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2006年10月 1日 (日)

(参考まで) 受信料支払い停止運動の論理(要旨)

受信料支払い停止運動の論理(全文)

当会の前身「NHK受信料支払い停止運動の会」はこちら

受信料支払い停止運動の論理(要旨)          醍醐 聰

1.NHKは、「NHK受信料支払い停止運動の会」(以下、「会」と略す)が提起した受信料支払い停止運動を「NHKの受信料収納業務を妨害する行為」と非難した。そこで、この稿では、受信料支払い停止運動の法理論的根拠を示すとともに、支払い停止運動と不払い運動の違いを論理的に明らかにしたい。

2.現行の放送法(第 32 条第1項)は受信設備を設置したものに受信契約を締結することを義務付けているが、受信料の支払いを義務付けているわけではない。この点は、戦後幾度か、受信料の支払い義務を法定化しようと放送法改正が試みられたものの、いずれも不成功に終わって今日に至っていることからも明らかである。

3.受信料の支払い義務は放送法では明記されていないが、同法を受けて視聴者とNHKが交わす受信契約の第5条で明記されている。しかし、受信料の請求根拠が放送法でではなく、私的な受信契約のなかで定められていることには重要な意味がある。なぜなら、受信料の請求収根拠が前者に由来するのであれば、視聴者は、NHKの放送サービスにあれこれの不満があるからといって受信料の支払いを拒むことはできないが、一種の双務契約である受信契約のなかで定められているとなれば、NHKの受信料請求権は民法第533条に置かれた「同時履行の抗弁権」によって制約を受けるからである。

4.ここで言う「同時履行の抗弁権」とは、双務契約において、一方の当事者が債務を履行しない限り、もう一方の当事者に債務の履行を拒絶する権利を認めるというものである。受信契約も視聴者とNHKの双務契約とみなされることから、「同時履行の抗弁権」が適用されると考えてよい。

5.NHKは、「テレビをお備えであればNHKを見る見ないにかかわらず、受信料をお支払いいただくことになります」と説明しているが、これは粗雑な法解釈論である。視聴者の受信料支払い義務は受信設備の設置から直線的に無条件に導かれるものではなく、双務契約に固有の抗弁権を伴った債務であることを見過ごしてはならない。

6.NHKがETV特番の制作過程で政治家に事前の干渉を許す場を設けたこと、その場で安倍氏ら政治家が事前検閲にあたる発言をしたことは明らかであり、そうした政治家や一部勢力の介入によって番組が改変された疑いが濃厚である。

こうした政治家との面談と、そこでの番組内容の事前説明の必要性を今もって肯定するNHK幹部の言動から判断して、視聴者は今回発覚したのと同様の番組内容の改変が再発する虞を合理的に予見できる。しかし、そうした外部からの干渉による番組内容の改変は、NHKが、受信設備の設置者に受信契約の締結を義務付けている放送法の趣旨に照らし、自律的に公正な放送が提供されているという信頼が成立している状態を維持する義務――を履行していないことを立証するに足る事実とみなされる。

7.このように、現状でNHKが、公共放送の担い手に負託された放送サ−ビスの提供義務を履行していない以上、視聴者は同時履行の抗弁権を行使して、NHKが受信契約上の債務を履行するまでの間、受信料の支払い義務を拒絶することが許される。

8.同時履行の抗弁権を論理的支柱にした受信料支払い停止運動は、「NHKの番組を見ないから 受信料を支払わない」という不払い運動とは明確に一線を画す、「NHKの公正で良質な番組を 見ることを期待するからこそ、NHKがそうした信認を回復する措置を講じるまでの間、支払いを保留する」運動に他ならない。
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