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2009年5月29日 (金)

BPO意見書を尊重しNHKの真摯な対応をもとめる声続々!③

④ 毎日2009年4月28日 長井暁氏インタビュー
 Nagaiakiranhk1 意見書は、放送人の良心に響く重要なテキストである。
 従軍慰安婦を取り上げたNHK特集番組を巡る改変問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が先月28日、放送倫理上の問題があったとする意見書を発表した。担当デスクとして内部告発した元NHKチーフプロデューサー(CP)の長井暁さん(46)は毎日新聞の取材に応じ「NHKは真摯に受け止めてほしい」と話した。
 ■放送人の良心に響く
 --検証委員会の意見をどう評価しますか。
 ◆問題を詳細に議論して、論点を明確にし、理論的にも深い内容だ。政治圧力はあったと思っているが、05年1月に内部告発した際に問題提起したかったことは二つあった。
 一つは、国会対策の野島直樹・総合企画室担当局長(当時)が松尾武・放送総局長(同)とともに官房副長官だった安倍晋三元首相らに放送日(01年1月30日)の前日に説明に行き、その後に制作現場に来て番組の作り直しを主導することがあっていいのかという点。政治的な圧力から現場は守られていると信じて仕事をしてきただけに、あってはならないことが目の前で起きたことは驚きだった。
 もう一つはメディアにおける記者や制作者の組織内での内部的自由の問題だ。編集権は誰にあるのか。良心に従った番組制作と、経営側の意向が違ったときにどう解決を図るべきかということだ。企画を通った個別番組について放送総局長が関与できるのか。組織ジャーナリズムにおいて業務命令を拒否することは、職を賭すことと同じだ。NHKに限らず他の放送局や新聞社にもあるだろう。
 意見書は、政治介入を排除する仕組みやルールがないことを指摘し、内部的自由に関する論議を提案している。放送人の良心に響く重要なテキストでもある。
 ■第三者の検証必要
 --意見書が「番組は完成度を欠き散漫」と指摘したことにNHKは「残念だ」と批判しました。
 ◆放送の質の追求は、BPOの設立趣旨にも合致していると思う。意見書は「安定的視点の不在」と指摘したが、全くその通りだ。私は、企画意図が大きく損なわれ、何をテーマにした番組なのか分からない内容になったと指摘してきた。
 裁判では、放送倫理が正面から取り上げられるものではない。BPOで番組の質を論じることは全く問題ない。個人の権利や利益が損なわれたかを審議する裁判と異なって、NHKと民放が共同で設立した機関だからこそ可能な議論だ。
 --NHKは検証番組を制作しない考えです。
 ◆これまでNHKは裁判で係争中だとして、視聴者らに十分な説明をしてこなかった。政治家はもともと物を言いたい人たちだ。責任は、放送番組の内容に影響がないように振る舞う必要があったのに、はねのけられなかったNHKにある。放送局が番組を巡る疑念を払しょくするのだから放送でなければ意味がない。私は第三者による検証が必要だと思っている。
 ■若い人たちに期待
 --当時デスクだった長井さんと、上司でCPだった永田浩三さん(54)=現在、武蔵大教授=は内部告発から1年半後に制作現場から外され、それぞれ今年2月と3月にNHKを退職しました。異動には不当人事だとの批判が出ました。
 ◆個人的な理由でNHKを辞めた。放送人として責任を取らなければいけないとずっと思ってきたので、内部告発したことはいまも後悔していない。言わなかったら、もっとつらい人生になったと思う。
 異動は、執行部の積極的な意思と言うより自民党の国会議員が処分のないことを国会で取り上げるなど政治に配慮した結果だと思う。忖度(そんたく)したと言ってもいい。永田さんは裁判で政治圧力があったことを証言してくれた。組織の意思にそぐわないことを発言するのは大変、勇気が必要だ。意見書も言及しているが、NHKの若い人たちに期待したい。
◇「検証番組を作るという方法がよいと思う」小林経営委員、異例の提案
 今年3月10日のNHK経営委員会。小林英明委員(弁護士)は、BPOの検証委員会が、従軍慰安婦をめぐる番組改変問題をテーマとして取り上げたことについて「NHKにとって最も大切な政治的中立性にかかわる。軽視してはいけない」としたうえで「NHK自らの意思で積極的に検証番組を作るという方法がよいと思う」との意見を述べた。経営委員が検証番組の提案をしたのは異例だ。
 小林委員は、当時の松尾放送総局長らが事前説明した安倍元首相から経営委員に任命された人物。「BPOの判断が出てからではなく、視聴者を含めて皆に納得してもらうため、NHKとしていろいろ工夫してはどうか」と発言の狙いを述べた。しかし、日向英実・放送総局長は「編集過程を番組化して放送する必要はない」と理解を求めた。
 小林委員は、番組編集過程を検証するために必要な放送前のデータの有無に関しても「元の番組内容のデータが残っているのか。取材を受けた側(市民団体)が放送されると思っていた内容は残っているのか」と執行部に質問。これに対して、報道担当の今井環理事は「残っていない」と明言し、検証は不可能だとの考えを示唆した。
 野島担当局長を交えた松尾放送総局長、伊東律子・番組制作局長(当時)、吉岡民夫・教養番組部長(同)ら幹部が出席した試写は、01年1月26日と29日にあった。当時デスクだった長井さんは、このうち26日の試写を受けて編集し直した44分版と、安倍氏との面会後に野島氏の指示で手直しした43分版の2本のテープと台本を放送後も持っていた。実際の放送は、松尾氏の判断で放送日の編集でさらに短くなった40分版。
 長井さんは「05年12月、東京高裁で『持っている』と証言後、局から『あなたが管理するものではない』と言われて提出した」とインタビューで明かした。
 NHK広報部は毎日新聞の取材に「残っているのは放送したもの(40分版)だけだ」とコメント。長井さんからの提出の有無については回答しなかった。
 
⑤ 毎日新聞は以下のように報じています。
BPO:番組内容の政治家説明 NHKの姿勢は問題と認定(2009年4月28日)
BPO:NHKの「自主・自律の危うさ」を明確に指摘

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が公表した意見書は、旧日本軍の従軍慰安婦を取り上げたNHK特集番組を巡る番組改変問題で「政治との距離」が問われたNHKの「自主・自律の危うさ」を明確に指摘した。
 審議の過程を見ると、委員会とNHKの認識の差は余りに大きい。委員会は、当時の国会対策担当の野島直樹・総合企画室担当局長が、松尾武・放送総局長らとともに安倍晋三元首相(当時、官房副長官)ら自民党政治家と放送前後に面会し、番組内容を説明した点を特に問題とし、見解を求めた。これに対しNHKは回答書で「必要と思われる範囲での説明」と従来の主張を繰り返した。また、政治家と接触する担当局長が番組改変個所を直接、制作現場に指示した点についても「(制作部署の幹部も含めた協議の結果を)伝えたもので、問題はなかった」と突っぱねた。
 慰安婦に関する番組は、NHKでは同番組を最後に8年以上制作されず、職員は「事実上、タブーになってしまった」と明かす。
 検証委員会は、NHK側に検証と番組などを通じた視聴者への説明を求めた。委員会は、放送倫理が問われた関西テレビによる番組捏造(ねつぞう)問題の反省から、NHKと民放各局の総意で生まれた機関だ。その意見にNHKは率直に耳を傾けるべきだ。【臺宏士】
放送倫理・番組向上機構(BPO)の「放送倫理検証委員会」(委員長・川端和治(よしはる)弁護士)は28日、旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げたNHKの特集番組に放送倫理上の問題があったと認定した。番組制作部門の幹部が、放送直前に番組内容を政治家に説明したことなどが「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、NHKに期待と信頼を寄せる視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とする意見を公表した。
 問題の番組は「ETV2001・シリーズ戦争をどう裁くか『問われる戦時性暴力』」(01年1月放送)。放送前日に安倍晋三元首相(当時は官房副長官)がNHK幹部と面会し「公平、公正に報道してほしい」と要請していたことが05年1月に発覚。政治圧力の有無を巡って社会問題化していた。
 放送倫理検証委は松尾武・放送総局長ら当時の番組制作部門のトップが、放送前後に国会対策担当の野島直樹・総合企画室担当局長(当時)とともに与党政治家を訪ね、番組内容を説明したことについて、面談自体が「視聴者がNHKに寄せる自主・自律への期待と信頼に対する疑念を起こさせる」と判断した。
 また、放送前日、番組の試写に立ち会った野島担当局長が内容を修正、削除する方針を番組制作者らに指示したことも批判。「放送人の倫理として、当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにするもの」と指摘し、国会対策の部門と制作部門の間に明確な任務分担と組織的な分離を求めた。そして視聴者に改めて説明するよう要求したが、NHKは検証番組を制作しない方針だ。
 8年前に放送された番組について決定を出すのは異例。川端委員長はその理由を「NHKは放送・制作部門の責任者が政治家に放送前の番組の説明をする可能性を今も排除していない」と説明した。
 NHK広報局は「『番組は完成度を欠き散漫』などと評価されたのは残念。放送倫理上の観点から番組の質を論ずることに強い違和感を覚える」とコメントしている。【佐々本浩材】

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