「日本版FCC」構想への提言
「日本版FCC」構想への提言
岩崎 貞明 (『放送レポート』編集長)
JCJ機関紙部ブログより http://jcjkikansh.exblog.jp/12768066/
民主党の原口一博総務大臣、内藤正光総務副大臣は放送行政を政府から切り離す「日本版FCC」構想を打ち出している。アメリカのFCC(連邦通信委員会)にならって、国家権力が放送に直接介入しない仕組みを作ろうということらしい。言論・表現の自由の観点から歓迎したい提案ではあるが、最低限クリアしてほしい条件をいくつか提示したい。
まず、放送局への免許権限を政府から切り離して独立機関に委ねることが必要だ。これまで、政府が放送内容に関して行政指導などを行ってきても、放送局側は免許権限を握られているから抵抗できない。電波・放送行政は政府と分離した独立行政委員会のようなところが司ることが欧米では常識となっているから、この機会に日本も倣うべきだ。一部報道であったような、放送局への免許権限や電波の割当権限を総務省に残し、新委員会はその権限行使をチェックするだけという制度設計では、本当に放送の自主・自律を守る制度にはなり得ないと考える。
ただその場合、いかに独立行政委員会といえども、FCCのように番組内容まで監視して規制の対象にするのはよろしくない。日本には放送倫理・番組向上機構(BPO)がすでに機能しているのだから、放送内容に関わる問題についてはこのBPOに任せて、新しい委員会は一切タッチすべきでない。
また、FCCは5名の委員で構成されているが、国民各層のさまざまな意見を放送行政に反映させるためには最低でも10名前後の委員が必要だろう。委員の選任に当たっては、選考委員会を設けて委員の候補を推薦する方法や、一般からの公募枠の設定など、選任過程をできるだけ公開すべきだ。あわせて、政府は委員候補の選考過程には一切関与しない仕組みにしておく必要もある。
FCCは事務局スタッフが1800人というが、番組内容の規制を行わない組織なら、これほど巨大な事務局は必要ない。この事務局の作り方が重要で、総務省などからの出向や天下りで事務局を構成したのでは独立行政委員会にした意味がなくなる。なるべく民間から事務局スタッフを登用することは絶対条件だ。
新しい委員会には、徹底した情報公開を望みたい。会議の公開に加え、不服申し立てなどがあった場合には聴聞会を開くなど、手続きの透明化も求めたいところだ。
いずれにしても、来年1年かけて放送行政のあり方について議論するということだから、この際徹底的に情報開示して、さまざまな意見を集めたらいいだろう。ところが放送局は、自分に深く関わることなのにこの問題をなぜかほとんど報じていない。むしろ率先して議論を巻き起こすべきではないだろうか。(了)
(2009/10/28)
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