぼす影響が比較的少ないものとして総務省令で定める一般放送については、この限りでない。】

133条1項【一般放送の業務を行おうとする者(第百二十六条第一項の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない。】

 はぁ、はぁ、読むだけで疲れる…。
 基幹放送事業者っていうのは、どうもテレビやケーブルテレビを差すようだ。

 そこで、一般放送事業者とは何かを確認すると、これは…なんと、【総務省令で定めるところ】とされている。つまり、何が一般事業者かは、総務大臣が決める総務省令で決められるということだ。

 以上のことから、今回の法改正で、総務大臣が勝手にインターネット事業者(あるいは場合によっては、一定数以上のページビューのある発信者)を「一般放送事業者」と定義づけたうえ、その者に、登録もしくは届け出をさせ、何らかの法違反を理由にして、事業停止にできる、発信停止にできるっていうことだ。
 が~ん、民主党になって、記者会見開放など、情報が公開される方向に進んでいると思ったのに…。
 
 たとえば、改正後も放送法には、「公安および善良な風俗を害しないこと」(新4条1号)、「政治的に公平であること」(同2号)という規定は残る。

 したがって、それらに触れるぞ、って、ニコ動、Ust、2ちゃんねるなどを業務停止にすることも可能なわけだ…。

 いやいや、あなたが運営するサイトも、一定数以上の訪問者があれば、それをもって一般放送事業者とされ、業務停止を命じられる可能性もある…。

 そして、それを無視した場合、【六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処】せられる(185条)。
 この恐ろしい制度を仮に政府から独立した「独立行政機関」が担当するならまだしも、総務大臣が直接担当するわけだから。

 そして、それを監督するはずの電波監理審議会も結局、何らの独立性も担保されることなく放置…どころか、※1で述べたとおり、権限強化の方向だ。
 ひどいのは、改正概要に(http://www.soumu.go.jp/main_content/000058201.pdf)、上記のことがまったく説明されていないことだ。

 もしかしたら、官僚が忍び込ませて大臣にまできちんと報告されていないのかもしれない。

 全国のインターネットユーザー、いまこそ、立ち上がる時。マスメディアは、優遇されており、まったく当てにはならない。
いまのところ、声を挙げているのは、民放労連くらい?→http://www.minpororen.jp/

アワープラネットTVも発信中→http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/505

★追記★
放送法改正してもニコ動などは、放送事業者にはしないと、総務省は説明をするかもしれないが、なら、それを条文上明確にするべきで、大臣が勝手に決められる総務省令で、放送事業者の範囲を決めるというのは、表現の自由にかかわる法律としてはあまりに不明確だ。 

※1:電波監理審議会に放送の不偏不党に関する調査権限を与えるのは先走りでは?(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e923dbee33b2871e8019a927225981bd)

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2010年4月26日 (月)

メモ:第5回 総務省「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」--メディア総合研究所

総務省の「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」第5回の報告です。
4月23日(金)午後5時~、総務省の第一会議室で開催されました。

この日は関係者ヒアリングの続きで、
①    構成員の上杉隆(ジャーナリスト)
②    同・木原くみこ(三角山放送局)
③    同・深尾昌峰(京都NPOセンター)
④    同・中村伊知哉(慶応大学)
⑤    日本PTA全国協議会
⑥    村井純(慶応大学)
⑦    森亮二(弁護士)
上杉さんは例によって記者クラブ問題。フリー記者らの「開放を求める会」のアピールも紹介。
木原さんはコミュニティFMの立場から、障害者も放送の送り手となるために、さまざまな補助具を開発していることなどを紹介。
深尾さんはNPOの立場から、コミュニケーションの権利の確立と政治からの独立、パブリックアクセスなどについて述べた。
今回のヒアリングではもっとも説得力かつ迫力あるプレゼンでした。
中村さんは衛星を使ったパブリックアクセスの可能性など、放送機会の増加が表現の自由の拡大になると指摘。(産業振興論者の中村氏がパブリックアクセスに言及したのは予想外)
PTA協議会はインターネットについて、青少年を守る環境整備を急ぐよう求める一方、保護者のアンケートから、子どもに見せたくない番組より子どもに見せたい番組のほうが多い、という調査結果を示して、テレビ局の対応の改善ぶりと保護者の意識変化を述べていたのは意外でした。
村井さんはデジタル化で大量のデータのやり取りができることについて、日本は最先端の環境にあるから、そのコンテンツも最高のものを、とアピール。
森さんはネット上の違法有害情報について、実効的な対策を求めた。 討論の時間はほとんどなかったが、ホリプロの堀社長(構成員)が、コミュニティ放送にとって著作権料の負担がきつい、という木原さんの提起に、「パブリックアクセスのために権利を制限されるのはおかしい」と反論していました。
今回はパブリックアクセスについて多くの論者が発言していたのが印象的でした。
ヒアリングは今回でひとまず終わり、
次回は論点整理と今後の進め方ということで、日程は6月2日(水)午後5時~です。

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2010年4月24日 (土)

記者会見・記者室の完全開放に関する記者会見

【報告】4/19記者会見・記者室の完全開放に関する記者会見                  

Know041912

Know041921



                  


 4/19 15時半からの記者会見・記者室の完全開放を求め
る会・記者会見に多数 ご参加、またネットでの連携ありが
とうございました。会見会場には110名が集まり、また、
動画生中継をしたニコニコ動画には4292の アクセスがあり
ました。フリーのジャーナリストや外国のメディア、市民
記者などが多数参加した他、テレビの収録や新聞社からの
質 問などマスメディアの取材まで、参加者層も多岐に渡りま
した。この事実だけでも記者会見の開放の問題が大きなもの
であることを示している と思います。会見は「議論は尽くし
た、これからは行動だ」と会見開放を求める動きが始まった
経緯や、会見開放のキーパーソンである8名の 方から発言を
いただき、その後質疑の時間を設け、終了予定の17時ぎりぎ
りまで議論が続きました。また、会見があった昨日から各報
道 機関へ申し入れ書も送り始めました。申し入れ書の回答期
限は4/22です。

会見に登壇した8名は以下の通りです(あいう えお順)。

 青木 理 (ジャーナリスト)
 岩上安身 (ジャーナリスト)
 北村 肇 (「週刊金曜日」編集長)
  神保哲生 (ジャーナリスト/「ビデオニュース・ドットコム」代表)
 寺澤 有 (ジャーナリスト)
 日隅一雄 (弁護士/「News for the People in Japan」編集長)
 牧野義司 (経済ジャーナリスト)
 豊 秀一 (日本新聞労働組合連合委員 長)

 今後も当会はこのサイト他さまざまなメディアを通して
「記者会見・記者室の完全開放」を目指し活動・発信を
してい きます。ご支援等よろしくお願いします。

            2010年4月20日
            記者会見・記者 室の完全開放を求める会
            (会見開放を求める会)

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2010年4月21日 (水)

日本の植民地支配の受動性を印象づけ、主権蹂躙の実態をはぐらかしたNHKスペシャル~「韓国併合への道」を視て

醍醐聰のブログ
  4月18日、NHKスペシャルでシリーズ「日本と朝鮮半島」の第1回として「韓国併合への道」が放送された。<br /> 伊藤博文と彼を射殺したアン・ジュングン(安重根)の軌跡を辿りながら、1910年の韓国併合に至る歴史をロシア、アメリカ、英国など当時の国際列強の動 きと絡めながら明らかにするというのが番組制作者のねらいだった。しかし、番組を視終えた私の感想は、日本による朝鮮の植民地支配の受動性を印象づけ、核 心的な史実である主権蹂躙の実態がはぐらかされたということだった。<br />  私がいう受動性の印象づけは次の2面からなされた。一つは朝鮮のそれなりの「自治」を認めようとした伊藤博文の融和的統治方針を朝鮮民衆が聞き入れず、 過激なナショナリズムに走ったため、伊藤や日本政府は「併合」という手段を選ぶほかなかったというストーリーの仕立て方がされたという点である。<br />  受動性を印象づけたもう一つの手法は、朝鮮を属邦にしようとする清の野望とロシアのアジア進出の脅威を随所で際立たせることによって、日本が朝鮮の占領 支配とその継続を余儀なくされたかのようなストーリーの仕立て方である。以下、これら2つのストーリーの真偽を検討していきたい。<br /> <br /> <strong><span style=" />1.日清戦争は日本が朝鮮の独立保持のために起こした戦争だったのか? 
 番組は冒頭で、1894年7月、日本は朝鮮王宮を武力で制圧した後、清に宣戦布告をしたというナレーションをさらりと流した。そして、こうした日本の行 動は、日本が東洋の平和をめざしていたにもかかわらず、清は朝鮮を属邦にしようとする野望を持っていた、朝鮮を自主の国とするためにはこうした野望を持つ 清の影響を断ち切る必要があったからだと解説した。さらに、番組は三国干渉で半島の返還を要求したロシアや中国進出を伺う西洋列強の動きも伝え、「日本と 朝鮮王朝は否応なくこうした動きと向き合わなければならなかった」と解説した。これでは日本が朝鮮の後見人として列強の進出から同国の独立を守るために 戦ったかのような歴史像を視聴者に植え付けることになる。
 番組がこのような印象づけをしたトリックの種は日本軍による王宮占領事件がなぜ起こったのか、それと清に対する開戦はどのようにつながったのかに一切触 れず、ブラックボックスにした点にある。この日本兵による朝鮮王宮占領事件については、福島県立図書館所蔵の「佐藤文庫」に含まれている旧日本陸軍参謀本 部筆の『日清戦史』草稿を解析した中塚明氏による詳細な研究成果が公表されている(中塚明『歴史の偽造をただす~戦史から消された日本軍の「朝鮮王宮占 領」~』(1997年、高文研)。この草稿の中に1894(明治27)年7月20日付けで本野一郎参事官が第5師団混成旅団大島義昌少将に提出した次のよ うな申し入れ文書が収録されている。

 「ちかごろ朝鮮政府はとみに強硬に傾き、我が撤兵を要求し来たれり。因って我が一切の要求を拒否したるものとみなし断然の措置に出でんがため、本日該政 府に向かって清兵を撤回せしむべしとの要求を提出し、その回答を22日と限れり。もし期限に至り確乎たる回答を得ざれば、まず歩兵一個大隊を京城に入れ て、これを威嚇し、なお我が意を満足せしむるに足らざれば、旅団を進めて王宮を囲まれたし。然る上は大院君〔李是応〕を推して入闕せしめ彼を政府の首領と なし、よってもって牙山清兵の撃攘を我に嘱託せしむるを得べし、因って旅団の出発はしばらく猶予ありたし。」
                            クリックで拡大↑

 現実はこの申し入れ通りに進行したのであるが、要するに日本は朝鮮政府に対し、期限を切って清の撤兵を要求させる、それが聞き入れられない時は京城に歩 兵一個大隊を進軍させて威嚇し、なおも朝鮮政府から満足のいく回答を得られない場合は旅団に王宮を占領させ、高宗皇帝を斥けて国王の実父である大院君を王 位に就かせて、清軍を朝鮮から掃討することを日本軍に委嘱させるという作戦なのである。この提案を受けた大島旅団長は、「開戦の名義の作為もまた軽んずべ からず」と言って同意した。
 この作戦にそって、1894(明治27)年7月23日、午前零時30分、大鳥公使から「計画通り実行せよ」の電報が届くや景福王宮に向けた混成旅団の威 嚇行進が始まり、迎秋門を破壊した兵隊が次々と王宮の奥へと進み、雍和門内威和堂に在室した国王を発見、山口大隊長は彼の目の前で剣を振りかざして威嚇し たのである。他方、この日午前11時に、日本軍は大院君をその邸宅から連れ出して王宮に入城させた。
 こうして、いわばクーデターにより高宗皇帝を退かせ、筋書き通りに傀儡の大院君を即位させた日本は新内閣に、牙山に駐留した清国軍を駆逐する任を日本に 委託する文書を7月25日付けで出させ、清軍艦隊に対する攻撃を開始したのである。(以上、中塚明『歴史の偽造をただす~戦史から消された日本軍の「朝鮮 王宮占領」~』1997年、高文研、37~68ページ参照)

 以上のような事実経過に照らすと、日本は清の進出から朝鮮の独立を守るために 清との開戦を余儀なくされたのではなく、―――朝鮮を属領としようとした清の動向は事実としてもーーそれとは逆に、朝鮮における自らの権益の確保・拡充の ために武力を背景に王宮を占領し、国王を拉致・威嚇して政権を転覆させ、自らが発足させた傀儡政権からの「要請」に応じるという形で清との戦争に突入した ことがわかる。この意味で、日清戦争は日本が清の進攻から朝鮮の独立と東洋の平和のために「余儀なくされた受け身の戦争」であったかのように描いたNHK スペシャルは史実を著しく捻じ曲げて伝え、歴史のねつ造を拡散させたといっても過言ではない。

日本の植民地支配の受動性を印象づけ、主権蹂躙の実態をはぐらかしたNHKスペシャル~「韓国併合への道」を視て~(2)

日本の植民地支配の受動性を印象づけ、主権蹂躙の実態をはぐらかしたNHKスペシャル~「韓国併合への道」を視て~(3)

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2010年4月20日 (火)

NHKスペシャル 日本と朝鮮半島 第一回 「韓国併合への道」(2010.4.18)を見て とりあえずの感想

 韓国統監に着任した伊藤博文は、韓国をいわゆる「併合」ではない、朝鮮人による「自治」(朝鮮人による「責任内閣」制など)構想を持っていて、もっぱら日本の近代化を手本に韓国を近代化しようとしていた。しかし、朝鮮人がその伊藤構想に従わなかったので最後は「併合」に同意せざるを得なかった――というのが、この番組での伊藤博文の描き方でした。これは京都大学法学部の伊藤之雄氏らの主張にそったものであることは言うまでもありません。
ちらっと映像に登場した『末松謙澄文書』や『倉富勇三郎文書』などについては、断片的な言葉の引用が行われましたが、これはその文書全体の分析が当然必要です。テレビの番組ではその全面的な分析は無理だと思いますので、この小文でも取り上げません。

 ここでは、二点の疑問を呈します。
(Ⅰ)1905年11月17日の第二次日韓協約(いわゆる「保護条約」)を武力で強迫、強要して、韓国の「外交権」は奪われ、列国外交団は韓国から引き上げてしまい、韓国は自主的な外交権を奪われ独立国としての形式も内実も失いました。これは伊藤博文みずから韓国に乗り込んで自明の政策として実践、強要した結果でした。
 この状態で、「韓国の近代化をはかるから、韓国人は伊藤博文統監の言う通りについて来なさい」というのが、「併合ではない伊藤構想」だというのですが、そんなことがどうして言えるのでしょうか。なぜ、韓国人は「外交権を奪った日本に従順に従わなければならないのか」――そんな疑問を、この番組制作者は、まったく問いませんでしたね。
 朝鮮(韓国)は古い歴史と伝統をもった国、民族です。その民族を相手に散々、無法を繰り返した後に、こんな虫のいいことを言われても、韓国人がついてこないのは当たり前ではないでしょうか。
(Ⅱ)私はいま、「散々、無法を繰り返した後に」と言いましたが、この番組では、日清戦争は「朝鮮を属国扱いにしている清国から朝鮮を独立させる戦争だった」ということで片づけられています。日清戦争中に、「朝鮮の独立」といいながら、朝鮮の主権をどれだけ侵害したか、朝鮮人をどれだけ殺したのか、はては国王の后を惨殺するという世界史上空前絶後の事件を引き起こしたのか、その意味、そしてその事件には伊藤博文が肝心、要のところで全部かかわっていたことを、まったく描きませんでした。
 以下、肝心、要のところで伊藤博文が関わっていたことを史料をあげて紹介しておきます。
 (1)日清戦争における日本軍の第一撃が朝鮮の王宮に向かっておこなわれたことは、もう否定できないので、画面には一応出ました。しかし、なぜ「王宮占領をしたのか」、その意味はまったくふれないままでした。朝鮮の国王を擒(とりこ)にして、「属邦保護」として朝鮮に上陸している清国軍を国外に駆逐してほしいという公式文書を、国王から出させて、「戦争の大義名分を入手する」のが、この王宮占領の大きな目的でした。
清国が朝鮮を属邦としていることを取り上げて開戦の口実にしようとした陸奥宗光外相の案に、「そんな清韓宗属関係は昔からのことで、そんなことを開戦の口実にしても欧米諸国の賛成は得られない。もっと適当な口実をつくれ」といっていた伊藤博文でした。
そこで陸奥外相が大鳥公使に使者を送り、大鳥が考え出したのが、朝鮮国王を責めたてて、その返答を開戦の口実にしようとしたのです。伊藤博文はこの大鳥の案に「最妙(面白い案だ)、……大鳥強手段一着手ト被察候、此両三日之挙動ニ依リ、或ハ将来ヲ卜(ぼく)スルニ足ル乎(か)ト奉存候。精密御注意可被下候。……」と陸奥外相に手紙を送っています(明治27年6月29日、高橋秀直『日清戦争への道』東京創元社、1995年、384~385ページ)。
「速やかな開戦にいたる道を見いだせず焦慮していた伊藤にとり,このとき実行しようとしている朝鮮への圧迫は、その展望を切り開くものであったのである」(高橋、同書)。
まだこのあと列強の干渉などがありこれをかわしつつ、朝鮮の王宮占領が実行され、日清戦争の扉を日本軍がこじ開けたのが1894年7月23日だったのです。すなわち、伊藤博文は戦争には消極的、できるだけ清国とは戦争したくなかった、というのは全くの作り話です。

 

(2)しかし、こんな無茶をやりながら、日本政府は王宮占領の事実を伏せたまま開戦に持ち込み、まんまと成功したかに見えました。しかし朝鮮人は怒りますね。当然のことです。秋には東学農民軍を主力とする朝鮮人民の抗日を旗印にした大規模な蜂起が始まります。日本政府・日本軍は困りました。「朝鮮の独立」のために戦うといっている日本軍に向って、「朝鮮の主権を侵害するもの」として公然たる大衆蜂起が始まったのですから。しかしこれは、昨日のNHKTVでは、まったく描かれず無視されました。
 これに対して日本政府・日本軍はどうしたか。井上勝生さん(北海道大学名誉教授)の詳細な研究があります。「東学農民軍包囲殲滅作戦と日本政府・大本営╶╴日清戦争から「韓国併合」100年を問う╶╴」(『思想』岩波書店、2010年1月号。この号はよく売れて雑誌としてはまれなことですが増刷され、まだ大きな書店には売っていますので、ぜひ買って読んで下さい)。新たに一個大隊の日本軍を朝鮮に送り、日本軍を三隊に分けソウルから西南方にむかわせ、朝鮮の抗日闘争を西南の珍島まで追いつめて殲滅する作戦を展開したのです。
 この作戦について、井上さんの論文の結論をあげておきます。
 東学農民軍に対する三路包囲殲滅作戦は、朝鮮現地の外交部や軍部が立案したものではなかった。広島大本営で伊藤博文総理、有栖川宮参謀総長、川上操六参謀次長兼兵姑総監以下の政軍の最高指導者たちが共同して、東京の陸奥宗光外相も参画の上、立案・決定され、朝鮮現地へ命令された作戦であった。「討滅大隊」後備歩兵第一九大隊は、非道で不法な「ことごとく殺戮」作戦を、朝鮮南部ほとんどの地域で実行するように命令された。(前掲『思想』41ページ)。
 伊藤は文官ですが、大本営に出席することを認められていて、日清戦争の軍事指導にもしっかりと参画していたのです。

 

(3)最後に、いわゆる「閔妃殺害」と伊藤博文との関係です。伊藤之雄氏は「当時の外交文脈から、伊藤首相が関係していないことはすでに論証されている」(京都大学法学会『法学論叢』第164巻 第1~6号合冊、2009年3月、2~3ページ)と言っています。そして自著『立憲国家の確立と伊藤博文』(吉川弘文館、1999年)をあげています。しかし、残念ながらその「論証」はきわめて杜撰なもので、とても「伊藤首相が関係していないことはすでに論証されている」とは言えません。
 いわゆる「閔妃殺害」については、昨年、金文子さんによって詳細な研究『朝鮮王妃殺害と日本人』(高文研、2009年)が出版され、この事件についての研究水準が画期的に高められました。
 この事件では、井上馨に代わって朝鮮駐在公使になった三浦梧楼(元陸軍中将)が、日清戦争が終わった後もまだ朝鮮にいる日本軍を必要なときに動かす権限を手にいれておきたいという要求を赴任早々から持っていました。ソウルに着任して20日もたたない「明治28年9月19日付け、三浦公使から川上参謀次長あて電報」に「……本官(三浦公使)の通知に応じ、何時にても出兵するよう、兼て兵站司令官に御訓令相成、而して其趣外務大臣に御通牒相成りたし」(大韓民国国史編纂委員会『駐韓日本公使館記録』第7巻、1992年)とあります。公使というのは外務大臣の指揮下にある外務省の官吏のはずです。それが、外務大臣にではなく参謀次長にこういう重大電報を打ち、こんな電報が来たことを外務大臣に知らせておいてくれ、といわんばかりの電報です。西園寺公望外相代理(陸奥外相は病気で一時休養中)の激怒をかいましたが、当然のことでした。
 電報を受け取った陸軍参謀本部の川上操六次長は、この三浦の要求を伊藤内閣総理大臣に伝えます。「別紙之通、三浦公使より電報有之候に付、参命第三二三号之通、南部兵站監へ訓令可相成筈に候得共、一応御意見相伺度候也」(参謀本部としては三浦の要求にそえるように参謀本部の命令第三二三号として韓国にいる南部兵站監へ訓令する積もりですが一応意見をうかがいます――という内容)。参命第三二三号とは「今後若し朝鮮内地に賊徒再燃する場合に於て、之が鎮圧の為め、貴官の指揮下にある守備兵を派遣する件に関し、特命全権公使三浦梧楼より協議あらば、貴官は固有の任務を尽くすに妨げなき限り成るべく同公使の協議に応ずべし 大本営」というものです。
 意見をうかがうというより、一応伝え置くと言う感じの川上の伊藤あての文書ですね。 さて、伊藤首相はどうしたか。10月2日、伊藤首相は大山巌陸軍大臣にあてて「三浦公使より通知次第、何時にても出兵する様、大本営より予め在朝鮮兵站司令官に訓令相成度旨、大本営へ照会の儀、可然(しかるべく)御取計相成候也」と書きました。つまり、三浦公使から出兵の要請があった時は、いつでも応じられるようにして取りはからってほしい、と伊藤首相は陸軍大臣に申し伝えたのです。
 西園寺外相は激怒したのですが、伊藤首相によって、9月19日付の三浦公使から川上参謀次長あてに送られた「……本官(三浦公使)の通知に応じ、何時にても出兵するよう、兼て兵站司令官に御訓令相成……」ということは追認されて大山陸軍大臣に通知され、大本営と然るべくと計らうようにと、伝えたのです。
 伊藤博文首相が「閔妃殺害」と「関係していないことはすでに論証されている」という伊藤之雄氏の論証は、改めて検証されるに値する不十分な論証だと私は思いますが、いかがでしょうか。

 NHKも遠くアメリカやロシアにまで取材をして、たくさんのお金をこの番組につぎこんだことでしょうが、日本の国内の新しい研究の紹介にももっと精力をさいて、視聴者に上滑りしない情報をしっかり届けてほしいものです。
 以上、昨夜の「NHKスペシャル 日本と朝鮮半島 第一回 「韓国併合への道」を見て、とりあえずの感想です。ご参考までに。      (2010.4.19 中塚 明)
─────────────────────────────────
参考 世に倦む日日 Arisanのノート

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2010年4月16日 (金)

◇不適切取材をBPOが批判~TBSに意見書

2010年04月16日 Daily JCJ マスコミ気象台
TBS系のテレビ番組「報道特集NEXT」などで制作協力した制作会社の記者が取材対象者の郵便物の内容を勝手に見るなどした問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は2日、制作会社との意思疎通が不十分だったと批判する意見書をTBSに出した。
意見書はTBSについて、郵便物を抜き取る違法校を把握できないまま放送した責任は免れないと指摘。記者が取材対象の車に発信器をとりつけて追跡したことも、今回は発信器が必要不可欠である事情はなく、放送倫理に違反すると結論づけた。
ただ、取材活動の可能性を狭める恐れがあることから、発信器の使用を否定することは避けた。(「朝日」4月3日付ほか)

◇NHK、女性の胸など写るアニメ映像を修正 NHKは2日、「みんなのうた」で放送し、DVDとビデオで販売したアニメ映像の一部にファミリー向けにふさわしくない表現があったとして、映像を修正した上で購入者に送ると発表した。
修正するのは、1981年に制作され、2009年までたびたび放送された「コンピューターおばあちゃん」の映像。外部のアニメーターが制作し、女性の胸や尻などの写真計3カットが0.1秒ずつ使われていた。
映像修正について、NHKは「現在の視聴環境などを考え、よりふさわしい表現をとるべきだと考えた」としている。(「東京」4月3日付ほか)

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ニューズレター第18号を発行しました。

181

ニューズレター第18号を発行しました。

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またはこちら

1頁  :「開かれたNHKをめざす全国連絡会」申し入れ
2頁  :「新通信・放送融合法案のねらいは何か」
3頁  :~全戦線にわたって崩壊―テレビ制作現場~
4-5頁:地デジ化をめぐる外国の経験と日本の状況
6頁  :掲示板・ご意見板 から
7-8頁:「坂の上の雲 (NHKスペシャルドラマ歴史ハンドブック)」
での記述について
9頁   :毎日新聞の「質問なるほドリ」について
10頁:NHKドラマ「坂の上の雲」第1部 を見ての感想       
       :NHKドラマ「坂の上の雲」放映を見て
11-12頁:安川寿之輔さんの福沢諭吉批判を聴いて考えたこと
13頁 : 歴史問題の前向き解決とNHKドラマ『坂の上の雲』
14頁 : 朝鮮王妃暗殺 背景学ぶ 松山

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2010年4月11日 (日)

追跡A to Zテーマ投票。と4月番組。沖縄、日韓併合、パレスチナほか

http://kakaue.web.fc2.com/
 転送・転載歓迎 京都の菊池です。
先日放送された 追跡A to Z 4月3日(土)NHK 「無縁社会の衝撃」
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/100403.html
ETV特集 4月4日(日)NHK教育 第307回
殺すなかれ ~没後100年 トルストイの遺言~
http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html
とても興味深かったです。 ※NHKオンデマンドで見れるかもしれません。
4月の月間番組情報誌を見ていて、興味を惹かれたものを紹介します。
いずれも放送予定なので、変更になるときもあると思います。
4月25日 日曜夜 に次の放送が予定されています。
4月25日(日) 22時~NHK教育
ETV特集「シリーズ 安保とその時代 第1回 沖縄と内地の断絶」仮題
そのほか4月に沖縄関連として
追跡A to Z NHK http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/
※ちなみに追跡A to Zでは番組に追跡して欲しいテーマに投票してください。
投票期間:4月3日~4月10日(※今日締め切り)
・児童虐待
・上海万博
・普天間基地問題
・子ども手当
・事業仕分け
・その他
と番組ホームページで募っています。
(詳しくは上記番組ホームページで確認してください。)
追跡A to Z 放送予定 2010年 4月10日 土曜 午後10時00分口10時43分
問われる情報公開 ~密約問題の真相を追う~
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/next.html

日本テレビのドキュメンタリー番組
NNNドキュメント'10で 沖縄 43年目のクラス会変わらぬ怒りと苛立ち
放送:4月18日(日) 25:20~予定
http://www.ntv.co.jp/document/より
・・・
日本テレビのライブラリーに、あるモノクロ映像が保管されている。
日本のTVドキュメンタリーの草分け ノンフィクション劇場 で放送された 我ら日本人 沖縄18歳の発言 だ。本土復帰5年前、米軍占領下で育った高校3年生が、基地経済に依存せざるを得ない不満や苛立ち、本土に対する期待や不信感など複雑な心情を吐露している。
その3年後1970年にスタートしたNNNドキュメントは高校生のその後の歩みを約40年、追跡取材してきた。
普天間基地移転が注目を集める今、間もなく還暦・定年を迎える彼らの目に、今の沖縄、日本という国はどう映るのか?・・・

いよいよ、日本と朝鮮半島2000年で1910年直前まで検証してきたNHKが日韓併合からの100年に取り組みます。
4月18日(日) 午後9時00分~10時13分 NHK総合
プロジェクトJAPAN
日本と朝鮮半島
第1回 韓国併合への道 ~伊藤博文とアン・ジュングン~(仮)
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100418.html
NHKプロジェクトJAPANhttp://www.nhk.or.jp/japan/の一環としての
NHKスペシャル シリーズ「日本と朝鮮半島」
http://www.nhk.or.jp/japan/program/prg_100418_2.html

第1回「韓国併合への道」~伊藤博文とアン・ジュングン~(仮)
第2回「民族自決を求める声」(仮)
第3回「戦場に動員された人々」(仮)
第4回「冷戦に引き裂かれた在日コリアン」(仮)
第5回「日韓関係はこうして築かれた」(仮)
の内容を予定しているそうです。

ドラマ「坂の上の雲」では、琉球処分、日清戦争、日露戦争と、侵略戦争を始めた日本のことを描けないNHKがどのような、日韓併合100年と向き合った番組をつくるでしょうか。
どんな方向へ向くか心配もありますが、その一回一回の放送も大いに議論が行われるもととなり、多くの人が日韓併合100年、そして今を考える機会にもなればと望みます。
パレスチナについてNHKBS世界のドキュメンタリー
http://www.nhk.or.jp/wdoc)が再放送のものも含め3つ放送します。
NHKBS1BS世界ドキュメンタリーにて
4/13火曜 24時 再放送  奇跡の映像 中東分割の悲劇
4/20 火曜 24時 再放送 シャロン ガザ撤退の真実
(※この週のBS世界ドキュメンタリーは人物を取り上げていて、他の日はサッチャー、チャベス、キッシンジャーのドキュメンタリーが放送予定です)
4/26月曜24時パレスチナとイスラエルの音楽家たち 前編
4/27火曜24時
〃 後編
NHK教育の福祉ネットワークがシリーズ自殺は減らせるかを放送します。
4/12月曜、13火曜、14水曜20時~
日本テレビのNNNドキュメント'10も 4/25日曜24時50分~
「ハウスブルー 主婦たちのうつ事情」(仮題)
http://www.ntv.co.jp/document/参照
NHK関西は
2005年4/25から5年を前にして4/23金曜
19時30分~
かんさい熱視線特集「JR福知山線・脱線事故から5年~問われる事故調査と被害者支援」(仮題)を放送予定です。
労働について
4/24土曜22時30分
NHK追跡A to Zなぜ彼女たちは立ち上がったのか~キャバクラ労組・深刻化する女性の雇用
※追跡A to Zは4/17土曜22時は
「虐待の傷は癒えるのか~立ちはだかる゛社会の壁゛~」も放送予定だそうです。
地域紹介では
4/10土曜21時毎日放送(TBS系)世界・ふしぎ発見が ブラジルについて
4/23金曜22時05分NHKとびきり九州沖縄SP 海の国道
4/30金曜22時NHK世界ふれあい街歩き台南・台湾が興味深いです。
音楽関連では 4/14水曜 22時55分 NHK SONGS 岩崎宏美 4/23金曜 23時~ NHK教育 劇場への招待「わらび座゛火の鳥゛」
 ※ミュージカル サウンド・オブ・ミュージックのモデルとなったトラップファミリーについての映画 4/29木曜13時 NHKBS2 映画「菩提樹」(1956西独) 4/30金曜13時 NHKBS2 映画「続・菩提樹」(1958西独)の放送がうれしいです。 いずれも放送予定なので、変更になるときもあると思います。
菊池 ekmizu8791アットezweb.ne.jp (菊池へ送信の場合、アットの部分を@に直して送信してください。菊池)

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2010年4月 7日 (水)

放送を語る会報告:~全戦線にわたって崩壊―テレビ制作現場~

~全戦線にわたって崩壊―テレビ制作現場~
個人加盟のジャーナリスト・ユニオンそしてジャーナリスト教育を!
http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/36horamuhoukoku.html

 3月27日、「危機にあるテレビ制作現場」のタイトルで放送を語る会主催「第36回放送フォーラム」が開催された。
1月下旬、放送を語る会が刊行したブックレット「NHK番組改変事件」出版記念を兼ねた集会だったが冒頭、アジアプレス・インターナショナル代表野中章弘氏が強い危機感を込めて「いまテレビ制作現場で起こっていること」を基調報告した。
野中氏はNHKでETV特集なども数多く手がけた経験を基に、先ず「メディア産業の危機」と「ジャーナリズムの危機」が区別されずに議論されている混乱を指摘、メディア産業低落期の今こそジャーナリズム再生の可能性があるはずだがテレビ制作現場は全戦線にわたって崩壊し内部からの改革は不可能にみえると厳しい見方を示した。

 民放の報道番組制作現場では働く人の88%が制作会社所属。使い捨ての雇用形態が常態化、キー局社員も含めて多忙な中でひた走り、疲れて意欲が低下し考える力を失っていると指摘、「あるある」「バンキシャ」問題など不祥事が相次ぐ異常事態だが、表に出るのはほんの一部で問題は日常茶飯に起こっているという。制作現場ではジャーナリズムとしての内部的基準がなく、記者として取材経験のないまま現場に行かされるようなことが平気で日々行われているとも。


 処遇の面での格差も紹介され参加者を驚かせた。
野中氏の調査では、キー局社員(40歳前後)が年収1500万円前後に対し、制作会社社員(26歳)340万、契約社員300万。一方、生涯賃金で見るとキー局社員は62200万~55500万。これに対し、日本の男性の正社員の生涯賃金は23500万、非正規社員13500万。それがテレビ番組制作現場ではフリーや制作会社の契約職員はおそらく一億円前後から1億数千万に過ぎず格差は歴然、フリーの番組制作者はワーキングプアすれすれという驚くべき数字だった。
氏が教鞭をとる大学のジャーナリズム演習でも近年は志を持ってフリーのジャーナリストを目指す学生はゼロだという。メディア現場の悲惨な実態が心ある学生たちの希望を失わせているのだ。
 では、こうした「ジャーナリズムの危機」「メディア産業の危機」をどのように乗り越えるのか?

 野中氏は、現場の制作者たち自身が当事者として闘ってこなかった問題点を指摘した上で、次のように提言した。
 一つはジャーナリスト教育の必要性。番組制作において守るべきことは何か、ジャーナリストの倫理をテレビ局・制作会社を問わず現場制作者が学ぶシステムをつくること。大学メディア学科やメディア企業の横断的機関によるジャーナリズム教育、緊急相談窓口として制作現場労働者のための「相談ホットライン」などの設置を具体的に提案した。
 もう一つは個人加盟のジャーナリスト・ユニオンの創設。既存のメディア産業労組には期待できず変革の主体が見えてこないが賃金・労働条件のような構造的問題は構造的解決が必要と提起し現場から立ち上がることを呼びかけた。

 第二部の討論では、野中氏の問題提起を受けて会場からの発言、ブックレット「NHK番組改変事件」の感想も交えながら議論を交わした。
 松田浩氏は戦後のジャーナリズム運動がメディアの企業内労働組合と日本ジャーナリスト会議などを軸に展開してきた歴史を紹介するとともに、「20年来『ジャーナリスト・ユニオン』の必要性が議論されてきたがどこから運動を起こすか、担い手は誰か、とっかかりが見えないまま今日に至っている」と振り返った。

 NHK元プロデューサー永田浩三氏は、NHKでも現場の制作体制の転換とともに現場が尊重されない傾向が強まっていると指摘、「ベルリンの壁が崩壊した1989年ごろから制作現場も転換期を向かえ、番組の大型化とともに取材が一人のディレクターだけでは対応できなくなり多くのディレクターの取材をプロデューサーがまとめる方法に変ってきた。
同時に現場を直接取材するディレクターの意見が尊重されずプロデューサーによる番組管理が強まってきた」と語った。「ETV2001」改変事件でも現場取材は制作会社のディレクターに任せ、プロデューサーの永田氏は一度も女性国際戦犯法廷の現場に足を運ぶことができず番組改変の修羅場で「足腰が弱くて頑張れなかった」と自戒をこめて語った。
現場に根ざさない制作体制が「政治介入」への抵抗力を弱めジャーナリズムを衰退させる一因であることを実感させる発言だった。

 野中氏の提言を受けて、個人加盟のジャーナリスト・ユニオン、ジャーナリスト教育のシステムをどのように作っていくのか、私たちはいま厳しく問われていることを実感した。              (放送を語る会 小滝一志)

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2010年4月 6日 (火)

地デジ化をめぐる外国の経験と日本の状況 隅井孝雄氏

隅井孝雄 メディアアナリストの視点 2010年03月26日 より
これは 2009年12月19日 京都機関紙会館5階大会議室で開催された「地デジ問題を考えるつどい」(NHK問題京都連絡会議、住まいと人権を守る京都連絡会などの主催)での講演要旨である。

1.デジタルテレビへの全面転換、つまりアナログ放送の廃止は2011年7月に予定され、論議を呼んでいる。テレビのデジタル化は日本では2003年12月に始まった(大阪は2004年、京都は2005年)。現在異なった電波によって同時に二つの同じ放送が流れている。テレビ放送は日本では1953年に開始された。最初は白黒のローカル地上波だったがマイクロ回線によるネットワークが形成されて全国放送になり、1964年の東京オリンピックを契機にカラー放送が導入された。ビデオ器機、衛星放送、小型ビデオカメラの導入など幾つかの技術が進んだが、全面デジタル化は最も大きな技術変化だと言える。

2.テレビはデジタル化によって情報量と情報スピードが飛躍的に大きくなる。他の映像、音響、電話、コンピューター関連機器など一連の情報手段との相互乗り入れが可能になる。またテレビ放送をアナログ波からデジタル波に移行させる事によって、様々なデジタルシステム用の周波数を確保できる。国際機関で技術規準の統一が進んでいる。既にアメリカのテレビは全面デジタル化を行い、ドイツ、イギリス、韓国等の各国でもデジタル化、アナログ停波を目前にしている。

3.アメリカでは2009年2月17日に予定されていたデジタルへの移行を6月12日迄4ヵ月延期した。アメリカでは1憶1200万テレビ世帯の6割がケーブルテレビ、3割が衛星経由でテレビを視聴しているため、デジタルへの切り替は簡単だと思われていた。しかしアンテナで視聴しているほぼ1000万台のテレビは、貧困世帯、高齢者世帯が多く、テレビの買い換えがすすまなかった。政府はアダプターが買えるクーポンを用意したものの、申し込みが殺到して受取れない世帯が大量に出た。これが主な要因となり、オバマ新政権は貧困家庭への保護策重視の立場から延期した。結局2月17日には368局がアナログを停波、6月12日に約1000局が移行してデジタル時代に移った。なおハワイ州は2月15日に移行作業を行なった。FCCは 4000人のボランティアが待機するコールセンターを設置したが、6月8日から6月12日の問合せは70万件に達した。

4.イギリスは世界の中で最もデジタル化が進んでいると言われている。BBCのデジタル放送は1998年に始まった。そして2002年デジタルプラーットフォーム、「Free View」 を立ち上げた。BBCは新たなデジタルサービスのチャンネルを次々に増やす一方、民放デジタル、衛星デジタルも包含、加入者は980万件に拡大した。2台目、3台目の契約をカウントすると1700万件になるとも言われている。この他衛星、ケーブルのデジタル加入が1200万件あり、デジタル普及はテレビ世帯の89.2%に達している。「Free View」 のアダプターは20ポンド(2800円)、基本サービスは無料というシステムである。現在の地上波テレビを含むチ51ャンネル、ラジオ24チャンネルが視聴できる。デジタル普及の先頭にたっているBBCはインターネットへの参入も積極的だ。マーク・トムソン会長は「インターネットを通じた番組配信は戦略の中心だ」と明言している。新しい展開の一つにインターネット上での番組配信iPlayerがある。2007年から開始、300近い番組を無料で視聴できる。視聴者はジワリと増え、テレビを持つことのなかった大学生など若者の間に広がっている。放送後一週間に限って見逃がした作品、ニュースを見ることが出来るのだが、こうした視聴者をどのようにして「受信料を払う契約者」にして行くかという課題があるようだ。

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5.日本では山間部や都市集合住宅での共聴システムのデジタル移行が難しい。アンテナをデジタル仕様に変え、電波の方向を調節するのは予想以上の難問だということも最近明らかになってきた。このままでいくと500万世帯以上が一挙にデジタル難民化する恐れがある。デジタル受像機の普及は2009年12月現在 6300万世帯だが、総務省の調査だと普及世帯は49.1%に止まっている。あと1年半で100%に達する保証はない。政府は生活保護世帯200万にチューナーを無償供与する予定だが、実は同程度の貧困世帯845万世帯は放置されたままだ。地方テレビ局の多くはすでに多額のデジタル出費を強いられている上、もし延期されればアナログ設備の補修、アナログデジタル両様番組制作、送出経費支出は大きな経済的負担になると危惧している。昨今の経済危機、広告不況などを考えると、制作番組の縮小、削減、質的低下の恐れがある。

6.テレビのデジタル化が進につれ市民メディア、独立メディアも盛んな動きを見せている。韓国では、アメリカ牛肉の輸入に対して市民の怒りが爆発したが、ビデオカメラやカメラ付きパソコンを持った若者が現場からの生レポートをインターネットに送り出すことによって、さらに抗議の波を広げ、誕生したばかりの政府を窮地に追い込んだ。韓国では市民メディアの活動が活発で、市民に受け入れられている。テレビに次ぐ情報メディアとして、広告収入でも新聞をしのぐ勢いを示している。

7.アメリカでは大企業に依存しない独立系のメディアが力を発揮している。技術革新が進んだ結果市民の誰もが、世界のどこからでもインターネット技術を駆使してレポートを送ることができるようななったことが市民メディア、独立メディアの支えだ。デモクラシー・ナウを放送しているエイミー・グッドマンは9.11でブッシュ政権が戦争に向かう動きを徹底して批判して視聴者の支持を拡大した。今では320ラジオ、268テレビのネットワーク持ち、インターネットを経由して全世界でも放送するようになった。こうしたメディアの躍進の背景には技術の変化もある。市民がテレビを、テレビスタジオを手にする時代が来たのだ。

世界の公共放送の現状、韓国、イギリス、ドイツの場合


BBC、巨大化から事業縮小に転換、娯楽番組減らして報道番組強化?ラジオ2波削減、ウエッブ半減、スタッフ600人レイオフ

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変るか韓国メディア地図、新聞社、大企業が放送参入へ

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2010年4月 3日 (土)

メモ:第4回 総務省「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」--メディア総合研究所

3月29日(月)午後5時~、総務省の第一会議室で開催されました。
この日は関係者ヒアリングで、
①    構成員の宍戸常寿准教授(一橋大学、憲法学者)
②    BPO(飽戸弘理事長)
③    東京都地域婦人団体連盟(長田三紀事務局次長)
④    日弁連(日隅一雄弁護士)

宍戸さんは放送をめぐる政府、国民、他のメディア(新聞や市民メディア)や利害関係者(報道被害者)、BPOなどの権利関係を図式にして示したうえで、規制の在り方を提示。
結論的には、内容規制に踏み込んで罰金などを課す「ハード」な規制機関をつくるなら政府からの独立性が必要で、EUのようなメディア事業者との「対話型規制」の「ソフト」な規制機関なら、BPOの機能拡大でいい、とした。
どちらが望ましいかについてまでは言及せず。

飽戸さんはBPOの機能や取り組みの現状を報告。「メディアの自律を応援する機関」であることを強調して、ペナルティを課すような強力な権限はないことを説明した。

婦団連は消費者基本法における消費者の権利をベースに、BPOの取り組みを評価しつつも、それが一般にはほとんど認知されていない現状を指摘。また、東京都の青少年条例などを引き合いにして、行政による内容規制の危険性をアピールした。
(青少年保護を強調するのかと思っていたのでこれは意外でした)

日隅さんは表現の自由の観点から放送行政の独立行政委員会化を訴えるとともに、マスメディアの領域におけるパブリックアクセス導入の重要性を述べた。(ネット利用の市民メディアが日本では発達しないことがその理由)
それぞれについて若干の質疑が行われ、郷原信郎構成員(元検事の弁護士でコンプライアンスの専門家)がBPOに対して「放送局の自主的取り組みがちゃんと行われているがチェックするのがBPOの役割であるべきなのに、それが十分でない」と批判した。
また言論NPO代表の工藤泰志構成員も、BPOの提言に放送局がちゃんと対応していないことを指摘して、BPOの取り組みを促していた。全体として、BPOに対して厳しい態度だった印象。
ジャーナリストの上杉隆構成員は日弁連が記者クラブ問題を取り上げたことがあるかを質問、日隅氏は記者クラブは開放すべきという意見を日弁連としても持っていることを紹介した。
京都NPOの深尾昌峰構成員はパブリックアクセスの必要性について日隅弁護士に質問、日隅氏は「市民から出てくる情報がマスメディアにも流れるという道筋が必要だ」と説明した。
会合の終わりごろに原口総務大臣が到着してあいさつ。各省庁の記者会見開放度を調査してランク付けしたものを発表する、と述べた。
次回もヒアリングの予定。日程は4月23日(金)午後5時~。

会合模様(オンデマンド配信)

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2010年4月 2日 (金)

QUAE【2010年2月28日 テレビ番組採点・集計結果】

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1.今回の面白ポイント

  • その1  バラエティ番組の質的評価は、視聴率と反比例の関係だった。
  • その2  『龍馬伝』と『日曜劇場「特上カバチ!!」』はまったくタイプの違うドラマだが、どちらも実用評価が異常に高く、全体評価も似ていた。
  • その3 「大津波警報」が一日中画面を占拠していて、必要性と視聴への支障の間で考えさせられた。

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