「坂の上の雲」何が問題か 二つのシンポジウムから
http://ameblo.jp/warm-heart/entry-10391708542.html どこへ行く、日本。ブログ より 「なぜいま、NHKスペシャルドラマ 「坂の上の雲」なのか/11月29日(日)から第1部始まる」のエントリーで司馬遼太郎原作「坂の上の雲」のテレビドラマ化を批判する声を紹介しておいた。 11月8日には神戸でもこの問題でシンポジウムが開かれるとあって参加を楽しみにしていたが、よんどころなき私事のため行けなくなった。 「しんぶん赤旗」が11月17、18日と2回にわたってこの問題を取り上げた。神戸のシンポジウムにも触れている。紙面版から直接貼り付けておこう。 「明治」と「昭和」対立させ 朝鮮の植民地化を宿命視 1日に川崎市で「日露戦争と天皇の軍隊―『坂の上の雲』が語らない真実」(主催・治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟川崎支部)、8日には神戸市で「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」(主催・NHK問題を考える会・兵庫)が開かれました。 連続性を否定 なぜか。中塚さんは司馬氏が小説の中で 「読者のイメージする朝鮮像が“自力では変わることができず、植民地は宿命”ということになれば、明治以後に日本が朝鮮におこなった数々の侵略の事実や朝鮮民衆の反乱を書かずに済む。それで『坂の上の雲』が出来上がっているのです」 映像化に危惧 山田さん、中塚さんともに、幾多の問題をはらんだ「坂の上の雲」のテレビドラマ化を危惧(きぐ)します。 山田さんは「司馬氏が歴史上の人物になりきってセリフを構成しており、読者は本当の歴史書であるかのように見てしまう。さらに、映像化のインパクトは大きい」と語りました。 中塚さんは「来年は韓国併合100年というこの時に、なぜNHKは朝鮮の民族的自主を認めない作品を映像化するのか」とのべ、参加者に「NHKに意見を投げかけてほしい」と呼びかけました。 (つづく) 出席者は、石川康宏(神戸女学院大学教授)、土橋亨(映画監督)、羽柴修(弁護士)、牧俊太郎(元「大阪民主新報」編集長)の各氏。司会は湯山哲守さん(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表)が務めました。 司馬氏の小説を研究してきた牧さんは、司馬氏が生前、「ミリタリズム(軍国主義)を鼓吹しているように誤解される恐れがある」と語り、「坂の上の雲」の映像化を一貫して拒否してきたと指摘。「その理由が大事」だと語りました。 改憲論に批判的 なぜ映像化を拒んだのか。牧さんは、「坂の上の雲」が明治国家を賛美し国内の反戦・非戦の動きを描いていない一方、司馬氏自身が晩年に改憲論に批判的な言動をするなど、「『坂の上の雲』と乖離(かいり)した心情のゆらぎがあったのではないか」と推測します。 「極道の妻たちⅡ」など、数々の作品を手掛けてきた土橋さん。制作者の視点から「司馬さんの作品はドラマチックだが、あくまでドラマであって、ドキュメンタリーではないということを押さえなくてはいけない」と、「映像」の持つ強大な力と影響力を懸念します。 「ここ10年の改憲の動きと呼応するように、戦争を賛美するような映画が次々と作られてきた」という土橋さん。NHKが「坂の上の雲」の映像権を得た2001年は、日本軍「慰安婦」問題を扱ったETV番組が、自民党議員の圧力で改変された事件が起きた年と重なることなども指摘し、「危険で、うさんくささを感じる」と言います。 石川さんは、「坂の上の雲」で示されている「明治栄光論」は、「東アジアで起きている交流と平和の流れに、逆流を起こす役割を果たす」と、経済学の視点から解明します。 「中国を中心とした東アジア経済の台頭が著しいなか、地位が低下している財界もアメリカも、金もうけのためにも東アジアと仲良くする方向に向かわざるをえなくなっている。しかし、順風満帆でなくなった『明治栄光論』を仕掛けてくるところに、反動側の役割とあせりがある」 歴史知る好機に 「九条の会」で活躍する羽柴さんは、「来年5月に国民投票法が施行され、いよいよ改憲手続きができる政治情勢となったこの時期に、NHKが『坂の上の雲』を放送する影響は大きい」と言います。 羽柴さんは、「坂の上の雲」への批判だけにとどまらず「とくに若い人との議論は大きな課題。NHKドラマの放映を好機にしていきたい」と対話活動を提起。石川さんも「事実を知ることは大きな力になる。国民の話題になるのを機に、学びを広める取り組みが必要」だと語りました。 シンポジウム終了後、「坂の上の雲」の映像化にあたって「軍国主義賛美や他国への侵略を正当化するなどの描き方にならないこと」を求めた、福地茂雄NHK会長あての要望書が確認されました。 (おわり)
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「坂の上の雲」何が問題か 二つのシンポジウムから(上)/
司馬遼太郎氏の人気小説をドラマ化したNHK「坂の上の雲」が29日から始まります。人気の実力派俳優をそろえ、全13回を3年にわたって放送するという力の入れようです。一方、市民や学者、ジャーナリストから「憲法9条改悪の動きのあるこの時期に、なぜ?」など懸念の声も広がっています。各地で開催されたシンポジウムから「坂の上の雲」が抱える問題点を探りました。
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二つの集会で共通して指摘されたのは、「坂の上の雲」で描かれた司馬氏の特異な日本近代史の見方でした。日露戦争は「祖国防衛戦争」で明治はよい時代だったが、日露戦争後に変質して昭和の太平洋戦争へと暴走していった、とする歴史観です。
川崎の集いで講演した山田朗・明治大学教授は、「司馬氏の歴史観は同時代人の共感を生んだが、太平洋戦争の失敗のタネは、近代日本の成功事例の頂点とされる日露戦争で、すでにまきつくされていた」と指摘します。
そのおおもとになったのは、日露戦争の「勝利」によって軍が「軍部」として強化され、戦争の失敗や教訓が隠されていったこと、さらに日露戦争後に韓国を併合するなどの膨張政策でした。山田さんは「明治と昭和を対立させ、明治の延長線上に昭和という時代が出現したという両者の連続性を、司馬氏は軽視ないし意図的に無視している」と言います。
こうした歴史観を生み出した背景について、山田さんは「司馬氏が当時の国家指導者の視点で歴史をとらえてしまったから」と言います。「現代の目から歴史を見ないと、植民地支配を批判する観点が当然薄くなるし、近代日本の膨張戦略も客観視できません」
神戸のシンポジウムで講演した中塚明・奈良女子大学名誉教授も、「坂の上の雲」が明治の栄光を強調する一方で、「朝鮮の植民地化と没落がまともに触れられていない」問題を批判します。
①朝鮮は地理的な条件が悪く②無力であり③帝国主義の時代に日本に従属するのは宿命だった、
と論じている点に着目。「ここに『坂の上の雲』の大きなカラクリがある」と強調します。
司馬遷太郎氏の小説「坂の上の雲」のNHKテレビドラマ化には、どんな問題があるのでしょうか。神戸市内で8日に開かれたシンポジウム「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」では、中塚明・奈良女子大学名誉教授の基調講演後、各界のパネリストたちが多彩な視点から解き明かしました。
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