アナログ停波延期の方が現実的な対応とはいえないか。
このところ、総務省などが地デジ普及のネックとして問題視しているのは、受信障害解消のための共同受信施設だ。
こうした施設は全国に約五万六千ヵ所(約六百万世帯)あるが、昨年末現在で、地デジヘの対応済みはわずか25・8%。今年三月末の目標値の半分にすぎなかった。
このため、総務書は共同施設の受信状態計測に 本年度は二十七鏡円、新年度予算案にも十六鏡円を計上。さらに今年、来年とも訪問と説明に年間約五億円を使う。
課題はまだある。一般に地デジは受信障害に強いとされる。でも、実際に受信してみないと分からない。そこで同省は東京、神奈川、埼玉、干葉を対象に簡易アンテナとチューナーのセットを1週間無料で貸し出す。予算は約二千万円だ。
「調査」しているのは国だけではない。今月、川崎市内の事業所にNHKから「デジタル放送の受信に関するアンケート」と題したダイレクトメールが届いた。事業所の代表は「うちはすでにデジタル対応済み。それなのになぜ、また聞かれるのか」と不快そうだ。
NHKによると、このダイレクトメールはBS契約者から抽出した世帯・事業所の計約五百万カ所に対し、BSのデジタル化を知らせる目的で送っているとい
う。ただ、昨年九月の総務省の調査でも、視聴者にBSデジタルについて聞いており、ダブリ感がある。NHK広報は「総務省はサンプル調査。それに調査で、
BSのデジタル化を知っていたのは74%だけと分かり、認知度を上げるために送った。」と話す。調査費は公共性のある受信料から約四億円があてがわれた。
この期に及んでの連続した調査について、総務省の担当者はデジタル対応が進むにつれ、受信障害の現実などが分かつてきた。その対応には調査が不可欠だ。前
から分かっていたはずと言われそうだが、調査と対策はデジタル化の両輪だ」と言う。でも、事前準備の不十分さもさることながら、むしろ、なかなか移行しな
い国民の尻を国民おカネでたたいているようにしか映らない。
放送に詳しいジャーナリスト坂本衛さんも「国は各種調査で国民をあおって、デジタル普及を促している。最後に残されるのは経済的に苦しい世帯。この不景気にそんな人に切迫感を与えるのはいかがなものか」と政府の対応に疑問を呈す。
各種調査に加え、国は二百七十万の困窮世帯にも地デジチューナーを無料で配る。その予算額は三年間で六百億円。 一方、アナログを停波せず、維持する経費はNHKだけで年間六十数億円(推定)。年間受信料収入(二〇〇八年度決算で約六千三百億円)のわずか1%にすぎない。
坂本さんは「調査に税金を浪費するより、アナログを維持した方がはるかに安上がりだ。″地デジ難民″を生まないためにもアナログテレビの寿命を考え、完全地デジ化を三年ほど延期したらどうか」と提案している。
10/2/26(東京新聞)ご意見は FAX 03(3595)6911 Eメール tokuho@chunichi.co.jp
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地デジ普及の遅れを受けて、2011年7月24日以降もアナログ放送が受信可能に
こくた恵二 テレビが見られなくなる!「地デジ難民」を生まないよう国が責任もて
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