« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月

2009年5月29日 (金)

Column  NHKドラマ「坂の上の雲」放送の中止を!

(5.18付「京都連絡会ニュース」NO11からの転載  09/4/20 湯山哲守)
「坂の上の雲」放送は政治的
 NHKは今年から再来年にかけて3年間、各年末に計13回にわたって司馬遼太郎原作のドラマ「坂の上の雲」を放送するとキャンペーンを展開しています。このドラマは原作から推定すればはじめはともかくとして、全体として「戦争物」になると予想されます。実際、第4回では「日清開戦」、第8回は「日露開戦」、第10回が「旅順総攻撃」、最終回「日本海海戦」と予告されています。長期にわたって行われるこの放送は、現下に憲法改悪を推進する勢力を励ます重大な政治問題であり、公共放送としてふさわしい番組ではありません。
 その放送内容を質していこうと、現在京都では、ジャーナリスト、日本史研究者、弁護士らが集まって「懇談会」が開かれ、シンポジウムを計画するなど、批判活動が始められました。私も「NHKを監視・激励する視聴者運動」を進める立場からその懇談会に加わりました。NHK問題京都連絡会事務局長の長谷川長昭さんも参加されています。
司馬遼太郎氏の矛盾した「歴史観」
 大きな問題として、まず司馬遼太郎氏の「歴史認識」があります。彼は「明るい明治と暗い昭和」という視点から1868年から1945年までを特徴づけます(1969年『坂の上の雲(八)』〔あとがき一〕)。特に明治維新から日露戦争勝利まで(〜1905年)の30年間は「文化史的にも精神史の上からも」日本の歴史上最も「楽天的な時代」だったとして「被害者意識」に基づいて暗い事件をことさら上げることはないとさえ断言します。そしてあろう事か、「日清戦争の原因は朝鮮にある。といっても、韓国や韓国人にあるのではなく、罪があるとすれば、朝鮮半島という地理的存在にある。」とも小説の中で述べています(『坂の上の雲(二)』48頁)。さらには「日露戦争はロシアの側では弁解の余地もない侵略戦争であったが、日本の開戦前後の国民感情からすれば濃厚に明らかに祖国防衛戦争であった。」(『世界の中の日本』96頁)とさえ規定しています。その彼が、「しかし日露戦争の『戦後』から、日本国民は『勝利』を絶対化し、日本軍の神秘的強さを信仰するようになり、民族的に痴呆化し、国民的理性が大きく後退して狂気の昭和期に入る。」と中国侵略に始まる15年戦争については厳しく批判する立場を表明しています(『坂の上の雲(八)』〔あとがき二〕)。しかし「狂気の昭和」を導く源流が「日清・日露」両戦争を通しての朝鮮、中国への侵略戦争にあったことは紛れもない事実です。また、大正デモクラシー期における国民の「理性」の成長などには全く言及しないなど、どう考えても矛盾した歴史観を持っていました。そしてそのことを本人は暗に自覚していたと思われます。なぜなら、すぐ後で述べるように、この小説を「映画とかテレビとかにしてほしくない」と「遺言」しているからです。
司馬氏の「遺言」に反するNHK
 問題なのはNHKの態度です。このドラマの企画が「原作者本人の意向に反してドラマ化されること」に対する説明があるべきです。先の「遺言」を詳しく記すと、「この作品はなるべく映画とかテレビとか、そういう視覚的なものに翻訳されたくない作品でもあります。迂闊に翻訳すると、ミリタリズムを鼓吹しているように誤解されたりするおそれがありますからね。私自身が誤解されるのはいいが、その誤解が弊害をもたらすかも知れないと考え、非常に用心しながら書いた」となっています(NHKブックス『「昭和」という国家』48頁)。まさに「憲法改悪勢力が跋扈する情勢」下にこのドラマがミリタリズムを後押しすることとなるのは必定で、「遺言の懸念」が現実化してしまいます。しかもこの「遺言」はこの本の「巻末」によれば、NHK自身の教育テレビで1986年5月から翌年3月にかけて「司馬遼太郎・雑談『昭和』への道」と題して放送されたシリーズの第3回放送の中で述べられたということです。それを「乗り越えて」強行するNHKの今回の態度は何とも不可解です。加えて不可解なことは、NHKホームページの中で出演者の紹介はされているが、「脚本」が誰の手になるかが明らかにされていないことです。かつて07年からの放送をめざして準備していた脚本担当者の野沢尚氏が04年に自殺したとされており、その未完となっていた野沢氏の脚本は今回どう処理されたのか、司馬氏の「遺言」とドラマ化との関係と合わせて明らかにされるべきでしょう。
庶民の目線で「未来の世界と日本に通じる」大河ドラマを!
 私たち視聴者がこのドラマ化計画を知らされたのはNHKが視聴者に意見を求めた、07年8月の「NHK次期経営計画(2008−2012)の考え方」の中でした。「質の高い大型企画、見ごたえのあるドラマ」として「司馬遼太郎が10年をかけ、近代国家日本がスタートする明治時代の群像を描いた『坂の上の雲』をドラマ化するとともに、明治、大正、昭和を振り返り、日本の進路を考える『プロジェクトJAPAN』をもうけて、平成21年度から3年間にわたりさまざまな番組を放送します」と。
 これに対して「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は、同年8月30日付で意見書を提出し、 「メディアに求められる高いジャーナリズム精神の根幹は権力の監視機能です。・・・この基準に照らしていえば、『坂の上の雲』のような時代がかった国づくりを主題にした番組が今の日本の視聴者(有権者)に問われている選択や判断のよりどころを提供する番組とは思えません。・・・『国のかたちづくり』と称して国家のありようを主権者たる個人の上に置く風潮が強まっている今の時代にこそ、現行憲法が謳った主権在民の意義、集団的自衛権と日本国民および周辺各国の平和との関係、国家の自衛と個人の自由・権利の関係など、目下のわが国で焦眉の問題になっているテーマを題材にした番組作りが重要です。・・・・NHKの大河ドラマというと、なぜ戦国武将の波乱の生涯や明治期の志士の群像を描いたドラマばかりなのか不可解です。今、NHKが視聴率を気にせず、公共放送の強みを発揮して編成することが期待される番組は現代・未来の世界と日本の進路に通じるテーマです。具体的には、日本が関わった近現代の侵略戦争・植民地支配の実態、沖縄戦の現実、東京裁判の実態と評価、現憲法の制定史、敗戦後の占領政策の実態などを、次世代の若者はもとより、これらの歴史を知っているようで実はよく知らない多くの日本人に伝える大河ドラマが編成されるよう要望します。」と申し入れました。 この方向を今、再確認したいと思います。
 NHKが大物スターをふんだんに配して日本にしか通用しない、侵略戦争を美化するドラマづくりを中止し、もっと若者たちが日本の侵略戦争の事実を踏まえ、その上で世界の人々と自信を持って手を繋ぎ、日本の進路に確信を持つことができるような 「庶民」の目線からのドラマづくりを求める次第です。
7.18市民シンポジウムの成功を!  
 冒頭で触れた「坂の上放送問題」に関する市民シンポジウムが7月18日(土)午後、京大会館で開催されることが予定されています。そのための実行委員会が5月8日に開かれます。当「NHK問題京都連絡会」も会としての参加を検討していただきたいと思います。 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

放送を語る会、日放労(NHK労組)に申し入れ、「シリーズJAPANデビュー」に対する見解を公表

放送を語る会 http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/ は
① NHK・日放労(NHK労組)に申し入れました。
 「放送を語る会」は、「NHK問題を考える会(兵庫)」と連名で、5月11日に「BPO意見書についての見解」と、申し入れ文書を視聴者センターを通じ、NHK経営委員・会長・副会長・理事全員に届けるよう要請し、翌12日に日放労山越委員長に要望書を手渡すと共に1時間余り懇談しました。
日本放送労働組合中央執行委員会殿
「BPO「意見書」を真摯に受け止め、真相究明と放送の自主自立に向けて一層の取り組みを要請します」は http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/09-5bponiporo.html 
② NHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」に対する
一連の批判に対する見解を公表しました。 http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/japanajia.html
③ NHKに対する意見書
 BPO「意見書」を真摯に受け止め、真相究明と放送の自主自立に向けて一層の取り組みを要請します

| | コメント (1) | トラックバック (0)

BPO意見書を尊重しNHKの真摯な対応をもとめる声続々!③

④ 毎日2009年4月28日 長井暁氏インタビュー
 Nagaiakiranhk1 意見書は、放送人の良心に響く重要なテキストである。
 従軍慰安婦を取り上げたNHK特集番組を巡る改変問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が先月28日、放送倫理上の問題があったとする意見書を発表した。担当デスクとして内部告発した元NHKチーフプロデューサー(CP)の長井暁さん(46)は毎日新聞の取材に応じ「NHKは真摯に受け止めてほしい」と話した。
 ■放送人の良心に響く
 --検証委員会の意見をどう評価しますか。
 ◆問題を詳細に議論して、論点を明確にし、理論的にも深い内容だ。政治圧力はあったと思っているが、05年1月に内部告発した際に問題提起したかったことは二つあった。
 一つは、国会対策の野島直樹・総合企画室担当局長(当時)が松尾武・放送総局長(同)とともに官房副長官だった安倍晋三元首相らに放送日(01年1月30日)の前日に説明に行き、その後に制作現場に来て番組の作り直しを主導することがあっていいのかという点。政治的な圧力から現場は守られていると信じて仕事をしてきただけに、あってはならないことが目の前で起きたことは驚きだった。
 もう一つはメディアにおける記者や制作者の組織内での内部的自由の問題だ。編集権は誰にあるのか。良心に従った番組制作と、経営側の意向が違ったときにどう解決を図るべきかということだ。企画を通った個別番組について放送総局長が関与できるのか。組織ジャーナリズムにおいて業務命令を拒否することは、職を賭すことと同じだ。NHKに限らず他の放送局や新聞社にもあるだろう。
 意見書は、政治介入を排除する仕組みやルールがないことを指摘し、内部的自由に関する論議を提案している。放送人の良心に響く重要なテキストでもある。
 ■第三者の検証必要
 --意見書が「番組は完成度を欠き散漫」と指摘したことにNHKは「残念だ」と批判しました。
 ◆放送の質の追求は、BPOの設立趣旨にも合致していると思う。意見書は「安定的視点の不在」と指摘したが、全くその通りだ。私は、企画意図が大きく損なわれ、何をテーマにした番組なのか分からない内容になったと指摘してきた。
 裁判では、放送倫理が正面から取り上げられるものではない。BPOで番組の質を論じることは全く問題ない。個人の権利や利益が損なわれたかを審議する裁判と異なって、NHKと民放が共同で設立した機関だからこそ可能な議論だ。
 --NHKは検証番組を制作しない考えです。
 ◆これまでNHKは裁判で係争中だとして、視聴者らに十分な説明をしてこなかった。政治家はもともと物を言いたい人たちだ。責任は、放送番組の内容に影響がないように振る舞う必要があったのに、はねのけられなかったNHKにある。放送局が番組を巡る疑念を払しょくするのだから放送でなければ意味がない。私は第三者による検証が必要だと思っている。
 ■若い人たちに期待
 --当時デスクだった長井さんと、上司でCPだった永田浩三さん(54)=現在、武蔵大教授=は内部告発から1年半後に制作現場から外され、それぞれ今年2月と3月にNHKを退職しました。異動には不当人事だとの批判が出ました。
 ◆個人的な理由でNHKを辞めた。放送人として責任を取らなければいけないとずっと思ってきたので、内部告発したことはいまも後悔していない。言わなかったら、もっとつらい人生になったと思う。
 異動は、執行部の積極的な意思と言うより自民党の国会議員が処分のないことを国会で取り上げるなど政治に配慮した結果だと思う。忖度(そんたく)したと言ってもいい。永田さんは裁判で政治圧力があったことを証言してくれた。組織の意思にそぐわないことを発言するのは大変、勇気が必要だ。意見書も言及しているが、NHKの若い人たちに期待したい。
◇「検証番組を作るという方法がよいと思う」小林経営委員、異例の提案
 今年3月10日のNHK経営委員会。小林英明委員(弁護士)は、BPOの検証委員会が、従軍慰安婦をめぐる番組改変問題をテーマとして取り上げたことについて「NHKにとって最も大切な政治的中立性にかかわる。軽視してはいけない」としたうえで「NHK自らの意思で積極的に検証番組を作るという方法がよいと思う」との意見を述べた。経営委員が検証番組の提案をしたのは異例だ。
 小林委員は、当時の松尾放送総局長らが事前説明した安倍元首相から経営委員に任命された人物。「BPOの判断が出てからではなく、視聴者を含めて皆に納得してもらうため、NHKとしていろいろ工夫してはどうか」と発言の狙いを述べた。しかし、日向英実・放送総局長は「編集過程を番組化して放送する必要はない」と理解を求めた。
 小林委員は、番組編集過程を検証するために必要な放送前のデータの有無に関しても「元の番組内容のデータが残っているのか。取材を受けた側(市民団体)が放送されると思っていた内容は残っているのか」と執行部に質問。これに対して、報道担当の今井環理事は「残っていない」と明言し、検証は不可能だとの考えを示唆した。
 野島担当局長を交えた松尾放送総局長、伊東律子・番組制作局長(当時)、吉岡民夫・教養番組部長(同)ら幹部が出席した試写は、01年1月26日と29日にあった。当時デスクだった長井さんは、このうち26日の試写を受けて編集し直した44分版と、安倍氏との面会後に野島氏の指示で手直しした43分版の2本のテープと台本を放送後も持っていた。実際の放送は、松尾氏の判断で放送日の編集でさらに短くなった40分版。
 長井さんは「05年12月、東京高裁で『持っている』と証言後、局から『あなたが管理するものではない』と言われて提出した」とインタビューで明かした。
 NHK広報部は毎日新聞の取材に「残っているのは放送したもの(40分版)だけだ」とコメント。長井さんからの提出の有無については回答しなかった。
 
⑤ 毎日新聞は以下のように報じています。
BPO:番組内容の政治家説明 NHKの姿勢は問題と認定(2009年4月28日)
BPO:NHKの「自主・自律の危うさ」を明確に指摘

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が公表した意見書は、旧日本軍の従軍慰安婦を取り上げたNHK特集番組を巡る番組改変問題で「政治との距離」が問われたNHKの「自主・自律の危うさ」を明確に指摘した。
 審議の過程を見ると、委員会とNHKの認識の差は余りに大きい。委員会は、当時の国会対策担当の野島直樹・総合企画室担当局長が、松尾武・放送総局長らとともに安倍晋三元首相(当時、官房副長官)ら自民党政治家と放送前後に面会し、番組内容を説明した点を特に問題とし、見解を求めた。これに対しNHKは回答書で「必要と思われる範囲での説明」と従来の主張を繰り返した。また、政治家と接触する担当局長が番組改変個所を直接、制作現場に指示した点についても「(制作部署の幹部も含めた協議の結果を)伝えたもので、問題はなかった」と突っぱねた。
 慰安婦に関する番組は、NHKでは同番組を最後に8年以上制作されず、職員は「事実上、タブーになってしまった」と明かす。
 検証委員会は、NHK側に検証と番組などを通じた視聴者への説明を求めた。委員会は、放送倫理が問われた関西テレビによる番組捏造(ねつぞう)問題の反省から、NHKと民放各局の総意で生まれた機関だ。その意見にNHKは率直に耳を傾けるべきだ。【臺宏士】
放送倫理・番組向上機構(BPO)の「放送倫理検証委員会」(委員長・川端和治(よしはる)弁護士)は28日、旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げたNHKの特集番組に放送倫理上の問題があったと認定した。番組制作部門の幹部が、放送直前に番組内容を政治家に説明したことなどが「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、NHKに期待と信頼を寄せる視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とする意見を公表した。
 問題の番組は「ETV2001・シリーズ戦争をどう裁くか『問われる戦時性暴力』」(01年1月放送)。放送前日に安倍晋三元首相(当時は官房副長官)がNHK幹部と面会し「公平、公正に報道してほしい」と要請していたことが05年1月に発覚。政治圧力の有無を巡って社会問題化していた。
 放送倫理検証委は松尾武・放送総局長ら当時の番組制作部門のトップが、放送前後に国会対策担当の野島直樹・総合企画室担当局長(当時)とともに与党政治家を訪ね、番組内容を説明したことについて、面談自体が「視聴者がNHKに寄せる自主・自律への期待と信頼に対する疑念を起こさせる」と判断した。
 また、放送前日、番組の試写に立ち会った野島担当局長が内容を修正、削除する方針を番組制作者らに指示したことも批判。「放送人の倫理として、当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにするもの」と指摘し、国会対策の部門と制作部門の間に明確な任務分担と組織的な分離を求めた。そして視聴者に改めて説明するよう要求したが、NHKは検証番組を制作しない方針だ。
 8年前に放送された番組について決定を出すのは異例。川端委員長はその理由を「NHKは放送・制作部門の責任者が政治家に放送前の番組の説明をする可能性を今も排除していない」と説明した。
 NHK広報局は「『番組は完成度を欠き散漫』などと評価されたのは残念。放送倫理上の観点から番組の質を論ずることに強い違和感を覚える」とコメントしている。【佐々本浩材】

Nhkkangeki2s_10

| | トラックバック (0)

BPO意見書を尊重しNHKの真摯な対応をもとめる声続々!②

② NHK問題を考える会(兵庫)、放送を語る会
(要約)全文は http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/ 参照
第一に、意見書は、NHKが、制作過程で、官房副長官の地位にある政治家に、事前に番組の説明を行なったこと、政治家と日常的に接している部門の幹部職員が、番組制作に介入したことをあげ、これらの行為を、自主・自律の理念を揺るがし、視聴者からの疑念を招き信頼を裏切る行為であると厳しく批判しています。
第二に、番組の質を放送倫理の観点から問題にしています。幹部職員によって機械的な公平、公正の考え方や「削除したほうが安全」などといった判断で改編、削除が繰り返されたと指摘、「放送人の倫理として、当然めざすべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにするものであった」と指摘しました。
第三に、改編過程の最終段階で、幹部の業務命令と、現場制作者の良心が正面から衝突していると述べ、NHK内部の自由について議論するよう呼びかけています。
意見書は最後に、NHKで今働いている放送人たちへ、「当該番組の制作・改編過程をNHKの説明文書と本意見書を付き合わせ、みずからたしかめ、考えていただきたい、」と述べ、「とくに若い放送人たちが旧来の閉じた態度から一歩を踏み出し、考え、議論し、獲得した教訓を番組その他どのような形であれ、視聴者に明らかにするよう、希望する」と結んでいます。
この人間的な呼びかけに応えることが求められていますが、NHKは依然としてこの番組の経過には問題がなかったという態度を崩していません。そればかりか、政治家の圧力について告発し、また法廷で証言した二人のプロデューサーにたいし現場から外す報復人事を過去に行ないました。その後の局内の状況をみても、BPOが求めるような、NHK内部での自由な議論が行なわれる環境があるとはいえないでしょう。
しかし、意見書が公表された今、NHKは過去の見解を大胆に見直し、職場での検証、討議の公的な機会を大規模に保障すべきです。そのためにも当該番組を含むシリーズ「戦争をどう裁くか」4本を、視聴者も含め誰でも視聴できるようにすることは欠かせません。
いま、台湾統治の歴史を扱ったNHKスペシャル「JAPANデビュー」第1回に対し、右派政治家を含む勢力から猛烈な攻撃がかかっていると伝えられています。こうした政治の圧力から放送の自主・自律を守るうえでも、BPO意見書について職場が学び、考え、自らを鍛えることは、現在のNHKにとって緊急の課題だと言わなければならないからです。
BPO意見書は、問題の番組に関するこれまでのNHKの説明や、コメントを「閉じた態度」と評しました。私たちは、NHKの現場で働く人びとが、問題の番組の制作経過から教訓を学び、共有することを通じて、経営者の頑なな姿勢を変える努力をするよう期待し、求めるものです。

③ 中日新聞  NHK番組改変 自主・自律は生命線だ 2009年4月30日
 放送が政治家や役人の言いなりになることで不幸になるのは国民である。自主・自律を保障する放送法は、こうした歴史の教訓から生まれた。関係者はそれを自覚しなければならない。
 従軍慰安婦問題を裁く民衆法廷を扱ったNHK番組の改変に関して、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、「自主・自律の観点から問題だった」との意見書を公表した。
 番組改変は「政治家の意向に配慮して行われた」と裁判で認定されたが、それに対する公的第三者機関の意見表明は初めてである。
 特定の価値観に基づき高みからモノを言うかのような、放送内容の評価部分には違和感が残るが、自主・自律の堅持を求めた意見書は重い意味を持っている。
 放送法第三条は「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又(また)は規律されることがない」としている。自主・自律を保障したこの規定は、検閲などで情報が国民に自由に伝えられなかった戦中の苦い経験から生まれたが、法律以前に放送人の倫理として自覚しなければならないことである。
 検証委が「日常的に政治家に接している職員が番組制作に関与すべきではない」「番組制作者が事前に政治家の意見を聞くべきでもない」と提案したのは当然だ。
 NHKはその重要性を理解していないのではないか。政治家への事前説明を問題視する検証委の指摘に必ずしも同意しなかった。
 予算の国会承認、経営委員の内閣任命など、NHKには政治の力を無視しきれない事情がある。だからこそ、疑われるような行動をせず、毅然(きぜん)たる姿勢を貫かなければ国民に信頼されまい。
 NHKは意見書を真摯(しんし)に受け止め、検証番組で改変に至った経緯を国民に率直に説明すべきだ。
 放送法第三条は自主・自律の侵害を禁じた規定でもある。その意味で、検証委の意見は圧力をかける側への批判ともなっている。
 安倍晋三・内閣官房副長官(当時)は、番組改変のきっかけとなったNHK職員に対する発言を「国会議員として言うべき意見を言った」と正当化した。
 政治家としての権威を背に意見を述べることが圧力になり得ることを自覚、自重すべきである。
 自主・自律が放送に限らずジャーナリズムの生命線であることはあらためて言うまでもない。民主主義の基盤であると自戒したい。

Nhkkangeki2s_9

| | コメント (0) | トラックバック (0)

BPO意見書を尊重しNHKの真摯な対応をもとめる声続々!

① NHKは番組改変の経緯を反省し、放送倫理の確立に努めるべきである
                                                                         09年5月14日
                                                                         日本ジャーナリスト会議

2009年05月20日(http://jcj-daily.seesaa.net/article/119883520.html)
 01年1月に放送されたNHKの「問われる戦時性暴力」の改変問題について、NHKと民放でつくる第三者機関・BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、4月28日、放送直前にNHK幹部が番組内容を事前に国会議員に説明したことについて、「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とする意見書を公表した。
 BPOはその中で、番組改変の実態に触れ、NHKの国会担当局長と放送総局長らが放送前日に安倍官房副長官(当時)と面談した後、制作担当のチーフプロデューサーらに改変を指示、その結果「放送人の倫理として、当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにした」と指摘した。
 その上で、こうした一連の行為は、NHKにとって生命線とも言うべき「自主・自律の堅持」原則に疑念を持たせると述べ、政治家への番組事前説明は「いまもなお繰り返されうることを示されており、改善は現在の課題だ」と、NHKと政治家との関係に警鐘を鳴らしている。
 意見書は最後に、視聴者の信頼を築くためには、放送の現場で働く職員一人ひとりが、今回の改変の経緯を自ら確かめ、放送の自律とはなにか考えてほしいと、特に若い人々に呼びかけている。日本ジャーナリスト会議は、この意見書について、BPOが、今回の改変問題に内在する放送倫理と番組のあり方ついて真剣な検証を重ね、公共放送のあるべき姿を大胆に示した見識ある見解であると考える。
 しかし、NHKは意見書について、「国会議員の意図を忖度したりした事実はない。放送倫理上の観点から番組の質を論ずることに強い違和感を覚える」と反論している。
 日本ジャーナリスト会議は、NHKが意見書の内容を真摯に受け止めることを求める。
 NHKの最高意思決定機関である経営委員会の小丸成洋委員長は5月8日、政治家への番組の事前説明は「絶対にあってはならない」と表明している。
 BPOの意見書は、NHKにとって極めて重い内容になっている。NHKは視聴者の期待と信頼に応えて、21世紀の公共放送としてふさわしい放送局になるため、意見書を真正面から受け止めて対応するべきだ。
 日本ジャーナリスト会議は、NHKがこの意見書を今後の番組つくりに活かし、NHKの自主・自律と放送倫理の確立に全力を挙げて取り組むことを強く要望する。

② NHKは「政治家への事前説明」をやめ、放送と政治の分離を明確にすべきだ=石井長世
http://jcj-daily.seesaa.net/article/118667066.html#more
 これに対してNHKは、「番組が政治的圧力で改変されたり、国会議員の意図を忖度したりした事実はない」「放送・制作部門の担当者が、放送前に個別の番組内容を国会議員等に直接説明することは、NHKの自主自律について無用の誤解を与える可能性が否定できず、こうしたことがないよう留意したい。なお、現在は行っていない」とコメント。「無用な誤解を与えるので、今はやめている」と軌道修正をにおわす一方で、この問題を巡るBPOとのやりとりでは、この際の面談を「予算説明の際、必要な範囲で説明したもので問題ない」と正当化し、さらに、「国会議員等への説明は国会担当の担当者が行うのが基本だが、他部門の者が説明した方が合理的な場合は、一切認めないものではない」と今回のコメントと矛盾する回答をしている。本当のところはどうなのだろうか?

 また、放送総局長らが安倍晋三氏と面談し、持論を聞かされたことによる政治的圧力についても頭から否定し、安倍氏をかばう姿勢を崩していない。こうした姿勢の背景には、NHK経営が政権与党との関係を密接に保つため、必要ならば番組についても予算説明に名を借りた事前説明の道を、今後も残しておこうという思惑が見え隠れしており、今回問題になった放送・制作部門の職員による事前説明をきっぱり廃止する決意がないのは、一視聴者として納得できない。

 NHK予算の承認を国会に握られているという放送法上の弱みがあるだけに、BPOが意見書で提案しているように、NHKはなおさら、放送・制作部門を国会対策から明確に分離することを、この際きちんと表明すべきではないか? 8年前に起きた番組改変事件の全体像について、NHKが組織をあげて検証し、中でも放送職場の一人ひとりが放送の自律とは何か、真摯に向き合うことで視聴者の信頼を回復してほしいと願わずにはいられない。                   2009年05月05日

Nhkkangeki2s_8

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月14日 (木)

ETV番組改編問題に関するBPOの意見書が公表されました。私たちはNHKに質問・要望書を提出しました。

ETV番組改編問題に関するBPOの意見書が公表されました。

005_nhk_0122

2009年4月28日
NHK教育テレビ『ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか』第2回「問われる戦時性暴力」に関する意見を通知・公表
 ←こちらから全文がダウンロードできます。

5月12日に、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」はNHK福地茂雄会長宛に「ETV番組改編問題に関するBPOの意見書公表を受けた当会の見解、質問ならびに要望」を提出しました。副会長以下、全理事にも届けました。
また、NHK経営委員会にも同文を提出するとともに、ETV番組改編問題について、BPOの意見を真摯に受け止めた対応をするよう監督を求める要望を提出しました。 両文書を下記に添付いたします。
この見解、質問、要望のなかで、次の2点を指摘していることにご注意いただけましたら幸いです。
1.NHKの説明に重大な自己矛盾が露呈していること  NHKはBPOから寄せられた質問への回答のなかで、問題の番組の放送日前に野島国会担当局長(当時)に同行して松尾放送総局長(当時)が安倍晋三氏と面会したのは野島氏の要望に基づいて予算を説明するためであったと述べています。しかし、以前、NHKは東京高裁での控訴審の渦中にホームページに掲載した「編集過程を含む事実関係の詳細」によると、2001年1月29日、安倍晋三氏との面会に松尾放送総局長が同行したのは、当時、日本の前途と歴史教育を考える会の事務局長だった安倍氏から当該番組について質問される可能性があったためだと記しています。そうだとしますと、松尾氏が同行したのは予算・事業計画等の説明のためではなく、本件番組の内容を安倍氏に説明するためだったことになり、NHKの説明は明らかに前後相矛盾しています。今回、「視聴者コミュニティ」はこの自己矛盾についてNHKに明確な説明を求めています。
2.番組改編を検証するための番組の企画・放送を求めたこと
 本年3月10日に開催された経営委員会において小林英明経営委員は、権威ある機関であるBPOがETV番組改編問題を取り上げたこと、特にNHKにとって最も大切な政治的な中立性にかかわる問題として取り上げたことを軽視してはならないと発言し、今後の対応方法として改編前と後の番組を放送して比べてはどうかと発言しています。「視聴者コミュニティ」も今回の文書で小林委員のこの意見に全面的な賛意を表し、検証番組の企画・放送を要請しています。

 なお、BPOの意見書公表を受けて、福地会長は経営委員会の席上、今後は政治家への番組の事前説明は一切しないと発言したと報道されています。この発言がはたしてNHKの全組織に徹底され、履行されるのかどうか、当日の経営委員会の議事録とあわせ、注視していく必要があると思います。

NHK福地茂雄会長宛**********************
                         2009年5月12日
NHK会長
福地茂雄 様

   ETV番組改編問題に関するBPOの意見書公表を
     受けた当会の見解、質問ならびに要望

            NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                  共同代表 醍醐聰・湯山哲守

1. 去る4月28日、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、NHKのETV2001シリーズ、第2回「問われる戦時性暴力」の番組改編問題について意見を発表しました。その中でBPOは次のように指摘しています。 
(1)放送中止を求める右翼団体の活動や安倍晋三・内閣官房副長官(当時)らから公平・公正にと念をおされるなかでNHKが幹部管理職の主導で番組の質よりも安全を優先したため、第2回の番組はシリーズ全体の企画の趣旨から逸脱し、不自然かつ散漫な内容になってしまった。
(2)政治と放送の距離に細心の注意を払い、NHKの自主・自律を率先して体現すべき立場にある放送総局長らが当該番組の改編・放送と相前後して何の躊躇いもなく政治家と面会に出かけ、政治家の自説や意見を聞いていること自体に委員会は強い違和感を抱く。(3)政治家と接触する機会が多い国会担当局長が何の躊躇いもなく放送・制作部門に出入りし、番組の改編に直接関与・指示をしていることに、公共放送NHKの自主・自律の危うさを感じないわけにはいかない。

 その上で、BPOはこうした自主・自律の危うさは今後も繰り返される恐れがあると警告を発し、再発防止策としてNHKに放送・制作部門と国会対策部門の分離を求めています。また、BPOは視聴者に対しては横柄な物言いを戒め、ていねいな説明をするようNHKに求めています。さらにBPOはNHKのすべての役職員に対して、放送倫理と業務命令の関係をめぐって内部的自由の議論を起こすよう呼びかけています。  こうしたBPOの見解は改編事件発覚以降、当会ならびに当会の前身組織(NHK受信料支払い停止運動の会)が繰り返しNHKに申し入れてきた内容と軌を一にするものです。それだけに私たちはBPOが指摘した危惧を共有し、BPOの提言に全面的に賛意を表します。 これに対し、NHKは同日「BPOの意見についてのNHKコメント」を発表しました。しかし、その内容は従来の説明から一歩も出ない、そっけないものでした。BPOの条理を尽くした意見に対し、NHKが今なお、自らに批判的な意見に「聞く耳を持たない」態度を示したことに当会は強く抗議し、猛省を求めます。

2.当会は2008年6月16日に「ETV番組改編事件に対する最高裁判決についての当会の見解」を発表しNHKに提出しました。そのなかで当会は、政治家に対して編集の自由を放棄したNHKが取材協力者に対しては編集の自由を盾に番組改編に関する説明を怠ったこと、視聴者の知る権利をないがしろにしたことを厳しく批判しました。NHKが「番組改編はあったが、それは政治家の圧力ではなく自発的なものであった」というなら、国会担当局長が安倍晋三氏と面会したその足でNHKに戻って制作現場に立ち入り、現場スタッフの反対を押し切って番組改編を指示したことの異常さについて国民・市民に説明する必要があります。

3. 3月10日の経営委員会において小林英明委員は「BPOは権威ある機関だと思います。そういう機関がこういう形で取り上げたこと、特にNHKにとって最も大切な政治的な中立性にかかわる問題として取り上げたことは軽視してはいけないことだと思います。・・・・今後の対応方法ですが、例えば、もともとの番組があって、それが不当に修正されて放送されたか否かということが争点でしょうから、元の番組と放送した番組を比べて、どういう理由でこのように修正して放送したのかということを、一般の視聴者がよくわかるように検証番組を作るという方法があると思います」と発言しています。私たちもこの意見に全面的に賛同します。

 以上の見解を踏まえ、以下の質問と要望を提出します。これに対し、5月22日までに(一括形式ではなく)各質問・要望項目ごとに文書で回答いただくよう求めます。

 〔質問1〕 NHKはBPOから受けた 質問3 に対する回答の前段で、国会議員への予算・事業計画等の説明は国会担当者が行うのが基本としながらも、その他の部門の者が説明した方が合理的であると考えられる場合には、一切認められないわけではない、と記しています。その上で、問題の番組の放送日前に放送総局長が安倍晋三氏と面会したのは国会担当局長の要望に基づくもので予算説明の範囲内で説明をしたものであって問題があったとは考えていないと回答しています。 しかし、ほかならぬNHK自身が公表した「「編集過程を含む事実関係の詳細」によれば、2001年1月29日、安倍晋三氏と面会する野島国会担当局長に松尾放送総局長が同行したのは、当時、日本の前途と歴史教育を考える会の事務局長だった安倍氏から当該番組について質問される可能性があったためと記されています。このことは松尾氏の同行が予算・事業計画等の説明のためではなく、本件番組の内容を安倍氏に説明するためだったことになり、NHKの説明が前後相矛盾していることを物語っています。この矛盾についてわかりやすくご説明ください。

 〔質問2〕同じくNHKはBPOの 質問3 に対する回答の後段で、国会担当局長がチーフディレクターに制作途上の番組の変更を指示したことについて、この指示は1月29日の試写後に行われた放送総局長ら幹部による話し合いの結果を制作現場の責任者の許可の下に国会担当局長が伝えたもので問題はなかった、その後の編集作業は教養番組部長のもとで行われたと回答しています。 しかし、事実はどうであったかというと、当日、野島国会担当局長は試写直後、放送総局長ら幹部による話し合いが始まる前の段階で、「これでは全然だめだ」と発言しています。また、放送総局長ら幹部による話し合いの結果を受けて、台本への書き込みを見ながら改編箇所を事細かに制作担当者に指示したのは教養番組部長ではなく野島氏でした。しかも、教養番組部長は野島氏らの改編指示に荒れて、もうやってられないと言っていったん部屋から退出したとされています(永田浩三氏の証言)。 こうした事実経過からすれば、野島国会担当局長は松尾放送総局長(当時)ら幹部による話し合いの結果を制作担当者に伝えただけの控え目な役割ではなく、番組制作担当者の反対を押し切って自ら番組改編作業を主導したことになります。これでもNHKは当該番組制作過程に問題はなかったと考えるのかどうか、お聞かせください。問題がなかったというなら、東京高裁の事実認定や永田証言を覆す具体的な証拠を提示するよう求めます。

 〔質問3〕NHKの新放送ガイドラインは冒頭の「自主・自律の堅持」のなかで、「全役職員は、放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、すべての業務に当たる。日々の取材活動や番組制作はもとより、放送とは直接かかわりのないNHKの予算・事業計画の国会承認を得るなどの業務にあたっても、この基本的な立場は揺るがない」と明記しています。 しかし、上記の〔質問1〕、〔質問2〕で記したNHK幹部の言動やBPOの質問に対するNHKの回答を見ると、国会担当局長らの要望があれば放送総局長らが政治家と面会して個別の番組に関して応答することも妨げられないことになります。また、番組制作現場の責任者の許可があれば国会担当局長らが制作現場に出入りして番組内容に個別の指示をすることも妨げられないことになります。そこでお尋ねします。 

(1)国会担当局長らが政治家との面会に放送総局長らに同行を求めることが合理的とみなされる場合とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか? かりに、ある番組の放送後に政治家から番組について説明を求められたとしたら、BPOが指摘するように一般視聴者の場合と同様、各放送局に設けられている視聴者対応組織が対応すればよいのではないでしょうか? 

(2)番組制作現場の責任者が国会担当者に制作現場への出入りを許可することが新放送ガイドラインに抵触しないとみなされる場合とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか? 当会は、少なくとも国会担当者が制作現場に出入りし番組内容に指示を出すのは、放送の政治からの自立について強い疑義を生み、放送の自主・自律を定めた新放送ガイドラインに抵触すると考えますが、NHKはどうお考えでしょうか? 

(3)新放送ガイドラインと食い違う行為が国会担当幹部や放送部門の幹部の許可で容認されるとなれば、政治と放送の距離を定めた新放送ガイドラインはその時々の責任者の裁量で融通無碍に解釈され運用されることになります。しかし、放送の自主・自律を定めたガイドラインはそれがNHKの個々の幹部の行為、裁量をも規制するからこそ、公共放送NHKの生命線としての重みを持つはずです。これについてNHKはどうお考えか、お聞かせください。

 〔要望〕BPOは意見書のとりまとめに先立ってNHKに提出した質問のなかで、ETV2001の当該番組の制作・放送とその後の経緯について、またそこから得られた教訓等について番組化し、放送する予定はあるかと質しています。また、小林英明経営委員は前記のように、権威ある機関であるBPOが当該番組改編問題を取り上げたことを軽視してはいけないと述べ、元の番組と放送した番組を比べて、どういう理由でこのように修正して放送したのかということを、一般の視聴者がよくわかるように検証番組を作るという方法があると発言しています。当会はNHK執行部がBPOならびに小林経営委員の意見を真摯に受け止め、視聴者代表、ジャーナリストらも参加したETV2001番組改編問題に関する検証番組を企画し放送するよう強く要望します。

NHK経営委員会宛*******************
                          2009年5月12日
NHK経営委員会 御中

ETV番組改編問題に関するBPOの意見書公表を受けた要望

                   NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
                       共同代表 醍醐聰・湯山哲守

  去る4月28日、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、NHKのETV2001シリーズ、第2回「問われる戦時性暴力」の番組改編問題について意見を発表しました。これを受けて当会は本日、NHK会長・福地茂雄氏宛に別紙のような当会の見解・質問・要望書を提出しました。

  当会は、その前身組織である「NHK受信料支払い停止運動の会」の設立以来、本件番組改編事件を、NHKの政治からの自主・自律を揺るがす重大問題と捉え、NHKに対して、数度にわたって改編問題を検証する番組を企画するよう、あるいは改編問題を検証する第三者機関を設置するよう、申し入れてきました。それだけに、NHKがBPOの条理を尽くした意見に対して、どのように対応するのか注目しましたが、ここに至ってもなお、批判・警告に聞く耳を持たない態度を繰り返したことに唖然とし、猛省を求めました。

 ところで、小丸経営委員長は委員長に就任以来、繰り返し、NHKの自主・自律の重要性を強調してこられました。当会もあらゆる外部からの圧力・干渉をはねかしえて自主・自律を貫くことがNHKの公共放送としての生命線であると考えています。しかし、自主・自律はそれを放送ガイドラインに明記しただけで達成できるものではなく、日々の番組制作あるいは経営全般の営みのなかで身をもって実践してこそ守れるものです。この点で、経営委員会にはNHKの自主・自律を守る砦としての役割が期待されています。

 そこで、当会は経営委員会も今回BPOが公表した意見書を自らの職責に関わる意見と受け止め、NHK執行部の姿勢を正していただくよう強く要望するものです。それと同時に、NHK執行部が当会の申し入れを真摯に検討し、誠意ある回答をするよう監督・助言を行っていただくことを要望いたします。
以上

Nhkkangeki2s_7

| | トラックバック (0)

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »