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2009年4月26日 (日)

"天皇・皇后祝賀コンサートの問題点"           共同代表醍醐聡のブログより

疑問山積のNHK・産経新聞社ほか共催の天皇・皇后祝賀コンサート

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-7acf.html
そっけないNHKの回答、その裏に不可解な事実が
 さる4月3日付けで「NHK問題を考える会(兵庫)」と「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が連名でNHK福地茂雄会長宛に提出した「『天皇・皇后成婚50周年・即位20周年記念コンサート』の企画に関する質問ならびに参画の取り止めを求める申し入れ」に対し、NHKから4月10日付けの回答が13日に届いた。その全文は次のとおりである。

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  一見してそっけない回答である。「クラシック音楽を愛する多くの視聴者にご満足いただける内容」といわれると、天皇・皇后の成婚と即位の節目を祝うという催しの趣旨がまるでなかったかのように聞こえる。また、回答を求めた5項目の申し入れについて、「その内容を拝読させていただき、貴重なご意見として承ります」と受け流すのは、いかにも慇懃無礼な返答である。
 しかし、それでも、開催費用はどこから捻出されるのかという問いに対し、産経新聞社が集める協賛社からの協賛金により賄われることを明らかにした。また、これまで「未定」としてきた記念コンサートの放送を5月16日と公表したのも今回の回答が初めてではないかと思われる。
 しかし、注意が必要なのはそれだけではない。平静さを装った回答の陰に次のような不可解な事実が見え隠れしている。

1.自ら実行委員会に加わり、「クラシック音楽を愛する多くの視聴者にご満足いただける内容」と自負するにもかかわらず、NHKのホームページにアクセスしても、コンサートの<イベント・インフォメーション>のサイトにたどりつくのは容易でない。「日本を代表する音楽家たちが一堂に会する希少な」企画と銘打ちながら、積極的に広報をしないのはどうしたことか?

2.開催費用は協賛社により賄われるという。しかし、NHKの<イベント・インフォメーション>には、主催団体、後援団体、協力は明記されているが、協賛社がどこにも記載されていない。ちなみに、産経新聞社のHPには「協賛 各社」と明記されている。

3.今現在、NHKの<イベント・インフォメーション>にアクセスすると、次のとおり、主催者欄には「記念コンサート実行委員会」と表記されているだけで、3月10日付けの記事に記載されていた主催者団体名(日本クラシック音楽家協会、産経新聞社、NHK、NHK交響楽団)が消されている。
http://pid.nhk.or.jp/event/PPG0020201/index.html
 これは何を意味するのか? ちなみに、NHKマルチメディア局編『協業の手引き』(平成14年ごろ編集)によると、「実行委員会方式のイベント」と題する項の中で次のように記載されている。

 「主催同様、公共放送として特別な判断がある場合を除いて、分担内容が明確でない構成団体として、NHKが実行委員会に参加することは避けるべきである。」

 この規程に照らして、今回の記念コンサートにはいかなる「公共放送として特別な判断」があったのか、NHKに明確な説明が求められる。

附帯業務と本来業務の主客転倒
 今回の回答でもっとも<苦心の跡>が窺えるのは次のくだりである。

 「このコンサートは、日本を代表する音楽家たちが一堂に会する希少なもので、芸術性も極めて高く、クラシック音楽を愛する多くの視聴者にご満足いただける内容であると判断し、NHKでは放送番組で紹介することにいたしました。」

 NHKはこのくだりのすぐ後で、「NHKによるコンサートの主催は、放送法第9条第2項のうち放送附帯業務として実施するもの」と回答している。「附帯業務」とは、NHKの本来業務のほかに、放送法第7条で定められた目的を達成するために認められた業務である。具体的には、NHKが放送した番組及びその編集上必要な資料を電気通信回線を通じて一般の利用に供すること、既放送番組等を、放送番組を電気通信回線を通じて一般の利用に供する事業を行うものに提供することなどをいう(放送法第9条第2項第2号、第3号)。

 つまり、NHKは既放送番組の二次的利用、番組の制作・編集上必要な資料を一般の用に供する業務などを附帯業務として行うことを認められているのである。ところが、上で引用したNHKの回答からいうと、初めにコンサートありきで、放送することを決めたのはその後ということになる。現に、NHKが<イベント・インフォメーション>をHPにアップした3月10日の時点ではコンサートの放送日はもとより、放送予定日も記されていない。「こっそり」やる企画だったので、もともと放送するつもりはなかったが、最近になって急に「上から」放送現場に対し、「コンサートを収録して放送せよ」という指示が出たという情報もある。つまり、放送法が定めた附帯業務から逸脱したイベントを、放送法をクリアする催しとして取り繕う苦肉の策といえよう。しかし、これでは「放送に附帯するコンサート」ではなく、「コンサートに附帯する放送」という本末転倒の関係になり、放送法が定めた附帯業務を逸脱する行為であることを示唆したといえる。

 また、コンサートの企画が先にあって、後から放送予定が決まったいきさつから言えば、コンサートが特定の番組の素材として必要であったという説明も成り立たない。番組素材として必要ならコンサートの企画に先立って番組の企画があるはずだからである。

子会社の附帯業務を媒体にした事実上の政府広報
 昨年8月22日の『朝日新聞』1面に「NHK、政府主催のシンポ放送 子会社受注表示せず」という大見出しの記事が掲載された。それによると、NHKの子会社3社(NHKエンタープライズ、NHK情報ネットワークなど)が政府省庁あるいは各省庁所管の独立行政法人や社団法人などからシンポジウムの運営を受託し、後日、これら子会社が制作した番組をNHKが教育テレビ「日曜フォ-ラム」や衛星第2テレビの「BSフォーラム」で全国放映したという。これについて、本ブログでも記事を書いたので参照していただけると幸いである。

子会社を隠れみのにして政府広報に加担するNHK(2008年9月14日)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-1851.html

 この例のように、NHKの関連企業が政府・省庁が主催する各種イベントの運営を受託し、それを題材にして関連企業が制作した番組を後日、NHK本体が放送するというケースは各省あるいはその外郭団体をスポンサーとする事実上の政府広報番組を意味する。関連企業を介在させることによって、NHK本体と政府の結びつきをカムフラージュし、実質的な政府広報に手を染めるNHKのイベント事業には監視の目を光らせる必要がある。

<付記:次の記事でこの記事の続編を書く予定である。あわせて一読いただけると幸いである。>

NHKは象徴天皇制にどう向き合うのか? NHKの附帯業務はこれでよいのか?

~NHK・産経新聞社ほか共催の天皇・皇后祝賀コンサート再論~
<この記事は1つ前の記事「疑問山積のNHK・産経新聞社ほか共催の天皇・皇后祝賀コンサート」の続編である。>

 ここでは、改めて天皇・皇后祝賀コンサートの問題点を2つの角度からまとめておきたい。

NHKは象徴天皇制にどう向きあうのか?
 NHKが天皇・皇后の成婚・即位の節目の年にちなんだ催しを報道の対象として扱うことと、今回のように自ら催しの主催者に加わることの間には質的に重要な違いがある。原寿雄氏の近著『ジャーナリズムの可能性』(岩波新書、2009年)を引いていうと、NHKが今回のコンサートの主催者に加わるのは、ジャーナリズムの非当事者原則からの逸脱と考えられる。ここでいう「非当事者原則」とは「権力を監視すべき役割を担う者が権力づくりに加担しては、ジャーナリストとは呼べない」、(原寿雄、4ページ)、「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究であ」(日本新聞協会、新聞倫理綱領)って、記録者が歴史のステージに上がるべきではないとする原則である。
 原氏はこの原則に照らして、2007年10月に福田・小沢の与野党大連立工作を取り持ったといわれる読売新聞グループ本社会長・主筆の渡邊恒雄の政治活動を厳しく批判している(原寿雄、同上書、2ページ以下)。天皇・皇后の成婚・即位の節目の年を祝う催しの主催団体にNHKが加わったことも、特定の催しを報道の対象として扱う行為(歴史的事実を伝える行為)と政治的価値判断が絡む催しにジャーナリズムが主体的に参画する行為(歴史的事実を創る行為)の区別を踏み外し、公共放送の不偏不党の原則を逸脱する行為といわなければならない。しかし、<コンサート>という文化的催しであるがゆえにか、この点の認識が市民の間やジャーナリズム界でも希薄なことが気がかりである。

 このコンサートのことをある人に話しかけると、「昭和天皇の時代と平成天皇・皇后の今とでは同じ評価でよいのか判断が難しい」という感想が返ってきて、4月10日に放送されたNHKスペシャル「象徴天皇 素顔の記録」が話題になった。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090410.html
 私もこの番組を視たが、NHKのHPに掲載された番組案内には次のような解説がある。即位の時から「象徴」であることを宿命づけられた、いまの天皇陛下。国民に近い皇室にしたいと、旧弊を破りライフスタイルを変えられた。これまでほとんど前例がなかった被災地への訪問に取り組み、膝をついて人々と向き合われた。そして、沖縄やサイパンなど、激戦地への「慰霊の旅」。
番組の基調はこの解説文に沿ったものだった。周囲の時期尚早という声を承知で沖縄へ何度も慰霊の旅に出掛けた天皇・皇后の「沖縄の心に寄り添う」決意が強調された。他方、天皇夫妻を迎える沖縄の人々の様子はというと、「複雑な思い」の一語に集約され、何がどう「複雑なのか」、番組の中で立ち入ることはなかった。天皇夫妻の沖縄に寄せる<心情>にスポットを当てることによって、沖縄戦の悲劇を天皇の「慰霊」の旅で癒し、今なお残された歴史の事実の検証の必要性を忘れさせるかのようなムードが醸成されかねないことを私は非常に危惧した。
 また、番組では天皇自らが運転し、皇后を助手席に、職員を後部座席に乗せて皇居内のテニスコートへ出向く場面が映しだされた。私も<へえ、そんなものなのか>と思いながら見ていたが、平成天皇の<気さくな人柄>、夫妻の<ライフスタイル>にスポットをあてることによって、象徴天皇の名において、どのような問題について国民をどのように<統合>しようとしているのかという問いかけが欠落していることにも強い危惧を感じた。
学校行事において日の丸・君が代の強制に従わなかったことで処分される教員が後を絶たない事実とともに、日本の旧植民地国の二世、三世が今なお、天皇制に対するわだかまり、批判を抱えながら、私たちと共生している事実に日本人は余りに無頓着になっていないか? この番組を見終えて改めて考えさせられた。

NHK本体と関連会社の附帯業務の範囲は?

放送法は第9条2項が定めているNHKの附帯業務の範囲は一言でいえば、放送あるいは番組制作上の題材の二次的利用ということである。この点でいうと、今回の天皇・皇后祝意のコンサートは、放送法の定めに疎い福地会長がアサヒビールのメセナの感覚で産経新聞からの誘いに応じて共催することになったといわれ、催しが決まった後で周りがあわてて放送予定を決めたというのが実情のようである。これでは、<本来業務としての放送に附帯したイベント>ではなく、<附帯業務であるはずのイベントに附帯した本来業務としての放送>という本末転倒の形になる。NHKの回答によれば、開催費用は民間企業の協賛金で賄われるとのことであるが、<初めにイベントありき>、<後から放送ありき>でNHKがイベントを手掛け、副収入源を得るのは、NHKの附帯業務の範囲を定めた放送法を潜脱する行為でないのか? 
 また、放送法が定めた附帯業務の範囲規制はNHK本体にのみ適用され、NHKの関連企業・団体については野放しなのか、NHK本体と関連企業・団体を連結ベースで規制するものなのか、総務省は法解釈を明確にし、所要の法整備を急ぐ必要がある。筆者は関連企業・団体も支配力基準でNHKの子会社・関連企業等とみなされる以上、視聴者が収めた受信料が関係会社・孫企業等でどのように使用されているのかを監視する必要がある。その点で、附帯業務規制をNHKの子会社・関連企業等にも適用し、情報公開を徹底させるべきであると考えている。
 こうした点について、NHK経営委員会、監査委員会による厳正な監視・監督と視聴者の情報公開請求による監視が必要である。その際には、NHKの本来業務に係る収支と附帯業務に係る収支を厳密に区分した会計情報、附帯事業(イベント等)ごとの収支の公開、協賛金の収支の透明化が不可欠である。

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