通信放送行政独立へ
 「日本版FCC」創設で政府方針  11年に法案提出

 政府は22日、総務省から通信・放送行政の一部を切り離して、通信・放送委員
会を設置するための関連法案を2010年中にまとめ、2011年の通常国会に提出する
方針を固めた。同委は電波の割り当てや放送免許の付与、番組規制など通信・放送
業界への規制監督全般を担う方向で検討する。
 日本では総務省が放送局を規制監督しているが、世界では米連邦通信委員会
(FCC=フェデラル・コミュニケーションズ・コミッション)をはじめ政府から独
立した機関による規制監督が主流だ。
 ペルーを訪問中の原口一博総務相は21日(日本時間22日)、海外の独立機関を
参考にして通信・放送委員会(日本版FCC)の具体的な姿を描く考えを示し、「1
年ぐらいの間は、国民的合意を得ることに力を尽くすべきだ」と語った。原口氏は、
通信・放送行政の独立が「言論、報道、放送の三つの自由」を確保する手段になる
ことを強調した。
 内藤正光総務副大臣も22日、東京都内で講演し、日本版FCCについて「専任の作
業チームをつくって議論し、2年後の通常国会で成立させる」と明言。総務省の通
庸・放送行政のうち「規制監督部門だけ切り出して、新たな機関として設置する」
と話した。通信・放送行政のうち、企画や産業振興部門は同省にとどまる見通しだ。
 モデルとする米FCCは5人いる委員の過半数が与党寄りとされる人物から選ばれ
ているといい、欧州の独立機関に比べて政治色が強いとの指摘もある。内藤氏は
「FCCをそのまま日本に持ち込むわけではない」と述べて、日本独自の組織形態や
運用方法を検討する考えを示した。 (リマ=平山亜理、岡林佐和)
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独立機関世界の潮流   終戦直後、日本にも 

  日本の通信・放送行政の見直しはこれまで何層も持ち上がったが実現しなかっ
た。自民党や旧郵政省の反発が強かったためだ。97年の中央省庁再編の過程でも、
政府の行政改革会議は「通信放送行政の独立行政委員会化」を打ち出したが、郵政
省の実質的解体につながる案に両者が猛反発して、立ち消えになった。
放送行政を担当する独立機関は、終戦直後の日本に存在した。50年に連合国軍総
司令部(GHQ)の強い意向を受けて設置された「電波監理委員会」だ。しかし、
政府は主権を回復した52年、直ちに同委を廃止。それ以降、日本では政府が一貫
して放送と通信の規制監督を担っている。
 これに対して海外では、米国が34年にFCCを設置。80年代には欧州諸国でも相
次いで放送の独立規制機関が設立された。設立の狙いは国家極力を監視する放送局
を国家が監督するという矛盾の解消だった。「放送の自由」を尊重する意味合いも
大きかった。
一方、通信の規制は放送と、は別の機関が所管する国も多かったが、最近はの「通
信と融合」が進んだことを受け、英情報通信庁(OFCOM)や韓国放送通信委員会
(KCC)など両方を親制する独立機関も増えている。 世界的な潮流を踏まえて、
日本経団連は08年「規制と産業振興を同じ省が行うと、規制が政策的配慮によっ
てゆがめられる恐れがある」と独立行政蚕の設立を提言。民主党は03年から日本
版FCCの設立を訴えており、国会に2度設置法案を捷出した。 ともに廃案になっ
ているが、同党はそれ以降、大半の国政選挙でマニフェストや政策集に設立を掲げ
て戦ってくるなど、設立への素地はできていた。
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歓迎と警戒と 言論の自由確保  規制監督を強化

放送業界では歓迎と警戒が入り交じる。「言論や放送の自由」確保のために中立機
関を設立するのは歓迎するが、番組内容への規制監督強化への不安が残るからだ。
 日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は17日の会見で「政治的干渉を一切受けない
組織をつくるのは難しいのではないか」と運営に懸念を示した。 90年代は年間1
件程度だった国による放送番組への行政指導は04年以降、頻発している。
 政府の介入に危機感を持った放送業界は07年、第三者機関である放送倫理・番
組向上機構(BPO)の機能を強化。誤報問題や人権問題をチェックすることで業界
の自主・自律を守ってきた。広瀬会長は「BPOの制度は世界で一番民主的だ」と述
べて、日本版FCCが過大な権限を持つことを牽制した。 だが、内藤総務副大臣は
22日、BPOの対応を評価しっつも「放置すると被害が急進展するような事態には
(日本版FCC)何らかの対応をとれるような権限を持ってもいい」と明言。今後の
議論の火種になりそうだ。 通信業界では、新機関で「競争政策がどう変わるのか」
(大手通信会社幹部)に関心が集まる。来年のNTTの組織見直しに日本版FCCをめ
ぐる議論が大きくかかわってくるからだ。本家の米FCCは最近、これまでの競争を
最重視した姿勢を転換した。日本版FCCがそれを踏襲するのかどうか注目される。
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