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2010年3月30日 (火)

フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略

初公開日:2010/03/01

 「タダより高いものはない」ということわざがある。無料サンプル品などをエサに売り上げを確保するような商売に対し,うまい話には裏があることを知らしめる意味だ。しかしWebの世界は,このようなことわざとは別の経済圏が成立しているのはご存じの通り。米グーグルや米ウィキペディアのサービスなど無料のサービスは数限りない。そんな無料モデルの周囲に様々なバリエーションの戦略があることを教えてくれるのが,本書「フリー」だ。

 本書を読むことで,いわゆる無料の広告モデルは一面に過ぎず,タダ(無料)とは実は奥が深い概念であることが分かる。Web業界の人はもちろん,無料の波にさらされるあらゆるサービスにかかわる人に,多くの示唆を与えてくれる。

 本書の著者は米ワイアード誌の編集長であり,かつて「ロングテール」というWebビジネスの重要キーワードを作った人物。それだけに話題性は十分だ。期待を裏切らず,本書は文句なく面白い。古くはひげ剃りのモデルにさかのぼり無料のビジネスモデルをひも解く。

 そんな本書で,ロングテールに次ぐキーワードとしてフィーチャーしているのが「フリーミアム」という言葉だ。フリーミアムとは「フリー」(無料)と「プレミアム」(高額の有料商品/サービス)を組み合わせた造語。無料のサービスや商品で多くのユーザーを集めて,さらに高度な機能や特別な仕様などを有料サービスとし,両者のバランスで利益を確保するビジネスモデルを指す。もともと米国のベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソン氏が提唱した言葉だという。

 フリーミアムのビジネスモデルは,いわゆる無料サンプル品として古くから存在している。しかし従来は少数の無料サンプルを呼び水に多くの有料製品を売っていたのに対して,Webサービスでは5%というわずかな有料ユーザーで大多数を占める95%の無料ユーザーを支えられる。デジタルの世界では,多くのユーザーにサービスを提供するコストが飛躍的に下がったからだ。様々な無料を軸にした戦略が考えられるわけだ。

 巻末にはそんなフリーミアムのビジネスモデルを付録として多数列挙している。実践的な書としてすぐに役に立つだろう。もっとも本書の価値はそれだけではない。無料という概念を多角的にとらえ,人の心理の移り変わりなど,社会学的な読み物としても読み応えのある内容にした点にある。

 Webの進展に伴って,今後も無料サービスは増え続けるだろう。そこで「タダより高いものはない」と思考停止に陥るのではなく,知恵を絞ることこそ次のビジネスを切り開くきっかけになる。本書はその最良のスタートになるだろう。
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フリー

フリー 
クリス・アンダーソン著
NHK出版発行
1890円(税込)

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